【試し読み】陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。第一巻《ワタシノユメ》第十一章 -【人の話を聞けって言ったよね?】-【期間限定公開】

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どこからともなくひょっこり出てくる神宮寺Re⑦です。

さてさて、あれからの続きです

***

「陰キャアイドルはGBN〈世界〉を救いたい。」

あらすじ

自分は救世主になれない──そう思っていたのに。

第一次有志連合戦の裏で行われた不定期開催イベント〈ゲリラレイドボスミッション〉、その中でエリカは義姉であるアカネが巻き込まれたことで復讐を誓った。その巻き込んだそのダイバーを見つけるためにエリカは根暗で陰キャの性格とは真反対の明るくて眩しいアイドル活動をはじめることに。いまだにアカネとの距離がありながらも謎の転校生ハルナが現れ、そしてGPD全日本大会決勝で負けたかつての宿敵〈蒼穹のプリンス〉にも再会を果たす。互いの想いが交錯する世界でエリカは自分の本当の夢を見つける。

これは自分と世界とその裏側に向かい合う物語──。

***

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***

第一巻《ワタシノユメ》第十一章 -【人の話を聞けって言ったよね?】-

***

フォース〈MARS RAY〉とのバトルを終えたわたしたちは、GBNのメインルームの近くにあるカフェで休憩していた。

わたしはカフェラテを、アカネはオレンジジュース、ハルナは炭酸飲料を頼んでいる。

アカネが右手から勢いよくわたしの頬を叩く。

平手打ちをされたわたし。

紅く腫れた頬を抑えながらわたしはアカネと目を合わせる。

「なんであたしの話を聞こうとしなかったの?エリカ」

アカネが怒るようにわたしに話しかけてくる。

そうは言ったっていいじゃん別に。

……ってか父さんにもぶたれたことないんだけど!?

「勝ったんだからいいでしょうよ、なに?なんか文句あるの?」

「ブレイクデカールをあんたが持ってるなんていままで一度も教えてくれてなかったじゃん!?なんでそこまでして黙ってたのかって聞いてんの」

「…………話す必要ないよ、そんなの」

話す必要性ないでしょ?なに?わたしばっか責められる理由あんの?ブレイクデカールのこと?復讐するために決まってんでしょ、それ以外に理由が必要なの?ねぇ?

「まあまぁ二人とも初めてのフォースバトル終えたことだしさ?ここはお互いに落ち着こ?ね?」

ハルナがわたしとアカネを治めるように、割って入る。

「ハルナはちょっと静かにしてて、これはあたしとエリカの話をしてんの」

「……そうは言ったってさぁ、みんな見てるよ?」

わたしたちの周りをみると、何人ものダイバーが気まずそうにこちらを見ていた。

(……あぁもうめんどくさいなぁ)

(どいつもこいつも人のことなんだと思ってんだよ、イライラするんだよ)

「ところでぶれいくでかーるってなんのこと?」

ハルナが謎に思ったのかブレイクデカールのことを聞き出してきた。

ブレイクデカール?あぁ……わたしの使ったアレのこと?

そう言うとアカネが──。

「GBNをはじめたばかりのハルナにはわかんないだろうけど、ある日から突然使われ出したツールのことでね?使うとガンプラが強くなる感じなんだけど負荷がかかって本来推奨されていないやつなんだよ?ってか違法に近い合法プレイだし……ログにも残んないやつだから尚更タチが悪いやつで──」

そう、わたしの今回使ったブレイクデカールはとある人物から貰ったものだ。

それにもともとこれは、復讐する相手のダイバーのために今までとっておいたものだし。

あのとき使おうなんて思ってなかっただけだよ?ほんとだよ?

「じゃあなんでエリカは今回使ったの?」

……それはその、そのだってさぁ?

「……あそこでハルナがやられてなければわたしはブレイクデカール使うことなんてなかったんだよ」

「私のせいなの……?」

「ち、違うけど……」

違うわけじゃないけど……あのときはああするしかなかったんだって……ねぇ……聞いてよ……なんでそんなにわたしのことばっかり責められんの?……おかしくない?そんなに悪いことしたのかなわたし?

「私のために使ったんだったらいいかもしれないけど、あんな気味悪いもの良くないよ……すごく気持ち悪いよ」

「気持ち悪い……?」

わたしがハルナにそう返事をする。

アレってそんなによくないものなの?みんなそう思ってるの?……わたしはなにも感じないけど?

