Autoscopy【MD0064-DARILBALDE】

「ななななな！なんじゃこりゃ～！！！」
そこには無惨にバラバラになったダリルバルデが
コンテナに詰め込まれて納入されていた。
いやいや、どういう事！？部長が
…学生同士のお遊び決闘に使うだけだから。
社長が煩いんだよね。
自分の子供が可愛いのか、
プライドが高いのか分かんないけど。
一応、リモートパイロットも使えるようにしといてね。
これ、会社命令だから…
って言ってたから、ちょこっと凹む位かと思ってたのに。
バッラバラやないか！
『破損状況確認…複数の角度から同時に攻撃を受けています。
　一対一の決闘を予定して組んだサポートAIでは
　どうにもできなかったでしょうね。』
「スコピー、戦闘データの照合を…
　私のダリルをこんなにした奴の詳細を。」
『週末の婚活パーティの詳細ではなくて？』
「デリートされたくなければ言われたとおりにする！」
『仕方ありませんね。』

戦闘データを見て愕然とする。
大人ができる限りの汚いお膳立てをして、
それを覆すマニューバ。
まるで意思を持っているかのようなドローン操作。
まさか複座型？いえ、パイロットは一人だけみたい。
『遅くまでお疲れ様です。強化プランは決まりましたか？』
携帯端末からスコピーが話しかけてくる。
「んー。7割ってとこかなー？後は私のウデ次第…かな。」
『では、壊滅的と言うことですね。
　諦めたら如何でしょうか？』
「うるさいわね。戦術プランナーとしても私は一級よ。」
『それは口は立つけどケンカは弱いって事ですよね？』
私のガラスハートを砕いてくるAI、
図星を点かれて私は目を閉じる。
確かに勝ち筋は見えているけど、
操縦者の実力不足は否めない。
「でも、だからといってダリルを否定したことは許さない。
　有用性が認められなければ、
　研究自体が凍結されかねないもの。」
『ご自分の設計MSにダリルバルデ(最愛の人)なんて
　命名するぐらいですからね。
　早くリアルに目覚めてください』
「な！あんた、意味を知ってたの！？」
『はい。更にいうと決闘の環境も知っています。
　スタンドアローンな闘技場なので、
　私のサポートは受けられません。
　マスターは自殺願望がありましたっけ？』
私は遠くを見つめる…。
「うそーーーーん！！」

ダリルのコクピットで
近接と遠距離マニューバの切替を反復する。
決闘に参加できるのは学園の生徒のみ。
今回は大量の稟議書と申請書を書いて、
聴講生として無理やりの参加。
スコピーの
『学園の制服…ご自分ではまだ行ける。
　似合ってると思っても、
　周りから見たらコスプレですからね。』
の一言が私の携帯端末を破壊させた。
サポートについて何か言いかけてたけど、
バキンとへし折ってやったわ。
サーバーに戻って反省してろ！
何のためにダリル「で」研究をしてると思ってるのか。
少しは察しろっての！

決闘の口上が始まる
…ただ結果のみが真実！…
開始と同時にフルブーストで接近！
お菓子みたいな名前の機体に肉薄する。
一番怖いのは近距離に近い中距離戦。
あのドローン？ガンド技術？がバラけてビームを乱射されると
私では処理出来なくなる。
ダリルのドローンはオミットして、防御と推進力に全振り。
至近距離で押し切る！
私の戦斧プログラムは相手にワザと防御させ、
シールドビット？を遠隔操作をさせない立ち回りができる。
このまま、削り切れないのは承知の上…
嫌がって後方にスラスタージャンプした時がチャンス！
相手の膝が曲がり、後方移動のモーションが見えた！
戦斧にエネルギーを集中、
戦斧はバスターソードの形状に変化する。
この一瞬で首を狙う。線の動きから点への攻撃パターン変更。
対応出来るはずがない。
「ここで！貫けぇー！！」

刃先が首元へ伸びる瞬間、ソードが霧散する。
相手のシールドの一部が欠け、ダリルの手元、
フィールドジェネレーターを貫いている。
鉄の棒と化してしまった戦斧を投げつけるが、
バックダッシュを許してしまい、
分離したビットに撃ち落とされる。
「ヤバい。相手の射程距離…。」
ビームライフルを躱しながら接近するが、距離をとられる。
「流石に二回目は接近させてくれない、か。」

