バエル・マトリックス

  • 1999
  • 0

「ラスタル・エリオンを討ち取った暁にはギャラルホルンでの栄誉栄達は思いのままだぞ」

―――――――

「貴様には世話になったな・・・」

―――――――

「それでは、旦那、御武運を」

―――――――

数人の部下がいた、一人の右腕がいた。しかし、今ここにいるのは一人、孤独とは自由であり、力となる。そう嘯いてみたものの自身が出来る最善策は投降することだろう。そうマクギリスは心のどこかで感じていた。しかし、それはできない。自身が夢見た世界の実現がもう少しでできるかもしれない。その可能性に賭けていた。思い返してみれば遠い道のりであった。奸計を弄し、親友を陥れ、間接的、直接的を問わず殺害し、殺害したはずの友が生きて敵となる。幼いころから読みふけった英雄譚に憧れ、その英雄が駆ったMSに乗った。思えば、英雄になり世界を変えることよりも、その英雄の乗ったMSを手に入れたかっただけなのかもしれない。誰もいない孤独な艦の中、自身の最後の舞台になるであろう決戦の準備を進める。英雄の乗ったMS「ガンダムバエル」は物言わず、搭乗者を受け入れた。
火星圏の重力から離れた時、はっきりと目視でアリアンロッド艦隊を確認できた。その時である、火星近傍からの飛来物がマクギリスの乗るハーフビーク級に衝突した。それはアリアンロッド艦隊からも確認できた。飛来物はハーフビーク級と融合、数分としないうちにガンダムバエルの阿頼耶識を介し、マクギリスと接触を図ってきた。飛来物は隕石の体を成していたが、明確な意識を持つ生命体であった。状況に困惑しながらも、これを利用しない手はないと判断したマクギリスは「孤独は力」という前言を撤回し、この地球外生命体である宇宙怪獣を説き伏せ利用し、アリアンロッド艦隊に一矢報いようと画策する。幸い、宇宙怪獣はなんなく口車に乗り、ガンダムバエルと融合を完了させる。見た目にはそれとわからない物の、機体の追従性のみは宇宙怪獣が一部代替、ブーストを行えるようで、これを大きく向上した。
「ファリド家のハーフビーク級が接近!」
自身の乗艦は、最初から囮である。この一隻で一隻以上沈められれば儲けものであった。爆散する自身の艦から躍り出る白いMS。白いMSは瞬く間に戦場を駆け抜ける。一機、また一機とMSを蹴散らし、戦艦もまるでついでと言わんばかりに叩き落すマクギリス。宇宙怪獣は何を言わずとも阿頼耶識から感じ取れるマクギリスの操縦通りに手足としてバエルが動くように補助し続けた。アリアンロッド旗艦スキップジャックに接近するバエル。それを止めたのは、かつての友であるガエリオ・ボードウィンであった。
巨大なランスに阻まれるバエルソード。両者が鍔迫り合う中、短い問答が起こる。

