お久しぶりです神宮寺Re⑦です。
ハーメルン更新開始に伴ってこちらの【試し読み】の更新が遅くなってしまいました……
ってなわけであれからのつづきです
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陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。
第二巻《ユメノトビラ》
『生まれた意味はいったいなんなんだろう──。』
あらすじ
義姉であるアカネが生徒会長になり、エリカは一度彼女との距離が縮まったものの束の間、より一層の寂しさが募るばかりだった。そんな中で模型部の活動に顧問の先生となるミノウ・セナが現れる。セナは模型部部員となったカグヤと対戦することに。ハルナとの交際が進むも上手くいかないカグヤ。そんな中GBNではAIダイバーによる脅威がじわじわと蝕みはじめていた。
これは星を追うものと星に打ちひしがれた者を紡ぐ物語──。
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前回→
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第二巻《ユメノトビラ》第十九章 -【ともに歩みたくて】-
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アカネとエリカと別れた私はGBNで待ち合わせをしていた。
遅れてやってくる一人の姿を見た私は手を振って声をかける。
「……おそいよ私の彼氏!」
「いろいろと迷惑をかけてすまなかった」
「それはいいけど、自分の気持ちくらい素直にならないと疲れちゃうよ?」
「……善処するよ」
って言ってる私だけど、人のことなんて言えたもんじゃないんだけど……
こんな生い立ちじゃなければ、彼とはまた違った出逢いが出来たのかな……
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもないから!それよりユメのこと迎えに行こっ!」
「待たせるのもよくないよな……」
「ほら!いくよ!パパ!」
「おれまだ結婚してねえんだけど……?」
「ゲーム内の話でしょ!ちゃんとやることやる!」
「はいはい……わかったってば」
辛気臭い空気感ではあるものの私は彼というよりは父親を連れてユメに会いに行くことにした。
◇◇◇
AIダイバーであるユメを育成していくプログラムに参加していた私たちはこれで今日の訪問で三回目になっていた。
広大なGBNから保護している幼きAIダイバーのいる施設にやってきた私とカグヤ。
そこで子供であるユメと共にGBN内にある家へと帰ることになっている。
「ずっと待ってたんだよパパ!ママ!」
「待たせてごめんね〜!寂しかったよね〜……!」
小柄な体重のユメを抱き抱えて私は施設の男性職員である「ミライ」と会話をすることに。
「ユメはどうしてました?」
「ここ最近来るのが遅いって何度もぐずってて、人肌が恋しいんだと思うのでちゃんと見てあげてください」
「……いつもすみません!ほら!カグヤも!」
「お世話になってます、ありがとうございます」
「いえいえ!これが仕事ですので!」
「それじゃ失礼しますね」
「くれぐれも極端な言動とかは控えてくださいね?影響を受けていつ歯止めが効かなくなるか開発している我々にもわからないので……」
「……そこまで考えなきゃダメなんですか?」
いくら育成ゲームみたいにやるとはいえ、気にしすぎるのもよくない気がしている私だけど……なにもできなくならないのかな?
「ご自身が子供の頃のことをよく思い出してください、それがわかれば危険なことは起きないはずなので」
「……そ、そうですか」
子供の頃と言われても……私そもそも母親のことしか知らないんだけど……父親なんてちゃんと居た記憶さえないのに。
「ここにいつまでも居るわけにはいかないから帰るぞハルナ」
「わ、わかった」
「レポートの提出を忘れずにお願いしますね〜!」
そうこうして私たちはGBN内に保有することになった古民家へと帰路についた。
◇◇◇
アトラとクーデリアたちの家。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、エピローグに登場。
小麦畑の真ん中にある家でアトラ・ミネコスタと三日月・オーガスの間に生まれることとなった暁・オーガスは養子縁組することで家族となりクーデリア・藍那・バーンスタインとともに暮らすこととなる。
「ようやく着いたな……」
「どこまで歩かせるんだかGBNの運営は……」
私たちのほかにも同じような家族が転々と暮らしており、日々助けあって生きていた。
家に入って疲れを癒そうとするカグヤ。
厳密にいえばこれは体験していくプログラムなので、ちゃんと休めるわけではないけど。
って!?なにも言わずに自分の部屋に行くのは違くないかな!?
