【試し読み】陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。第一巻《ワタシノユメ》第七章 -【おまえさえいなければ】-【期間限定公開】

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どこからともなく不意にやってくる神宮寺Re⑦です。

というわけであれからの続きです。 

***

「陰キャアイドルはGBN〈世界〉を救いたい。」

あらすじ

自分は救世主になれない──そう思っていたのに。

第一次有志連合戦の裏で行われた不定期開催イベント〈ゲリラレイドボスミッション〉、その中でエリカは義姉であるアカネが巻き込まれたことで復讐を誓った。その巻き込んだそのダイバーを見つけるためにエリカは根暗で陰キャの性格とは真反対の明るくて眩しいアイドル活動をはじめることに。いまだにアカネとの距離がありながらも謎の転校生ハルナが現れ、そしてGPD全日本大会決勝で負けたかつての宿敵〈蒼穹のプリンス〉にも再会を果たす。互いの想いが交錯する世界でエリカは自分の本当の夢を見つける。

これは自分と世界とその裏側に向かい合う物語──。

***

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第一巻《ワタシノユメ》第七章 -【おまえさえいなければ】-

***

第一次有志連合戦。

シバ・ツカサを首謀とするその戦端の最中、エリカとアカネが参加した不定期開催イベント〈ゲリラレイドボスミッション〉でレイドボスを討伐していた。

『GBNをプレイしている全てのダイバーの皆さまにお知らせします。只今サーバーサイド3にてゲリラレイドボスミッションのテストイベントを開催します。敵ガンプラを撃破するしないに関わらず、参加するだけでダイバーポイントを100.000ビルドコインを進呈します。今後のミッション追加の開発に大いに役立つミッションのため、ランクに関わらずぜひご同好の方などとご一緒にご参加くださることを願っております。───GBN運営より。』

運営から届けられたアナウンスとともにエリカとアカネは、隕石が散らばったこの宇宙でレイドボスを目視で確認する。

「……いくよ!アカネ!」

「わかってるってエリカ──!」

エリカの操るガンダムデスティニーアゲインとアカネのガンダムシュヴァルゼッテ・ハンティアは、敵であるメッサーの大群へと向けて、反撃を開始した。

敵の総数三〇〇以上を誇る大部隊の攻撃に、怯むことなく射撃を繰り出していく。

「まだまだぁ!」

ガンダムデスティニーアゲイン。

エリカの使用するデスティニーガンダムの改造機。

GP・デュエル全日本大会準決勝戦にて戦った木兎 理梨菜が操るAGE-FXをベースとするミキシングガンプラであるガンダムヴァイオレットランサーとのバトルにおいて、破損した左脚、右腕および右肩装甲、パックパックをビルドファイターズに登場したウイングガンダムフェニーチェのように片側に翼を纏め、欠損した左脚を別のガンプラのものと接合し、そして取り回しのよいビームライフルを装備させたもの。

機体色はグレーを基本として差し色は紫色を彩っていた。

ZGMF-X42S デスティニーガンダム

シンがこれまでに使用していたインパルスガンダムに代わって、デュランダルが用意したセカンドステージ機のフラッグシップモデル。

戦いの最中で脱走したアスランのグフ・イグナイテッドを撃破するなどのほか、のちの劇場版であるSEED freedomでは〈ファンデーション〉側の戦力であるブラックナイトスコードルドラ五機をキラ・ヤマトから背中を押されたことによって性能を遺憾なく発揮し、これらを単機で撃破するなど多大なる戦果を上げた。

