つぶやき
- 作品・8515
- フォロー・10
【試し読み】陰キャアイドルはGBN〈惑星〉を救いたい。第一巻《ワタシノユメ》第十章 -【現実と虚構の狭間で】-
どこからともなくおはこんばんにちわ神宮寺Re⑦です。とにも変わることなく気楽にビルドダイバーズRe RISE 二次小説を投げている人です。
さて、あれからの続きです。
***
「陰キャアイドルはGBN〈世界〉を救いたい。」
あらすじ
自分は救世主になれない──そう思っていたのに。
第一次有志連合戦の裏で行われた不定期開催イベント〈ゲリラレイドボスミッション〉、その中でエリカは義姉であるアカネが巻き込まれたことで復讐を誓った。その巻き込んだそのダイバーを見つけるためにエリカは根暗で陰キャの性格とは真反対の明るくて眩しいアイドル活動をはじめることに。いまだにアカネとの距離がありながらも謎の転校生ハルナが現れ、そしてGPD全日本大会決勝で負けたかつての宿敵〈蒼穹のプリンス〉にも再会を果たす。互いの想いが交錯する世界でエリカは自分の本当の夢を見つける。
これは自分と世界とその裏側に向かい合う物語──。
***
前回→
***
第一巻《ワタシノユメ》第十章 -【現実と虚構の狭間で】-
***
──十年前。
海沿いの東北地方に住んでいたわたしは、父親である拓人と母親である美沙希とともに仲睦まじく過ごしていた。
二階建ての一軒家に住み、明るい太陽が反射してキラキラしている海に見惚れながらわたしは退屈していた。
「……なんか面白いことないかなぁ」
そんなことを思っても日常が変わることなんてなくて、そんなのはわかっててもどこか違和感を感じていた。
◇◇◇
夕方になり、夕食の時間を迎える。
階段からタタタタと勢いよく駆け降りてリビングのテーブルの椅子に腰掛ける。
「今日は誕生日おめでとう!エリカ!」
「おめでとうエリカ〜!」
六月二七日。
この日はわたしの誕生日だったため、大きなホールのショートケーキとドリンク、そしてオードブルが並べられていた。
「……あ、ありがとう父さん母さん!」
ケーキに付けられた六本のロウソクについた火をわたしは一気に息を吹いていく。
テレビ画面に映るニュース映像を見つめるわたしたち。
『……速報です!速報が入りました!ただいま観測所によりますと──』
慌ただしくアナウンサーが渡された紙をまとめ上げ、原稿を読み上げていった。
『大気圏外から──未確認の飛行物体が地球に向かっているとの……情報が入りました。なお、原因等の調査についてはNASA、および首相官邸との協議が後ほど行われるとこちらのメディア関係に送られている模様です。これから政府による記者会見が開始するとの連絡が入っています』
「おうおぅ……なんだ?なんだ?宇宙で事故でもあったのか?」
わたしの父親のタクトが、ニュース速報を聞いておどおどしはじめていた。
「なんなのかしらね?こんな何もない日に限って」
食べはじめていたミサキが、箸を止めテレビに釘付けになる。
そこでわたしは本当の違和感に気づく。
ここに居たらダメだってことに。
こんなところに居たら死んじゃうってそう思った。
だから、はやくここから逃げ出したかった。
こんなことしてる場合じゃないよ!逃げようよ──!
わたしの脳内に電撃が走るように、直感がそうさせる。
「…………はやくっ!はやく逃げようよ!ねぇ!」
「どうしたのよ急に?なにかあったの?」
いま起こってるんだよ母さん!ねぇ!わたしの話を聞いてよ!聞いてよ!聞いてってば!
「はやくここから逃げないとダメだよ!みんな死んじゃうよ!」
「……大丈夫かエリカ?悪夢にでも、うなされていたいたのか?」
違うよ!わたしなにも悪夢なんて見てないよ!ねぇ!はやく!はやくここから逃げようよ!
「ほら、落ち着きなさいよエリカ……あなたの誕生日でしょ」
変わらず冷静にわたしをおさめようとするミサキ。
なんで……!なんでわかってくれないんだよ!
ほんとに死んじゃうよ!