「どけ、ガエリオ・・・」「やはり、俺を見てはいないのだな・・・」「今度こそ殺してやろう!!」「俺を見ろおおおおお!!!」戦いは一方的ではなかった。しかし、常にマクギリス駆るバエルは優勢であった。最新の技術で改修され決戦仕様となったキマリスヴィダールの力は現存するどのMSよりも強いと言って差し支えない性能であった。それに加えて阿頼耶識Type.Eによる本来の阿頼耶識の再現、言葉の通りに一人では戦っていないのである。しかして一方のバエルは宇宙怪獣が機体性能を底上げできているわけでもない所詮骨董品。最低限のメンテナンスをされた程度の300年も昔の遺物である。MSの性能だけで言えば一方的な戦いとなるはずである。しかし、マクギリスの圧倒的たる技量が宇宙怪獣による機体追従性の底上げを受けて既存の最強機体に一歩も引かずに打ち合っているのである。一度打ち合い肉薄すれば左掌の剣で貫かれた、手を切り飛ばされ兼ねない状況からドリルニーを繰り出そうとも意図も容易く距離を取られる。右手のランスから胴体、コクピット付近を狙い弾丸を撃とうとも、簡単に剣で弾を防がれる。これによって剣を一振り折ることができた。好機とみてバエルに再度肉薄する。ランスが躱され、空いた腕で腰の駆動箇所を一撃で抉られた。たまらず頭突きを繰り出すも、うまくずらされこちらのカメラアイが半損する。対する相手に目立った損壊は一切ない。バエルは素早くスラスターを吹かせて距離を取る。ランスから放つ弾丸もじきに底を付く。ジリジリと追い込まれていくキマリスヴィダール。ガエリオにも焦りが出始めていた。ランスとバエルソードが打ち合う、ランスがいなされ、左膝を貫かれる。ドリルニーを片方潰された。機器が破損し小爆発を起こすキマリスヴィダール。爆発に巻き込まれないように急激なスラスター制動でバエルは離れていった。しかし、爆発を物ともせずに再度バエルに肉薄するキマリスヴィダール。ランスの突撃をすんでで躱し上段から振り下ろした剣がランスを真っ二つに切り裂く。しかし、それが隙を生んだ。直前に背面の盾がランスに接続されていることを危険視しなかったマクギリスはそれが必殺の禁忌であることを知らなかった。―――――――――――――――!!
「どけ、ガエリオ・・・」
「やはり、俺を見てはいないのだな・・・」
「今度こそ殺してやろう!!」
「俺を見ろおおおおお!!!」
戦いは一方的ではなかった。しかし、常にマクギリス駆るバエルは優勢であった。最新の技術で改修され決戦仕様となったキマリスヴィダールの力は現存するどのMSよりも強いと言って差し支えない性能であった。それに加えて阿頼耶識Type.Eによる本来の阿頼耶識の再現、言葉の通りに一人では戦っていないのである。しかして一方のバエルは宇宙怪獣が機体性能を底上げできているわけでもない所詮骨董品。最低限のメンテナンスをされた程度の300年も昔の遺物である。MSの性能だけで言えば一方的な戦いとなるはずである。しかし、マクギリスの圧倒的たる技量が宇宙怪獣による機体追従性の底上げを受けて既存の最強機体に一歩も引かずに打ち合っているのである。
一度打ち合い肉薄すれば左掌の剣で貫かれた、手を切り飛ばされ兼ねない状況からドリルニーを繰り出そうとも意図も容易く距離を取られる。右手のランスから胴体、コクピット付近を狙い弾丸を撃とうとも、簡単に剣で弾を防がれる。これによって剣を一振り折ることができた。好機とみてバエルに再度肉薄する。ランスが躱され、空いた腕で腰の駆動箇所を一撃で抉られた。たまらず頭突きを繰り出すも、うまくずらされこちらのカメラアイが半損する。対する相手に目立った損壊は一切ない。バエルは素早くスラスターを吹かせて距離を取る。ランスから放つ弾丸もじきに底を付く。ジリジリと追い込まれていくキマリスヴィダール。ガエリオにも焦りが出始めていた。ランスとバエルソードが打ち合う、ランスがいなされ、左膝を貫かれる。ドリルニーを片方潰された。機器が破損し小爆発を起こすキマリスヴィダール。爆発に巻き込まれないように急激なスラスター制動でバエルは離れていった。しかし、爆発を物ともせずに再度バエルに肉薄するキマリスヴィダール。ランスの突撃をすんでで躱し上段から振り下ろした剣がランスを真っ二つに切り裂く。しかし、それが隙を生んだ。直前に背面の盾がランスに接続されていることを危険視しなかったマクギリスはそれが必殺の禁忌であることを知らなかった。
―――――――――――――――!!