止むことのないメッサーの大群からの射撃に、エリカとアカネは苦戦を強いられていた。

いくらレイドボスとはいえ、この物量とおそらくはブレイクデカールが使用されていることによる本来の仕様とは異なる性能に手間を焼いていた。

「いくら倒してもキリがないのなんなの……!どうなってんのこれ!」

エリカが何度も何度も何度もライフルで撃墜していくも、その攻撃がまるで無かったかのように、再生して復活する敵に嫌気がさしはじめていた。

「……なんなのこれっ!いつもやってるミッションのレイドボスならもうクリアしてるはずなのにっ!どうして!」

「そんなに前に出ちゃ!ガンプラがもたないよエリカ……!うしろに下がって!」

アカネから発せられた注意をよそにわたしは背中から〈アロンダイト〉を取り出す。

「ちまちまやるのは性に合わない……!これでやるしかっ!」

「あたしの話を聞いてよエリカ──!ねぇってば!」

◇◇◇

彼女は焦っていた。

いくらはじめて参加した大規模ミッションとはいえ、なにも結果を出せずに終わるなんてそんなの一番許せなかったからだ。

じりじりと距離を詰めてくるメッサー三機がエリカのガンプラを取り囲む。

「……このわたしに挟み撃ちなんていい度胸じゃん!」

エリカを三方向から挟撃するメッサーは三機とも〈ビーム・サーベル〉で仕掛けはじめていた。

「……あぁ!もう!手間をかけさせてくれるんだから!」

モニターに映るエリカのガンプラを狙う敵機に、アカネは狙撃態勢を整える。

「タイミングはあたしが教えるから!ギリギリまで引きつけてエリカ!」

「わかった──よ!アカネ!」

目前と迫る敵機に心臓の音が聞こえるほど集中していたアカネ。

(……まだ、……まだ、……あとすこし!)

「まだなのアカネ!?」

「──まだだよ!」

「はやく!」

「わかってるっ!」

三角形を描くようにメッサー三機はエリカに粒子で形成された剣を振りかざそうとしたその瞬間──。

「上にあがれぇぇぇぇぇぇ!エリカァァァァァ!」

「……こう──か!」

操縦桿を一気に引いたエリカのガンプラが上昇していく。

敵機である三機のメッサーが、絡みあったときをアカネは……

「狙い撃っちゃうんだからっ…………!」

放たれる高威力の狙撃によって蒸発していく三機。

「……やるじゃんアカネ!」

「だから言ったでしょ!」

連携によって同時に多数の敵機を撃破し、喜びに浸かっていたエリカとアカネ。

だったのだが──。

無造作に放たれた射撃が彼女たちを襲いはじめた。

「……なんなんだよ!こんなときに!」

現れた一機のガンプラであるガンダムスローネドライ。

(こいつもレイドボスなの……?)

レイドボスだと思い込んだアカネは、そのガンプラに向かって反撃を試みる。

(ぜったいにエリカはあたしが守るって!あの日そう誓ったから!)

『無理に近づくのは危険だからやめろ……!彼女はレイドボスなんかじゃない!離れるんだ!そこのダイバー!』

必死に訴えかける男性ダイバーの姿を背にアカネは……

(そんなの言われたってこいつもレイドボスじゃないの?)

「──────なんで!どうし……」

何度も何度も何度も放たれる高威力のGNランチャーが、アカネのガンプラを巻き添えにしていくのがエリカの前に目に映りこんだ。

「アカネぇぇぇぇぇぇぇぇ……!」

(おまえが……!おまえがやったのか!わたしの大切なひとを!おまえさえいなくなれば……!わたしは──!)

なにもできずに友人であるアカネを巻き込まれたエリカは、黒いインクに染み渡る絵の具のパステルのように憎悪の感情に飲み込まれていく。

そうしてエリカは、アカネを亡き者にしたダイバーに敵討ちをするために復讐を心に決めた。

***

転校生であるハルナがきてから、あたしの学校生活は変わりはじめた。

エリカと二人だけだったこの空間にあいつが入ってきてから、あたしの感情はぐちゃぐちゃにされはじめた。

橘輝夜生徒会長がGP・デュエルで乱入してきたあの日。

あたしはなにもできないままハルナに自分のガンプラを操られ、手の届かない相手だった彼を一瞬にして敗北させたハルナ。

たいして制作技術も上手くもなく、バトルも強くもないあたしからこれ以上大事なものを奪わないでよ──!

