【試し読み】陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。第二巻《ユメノトビラ》第二章 -【何十光年離れていてもあなたを】-【期間限定公開】

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お久しぶりです神宮寺Re⑦です。なにも変わることなくビルドダイバーズ二次小説を投げているアカウントです〜

原稿優先で作業しているためこちらで更新するのが遅れてしまいました。

ってなわけであれからのつづきです。

***

陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。

第二巻《ユメノトビラ》

生まれた意味はいったいなんなんだろう──。

あらすじ

義姉であるアカネが生徒会長になり、エリカは一度彼女との距離が縮まったものの束の間、より一層の寂しさが募るばかりだった。そんな中で模型部の活動に顧問の先生となるミノウ・セナが現れる。セナは模型部部員となったカグヤと対戦することに。ハルナとの交際が進むも上手くいかないカグヤ。そんな中GBNではAIダイバーによる脅威がじわじわと蝕みはじめていた。

これは星を追うものと星に打ちひしがれた者を紡ぐ物語──。

***

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***

第二巻《ユメノトビラ》第二章 -【何十光年離れていてもあなたを】-

***

──八年前。

北海道に生まれ育ったアタシは、なに不自由なく生活していた。

母親がガンプラを作り誌面に掲載するライターだったこともあり、家の中はプラモデルと塗料の匂いで溢れていた。

そんな中で生きてきたアタシがガンプラに興味を持ちはじめるのは必然的だった。

「……ガンプラやりたいのセナ?」

そのとき高校生だったアタシはなにか好きになれるものを探していた。

目の前にただプラモデルがあったこと、それによってアタシの人生は変わりはじめることなる。

「女子なのにやっていいのかな?」

「べつに趣味のことに男も女も関係ないのよセナ」

「そ、そうなんだ……?」

母親の美濃 由衣夏がそうアタシに背中を押してきた。

父親は出張先で浮気したことがバレたことによって、離婚している。

そのため、ひとり親であるユイカにとって育てられてきた。

……ガンプラの作り方は母さんに聞けばいいし、やってみようかな?

そう、一歩踏み出した瞬間からなにかが変わるのをアタシは高揚感でいっぱいになった。

◇◇◇

その日の夜。

母親が家事を済ますと家の二階にあるいつもの仕事部屋へと連れられる。

そこにはこれまでに誌面の掲載に向けて製作したであろう作品がショーケースに飾られていた。

作品を見ていくなかでひときわ際立つガンプラをアタシは見つける。

「……これってなに?」

「それ?えっとね、母さんが憧れの人に近づきたくて作ったガンプラよ」

ユイカの製作したガンプラはMGガンダムデュナメスだ。

カラーリングはロールアウトカラーである白色とグレーに塗装されていた。

GN-002 ガンダムデュナメス。

機動戦士ガンダム00 1stシーズンに登場。

ガンダムマイスターであるロックオン・ストラトスによって武力介入に使用された濃緑色に彩られた狙撃型のガンダムである。

戦いの中でロックオンはテロによって家族を失い、その復讐のためにソレスタルビーイングに参加。

戦いの最終決戦で復讐の仇のガンダムスローネツヴァイを操るアリー・アル・サーショスと邂逅する。

激戦ののちにサーシェスを討ったロックオンは地球に指先をかざして「……なぁおまえら、こんな世界で満足か?オレは嫌だね」と遺言を残して宇宙に散った。

「どんな人だったの?」

母さんが憧れた人のことをアタシは気になったので聞いてみることにした。

「その人は男の人でね〜、なにかと喧嘩ぱやくて不器用な人だったんだけど私の初恋だったね……娘の前で言うのもなんだけど」

「それでそれで?」

恋バナと聞いてアタシは居ても立っても居られず、詳しく知りたかった。

「もちろん初恋なんだから上手くいかないと思ったよ?」

初恋は実らないってよく聞いたことはある。

けど、そんなのはあくまで迷信みたいなものだと思ってた。

「……たよ?どういうこと?」

「なんか告白もしないうちに付き合うことになっちゃって」

「えぇ〜!なにそれ!奇跡みたい!」

まるで神様からのギフトのように初恋が実ったことをアタシはなんか嬉しくなった。

「……なんだけど、それをきっかけに良くないことが起こってね」

「あぁ〜なんとなぁ〜く、わかるようなわからないような……」

母親の声のトーンが下がり、神妙な面持ちで話しだした。

「その人のことを先に好きだったクラスメイトがいて、私に敵意を向けてきたわけね……まぁよくあることね」

「……そうはなるよね」

恋愛のいざこざって感じがする。

で、そのあとは?