「……ちょっとカグヤ!」
「なんだよ?」
「帰ったらユメと遊んでてって前から言ってるよね!?」
「いまはそんなこと考える暇ないんだよ、おれがなにしたかわかってるだろ?」
「それとこれは別問題!父親らしいことちゃんとしてよ!」
「勝手に押し付けんなよ……やりたくてやってる訳じゃないんだから」
「もおおおおぉぉぉ!なんなの!」
かくいう私も父親のことなんて知らないから余計に振る舞いがわからない中でやっているのに!
まだちゃんと恋人としても進みはじめたばっかりなのにこんなこと出来るわけないと思っても、はじめてしまったからにはやらなきゃいけないし責任もってよね!お互いに!
「パパママ!喧嘩しないで!仲良しなんでしょ……?」
上目遣いでメアが私たちを悲しそうな顔で見つめる。
「えぇ?……それはそう、だけど……これは違うの!パパがやることやってくれないからで!」
「いつも怒ってばかりのママは怖いよなぁ?ユメ」
「カグヤそんなこと思ってたの?」
「……ここでの話だよ、現実との区別くらいつけろよ」
「いまはユメのこれからのこと考えていかなきゃいけないんだよ!?私たちの子供なんだから!」
「それはわかってるが……そんなにキリキリしてたらなにも言いたくなくなるだろ?ユメのこと考えてないのはハルナだぞ」
「んなこと言ったって完璧な母親なんかじゃないんだから手探りでやってくしかないじゃん!」
「そこまでは求めてないよ、ただあんまり喜怒哀楽の感情を反復横跳びで振るとユメがパンクしちゃうだろ……だから──」
「だからなに!?」
「落ち着いて話し合おうな?」
「イライラさせてるのはカグヤじゃん!?」
「だからその態度をやめろって言ってんだよ、自覚を持てよ」
「ついさっきまであんたの行動でそんなこと言えるの?」
「……パパママ!お願いだから!これ以上喧嘩しないで!」
「なんなんだよさっきっからさぁ!」
もう以前のような関係には戻れないのかもしれないという烙印を押された気分に私はなっていた。
そこで私は意を決してカグヤとユメを外へと連れ出して遊んでもらうことにした。
「んじゃ夕食の時間までたっぷりパパに遊んでもらおうかなぁ?」
「……仕方ないなぁやるか!ユメ!」
「あそぶあそぶ〜!」
私の提案によって、家事が終わるまでの間に体力を使い切る作戦!これでならいけるよね!
そそくさと外に遊びに出るカグヤとユメを窓から見守りながら私はユメのメンタルレポートを家屋の中で入力していった。
***
惑星〈ローレル〉首都ラビアン郊外。
発展途上国であった〈ラビアン〉はいまだに機械文明が普及しておらず、都市部にのみ開発が集中しており日々人々は貧しい暮らしの中にある幸せを確かめながら生きていた。
「警報!?なんでこんな時間に!?」
鳴り止まないサイレンの中で、そこで暮らしていた夫婦の母親であるクヤヤと父親のウクモ、そして子供であるヘクスはベッドに横たわり病にふせっていたために高く鳴り響く音に怯えていた。
三人とも茶色のキツネ種の獣人であり、生まれて六歳になったばかりのヘクスのことをいつも頭の片隅に置いていた。
「どうした!?なにがあった!?」
「なんのおと〜?」
「……こら!部屋に戻ってなヘクス!」
「きになるぅ〜」
「ここは危険ですからシェルターに避難しましょうよ!」
「とはいってもまだ指示は出されてないだろ?」
「外に出て確認してみます!」
「ヘクスはここに居るんだぞ!父さんと母さんは様子を見てくるから!」
「いかないでよ〜こわいよ……!」
すぐさま家を飛び出たクヤヤとウクモは鍵を閉めて空を見上げていく。
「あれは何者なんです!?」
「見たことないぞ!敵なのか!?」
◇◇◇
(ここはいったい……?どこなんだ!?)