ホルダーの機体から分離したビットは
乱機動しながら私に迫る。
「これじゃ、バカ息子と同じ結末に！」
装甲を強化してあるから致命傷にはならないけど、
このままじゃ焼き切られる。
新たに装備した両肩のビームガンを斉射しながら
ビットを狙うも全て躱される。
私の意識がそこに向けられた一瞬で、側面に廻られた！
ビームライフルが向けられている。
銃口が光るのがやけにゆっくりと見える。
せめてあのバカAIがいてくれたら…

バシュュュュュュンンン！
その一閃は銃口からではなく、
上空から相手のビームライフルを貫通する。
この波形パターンは、
「スコピー！？」
『ほんとマスターは世話が焼けますね。
　私がいないと駄目人間なんですから。』
「その機体はお蔵入りしたダリルの僚機！
　って、パイロットは！？
　そもそもあなたはネットワーク断絶されてたはず。」
『パイロットは私です。
　断線については学園のサーバーをアクセスポイントとして
　利用しています。それとマスター…隠してましたね。
　この機体もそうですが、ダリルバルデ、
　私の電子パターンを登録してますね？
　つまり、私を電子の海から
　リアルにサルベージするのが研究目的。
　いい加減、人間の友達を作ってください』
「(うっわー。バレてる。
　最終的に人型までダウンサイジングして、
　彼氏でーすなんて事まではバレてないよね？よね！？)」
「わわわわ悪い！？貴方も出来ることが増える、
　私は仕事を手伝ってもらう。WIN-WINじゃない！？」

『須(すべから)く本能に忠実ですね・・・。
　帰ったら尋問しますから覚えておいて下さいね？
　先ずは状況を打開しましょう。
　・・・I have control』

スコピーからメインコントロール委譲の申請が届く。
「ゆ、ユーハブコントロール。」
ダリルの両肩武装、背面のパックパックが換装される。
併せてスコピーにダリルが従属される。
文字通り意のままに操作が可能となる。

『マスター、コレが四肢の感覚…なんですね。
　ビット装備の名称はFang Nail(ファングネイル)・・・
　マスター・・・牙なんですか？爪なんですか？』
「非常時にうるさい！
　略してファンネルとでも呼べばいいでしょ！」

『ファンネル・・・マスターの提案にしては
　しっくりきますね。
　さて、私の創造主を追い詰めて頂いたお礼を致しましょう。
　ファンネル！眼前の敵を殲滅しなさい！』
バックパックから意思を持った兵器が射出される。
全周からの攻撃。
しかし、相手のエネルギーフィールドに阻まれてしまう。
『まぁ、そうでしょうね。しかし、本命はこちらです。』
ビームガトリングを斉射しながら実体剣を肩に担ぐ

『これだけの手数、必ずガードしますよね。
　・・・斬艦刀、エンゲージ！』
実体剣の峰から推進力が発生。
あり得ない速度で振り抜かれる。

ビットが集まりシールドを形成。
しかしそのガードを粉砕する。
『おや、当たり負けすると踏んで自ら分離しましたね？
　次の太刀は躱せますか？』

「スコピー、集中攻撃が来る！」
分離したビットからビームが乱射されるが、
ダリルのシールドでガードする。
「戦術指示は私に任せて、あなたは攻撃に集中！
　仕留めるわよ！」
『YES MAM!!』

ファンネルとビットが交錯し火花を散らす。
ビームガトリングを左腕で相手の正中線上に構える。
敵機までの最短ルートをマーク。
オーバーリミット・・・フルブースト！！
最速で間合いを詰める。

毎分11,000発のガトリングで釘付けにする。
間合いに・・・入った！
「スコピー！合わせて！」
『造作もありません。』

ガトリングを投げ捨て、実体剣を両手持ちにし、振りかぶる。

『「エンゲージ！！！」』

如何でしたでしょう？
妄想１２０％で走り抜けました。
ダリルバルデが本領発揮できず可哀そうすぎる。
エアリアルをこれなら倒せるっ！？て感じで改修しました。

宜しければコメント、お願い致します。