電磁投射によるレアアロイ弾頭の発射、禁止兵器ダインスレイブがバエルに向けて放たれた。直線状にスキップジャックがいないことを好機と見たガエリオが奥の手を使ったのである。これを奇跡的な反射神経で躱すマクギリス。しかし、それは大きく体勢を崩す要因となった。真っ二つに切り割られたランスを前方に構えたままバエルに突撃をかますキマリスヴィダール。当身のような攻撃でバエルに一撃を食らわすもバエルはその崩れた体勢のままキマリスヴィダールの右腕を斬りとって見せた。キマリスヴィダールは満身創痍であった。右腕を切り取ったマクギリスはダインスレイブが使えないよう、スキップジャックを背に飛行している。今もスキップジャック周辺を飛んでいるが、攻撃の際もスキップジャックを背に位置取ると言う地の利とも言える状況を手放さないことはガエリオも予想に難くなかった。キマリスヴィダールはカメラアイの半損、腰部シリンダーの破損、右腕を失い、その余波で右背の盾も失い、左膝を剣で貫かれ自由が利かない状況。対するバエルは先ほどの当身で右胸部の装甲が歪む程度の損傷と、得物を一振り失っただけである。アリアンロッド艦隊の機体も様子見をしているような状況ではないと感じたのかバエルに攻撃を仕掛けるも、旗艦が盾になっているような状況では満足な火器が使えず挟撃を仕掛けようが、単騎で仕掛けようが次々に破壊されていく。「ここで負けるわけにはいかない!! 頼むアイン!!!」物言わぬ部下に叫ぶガエリオ、それに応えるかのようにキマリスヴィダールの半損した目が赤い燐光を放つ。それは機体の損壊によるリミッターが破壊された結果であったのか、それとも阿頼耶識Type.Eがアインが心から尊敬する上官に対して捧げた忠義と挺身であったのかは分からない。しかして、キマリスヴィダールは厄祭戦の力を引き出してバエルに向かっていく。左手で左腰に指したカタナを抜刀する。急激な接近に反応したバエルがカタナをバエルソードで受ける。いなせると思ったマクギリスであったが、出力の差がここで明暗を分けた。いなせず、打ち払うしかできなかったバエル。再度カタナが振られる。再度打ち合うバエル。三度目の打ち合いで鍔迫り合うもスラスターを急発進させたキマリスヴィダールに力負けするバエル。バエルはそのままスキップジャックの艦壁に激突させられる。その艦壁を背に何度も何度も打ち合う。幾度カタナとバエルソードが打ち合ったのか分からない果てにカタナが折れる。その瞬間にバエルはキマリスヴィダールの左肩に剣を突き立てた。一瞬互いの体の重心が崩れる。その瞬間を見逃さず右のドリルニーがバエルを狙う。その一瞬すら見逃さずマクギリスはドリルを蹴り折る。しかし、崩れた重心から放った蹴り。如何に人外魔境の操縦技術を持ったマクギリスであってもその一手を防ぐ手段がなかった。左肩の装甲を貫かれながらも折れた刀身に手を伸ばし、その刀身でもってバエルのコクピットを狙って突き刺した。「俺がガエリオに負ける?!」その言葉は不意に出た。そのまま、キマリスヴィダールとバエルは縺れ合いながら、スキップジャック艦内へとなだれ込む。隔壁を破壊し内部艦壁を破壊し、二機は沈黙する。マクギリスは生きていた。肚にはバエルの破片が突き刺さっていた。朦朧とする意識の中、痛みだけがやたらとはっきりしていた。ざわざわとした寒気の中、拳銃を持って艦内を移動し、エレベーターに乗るマクギリス。エレベーターの扉が開くと、そこにはかつて殺したはずの友人が待ち構えていた。「ガエリオーーーーーー!!!!」絶叫と共に放った弾丸が当たるのを確かにマクギリスは見た。「俺を見ろ!! お前に殺された男だ! そして。お前を殺した男だ!」ガエリオは銃を構えたが、撃たなかった。マクギリスの放った弾丸を止めたのは偽りと復讐の仮面であった。マクギリスは自身の銃の反動にも耐えられない体だったのである。心情を吐露するガエリオ。それに、本当の心情を、真実を話すマクギリス。分かっていたのだ、如何に怒りの中で生きていようとも安らかな時間はあったのだ。しかし、その怒りを自分自身が否定してしまえば自身の土台を失ってしまう。だからこそ、自分が得たかったものをくれた友人たちを裏切り、奸計に嵌め、養父を失脚させ、バエルを奪い、ギャラルホルンを陥れて掌握しようとした。目の前の友人は涙を流していた。そして、マクギリスは友人に一言、ずっと言えなかったことを伝えようとした。もうこれが最期だろうから・・・。「言うな! お前の言おうとしていることが俺の想像通りなら俺はお前を許してしまうかもしれない!」ああ、そうか――――俺はお前にとって、もう――――マクギリスは閉口した。伝えたかった言葉を、最期に言いたかった言葉をその胸にしまった。「さらばだ、マクギリス・・・」目の前の友人は、もう事切れていた。せめて、と友人を安置するため運ぶガエリオは涙を流していた。