「よくないよブレイクデカールは……あんなの使わなくてもエリカはSランクなんでしょ?だったらなんで」

「……ハルナには関係ないよ」

そう、関係ない。

関係あるわけないでしょ?わたしのことなんて知りもしないくせに。自分のこと聖人君子かなんかだと思ってんの?お気楽でいいことだね?まるで温室育ちのお嬢様みたいな口調だね、反吐が出んだよ!そういうやつは!

「そんなことばっかりやってたらあんた後悔するよ?エリカ」

あぁもう!うるさい!うるさいって言ってんだよ!わたしのどこが悪いのか言ってみろよ!

(ねぇ?いつになったらこの空間から解放させてくれるの?)

(お腹空いてるんだけど、もう夜の七時だよ?)

(わたしのザク!ザクが!家で完成を待っているっていうのに!)

(……あっそういやイモータルジャスティス買ったんだった、早く次のやつ考えないと)

(ねむい〜ねむいよ〜はやく家のベッドで寝たいよ〜)

(て、て、テストが!テストの勉強してないよ!?赤点だけは避けなくちゃいけないんだよ!こんなことしてる場合じゃあないんだよ!)

「もういいじゃん、終わったことだし……ってか家に帰ろうよ?」

「ここに居ても迷惑かけるだけだししょうがない帰ろっか……」

「そ、そう……だよね」

気まずい淀んだ空気感の中、わたしたちはGBNからログアウトした。

***

嫌悪感をお互いに感じながら自宅へと帰ってきたわたしとアカネ。

わたしたちの住んでいるマンションは、都内から南に離れた郊外立地にある場所だ。

マンション〈ARK ANGEL〉。

東京の中心地からおおよそ電車で二〇分ほど離れた立地にあるこのマンションは、多くのサラリーマンや一人暮らしをはじめた学生など多くの家庭が日常を過ごしている施設である。

わたしたちの部屋があるのはこのマンションの六階にあるところ。

「……もう疲れたから寝ていい〜?アカネ」

「あっ!ちょっと!エリカ!そこで寝るな!おい!寝ようとすんな!風邪ひいちゃうじゃん!」

あ〜なんだか冷たくて気持ちいいなぁ……なんだかツルツルするんだけど……ここってベッドだよね?……だよね〜?

「床のフローリングが傷つくでしょうがエリカ!手間のかかる妹すぎ!」

両手を引かれて自室へと連れ込まれるわたし。

……い、痛いって!ちょっと!あぁぁ服が!今日着てきた服が破けるって!ビリビリって言ってるって!

「……ここどこ?」

「あんたの部屋だってわかるでしょ!?いつまでそうしてんの!」

「……そ、そうだっけ?ごめんマジでむり……体力がもうない……」

ってかそもそもゲームセンター〈STAR LIGHT〉まで遠いんだって!なんであんなとこをGBNのホームグラウンドにしちゃったの!……ってわたしが見つけた場所だからか。

「とりあえずお風呂沸かすからそこで寝ててエリカ」

「えぇ〜このまま寝ちゃいたいんだけど〜だめ〜?」

「明日学校だよ!?そのままで良いんなら是非ドウゾ?さぞモテるんでしょうね〜羨ましいなぁ〜」

そんな皮肉たっぷり!トッポのチョコたっぷりみたく言わないでよぉ〜!い、いやだぁぁぁぁ!それだけは嫌だぁぁぁ!髪ボサボサで登校したらマジもんの陰キャ度が上がっちゃうよぉ〜!せっかく金髪にした意味がなくなっちゃうよぉ!……ってあれ?この髪色って別にたいした思い入れないな……色変えようかな?何色にしよっかな?