意を決したわたしは靴を履いて、飛び出すように外へ出た。
***
ただ、がむしゃらに。
ただ、足を止めずに。
ここから、飛び出したかった。
ここから逃げたかった。
「……なに?あれ?」
紅く染め上がる一筋の光に、一層の恐怖感をひしひしと感じるわたし。
それは合計で七つもの光が空を眩く照らしだす。
「…………こんなの!こんなの普通じゃない!おかしいよ!こんなの!」
転んで足を挫いても、わたしは脚を止めたくなかった。
止めるべきじゃなかった。
ここで振り向いてしまったらいけないと、そう心が叫んでいる。
もうどのくらい走っただろうか、そんなことでさえ気にも止めないわたし。
高台の展望台にやってきたわたしは街を見渡す。
「……どうしてみんな!逃げようとしないの!頭おかしいんじゃないの!」
息が切れそうになりながら、360°街中全体をを見通していくわたし。
建物はいつもの日常の風景と変わらず、家族団欒が営んでいるであろう電気の光が何千と光っている。
「……ここにいれば助かるよね?」
不安感がずっと心を蝕んでいく。
ここに居ても助からないかもしれない。
ここでわたしの命は尽きてしまうかもしれない。
まだやりたいことも夢もなにも持っていないのに。
そんなのは嫌だ。
そんなのは認めたくない。
ただ……生きることを諦めたくなかった。
そんな中、大きな巨体が街に降り立つ。
そびえ立つビルよりも大きなその建造物が、いまこの地球に降り立った。
「……人型のかたち?なんで?」
いままで怪獣やヒーローは見慣れてはいたけれど、人型を模しているその形状に見覚えがなかった。
その大きな巨体の指先から、なにやら緑色の粒子が溜め込まれていく。
「…………なんなの!ねえ!ここから居なくなってよ!消えてよ!」
わたしが大声で叫ぶも、その言葉が届くことはなかった。
両手の五本の指先から放たれた粒子の塊が、街を蹂躙していく。
有無を言わさず、背中の甲羅のような物体からも同様に粒子が放物線を描くように周囲を焼き尽くしている。
一瞬にして、わたしの住んでいた街は炎の渦に飲み込まれていく。
「……あぁ、……あぁ……ぁあああああああああ!」
溢れ出す涙が止まらない。
こんな光景なんて目に焼きけたくない。
当たり前だった日常がこんな簡単に、こんな一瞬で変わっていくなんて記憶に残したくない。
こんなの嘘だ……
こんな光景なんて夢だ……
今日はわたしの誕生日だったんだ……
だったのになんで……
なんで……
なんでなんだよ!
「……あは、あははははははは……あはははははははは……はははははは……」
そのとき、わたしのなかで風船が破けるようになにかが弾けとんだ。
(今日はわたしの誕生日!目の前に広がるのはわたしを祝福する光だよ!きれいだね!)
(おめでとうわたし!六歳になったよ!)
(ねぇ!祝ってよ!生きててくれてありがとうって言ってよ!)
(……きれいな光だね!今日は花火大会でもやってるのかな!)
(こっちには赤い光!こっちにもオレンジの光!あっちには白い光がみえるよ!)
わたしの前に広がる光景はこんなにも綺麗だったんだね!
こんなにもわたしを祝ってくれてすごくうれしいな!
***
「ねぇ!ちょっと!エリカ!どうしたのよ!ねぇ!返事してよ!」
アカネからの問いかけにも反応を示さない。
明らかにおかしい。
崩れいく瓦礫と炎に包み込まれる記憶を呼び起こされてしまい、脳内に悪夢のフラッシュバックされた映像が再生され、挙動不審になってしまうエリカ。
(……もう!もう!もういやなんだよ!こんなのは!)