電磁投射によるレアアロイ弾頭の発射、禁止兵器ダインスレイブがバエルに向けて放たれた。直線状にスキップジャックがいないことを好機と見たガエリオが奥の手を使ったのである。これを奇跡的な反射神経で躱すマクギリス。しかし、それは大きく体勢を崩す要因となった。真っ二つに切り割られたランスを前方に構えたままバエルに突撃をかますキマリスヴィダール。当身のような攻撃でバエルに一撃を食らわすもバエルはその崩れた体勢のままキマリスヴィダールの右腕を斬りとって見せた。キマリスヴィダールは満身創痍であった。右腕を切り取ったマクギリスはダインスレイブが使えないよう、スキップジャックを背に飛行している。今もスキップジャック周辺を飛んでいるが、攻撃の際もスキップジャックを背に位置取ると言う地の利とも言える状況を手放さないことはガエリオも予想に難くなかった。キマリスヴィダールはカメラアイの半損、腰部シリンダーの破損、右腕を失い、その余波で右背の盾も失い、左膝を剣で貫かれ自由が利かない状況。対するバエルは先ほどの当身で右胸部の装甲が歪む程度の損傷と、得物を一振り失っただけである。アリアンロッド艦隊の機体も様子見をしているような状況ではないと感じたのかバエルに攻撃を仕掛けるも、旗艦が盾になっているような状況では満足な火器が使えず挟撃を仕掛けようが、単騎で仕掛けようが次々に破壊されていく。
「ここで負けるわけにはいかない!! 頼むアイン!!!」
物言わぬ部下に叫ぶガエリオ、それに応えるかのようにキマリスヴィダールの半損した目が赤い燐光を放つ。それは機体の損壊によるリミッターが破壊された結果であったのか、それとも阿頼耶識Type.Eがアインが心から尊敬する上官に対して捧げた忠義と挺身であったのかは分からない。しかして、キマリスヴィダールは厄祭戦の力を引き出してバエルに向かっていく。左手で左腰に指したカタナを抜刀する。急激な接近に反応したバエルがカタナをバエルソードで受ける。いなせると思ったマクギリスであったが、出力の差がここで明暗を分けた。いなせず、打ち払うしかできなかったバエル。再度カタナが振られる。再度打ち合うバエル。三度目の打ち合いで鍔迫り合うもスラスターを急発進させたキマリスヴィダールに力負けするバエル。バエルはそのままスキップジャックの艦壁に激突させられる。その艦壁を背に何度も何度も打ち合う。幾度カタナとバエルソードが打ち合ったのか分からない果てにカタナが折れる。その瞬間にバエルはキマリスヴィダールの左肩に剣を突き立てた。一瞬互いの体の重心が崩れる。その瞬間を見逃さず右のドリルニーがバエルを狙う。その一瞬すら見逃さずマクギリスはドリルを蹴り折る。しかし、崩れた重心から放った蹴り。如何に人外魔境の操縦技術を持ったマクギリスであってもその一手を防ぐ手段がなかった。左肩の装甲を貫かれながらも折れた刀身に手を伸ばし、その刀身でもってバエルのコクピットを狙って突き刺した。
「俺がガエリオに負ける?!」
その言葉は不意に出た。そのまま、キマリスヴィダールとバエルは縺れ合いながら、スキップジャック艦内へとなだれ込む。隔壁を破壊し内部艦壁を破壊し、二機は沈黙する。
マクギリスは生きていた。肚にはバエルの破片が突き刺さっていた。朦朧とする意識の中、痛みだけがやたらとはっきりしていた。ざわざわとした寒気の中、拳銃を持って艦内を移動し、エレベーターに乗るマクギリス。エレベーターの扉が開くと、そこにはかつて殺したはずの友人が待ち構えていた。
「ガエリオーーーーーー!!!!」
絶叫と共に放った弾丸が当たるのを確かにマクギリスは見た。
「俺を見ろ!! お前に殺された男だ! そして。お前を殺した男だ!」
ガエリオは銃を構えたが、撃たなかった。マクギリスの放った弾丸を止めたのは偽りと復讐の仮面であった。マクギリスは自身の銃の反動にも耐えられない体だったのである。心情を吐露するガエリオ。それに、本当の心情を、真実を話すマクギリス。分かっていたのだ、如何に怒りの中で生きていようとも安らかな時間はあったのだ。しかし、その怒りを自分自身が否定してしまえば自身の土台を失ってしまう。だからこそ、自分が得たかったものをくれた友人たちを裏切り、奸計に嵌め、養父を失脚させ、バエルを奪い、ギャラルホルンを陥れて掌握しようとした。目の前の友人は涙を流していた。そして、マクギリスは友人に一言、ずっと言えなかったことを伝えようとした。もうこれが最期だろうから・・・。
「言うな! お前の言おうとしていることが俺の想像通りなら俺はお前を許してしまうかもしれない!」
ああ、そうか――――
俺はお前にとって、もう――――
マクギリスは閉口した。伝えたかった言葉を、最期に言いたかった言葉をその胸にしまった。
「さらばだ、マクギリス・・・」
目の前の友人は、もう事切れていた。
せめて、と友人を安置するため運ぶガエリオは涙を流していた。