「傷害事件にまで発展しちゃったんだけど……そのあと警察が間に入ってくれて解決はしたの」

なんか急に重い話になってきちゃったけど……

「怪我はしたけど、お互いに謝ってなんとか事は収まったって感じ」

「よかったねちゃんと謝罪してくれて」

「そりゃ当たり前でしょう?相手を傷つけたのに謝りもしないなんて人として最低の行為よ?謝ろうとしないそんなやつとはお友達になるべきじゃないわ」

ところで、その初恋のひとって誰なの母さん?

「んで初恋の人とはどうなったの?」

「別れた父さんよ」

「……ちょっとまって、だって浮気されたから別れたって言ってたよね?」

「あ〜小さい頃はあなたにそう言ってたね」

「別の理由があるってこと?」

「あの人ね〜嘘が下手でね〜すぐ顔に出ちゃうくせに、私のことを悪者にしたくないのか浮気したから別れようなんて言い出すもんだから……なんで?って聞いたの」

「で、どうだったの?」

「夢ができたから一緒にいるわけにはいかない──だって」

夢……?父さんが?

寡黙でまともにアタシと話そうとしなかったのに?

「トオルさんね、プラモデルの塗料開発に関わりたいって言ってたかな?やりたいことが見つかったからって」

「……それでいまどこにいるの?」

「たしか静岡県だった気がするかな」

「じゃあなんで会いにいかないの?本当に浮気されたワケじゃないんでしょ?」

「会ってどうしたらいいかわかんないのよ、なんで私を置いていっちゃったのかそれだけ聞きそびれて」

「追いかければよかったんじゃない?」

「そうは言うけどねセナ?あなたがまだ小学生になる前の話なのよ?行きたいのは当然だけどいろいろと大変だったでしょう?」

ひとり親ってこともあって家事と育児と仕事の掛け持ちで大変だってことはなんとなく感じではいたけど……

「それはそうだけどさ?初恋の人で結婚までしたのに会いたくはないの?」

「そりゃ会いたいに決まってるじゃない、初めて好きになった人なんだから……けどいずれまた逢えるって信じてる」

「根拠も何もないじゃん」

「……そうだけど想い続けていれば相手に伝わることだってあるじゃない?だから私の恋はこれで最初で最後にしたかったの」

「父さんのこと大好きすぎじゃない?」

「恥ずかしいからやめてよぉ〜思い出しただけでつい気が緩んじゃうんだから〜」

母さんは顔を紅く染めて手でそれを隠しながら返事をした。

その姿はまるで乙女のように可愛らしさでいっぱいだった。

***

そして──。

GP・デュエル全日本大会決勝戦。

初めて東京にやってきたアタシは、街中の喧騒になかなか慣れずにいたものの母親に教えられながら製作したガンダムヴァーチェとともに、バトル会場のゲームセンター〈STAR LIGHT〉にいた。