「……ここはあたしがやるしかないのか!」
アカネが操縦桿を一気に動かすと、エリカを助けに向かう。
「ようやく出てきたか!畳み掛けるよクロミ!」
「わかったよ!オリバ!」
迎え撃つフォース〈MARS RAY〉の二人。
「ねぇ!返事してよエリカ!返事をして!正気にもどってよ!あんたが見てる世界は現実じゃないよ!虚構だよ!」
「うぁぁぁぁぁああああああああああああああ!」
アカネの怒号にも近い掛け声にもエリカは反応を示さない。
(絶対になにかがおかしい。こんなのいままでなかったのに)
(こんなことが起こりうるなんて思ってもみなかったのに。いったいなにがあったのエリカ……)
エリカはコンソールを動かし、いままで取っておいた禁断の……
「……エリカ!?あんたまさか──!」
画面上に映し出される”BLAKE DECARE”の文字列。
「わたしから──!わたしの世界から!大切なものを奪うやつはみんな敵だ……!消えてしまえええええええええええ!」
先ほどまで欠損していた左腕が復元され、バトル開始時と遜色なくもどるエリカのガンプラ。
「……やめなよエリカ!そこまでやる相手じゃないよ!いい加減正気にもどって!戻りなさいよ!もどれって言ってんだよ!」
何度もエリカに問いかけるも聞く耳を持たない。
まるでなにかに取り憑かれたかのように彼女の眼はなにも見えていなかった。
見えているのは今、敵対しているガンプラだけ。
目前にはウーンドウォートを操るクロミの姿。
TR-6 ウーンドウォート。
雑誌企画『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』より登場。
ティターンズが行った次期主力候補機の開発によって生み出された本機はこの機体をコアとすることで、幾つもの戦場に適応できる拡張性を有している。
また、強化人間骨格OS『BUNNys』ヴァニスが搭載され、一般兵でもサイコミュを操れるなどの特徴を有していた。
ブレードを展開させたオリバはブレイクデカールを使用するエリカへと攻撃を差し向ける。
「本気になるのが遅いってんだよ!バカにしてんのかよ!」
(……こんなやつに負けるわけがないだろ!わたしのことバカにしてんのはてめえだよ!ゴミクズがよ!ぶっころすぞ!)
正気ではないエリカはチマチマ撃つのは時間の無駄と考え、癖でライフルを投げ落とす。
背中から取り出した《アロンダイト》を両手に持って、オリバを倒すために迫撃する。
「……ねえ!ねえってばエリカ!あたしの話を聞いてよ!」
何度も問いかけるアカネの声はいまだに届かない。
届くはずがない。
だってもう彼女は人間でいることを放棄したのだから。
ただ、怒りの感情に飲み込まれていくエリカは対峙するオリバと切り結ぶ。
「……あんたの存在そのものが気に食わない!アイドルだなんて幻想を抱くようなやつに負けてたまるかってんだ!」
「……黙れよっ」
「んだよ!てめえこそ黙れよ!……どうした?ブレイクデカールを使っても勝てないってことを思い知らされたいか!」
(……こいつと話しても無駄だ、こんなやつなんかにわたしのなにがわかるっていうんだ)
ガンプラ全体が巨大化するエリカのガンプラ。
その大きさは、クロミのガンプラの一.五倍以上にまで膨れ上がっていた。
「……お、おい!?冗談はよしてくれよ!なぁ!?聞こえてんだろ!?なぁ!おい!」
コンクリートの地面に叩きつけられるクロミ。
重圧によってひびが入っていくのを見たオリバは怖気はじめる。
「……もう!やめろよ!やめろって言ってんだよ!やめろ!やめてくれええええええええ!」
押しつぶされたことによってクロミのガンプラは撃破扱いとされ、消失していく。
「つぎはおまえか──!」
「…………ヒッ」
オリバはエリカがクロミを押しつぶす状況を見ていたことで、恐怖感が勝ってしまう。
「やめろ!もういいだろ!もういいだろうがよ!……話を聞けよ!」
「それを決めるのはおまえじゃねえ!このわたしだ!」
止まることのないエリカのガンプラは、オリバへと近づいてきていた。
「……それ以上やんなくていいよエリカ!もう勝ったも同然だよ!戦はなくていいんだよもう!ねぇってば!」