(地面……?重力がある?……なぜだ!?)
(なにが起こっているのか理解できないんだが!応答してくれ!GBN運営!)
巨人を操っている三人はその名も知れぬ大地を踏み出していることに感情が追いつかないでいた。
『応えてくれ!GBN運営!ここはサーバーのどこのディメンションなんだよ!』
フォースリーダーを務める〈紅蓮のブラスト〉ことカナデは状況を飲み込むので精一杯だ。
『……カナデ!下を見てください!』
『そうだよ!下だよ!下!』
残りのフォースメンバーであるヒグロとタイモが必死に訴えかける。
するとそこにあったのは──。
◇◇◇
「いますぐここから出ていけ!魔神どもが!」
「消えろ!ここはお前たちの居ていい場所じゃねえんだ!」
「そうだ!そうだ!」
獣人たちは手元の石ころをフォース〈SLEEVE ENGEGE〉のガンプラたちに向かって悪霊を退散させるように身を奮い出して何十人もの人々が投げあっていた。
『……違う!我々は敵じゃない!』
『……絶対に帰るんです!GBNに!』
『こんなとこに居る場合じゃないんだよ!」
焦りながらもカナデたちはこの星から地球のあるGBNへと帰還するために戦う決意をしなければならなかった。
***
二回目の〈GBN-AIダイバー感情育成プログラム〉を終えたわたしとカグヤはGBNをログアウトして夜の繁華街でデートをしていた。
「どこいこっかカグヤ?」
「さっきまでのキリキリしたメンタルどこいったんだよ!?」
「だからあれはゲームの中での話であってわたしはいつもこんなだよ?そんなに変?」
「……追いつけないんだがおれ」
「ところで夕食なに食べよっか、ここらへんで良い店とか知らないの?」
……時間はすでに夜の二一時を過ぎており、帰路に着く仕事終わりのスーツを着た人たちがわたしたちとすれ違っていた。
「……っていうか帰る時間大丈夫なのかハルナ?いつもどこで過ごしてるんだよ?」
「え〜と、それはね……その」
「まさか野宿とかしてるとか言わないよな?ちゃんと帰る家があるんだよな?」
「そ、そうだよ!気にしなくてもいいから!早くご飯食べよ!」
目の前の視界に入った中華料理店へと向かうことにしたわたしたちはそこで食べることにした。
◇◇◇
中華料理店〈八卦〉。
東京のおおよそ中心部に位置するこの中華料理店は本格的な四川料理をメインとしており、こだわった香辛料が鼻腔をくすぐり、鮮烈な辛さを体感することが出来るため本場の味を愛する嗜好者にこよなく通い詰められている。
「んじゃおれは麻婆豆腐とライスのセットで」
「わたしは酸辣湯麺でお願いします」
「ごちゅうもんはそれだけでイイノ?あんたたち学生でしョウ?」
半ばカタコトな日本語を喋る店員さんに不慣れではあるものの、「もっと食べたら?」と催促されているみたい……
そこまでお腹が空いているわけでもないし、食べすぎると吐いちゃうよ……
「じゃあおれはご飯大盛りで、ハルナは?」
「わたしはそのままでいいよ」
「じゃそれでお願いします店員さん」
「わかったヨ〜ちゃんと食べて体力つけナヨ〜!」
注文を受けた店員さんは厨房へと向かって小走りで歩いていった。
それからおよそ一〇分後、頼んでいた料理が到着する。
「こちら麻婆豆腐とライスの大盛りネ〜、あとこっちは酸辣湯麺ネ〜!ゆっくりしてってね〜!」
熱々で届けられ湯気が立ち込め、思わず目の前に白く霧のようなものが立ち込める。
「……こりゃすげえなぁ、めっちゃ辛そうじゃん」
カグヤが頼んだ麻婆豆腐は常連さん向けの辛さレベル10のものらしいけど……食べきれるの?