彼女と出逢ったのは、すぐのことだった。

「……美濃 瀬那です!よ、よろしくお願いします!」

「あなたが対戦相手のセナさん?よろしくお願いね」

夜刀神 鞠愛。

アタシと決勝戦で対戦することになった同い年の高校生だ。

アタシの白髪ショートとは違い、紫がかった黒髪のロングの髪型をしていた。

◇◇◇

対戦後、アタシは負けてしまったけれど。

彼女はすぐに駆け寄ってきた。

どうやら製作したガンプラのことを聞きたいらしい。

「1/144スケールで装甲の脱着機能までやるなんて初めて見たよ!すごいねあなた!」

「……そ、そう、ですかね?」

「なかなかできることじゃないよ?誰かにガンプラ教わったの?」

「母親がプラモデルを作るライターしてて……それで」

「サラブレッドってのはこのことを言うんだね!」

「そ、そう……ですね」

顔を近づけてきたため距離感が掴めないでいるアタシをまじまじと見つめられるとさすがに挙動不審になってしまう。

明らかにパリピのノリで話しかけてくるもんだから、ちょっとだけ苦手意識があった。

「ぜひわたしと友達になってくれない?」

「い、いいですけど……」

お互いのスマホの連絡先を交換したアタシたち。

そこでアタシたちは近くのカフェで休憩することになった。

◇◇◇

カフェ〈BEYOND THE TIME〉。

都内から少し西に外れた場所にあるこのカフェは、近くに空港があるために観光に来た多くの外国人客と地元に住む人たちの憩いの場所である。

アタシたちはそこで軽食としてサンドウィッチを頼み、会話を弾ませていた。

「……ところでマリアさんは九州に住んでる?わけだけどこれからどうするの?」

「一度帰るけど世界大会のことがあるから家族に話さないといけないかなぁって〜」

「ほんとに出るつもりなの?」

「何度あるかわからないチャンスなんだよ?やるしかないじゃない」

彼女の心意気は真剣そのものだった。

世界にいけばもっと強いデューラーに会えるというのは魅力的な話なわけだし。

そうなるのも当然ではある。

「……ガンプラはそれだけで大丈夫なの?」

「これ?まだ別のやつ作ってあるからもし壊れても、バトルには参戦できるよ」

「もう別なの作ってあるの……?」

「たとえばこれとか──」

マリアが鞄から対戦したときとは違うガンプラをケースの中から持ち出す。

「……あれ?またデスティニーガンダム?」

「何度だって作るよわたしは、だって大好きなんだから」

茶褐色に彩れたそのガンプラに目を奪われるアタシ。

同じガンプラを作るなんて考えてもいなかった。

「作品名は?」

「デスティニーガンダム・フォディーナ、ラテン語で鉱山だね」

「へ、へぇ……」

思わず見惚れてじっとガンプラをガン見してしまうアタシは、ついさっきの彼女の行動と同じことをしていることに気づいた。

「……あぁ!ごめん!つい!」

「気にしなくてもいいよ、なかなかこんな地味な色に塗装する人いないしね」

「宇宙世紀ならよく見るけどアナザーもといオルタナティブ作品でこの色をやる人はなかなか……」

デザートカラーに彩られたガンプラにアタシはそんなことを小声で零す。

だけど、その作品を見てアタシはいつのまにか一目惚れしていたのも事実だった。

彼女の作品に惹かれていたのも対戦したときから感じてた。

たぶん、アタシにとっての初恋ってこれのことなんだと思う。

「……アタシ、あなたのことが好きになったのかもしれない」

「えぇ〜?いきなり告白〜?このあとホテルにでも連れ込まれちゃうのかなぁ〜?純潔が奪われちゃう〜」

「からかわないでよ、本気なんだから」

……さすがに自分でも何言ってるのって感じだけど、この気持ちは誰にも渡したくない。

そのあと、用事があるといって彼女はアタシと別れていった。

返事すらまともに言わずに。

ただ、ずっと想い続けていいのかなって不安になっていた。

一年後アタシはGP・デュエル世界大会に出場できたもののマリアとはあの日以降、連絡さえも繋がることもなくあれから一度も逢えることは叶わなかった。

***

そして今──。

アタシは高校の先生をやっている。

なにかの巡り合わせか彼女の通っていたこの都立星羅高等学校に赴任することになったのは運命と言っていいものなのかと疑った。

でも、ここで彼女になにが起きていたのかはなにも知らないし知る由もない。

模型部の部室で彼女の製作したガンプラを見たときは驚いた。

彼女の写真を見たとき、その笑顔の奥になにを考えていたのかをアタシはずっと探し続けている。

(あなたはいま、どこでなにをしてるの……?)

部室の窓を開けて空を見上げるアタシはそんなことを想い続けながら、学校生活を送っていた。

(アタシの気持ちって届いてたのかな──)

***

陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。第二巻《ユメノトビラ》第十四章まで2025/8/12現在、更新しています〜はやめに続きが読みたい方はそちらのほうまで〜

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