｢作りかけのガンプラ｣

それを受けてモデラーは新たなコメントをした。次の投稿に使うプラモは自宅で積まれていたプラモを使用することにします。作りたい人がいらしたらどうぞご自由に。

モデラー達は次の投稿ガンスタされるや否や、皆早足で「作りかけのガンプラ」が展示されているページに集まった。

前回と同じように封があけられた作りかけのνガンダムがランナー状態で放置してあったが、そこに付随してあったコメントだけは前回と違った。

「作りたい人がいたらご自由にどうぞ」

作品の前に集まった皆が静かに周りを伺う。多くの人が降りる停留所なのに停車ボタンを皆なかなか押さないバスの空気に似ていた。そんな中一人の少年モデラーが静々と手を挙げた。

｢このガンプラを作りたいのですが。｣

するとモデラーは、わかりましたとガンプラを少年へと手渡した。

ガンプラを受け取った少年は「ぼくが作ってあげるからねと」とνガンダムの頭を作り始めると自然に拍手が巻き起こった。

しかしそんな中、モデラーは飄々と投稿をつづけ、また作りかけのプラモを積んだ。どういうことだと詰め寄られるが特に気にすることもなく

｢今日は6体連れてきましたから後5体いますよ｣と答えた。人々は唖然としたが一度できた流れは変わらず、次々と挙手する人が現れた。自分が引き受ける、いいや自分が引き受けると、我先にと手を挙げた。モデラーは機械的に受け渡しを6回済まし、その日の投稿は終了した。

モデラーはその後も精力的に投稿を行ったが「作りかけのガンプラ」が完成することはなかった。どの投稿でも用意したプラモは全て貰い手が現れたからだ。それは数を増やしても変わらなかった。

そしていつしかある噂が囁かれていた。あのモデラーは積み予定のガンプラ達を救うためにこんな投稿を始めたんじゃないだろうかと。

しかしある時、モデラーは突然投稿をやめた。ブームの最中だったから人々は不思議がった。そしてとある記者が尋ねた。「噂では積みプラ救うためにこの投稿をしていたとのことですが本当でしょうか？」モデラーは答えた。「いいえ違います。それにもしそれが目的ならば投稿をやめるなんておかしいでしょ？」

もっともな話だった。「では何のために投稿をして、そして何故投稿をやめられるのですか？」

モデラーは答えた。「それはこれからわかります。そして私の準備はこれで終わったので投稿をやめます。どうぞ皆様これから行われる出来事をお楽しみください。」

投稿は終わった。

謎めいた発言は一時的に話題にはなったものの、その後も特に何かが起こるわけでもなかったので、すぐに忘れ去られた。

そしてしばらくして。奇妙な現象が起こり始めた。全国各地のフリマサイトやリサイクルショップになどに多数のガンプラが出品され始めたのだ。

かのようなメッセージを添えて…

｢ジャンク品です、パーツ取りにどうぞ｣

引き受けたはいいものの、物欲とその場のノリから挙手した人が殆どで、多くのモデラー達は本命のプラモを作りたくなっていた。

どうしたものかと考えつく先は皆同じで、それがモデラーと同じような手段だった。直接捨てたり積んで放置するよりも心が痛まない。

悪いのは作ることができたのに、作ることなく見ていたやつだと。

かくして「未完成のガンプラ」は完成した。多くのモデラーの手によって

この度はちょっと違った目線からガンプラを楽しんでみようかと思いましてこのような投稿をさせて頂きました、今回のテーマは｢未完成｣のガンプラは本当に｢未完成｣なのか…です。

もちろん製作途中のガンプラに関しては間違いなく｢未完成｣なんだと思いますが様々な理由で完成までに至らなかったり、壊れたり、パーツの紛失で不完全な形になってしまったり、そもそも作る気分になれず新品のまま積まれているガンプラ等…モデラーの方々なら机や押入れの奥底に少なからず眠ってたりするのではないのでしょうか？

これらのプラモ達のほとんどは何となく思いだされた時に改造パーツにされたり場合によっては処分されてしまったりと基本的には表舞台に立つことなく本来の用途とは異なった末路を迎える事になってしまう事もあるでしょう。

当然っちゃ当然なのですがこのGUNSTAさんしかり数多くのプラモ投稿サイトのようにガンプラを自由に楽しむコミュニティの中ですら明確にこれらのプラモを救済する方法はないのです、そりゃそうですよね、だって｢未完成｣なんですから、モデラーだって自分の怠慢わざわざさらそうなんて思わないでしょうし…。

しかしながらこうも思うのです…

モデラーが現状にある程度の納得がいってしまっているのなら、それがたとえ不完全だったとしてもそれは｢未完成｣という形で｢完成｣しているんじゃないのかと…？

実際、ホビー雑誌なんか見るとよく載ってる素材剥き出しな新製品の試作品見てカッコいいと感じた事とかないでしょうか？そして実際の彩色モデルは何かイメージと違うなぁとか思った事…。

個人的にはそんな｢未完成の美学｣を楽しむのもアリなのかなぁとも考えたりしたので自宅に眠る積まれてたりパーツ取りされたνガンダム総動員して楽しんで見た次第です、まぁ話自体はコピペ弄っただけのもんだったりするのですが…。

最後に一言、ガンプラを満足いく形で完成までもって行くのは中々骨が折れる作業です、念入りに改造する場合ときは他のプラモもパーツを使いモデラー自身の手で｢完成｣できなくなるプラモを生み出す事もあるでしょう、それを踏まえて考えてみて下さい…