振り下ろした巨大化した《アロンダイト》によってオリバのガンプラは半分に切断されていく。
「…………この悪魔がァァァァァァァァァァァァァァ!」
『〈BATTE ENDED〉──』
そうして、フォース〈ASTERLISK〉のフォースバトル初戦は相手であるフォース〈MARS RAY〉に強い恐怖感を植え付けさせることで終わりを迎えた。
***
どこからともなくおはこんばんにちわ神宮寺Re⑦です。とにも変わることなく気楽にビルドダイバーズRe RISE 二次小説を投げている人です。
さて、あれからの続きです。
***
「陰キャアイドルはGBN〈世界〉を救いたい。」
あらすじ
自分は救世主になれない──そう思っていたのに。
第一次有志連合戦の裏で行われた不定期開催イベント〈ゲリラレイドボスミッション〉、その中でエリカは義姉であるアカネが巻き込まれたことで復讐を誓った。その巻き込んだそのダイバーを見つけるためにエリカは根暗で陰キャの性格とは真反対の明るくて眩しいアイドル活動をはじめることに。いまだにアカネとの距離がありながらも謎の転校生ハルナが現れ、そしてGPD全日本大会決勝で負けたかつての宿敵〈蒼穹のプリンス〉にも再会を果たす。互いの想いが交錯する世界でエリカは自分の本当の夢を見つける。
これは自分と世界とその裏側に向かい合う物語──。
***
前回→
***
第一巻《ワタシノユメ》第十章 -【現実と虚構の狭間で】-
***
──十年前。
海沿いの東北地方に住んでいたわたしは、父親である拓人と母親である美沙希とともに仲睦まじく過ごしていた。
二階建ての一軒家に住み、明るい太陽が反射してキラキラしている海に見惚れながらわたしは退屈していた。
「……なんか面白いことないかなぁ」
そんなことを思っても日常が変わることなんてなくて、そんなのはわかっててもどこか違和感を感じていた。
◇◇◇
夕方になり、夕食の時間を迎える。
階段からタタタタと勢いよく駆け降りてリビングのテーブルの椅子に腰掛ける。
「今日は誕生日おめでとう!エリカ!」
「おめでとうエリカ〜!」
六月二七日。
この日はわたしの誕生日だったため、大きなホールのショートケーキとドリンク、そしてオードブルが並べられていた。
「……あ、ありがとう父さん母さん!」
ケーキに付けられた六本のロウソクについた火をわたしは一気に息を吹いていく。
テレビ画面に映るニュース映像を見つめるわたしたち。
『……速報です!速報が入りました!ただいま観測所によりますと──』
慌ただしくアナウンサーが渡された紙をまとめ上げ、原稿を読み上げていった。
『大気圏外から──未確認の飛行物体が地球に向かっているとの……情報が入りました。なお、原因等の調査についてはNASA、および首相官邸との協議が後ほど行われるとこちらのメディア関係に送られている模様です。これから政府による記者会見が開始するとの連絡が入っています』
「おうおぅ……なんだ?なんだ?宇宙で事故でもあったのか?」
わたしの父親のタクトが、ニュース速報を聞いておどおどしはじめていた。
「なんなのかしらね?こんな何もない日に限って」
食べはじめていたミサキが、箸を止めテレビに釘付けになる。
そこでわたしは本当の違和感に気づく。
ここに居たらダメだってことに。
こんなところに居たら死んじゃうってそう思った。
だから、はやくここから逃げ出したかった。
こんなことしてる場合じゃないよ!逃げようよ──!
わたしの脳内に電撃が走るように、直感がそうさせる。
「…………はやくっ!はやく逃げようよ!ねぇ!」
「どうしたのよ急に?なにかあったの?」
いま起こってるんだよ母さん!ねぇ!わたしの話を聞いてよ!聞いてよ!聞いてってば!
「はやくここから逃げないとダメだよ!みんな死んじゃうよ!」
「……大丈夫かエリカ?悪夢にでも、うなされていたいたのか?」
違うよ!わたしなにも悪夢なんて見てないよ!ねぇ!はやく!はやくここから逃げようよ!
「ほら、落ち着きなさいよエリカ……あなたの誕生日でしょ」
変わらず冷静にわたしをおさめようとするミサキ。
なんで……!なんでわかってくれないんだよ!
ほんとに死んじゃうよ!