「もうおしまいでいいの?」誰かが語り掛ける。「これで終わっていいの?」「言いたいことあったんじゃないの?」「やりたいことあったんじゃないの?」遠く響くような、それでいて優しい声、女性とも男性ともつかない声であった。「―――?」自身は友人との対話を経て死んだはず「うん、死んじゃっている?けどさ。ちょっと引き延ばしてみたんだ」「まだ、終わりたくないって思ってたみたいだったし」声を発さなくとも、その声は彼を理解していた。心を読まれているようであった。「どうしたいの? 終わりでいいなら、それでもいいよ?」今からアリアンロッド艦隊司令ラスタル・エリオンを討ち取ったところでどうしようもないだろう。バエルはもう・・・「ああ、あれだったら、こっちでなんとかしてあげるよ?」機体が動いても、と迷う彼に一瞬別のことがよぎった。鉄華団はどうなったのだろうか?と。「そっちを助けたいの?」今、自身が一人この宙域で戦っているように、鉄華団は火星の陸上で戦闘しているだろう。自身が討ち取られてしまえば謀反人マクギリス・ファリドは終わりだが、それに加担した者達も無事では済まない。鉄華団は地球への逃避行を画策していたが、それが万事、敵の包囲網を掻い潜れるかも分からない。それに、こんな自身に最後までついてきた来た部下たちもどうなるかわからない。「じゃあ、助けにいこうか」その瞬間、暗い部屋で目が覚めた。死んだはずの自身はこうして暗い部屋、おそらくは一時的な死体安置室であろう場所に運ばれていた。怪我はどうなった?と腹をさする。傷はなかった。「傷は塞いで、臓器(なかみ)と体液はこっちでなんとかしたよ。しばらくしたら、そっちのものに完全になるだろうから安心して」あの声がする。そうして思い至った、この声の正体を。完全に沈黙した阿頼耶識Type.Eは心なしか、やり切ったような表情に見えた。これもただの傲慢かと思うと、自分に腹が立つ部分もなくはない。その時である。物言わぬはずのバエルが動き出し、優しくキマリスヴィダールを動かし、よけたのである。「なに??!!!」驚くのも無理はない、コクピットに誰も載っていないMSがひとりでに動き出したのだから。そしてバエルの表面が沸騰したように泡立ちながら姿形を変えて行くのである。変異が治まったバエルの姿は異様な姿へと変貌していた。それに近づく者が一人。「マクギリス!!?」「ガエリオ、出かけてくるよ」一言交わすとマクギリスは変異したバエルに乗り込んだ。そして、ガエリオをマニュピレータで優しく包むと扉の前まで誘導した。「本当にお前なのか? 意味が分からない」「私も、意味が分からないが、協力者を助けに行くと言ったら力を貸してくれたようだ。行ってくるよ、ガエリオ、ありがとう」マクギリスが宇宙へと飛び出すことを感じたガエリオは扉の向こうへと消える。それを確認したマクギリスは再度、通ってきた艦壁を破壊し宇宙へと飛び出す。
「もうおしまいでいいの?」
誰かが語り掛ける。
「これで終わっていいの?」
「言いたいことあったんじゃないの?」
「やりたいことあったんじゃないの?」
遠く響くような、それでいて優しい声、女性とも男性ともつかない声であった。
「―――?」
自身は友人との対話を経て死んだはず
「うん、死んじゃっている?けどさ。ちょっと引き延ばしてみたんだ」
「まだ、終わりたくないって思ってたみたいだったし」
声を発さなくとも、その声は彼を理解していた。心を読まれているようであった。
「どうしたいの? 終わりでいいなら、それでもいいよ?」
今からアリアンロッド艦隊司令ラスタル・エリオンを討ち取ったところでどうしようもないだろう。バエルはもう・・・
「ああ、あれだったら、こっちでなんとかしてあげるよ?」
機体が動いても、と迷う彼に一瞬別のことがよぎった。
鉄華団はどうなったのだろうか?と。
「そっちを助けたいの?」
今、自身が一人この宙域で戦っているように、鉄華団は火星の陸上で戦闘しているだろう。自身が討ち取られてしまえば謀反人マクギリス・ファリドは終わりだが、それに加担した者達も無事では済まない。鉄華団は地球への逃避行を画策していたが、それが万事、敵の包囲網を掻い潜れるかも分からない。それに、こんな自身に最後までついてきた来た部下たちもどうなるかわからない。
「じゃあ、助けにいこうか」
その瞬間、暗い部屋で目が覚めた。
死んだはずの自身はこうして暗い部屋、おそらくは一時的な死体安置室であろう場所に運ばれていた。怪我はどうなった?と腹をさする。傷はなかった。
「傷は塞いで、臓器(なかみ)と体液はこっちでなんとかしたよ。しばらくしたら、そっちのものに完全になるだろうから安心して」
あの声がする。そうして思い至った、この声の正体を。