「……わかったからそんな変な目で見ないでよアカネ!ちょっと!」

「それではごゆっくり〜」

「アカネぇぇぇぇぇ〜!」

***

あれからアカネに促され、風呂に入り冷凍食品で夕食を済ませたわたし。

ちゃんと食べなよって?冷凍食品って便利なんだから仕方ないじゃん!?今日?今日はナポリタンとコーンスープたべた。

変わらず自室に篭り、塗装を済ませていたポケ戦のザクを組み上げようとしているわたし。

「……いい加減にパーツ乾燥できたよね〜?」

ハルナが転校してきた日から塗装を進めていた、わたしの『ポケットの中での戦争』に登場するザクⅡFZもといザクⅡ改をピンク色に染め上げていたガンプラのパーツを見つめる。

「まぁいいや!今日組み上げちゃえ!」

塗装したパーツをネコの手から外していくわたし。

ってこれ……はずすだけでも労力使うんだよね……

と、ガンプラを組み上げようとしたとき部屋の扉が開いてアカネが入ってくる。

「なにしてんのエリカ?」

「えぇ?ああこれ?ザクを組もうと思っていまパーツ集めてるところで……」

「ちょっといいエリカ?」

「なに?なんか用?」

「デザインナイフの矛先のキャップどっかいったの?刃が剥き出しになってるけど……」

作業机の上にあったデザインナイフは、ザクを塗装する前の日に仮組した時に使ったツールのひとつだった。

あれ……?キャップ付けといたはずだけどなんで外れてんの?

「まあまぁ大丈夫でしょ!もう夜中の零時なんだしもう寝なよアカネ!ね!」

「……それはエリカもでしょ?っていうかちゃんとキャップ付けておかないと怪我するよ?」

「そんなことないって!注意してやるから大丈夫だって!」

……ってあれ?なんか頭がボーっとしてきたような。

いやいやいや!いまはザクを完成させることが最優先なんだから徹夜しないといけないんだよ!

「ならいいけど……ちゃんと使い終わったらキャップ付けなきゃダメだからね?」

「わかってる!わかってるってば!はやく寝なよアカネ!」

「ほんとにわかって言ってる?」

「ここ最近からわたしに当たり強くないアカネ?」

「そうでもないでしょ」

「……そう?」

ほんとにそう?……ほんとに?

「じゃ、おやすみまた明日ねエリカ」

「おやすみアカネ〜」

アカネが心配そうにわたしを見つめながら部屋の扉を開けて退出していった。

(ああもう!時間がないっていうのに!)

(目の前のパーツたちが早く組み上げろって言ってるのに!)

(あのわたし眠たいんだけど、まだやるの?はやく寝よ?)

(ねぇ?ちょっと聞いてる?早く寝よ?)

(まだ見てないアニメ消化してないよぉ!?もう一〇本近く溜まってるんだよぉ!)

(明日テストじゃん!勉強してる時間どこ!?どこなの!?わたしの学校生活どうなるの!?)

(……あ〜なんかお腹がまた空いてきちゃったなぁ……冷蔵庫になんかあったっけ)

「……あとすこしで完成なんだ……あとすこしで……」

……と、不意に手を滑らせたわたし。

刃が剥き出しになったデザインナイフがわたしの手の甲に刺さった。

「ぎゃああああああああ!」

痛いって!ちょっと!なんでこんなときに怪我しなきゃなんないの!……あぁもう!ほんとなんなの!

わたしの叫び声を聞いたのかまたも部屋の扉が開いてアカネが入ってくる。

「もう夜中なんだから静かにしてよ……って!?あんた怪我してんじゃん!?キャップ付けとけって言ったじゃん!?バカじゃないの!?」

「ううぅ……たすけてアカネもん……タイム風呂敷出してぇ〜」

「そんなものはあたしは持ってません、自分でなんとかしてください」

「……ぅぇええええ!」

応急処置で大きなマスキングテープを手の甲に当てて止血するわたし。

それを見たアカネが部屋の棚から救急箱を持ってきていた。

「だから言ったのに……」

「うぇぇぇ……」

手の痛みに耐えながらわたしは涙目になりつつアカネから処置を受けていた。

今度はちゃんとキャップつけます……!つけるから!こんなことになるなんて思ってなかったんだって!

「ちゃんとあたしの話は聞こうねエリカ?」

「……は、はい」

傷跡に消毒と絆創膏を貼ってなんとかおさまったわたし。

……刃物の扱いには気をつけなきゃね。

あははははは……ぁははははは……

「……んじゃ今度こそおやすみアカネ」

「もう起こさないでよねエリカ?」

「……わ、わかったってぇ」

(夜中の二時だよ!?学校行く時間を考えたら寝る時間ないも同然だよ!?)

(家出るの朝七時だよ!?寝れないじゃんもうこれ!)

(わたし、おなかがすきました)

(眠いよぉ……眠たくて仕方ないよぉ……テストなんてやれそうにないよぉ……)

***

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