意を決したわたしは靴を履いて、飛び出すように外へ出た。
***
ただ、がむしゃらに。
ただ、足を止めずに。
ここから、飛び出したかった。
ここから逃げたかった。
「……なに?あれ?」
紅く染め上がる一筋の光に、一層の恐怖感をひしひしと感じるわたし。
それは合計で七つもの光が空を眩く照らしだす。
「…………こんなの!こんなの普通じゃない!おかしいよ!こんなの!」
転んで足を挫いても、わたしは脚を止めたくなかった。
止めるべきじゃなかった。
ここで振り向いてしまったらいけないと、そう心が叫んでいる。
もうどのくらい走っただろうか、そんなことでさえ気にも止めないわたし。
高台の展望台にやってきたわたしは街を見渡す。
「……どうしてみんな!逃げようとしないの!頭おかしいんじゃないの!」
息が切れそうになりながら、360°街中全体をを見通していくわたし。
建物はいつもの日常の風景と変わらず、家族団欒が営んでいるであろう電気の光が何千と光っている。
「……ここにいれば助かるよね?」
不安感がずっと心を蝕んでいく。
ここに居ても助からないかもしれない。
ここでわたしの命は尽きてしまうかもしれない。
まだやりたいことも夢もなにも持っていないのに。
そんなのは嫌だ。
そんなのは認めたくない。
ただ……生きることを諦めたくなかった。
そんな中、大きな巨体が街に降り立つ。
そびえ立つビルよりも大きなその建造物が、いまこの地球に降り立った。
「……人型のかたち?なんで?」
いままで怪獣やヒーローは見慣れてはいたけれど、人型を模しているその形状に見覚えがなかった。
その大きな巨体の指先から、なにやら緑色の粒子が溜め込まれていく。
「…………なんなの!ねえ!ここから居なくなってよ!消えてよ!」
わたしが大声で叫ぶも、その言葉が届くことはなかった。
両手の五本の指先から放たれた粒子の塊が、街を蹂躙していく。
有無を言わさず、背中の甲羅のような物体からも同様に粒子が放物線を描くように周囲を焼き尽くしている。
一瞬にして、わたしの住んでいた街は炎の渦に飲み込まれていく。
「……あぁ、……あぁ……ぁあああああああああ!」
溢れ出す涙が止まらない。
こんな光景なんて目に焼きけたくない。
当たり前だった日常がこんな簡単に、こんな一瞬で変わっていくなんて記憶に残したくない。
こんなの嘘だ……
こんな光景なんて夢だ……
今日はわたしの誕生日だったんだ……
だったのになんで……
なんで……
なんでなんだよ!
「……あは、あははははははは……あはははははははは……はははははは……」
そのとき、わたしのなかで風船が破けるようになにかが弾けとんだ。
(今日はわたしの誕生日!目の前に広がるのはわたしを祝福する光だよ!きれいだね!)
(おめでとうわたし!六歳になったよ!)
(ねぇ!祝ってよ!生きててくれてありがとうって言ってよ!)
(……きれいな光だね!今日は花火大会でもやってるのかな!)
(こっちには赤い光!こっちにもオレンジの光!あっちには白い光がみえるよ!)
わたしの前に広がる光景はこんなにも綺麗だったんだね!
こんなにもわたしを祝ってくれてすごくうれしいな!
***
「ねぇ!ちょっと!エリカ!どうしたのよ!ねぇ!返事してよ!」
アカネからの問いかけにも反応を示さない。
明らかにおかしい。
崩れいく瓦礫と炎に包み込まれる記憶を呼び起こされてしまい、脳内に悪夢のフラッシュバックされた映像が再生され、挙動不審になってしまうエリカ。
(……もう!もう!もういやなんだよ!こんなのは!)
「……ここはあたしがやるしかないのか!」
アカネが操縦桿を一気に動かすと、エリカを助けに向かう。
「ようやく出てきたか!畳み掛けるよクロミ!」
「わかったよ!オリバ!」
迎え撃つフォース〈MARS RAY〉の二人。
「ねぇ!返事してよエリカ!返事をして!正気にもどってよ!あんたが見てる世界は現実じゃないよ!虚構だよ!」
「うぁぁぁぁぁああああああああああああああ!」
アカネの怒号にも近い掛け声にもエリカは反応を示さない。
(絶対になにかがおかしい。こんなのいままでなかったのに)
(こんなことが起こりうるなんて思ってもみなかったのに。いったいなにがあったのエリカ……)
エリカはコンソールを動かし、いままで取っておいた禁断の……
「……エリカ!?あんたまさか──!」
画面上に映し出される”BLAKE DECARE”の文字列。
「わたしから──!わたしの世界から!大切なものを奪うやつはみんな敵だ……!消えてしまえええええええええええ!」
先ほどまで欠損していた左腕が復元され、バトル開始時と遜色なくもどるエリカのガンプラ。
「……やめなよエリカ!そこまでやる相手じゃないよ!いい加減正気にもどって!戻りなさいよ!もどれって言ってんだよ!」
何度もエリカに問いかけるも聞く耳を持たない。
まるでなにかに取り憑かれたかのように彼女の眼はなにも見えていなかった。
見えているのは今、敵対しているガンプラだけ。
目前にはウーンドウォートを操るクロミの姿。
TR-6 ウーンドウォート。
雑誌企画『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』より登場。
ティターンズが行った次期主力候補機の開発によって生み出された本機はこの機体をコアとすることで、幾つもの戦場に適応できる拡張性を有している。
また、強化人間骨格OS『BUNNys』ヴァニスが搭載され、一般兵でもサイコミュを操れるなどの特徴を有していた。
ブレードを展開させたオリバはブレイクデカールを使用するエリカへと攻撃を差し向ける。
「本気になるのが遅いってんだよ!バカにしてんのかよ!」
(……こんなやつに負けるわけがないだろ!わたしのことバカにしてんのはてめえだよ!ゴミクズがよ!ぶっころすぞ!)
