ジム・コマンド アサシン

戦争の歴史…それは裏切りの歴史でもある。

　U.C.0079…。宇宙世紀になっても戦争の本質は変わらず、連邦・ジオンともにスパイによる諜報活動は活発に行われた。スパイや内通者による情報の漏洩は、実際の戦場での損失を遥かに凌ぐ犠牲を、両軍に与えることとなった。

　地球連邦軍は、こうした裏切り者やジオンのスパイを処理すべく、秘密裏に暗殺部隊を組織する。スレイブ・レイスといった特殊部隊がよく知られている。しかし、１部隊ですべての粛清を行うことは不可能であり、連邦内では更にいくつかの部隊が編成された。

　本機体もそうした部隊に配属されたうちの一機であり、通常のジムコマンドよりも機体スペックが底上げされ、豊富な武装にアジャストできる性能を秘めている。

「任務内容了承…これより目標を粛清する…！」
　暗殺任務において最も効率的なことは、目標と会敵せずに撃破することである。その為、本機の戦闘記録の多くは高エネルギービームライフルによる一撃必殺の狙撃が主であった。

　シールドは十字マークの先端が鋭利に飛び出しており、打突兵器として使用できるほか、狙撃時には地面やデブリに突き刺して自立させ身を守ることもできた。シールドがバイポッドの役割を果たすことにより、狙撃の命中率向上にもつながった。

「チィッ！ 見つかっちまったか」
　狙撃により相手に位置情報が知られてからは、速攻による部隊粛清が生還の肝となる。目標が２～３機の小隊であれば、１発目の狙撃と同時にライフルを破棄、サーベルによる白兵戦で一気に方を付ける戦法が有効であった。

ジャキッ…

高エネルギービームライフルやサーベルの多用により、本機体のエネルギー消費量は非常に高負荷なものとなる。そうした弱点を補うべく、実体剣のアーミーナイフが左腰に装備されている。ビームサーベルほど広範囲な斬撃は繰り出せないが、一撃でコクピットを貫くには十分な威力を発揮した。

　本機右腕にはビームトンファーが装備されている。サーベル発生装置と共にバッテリーが積載されているため、機体のエネルギー残量に関わらず、ビームを展開することが出来る。しかし、バッテリーの容量はわずかなものであり、短時間の不意打ち的な運用が主であった。
　目標の多くは連邦軍内部の者であり、“ＧＭのビームサーベルは１本” という連邦の常識・固定観念を裏切り、「暗器」として十分な威力を発揮した。

「６０ｍｍ口径GMマグナム」
　白兵戦時、目標との距離を取る際に多く使用された。頭部バルカンと同じ口径であるが、射速や威力は本武装の方が上であり、ＭＳの装甲を貫くのに十分な威力を誇った。目標にダメージを与えるだけでなく、ミサイルを打ち落とすなど防御用武装としても真価を発揮した。

「裏切り者は許さない…この場で粛清する…！」

　内通者や寝返った者とはいえ、かつて共に戦った仲間を討つことは、パイロットの精神に非常に大きな負担を強いる。軍機密にまつわる情報は、一パイロットには知らされず、「なぜ彼らを討つのか」という理由も分からぬまま、ただ任務を遂行することになる。本機体のパイロットは、どのような想いで戦場を駆け、同胞を手にかけてきたのであろうか。

　スレイブ・レイスに代表される特殊部隊は、軍内部のアンタッチャブルな情報に触れる機会も多く、戦後などに秘密裏に“処理” されることが運命付けられている。本機体およびパイロットも、いかなる道を辿ったか知る者はいない。