「食べられるのそれ?」
「へーきへーき!辛くないと麻婆豆腐じゃないだろ!」
「……そ、そうなんだ」
わたしそもそも辛いものとかまず無理なんだけど。
っていうか食べられるものじゃなくない?
◇◇◇
一時間ほどかけてそれらを平らげたわたしたちは、これからどうするか店を出て話し合っていた。
「……うーん、やっぱりもっと食べればよかったか?」
「ってかお金いつも払ってくれるけど、大丈夫なの?」
「空いてる時間は工房手伝ってるし、そのときのバイト代からやってるから気にすんなよ?好きでやってることだから」
「それはありがたいけど、あとちゃんと親父さんと話したら?これからのこと」
「わかったよ、そうする」
「ってあれ?カグヤさんじゃないですか?」
「生徒会長!ひさしぶりですね!」
向かいで二人で話していたカグヤの側近であったカオリさんとユイさんが駆け寄ってくる。
カオリさんとユイさんは双方ともに茶髪で、カオリさんが銀色の眼をユイさんはグレーの眼の色をしていた。
「……ずっと会いたかったんですよ!」
「これからカラオケとか行きませんか?」
「提案は嬉しいんだけど……すまないね、彼女がいるから」
(わたしのカグヤにベタベタ触んなって言ってんだよ、湧いてでてくる小蝿どもがよ)
「……ごめんなさい〜!いまはわたしが優先なんで〜!」
(こいつらなんかいざとなったらわたしのやつで踏み潰してあげるんだから)
「それは残念〜また会いましょうカグヤさん!」
「……先約つきは面倒ですけど、たまには私達とも遊んでくださいね?」
「あ、あぁもちろんだよカオリくんユイくん」
わたしがあなたの彼女なの忘れてないよね?
っていうかいちいち邪魔してくる女ども嫌いなんだけどわたし。
「……あっほっぺになんかついてるよカグヤ?」
「拭きとるのわすれ──」
自分のものだと証明させるためにわたしは彼の唇を奪いとる。
ついさっき彼が食べた麻婆豆腐の辛い感触が下に残りつつも口の中を軽く蹂躙するように撫でまわす。
「……ちょっとおまえ!いきなりなにすんだよ!?」
「なにって、恋人同士がやるキスじゃん?問題ないでしょ?」
「ディープのほうだったよな?」
「別に一緒でしょ」
「キマリすぎてんだろハルナ!」
「それで感想は?」
「なにもわかんなかった」
「……それはさすがにないでしょ」
「んなこと言ったって嬲るようにやるのは話が違うだろうがよ!女豹かよ!」
「じゃあいいよ、もう一回してあげるから──」
「ちょっと待てだから!おれの話をき」
少し黙っててよ、これで晴れて恋人になれたんだからさ?味わってればいいんだよわたしのことを。
「……どう?これでわかった?」
「──ハルナ!おれは!おれはだな!」
「っ!?」
急に両手がわたしの肩を掴んで目を見つめ合うわたしたち。
「おれと結婚してくれないか!」
「……えっとごめん、情に流されてもしたの?」
「さきにやってきたのはハルナのほうだろ!責任取らせろよ!」
「もうしょうがないなぁ……よろしくお願いします」
「しゃあああああい!」
「そこまで喜ぶことなの?」
「一世一代の漢の勝負なんだから当たり前だろ!?馬鹿にすんなよ!」
「……それじゃこれからがんばってね?わたしの彼氏さん?」
「言われなくても──!」
熱い恋人のひとときを過ごしあったわたしたちは夜道で手を繋いでホテルへと歩き出していった。
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ビルドダイバーズ(ReRISE)二次小説
「陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。」
こちらのつぶやきによる【試し読み】およびpixiv先行にて更新中です〜
さきにpixiv先行版をお読みになられている方への連絡です、第三巻《ユメヲカケル》の更新開始時期については最短で年末ギリギリを予定しています。
以後についてはこちらで報告する予定ではありますが現状ではこの先の【試し読み】の更新は未定です。
神宮寺Re⑦でした。