正気ではないエリカはチマチマ撃つのは時間の無駄と考え、癖でライフルを投げ落とす。
背中から取り出した《アロンダイト》を両手に持って、オリバを倒すために迫撃する。
「……ねえ!ねえってばエリカ!あたしの話を聞いてよ!」
何度も問いかけるアカネの声はいまだに届かない。
届くはずがない。
だってもう彼女は人間でいることを放棄したのだから。
ただ、怒りの感情に飲み込まれていくエリカは対峙するオリバと切り結ぶ。
「……あんたの存在そのものが気に食わない!アイドルだなんて幻想を抱くようなやつに負けてたまるかってんだ!」
「……黙れよっ」
「んだよ!てめえこそ黙れよ!……どうした?ブレイクデカールを使っても勝てないってことを思い知らされたいか!」
(……こいつと話しても無駄だ、こんなやつなんかにわたしのなにがわかるっていうんだ)
ガンプラ全体が巨大化するエリカのガンプラ。
その大きさは、クロミのガンプラの一.五倍以上にまで膨れ上がっていた。
「……お、おい!?冗談はよしてくれよ!なぁ!?聞こえてんだろ!?なぁ!おい!」
コンクリートの地面に叩きつけられるクロミ。
重圧によってひびが入っていくのを見たオリバは怖気はじめる。
「……もう!やめろよ!やめろって言ってんだよ!やめろ!やめてくれええええええええ!」
押しつぶされたことによってクロミのガンプラは撃破扱いとされ、消失していく。
「つぎはおまえか──!」
「…………ヒッ」
オリバはエリカがクロミを押しつぶす状況を見ていたことで、恐怖感が勝ってしまう。
「やめろ!もういいだろ!もういいだろうがよ!……話を聞けよ!」
「それを決めるのはおまえじゃねえ!このわたしだ!」
止まることのないエリカのガンプラは、オリバへと近づいてきていた。
「……それ以上やんなくていいよエリカ!もう勝ったも同然だよ!戦はなくていいんだよもう!ねぇってば!」
振り下ろした巨大化した《アロンダイト》によってオリバのガンプラは半分に切断されていく。
「…………この悪魔がァァァァァァァァァァァァァァ!」
『〈BATTE ENDED〉──』
そうして、フォース〈ASTERLISK〉のフォースバトル初戦は相手であるフォース〈MARS RAY〉に強い恐怖感を植え付けさせることで終わりを迎えた。
***
【二次創作】出港前夜
とあるジオンの酒場。
束の間の休息に酒を酌み交わす兵たちの賑わいの中・・・奥のテーブルに差し向かいに座りくつろいだ様子で酒を交わす仮面姿の若き将校と老士官。
「マシンガンだ、バズーカだ、なんてぇのは甘えだ。手斧一丁ありゃ充分よ。
ようは不慣れな連中は相手の間合いに入るのがおっかね~から、飛び道具が欲しくなるんだ。」老士官は赤ら顔で自説を続けた。仮面の若き将校は時折相槌を打ち、口元に細い笑みを浮かべて聴いている。
老士官は続けた。
「なぁ、わかるだろ?遠くの方から敵艦に向けてぱちぱち撃って戦争した気分になってる新米どもが多すぎる。
盾なんてもんもいらん。あんなもの持ったら無駄に重くなる分、ザクの機動性が落ちる。機動性が落ちるから敵弾に当たりやすくなる。
戦艦の主砲も機銃も当たらなけりゃどうということはない。さっさと相手にへばりつきゃ敵艦は自分自身に向けて撃ってくることはできんのさ。
赤い彗星と呼ばれたお前さんならわかるだろう? いかに素早く相手の懐に飛び込んで艦橋や動力部をぶっ叩いてずらかるか、だ」自信満々の笑顔で飲み干したジョッキをテーブルに置いた。
「ザクの機動性があればこそそれが可能、と・・・いうことだな」仮面の将校は思案げに同意する。
「そうだ。ザクはわしのようなロートルでも戦場で若いキツネのような俊敏さを与えてくれる。敵さんも小さくてすばしっこいマトには当てづらい。ザクは戦争を根っこから変える力を持ってる」老士官は胸をはる。