完全に沈黙した阿頼耶識Type.Eは心なしか、やり切ったような表情に見えた。これもただの傲慢かと思うと、自分に腹が立つ部分もなくはない。
その時である。物言わぬはずのバエルが動き出し、優しくキマリスヴィダールを動かし、よけたのである。
「なに??!!!」
驚くのも無理はない、コクピットに誰も載っていないMSがひとりでに動き出したのだから。そしてバエルの表面が沸騰したように泡立ちながら姿形を変えて行くのである。
変異が治まったバエルの姿は異様な姿へと変貌していた。
それに近づく者が一人。
「マクギリス!!?」
「ガエリオ、出かけてくるよ」
一言交わすとマクギリスは変異したバエルに乗り込んだ。
そして、ガエリオをマニュピレータで優しく包むと扉の前まで誘導した。
「本当にお前なのか? 意味が分からない」
「私も、意味が分からないが、協力者を助けに行くと言ったら力を貸してくれたようだ。行ってくるよ、ガエリオ、ありがとう」
マクギリスが宇宙へと飛び出すことを感じたガエリオは扉の向こうへと消える。それを確認したマクギリスは再度、通ってきた艦壁を破壊し宇宙へと飛び出す。
スキップジャックのスラスターとアポジモーターをいくつか壊した。艦で追撃されれば分が悪い。火星へと向かう。それは自身が巻き込んだ者達へのせめてもの贖罪である。バエルは、宇宙怪獣は通常の30倍近い加速を得ていた。宇宙怪獣が完全に融合したことで本来の機体性能を大きく上回る力を手に入れた。何をどうすればいいのかも阿頼耶識から伝わってくる。ガンダムバエルという機体は消失し、バエルと言う宇宙怪獣がここに存在しているのである。「少々、状況は変わるが作戦に変更はない」マクギリスがスキップジャックを足止めする直前、ラスタルは火星に指令を出していた。それはMAを単騎で仕留める「獣」狩りの作法。「あれは・・・」マクギリスが見た光景、それは火星地表に向けられていた禁忌兵器の一団であった。状況から察するに既に第一射は放たれていた。次弾装填の準備はしていないようであるが、もし第二射が放たれればどうなるかは想像に難くない。手早くそれらを戦闘不能に追い込むと火星の大気圏に突入した。座標も計算する必要もなく宇宙怪獣がサポートし、摩擦による高温化すらをも防いで見せた。「生きてりゃ、いいことあるもんだなぁ。テメエをこの手でやれるとは。」クジャン公をペシャンコウにした昭弘がそう呟く、誰に向けた言葉でもない。ただいい土産話ができた、とそう思った。「死ぬには早いぞ」グシオンにとどめをささんと向かう二機のグレイズを吹き飛ばし、タービンズの仇を討ったグシオンを抱えるバエル。昭弘は既に気を失っていた。そして、一機でも見方を追撃することになるであろう敵機を屠らんと暴走するバルバトス。そのバルバトスを討ち取らんとするジュリエッタ機、こちらはさっさと四肢を切断して達磨状にして動けなくして、バルバトスを抱えて飛び立つ。両脇に鉄華団のガンダムを抱えて飛ぶバエル。広域のレーダーを発動したのだが、どうも皮膚感覚のように感覚が拡張するような錯覚を覚えた。ジャンプで追撃に掛かる敵機を羽から発する衝撃派で軽くあしらうと早々に戦闘領域から離れた。鉄華団本体とは容易く合流できた。宇宙怪獣に頼み込んで三日月・オーガスの体には多少治療を施した。意識を取り戻す頃には彼は普通の人間の体に治るであろう。他の団員から団長オルガ・イツカの訃報を聞き、哀悼の意を示し、鉄華団とは別れた。
スキップジャックのスラスターとアポジモーターをいくつか壊した。艦で追撃されれば分が悪い。
火星へと向かう。それは自身が巻き込んだ者達へのせめてもの贖罪である。バエルは、宇宙怪獣は通常の30倍近い加速を得ていた。宇宙怪獣が完全に融合したことで本来の機体性能を大きく上回る力を手に入れた。何をどうすればいいのかも阿頼耶識から伝わってくる。ガンダムバエルという機体は消失し、バエルと言う宇宙怪獣がここに存在しているのである。
「少々、状況は変わるが作戦に変更はない」
マクギリスがスキップジャックを足止めする直前、ラスタルは火星に指令を出していた。それはMAを単騎で仕留める「獣」狩りの作法。
「あれは・・・」
マクギリスが見た光景、それは火星地表に向けられていた禁忌兵器の一団であった。状況から察するに既に第一射は放たれていた。次弾装填の準備はしていないようであるが、もし第二射が放たれればどうなるかは想像に難くない。手早くそれらを戦闘不能に追い込むと火星の大気圏に突入した。座標も計算する必要もなく宇宙怪獣がサポートし、摩擦による高温化すらをも防いで見せた。
「生きてりゃ、いいことあるもんだなぁ。テメエをこの手でやれるとは。」
クジャン公をペシャンコウにした昭弘がそう呟く、誰に向けた言葉でもない。ただいい土産話ができた、とそう思った。
「死ぬには早いぞ」
グシオンにとどめをささんと向かう二機のグレイズを吹き飛ばし、タービンズの仇を討ったグシオンを抱えるバエル。昭弘は既に気を失っていた。
そして、一機でも見方を追撃することになるであろう敵機を屠らんと暴走するバルバトス。そのバルバトスを討ち取らんとするジュリエッタ機、こちらはさっさと四肢を切断して達磨状にして動けなくして、バルバトスを抱えて飛び立つ。両脇に鉄華団のガンダムを抱えて飛ぶバエル。広域のレーダーを発動したのだが、どうも皮膚感覚のように感覚が拡張するような錯覚を覚えた。ジャンプで追撃に掛かる敵機を羽から発する衝撃派で軽くあしらうと早々に戦闘領域から離れた。
鉄華団本体とは容易く合流できた。宇宙怪獣に頼み込んで三日月・オーガスの体には多少治療を施した。意識を取り戻す頃には彼は普通の人間の体に治るであろう。他の団員から団長オルガ・イツカの訃報を聞き、哀悼の意を示し、鉄華団とは別れた。