「……どうしたのアカネ?」

「ううん、考えごとしてただけ」

そう、そっけなく返すあたし。

ずっと考えてたのはあんたのことだよ、なんて言いたくない。

どうして気づいてくれないんだよ……あたしの気持ちをさ……!イライラするんだよその態度が。

「どうかしたのエリカ?」

ハルナが割って入ってくる。

模型部再興することが決まったあの日から数日後の、いつもの屋上でのランチタイム。

こんな気持ちになりたくなんてなかった。

こんな気持ちになるくらいならいっそのこと絶交したほうがマシなくらいに。

「……なんかアカネが元気なさそうだから」

「大丈夫……アカネ?」

大丈夫なわけないだろうが……!のほほんとして、さも私がお姫様かのように笑顔を撒き散らすなよ!邪魔なんだよ!おまえの存在そのものが!

「大丈夫だよ……?バイトの疲れが溜まってるだけだよ?」

「そ、そう……?」

嘘に決まってんじゃん。

「ところでさ、この先どうしよっか?」

「どうって?模型部のこと?」

と、相槌をうつエリカ。

「……カグヤ生徒会長が先生たちと掛け合ってくれるのはいいとして、布教活動するってことでしょ?やることないし、なんかしたほうがいいかなぁ〜って」

そう、ハルナが言葉を返す。

「とりあえずは生徒会長からの報告を待たないとなにも出来なくない?」

あたしが思っていたことを口にする。

「そりゃまぁ……そだよね〜……」

お気楽でいいもんだねほんと、あたしは気づきたくなかったこの気持ちからずっと離れられないっていうのにさ。

「そうだ!三人でGBNでもやってみようよ!」

本心とは真逆の言葉を吐き出してしまったあたし。

本当はエリカと二人だけGBNをやりたいけど、そんなのいったらせっかくできたこの居場所でさえも無くなってしまうから。

必死に気持ちを押し殺すしかない。

「じーびーえぬ?」

どこまで知らないんだこの女、箱入りのお姫様かなんかなの?世間知らずも大概にしてくんないかな?

「ガンプラバトル・ネクサスオンライン、通称GBNっていうガンプラをスキャンしてオンラインで遊ぶゲームのことだよ?」

「まえにやったGP・デュエルとは違うの?」

「基本的には大差ないけど、オンラインゲームだからガンプラが傷つかないことがメリットかな?」

「それも楽しそうだね!こんど誘ってよ」

「い、いいけど……」

「やったぁ〜!」

……ほんとなんなのよこれ。

エリカははじめて逢ったときから目が死んでたし、今だってずっと同じ状態でさ?むしろそれより酷くなってるし、それにこの世界から裏切られたかのように無気力だったあの日から、ずっと側で見続けてきたあたしのことくらいちゃんと見てよ。

「そういえば私言ってなかったんだけど」

ん?ハルナがなにか言いたそうな顔してるけど……なに?

「突然どうしたのハルナ?」

エリカが気になったのか耳を傾けると。

「……この世界の人間じゃないんだよね」

「え〜っと、……どういう意味?」

「だから、この惑星で生まれたわけじゃないの」

「……んん?それってもしかすると──」

いや、あの……ちょっと待って!?

んじゃほんとにお姫様ってこと──?

冗談だよね?……マジなの?

「私、がむしゃらにどこでもいいから逃げたかったんだ、そうして辿りついたのがこの地球だったんだよ」

「ごめんちょっと情報が追いつかないんだけど……?何処からきたのハルナ?」

まじで何処から来たの?ここじゃないんでしょ?月とか?

「惑星〈ローレル〉ってとこ、えっとそうだね……前にみたプラネタリウムで冥王星?だっけ?その近くの周囲にある小惑星のひとつが私の本当に住んでたとこなんだよ」

「……ちょっといいハルナ?」

「なにエリカ?なんか聞きたいことあるの?」

「…………い、い、い、異世界転移系の主人公じゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「……っ?」

頭の上にはてなマーク何個も浮かべるような表情するな!それはこっちの気持ちだよ!なんだよそれ!

「まぁそんなわけだからよろしくね?二人とも」

「「ぇぇぇぇええええええええええ!?」」

***

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