「まだロートルという歳でもなかろう」若き将校の仮面の下の表情は見えないが、その言葉には猫の背を撫でるときのような静かな親密さがある。
「がはは、赤い彗星も世辞を言うのか、こりゃ愉快だ(笑)おい店主!酒をもう一杯だ!」
「こんな私でも戦果を上げてきた年長者への敬意は心得ているつもりだ」
「ふん、もう過去のことよ。戦果を上げても偉いさんには俺様の戦い方が気に食わんらしい、戦列を乱す、とな。表向きは出世だが後方からの補給任務へ島流しだ。ようは奴ら、厄介払いがしたいのさ。」
「艦長就任おめでとう。乾杯だ。戦場にあって補給も大切な任務だろう。ろくに食べるものがなければ兵の士気も上がらんというものだ。」
「がはは、それは褒め言葉として受け取っておこう。退役間近の俺様が退役間近の老補給艦の艦長様だ(笑)笑えるだろう。弾除けがわりにでもいいから前線に送ってくれりゃ兵として名を残す華々しい最期を迎えられるってもんをよ。これからはお前ら若いもんの時代だ。」
「死ぬな。飲み相手が居なくて困る。」
「冗談言うない!ガルマ様のご学友ともあろうお方が(笑)」
「私はあまり冗談を言わないタチでな。友と呼べる者は少ない。それにガルマは今、地球だ。」
「地球方面軍司令とはご立派になられたものだ。我々ジオンの星よ、なぁ!
とにかく、補給が欲しくなったらいつでも呼んでくれ。赤い彗星の所望とあればたとえそれがクラッカー1箱だろうとも、どこへでも持って駆けつけよう。」
「ふん、頼もしいな。よろしく頼む。
「相手の懐に飛び込む」か、今夜はいい話を聞かせてもらった。続きは戻ったらまた聞かせてくれ。」
「おぅ、もう帰るのか、珍しいな。まだ飲み始めたばかりじゃないか。」
「明朝出港するのでな。」
「・・・無駄に死ぬなよ。こうしてルウムでの話をしながら酒を飲む相手がいないとわしもつまらん。」
「うむ、なぁに、連邦が物騒な物を隠し持っていないか見て回るだけの簡単な仕事だ。今回連れて行く新兵がうっかり私の背中を撃ちでもしない限り死ぬような作戦ではないさ。私とてまだ死にたくはないものだ。」
「ふふふ、赤い彗星なら新兵のへなちょこ弾などかすりもせんだろうに。なるほど少佐殿ともなるとそれなりの面倒がついてまわるもんだ。
ドズル閣下からファルメルと新しいザクをもらったそうじゃないか。ジオンにその名も轟く赤い彗星、気に入られたもんだ。帰ったらそれがどれほどぶっ飛んだ性能と乗り心地か聞かせてくれ。」
「うむ、土産話を期待してくれて構わない。」
「こんな戦争じき終わるさ。連邦のウスノロどもにザビ家が鉄槌を喰らわせてな。それまでにせいぜい軍功を上げとけ赤い彗星(笑)」
「そうだな、じきに終わる。ザビ家とともに。」仮面姿の若き将校は静かに席を立ち老士官に会釈した。
老士官は仮面の将校を見上げるかたちで言った。
「お、おうよ!ザビ家と共にあれだ。ザビ家バンザイだ!」
酒場でそれまで各々談笑に耽っていた兵たちは老士官のその言葉に気付き、口々に声を上げ始める。「ザビ家とともに!」「ザビ家とともに!」「ジーク、ジオン!」「ジーク、ジオン!」声は次第に高揚し気勢は止まらない。
その熱情の中、背を向けた去り際にニヤリとした若き将校の、仮面の下の瞳に宿る決意に満ちた怪しい光を老士官は知るよしもなかった。
旧ザクを製作しました:
とあるジオンの酒場。
束の間の休息に酒を酌み交わす兵たちの賑わいの中・・・奥のテーブルに差し向かいに座りくつろいだ様子で酒を交わす仮面姿の若き将校と老士官。
「マシンガンだ、バズーカだ、なんてぇのは甘えだ。手斧一丁ありゃ充分よ。