これら一連の事件は「マクギリス・ファリド事件」と呼ばれ、マクギリスの死を以て一件落着とされた。表向きは。あの後、数年が過ぎ、マクギリスを秘密裏に処理しようとしたギャラルホルンはその悉くが無駄足に終わった。いつしか、それを行わずとも表舞台に一切現れないマクギリス、そしてIDを書き換えたのか分からないが鉄華団残党の足取りも一切合財が追えなくなってしまった。その状況下で合議制を維持できなくなったギャラルホルンはこれを廃止し、より民間的な組織へと再編成された。その過程で火星支部を維持することが難しくなり、火星支部は縮小、火星での経済圏の搾取は最早難しくなり、火星は独立することとなった。これによって火星連合が設立、その初代連合議長としてクーデリアが就任。「マクギリス・ファリド事件」が記憶から風化していくこととなった。クーデリアとラスタルの会談のはるか上空に「彼ら」はいた。この火星の独立の記念と「ヒューマンデブリ廃止条約の調印式」を見にきたのだ。電波傍受でニュースを聞き、それで満足していた。いつしか、手紙がボードウィン家に届くようになっていた。行く場所行く場所で買った絵葉書や便箋で送られていた。当初、家主であるガルス・ボードウィンは手紙を見て激高したこともあったが、アルミリアとガエリオはこの手紙を楽しみにしていた。届くたびに悪態をついているガルスではあるが、内心では喜ばしく思っているのである。アルミリアもこの手紙を心待ちにしていた。ガエリオは憎しみ半分、嬉しさ半分で微妙な感情である。クーデリアは連合議長として、また一会社の社長として仕事を全うしていた、昭弘は名字を与えた家族とともにクーデリアの学校で働いていた。「今日は家に帰っておこうかと」「愛する男が待ってるもんね」「私の旦那様ではないですけどね」畑の一軒家の軒先で背の伸びたアトラが洗濯物を取り込む。洗濯物のシーツを被って走る男の子を抱えてクーデリアは笑いかける「くーでりあ」「はい」「おかえり、クーデリア。今回は早かったんだね」「ええ、暁はいい子にしてた?」「うん」「うそだー、いい子は洗濯物で遊んだりしないんだよ」「してたー」小さい幼子の手は日増しに大きくなる、父親譲りの手であった。「お茶入れるね、クッキーとクラッカも戻ってきてるの」「あなたー、お茶にしよう」アトラは旦那を呼ぶ、遠くで鍬を振り上げる男が、それに気づいた。暁の見る写真は鉄華団の集合写真と父母のささやかな結婚式の写真であった。
これら一連の事件は「マクギリス・ファリド事件」と呼ばれ、マクギリスの死を以て一件落着とされた。表向きは。あの後、数年が過ぎ、マクギリスを秘密裏に処理しようとしたギャラルホルンはその悉くが無駄足に終わった。いつしか、それを行わずとも表舞台に一切現れないマクギリス、そしてIDを書き換えたのか分からないが鉄華団残党の足取りも一切合財が追えなくなってしまった。その状況下で合議制を維持できなくなったギャラルホルンはこれを廃止し、より民間的な組織へと再編成された。その過程で火星支部を維持することが難しくなり、火星支部は縮小、火星での経済圏の搾取は最早難しくなり、火星は独立することとなった。これによって火星連合が設立、その初代連合議長としてクーデリアが就任。「マクギリス・ファリド事件」が記憶から風化していくこととなった。
クーデリアとラスタルの会談のはるか上空に「彼ら」はいた。この火星の独立の記念と「ヒューマンデブリ廃止条約の調印式」を見にきたのだ。電波傍受でニュースを聞き、それで満足していた。
いつしか、手紙がボードウィン家に届くようになっていた。行く場所行く場所で買った絵葉書や便箋で送られていた。当初、家主であるガルス・ボードウィンは手紙を見て激高したこともあったが、アルミリアとガエリオはこの手紙を楽しみにしていた。届くたびに悪態をついているガルスではあるが、内心では喜ばしく思っているのである。アルミリアもこの手紙を心待ちにしていた。ガエリオは憎しみ半分、嬉しさ半分で微妙な感情である。

クーデリアは連合議長として、また一会社の社長として仕事を全うしていた、昭弘は名字を与えた家族とともにクーデリアの学校で働いていた。
「今日は家に帰っておこうかと」
「愛する男が待ってるもんね」
「私の旦那様ではないですけどね」
畑の一軒家の軒先で背の伸びたアトラが洗濯物を取り込む。洗濯物のシーツを被って走る男の子を抱えてクーデリアは笑いかける
「くーでりあ」
「はい」
「おかえり、クーデリア。今回は早かったんだね」
「ええ、暁はいい子にしてた?」
「うん」
「うそだー、いい子は洗濯物で遊んだりしないんだよ」
「してたー」
小さい幼子の手は日増しに大きくなる、父親譲りの手であった。
「お茶入れるね、クッキーとクラッカも戻ってきてるの」
「あなたー、お茶にしよう」
アトラは旦那を呼ぶ、遠くで鍬を振り上げる男が、それに気づいた。
暁の見る写真は鉄華団の集合写真と父母のささやかな結婚式の写真であった。

宇宙怪獣と完全に融合したガンダムバエルは、既にMSではなく生命体となっている。剣先や羽からは元々宇宙怪獣がデブリ避けに使用していた衝撃波を打ち出せるようになっており、この衝撃波一撃で複数のMSを弾き飛ばすことができるようになっている。この能力で追撃してきたギャラルホルンMSを撃ち落とし、ラスタルは追撃を断念せざるを得なかった。
宇宙怪獣と完全に融合したガンダムバエルは、既にMSではなく生命体となっている。
剣先や羽からは元々宇宙怪獣がデブリ避けに使用していた衝撃波を打ち出せるようになっており、この衝撃波一撃で複数のMSを弾き飛ばすことができるようになっている。
この能力で追撃してきたギャラルホルンMSを撃ち落とし、ラスタルは追撃を断念せざるを得なかった。
マクギリスと宇宙怪獣は自由気ままに太陽系を旅しており、宇宙怪獣自身もこの新しい体を気に入っている。宇宙怪獣は種族の中でも特に気性の激しい個体であるが、そもそも、この種族自体が争いという概念が薄い種族でもある。ということで、融合した宇宙怪獣さんはマクギリスのことをどう思っているか、インタビューしてみましょう宇宙怪獣さん、マクギリスのことはどう思われていますか?「マクギリス、マイフレンド」終
マクギリスと宇宙怪獣は自由気ままに太陽系を旅しており、宇宙怪獣自身もこの新しい体を気に入っている。宇宙怪獣は種族の中でも特に気性の激しい個体であるが、そもそも、この種族自体が争いという概念が薄い種族でもある。

ということで、融合した宇宙怪獣さんはマクギリスのことをどう思っているか、インタビューしてみましょう

宇宙怪獣さん、マクギリスのことはどう思われていますか?



「マクギリス、マイフレンド」



GUNSTAさん再始動ということで、以前の投稿で最も閲覧数が多かったものを再掲しました。

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