ようは不慣れな連中は相手の間合いに入るのがおっかね~から、飛び道具が欲しくなるんだ。」老士官は赤ら顔で自説を続けた。仮面の若き将校は時折相槌を打ち、口元に細い笑みを浮かべて聴いている。
老士官は続けた。
「なぁ、わかるだろ?遠くの方から敵艦に向けてぱちぱち撃って戦争した気分になってる新米どもが多すぎる。
盾なんてもんもいらん。あんなもの持ったら無駄に重くなる分、ザクの機動性が落ちる。機動性が落ちるから敵弾に当たりやすくなる。
戦艦の主砲も機銃も当たらなけりゃどうということはない。さっさと相手にへばりつきゃ敵艦は自分自身に向けて撃ってくることはできんのさ。
赤い彗星と呼ばれたお前さんならわかるだろう? いかに素早く相手の懐に飛び込んで艦橋や動力部をぶっ叩いてずらかるか、だ」自信満々の笑顔で飲み干したジョッキをテーブルに置いた。
「ザクの機動性があればこそそれが可能、と・・・いうことだな」仮面の将校は思案げに同意する。
「そうだ。ザクはわしのようなロートルでも戦場で若いキツネのような俊敏さを与えてくれる。敵さんも小さくてすばしっこいマトには当てづらい。ザクは戦争を根っこから変える力を持ってる」老士官は胸をはる。
「まだロートルという歳でもなかろう」若き将校の仮面の下の表情は見えないが、その言葉には猫の背を撫でるときのような静かな親密さがある。
「がはは、赤い彗星も世辞を言うのか、こりゃ愉快だ(笑)おい店主!酒をもう一杯だ!」
「こんな私でも戦果を上げてきた年長者への敬意は心得ているつもりだ」
「ふん、もう過去のことよ。戦果を上げても偉いさんには俺様の戦い方が気に食わんらしい、戦列を乱す、とな。表向きは出世だが後方からの補給任務へ島流しだ。ようは奴ら、厄介払いがしたいのさ。」
「艦長就任おめでとう。乾杯だ。戦場にあって補給も大切な任務だろう。ろくに食べるものがなければ兵の士気も上がらんというものだ。」
「がはは、それは褒め言葉として受け取っておこう。退役間近の俺様が退役間近の老補給艦の艦長様だ(笑)笑えるだろう。弾除けがわりにでもいいから前線に送ってくれりゃ兵として名を残す華々しい最期を迎えられるってもんをよ。これからはお前ら若いもんの時代だ。」
「死ぬな。飲み相手が居なくて困る。」
「冗談言うない!ガルマ様のご学友ともあろうお方が(笑)」
「私はあまり冗談を言わないタチでな。友と呼べる者は少ない。それにガルマは今、地球だ。」
「地球方面軍司令とはご立派になられたものだ。我々ジオンの星よ、なぁ!
とにかく、補給が欲しくなったらいつでも呼んでくれ。赤い彗星の所望とあればたとえそれがクラッカー1箱だろうとも、どこへでも持って駆けつけよう。」
「ふん、頼もしいな。よろしく頼む。
「相手の懐に飛び込む」か、今夜はいい話を聞かせてもらった。続きは戻ったらまた聞かせてくれ。」
「おぅ、もう帰るのか、珍しいな。まだ飲み始めたばかりじゃないか。」
「明朝出港するのでな。」
「・・・無駄に死ぬなよ。こうしてルウムでの話をしながら酒を飲む相手がいないとわしもつまらん。」
「うむ、なぁに、連邦が物騒な物を隠し持っていないか見て回るだけの簡単な仕事だ。今回連れて行く新兵がうっかり私の背中を撃ちでもしない限り死ぬような作戦ではないさ。私とてまだ死にたくはないものだ。」
「ふふふ、赤い彗星なら新兵のへなちょこ弾などかすりもせんだろうに。なるほど少佐殿ともなるとそれなりの面倒がついてまわるもんだ。
ドズル閣下からファルメルと新しいザクをもらったそうじゃないか。ジオンにその名も轟く赤い彗星、気に入られたもんだ。帰ったらそれがどれほどぶっ飛んだ性能と乗り心地か聞かせてくれ。」
「うむ、土産話を期待してくれて構わない。」
「こんな戦争じき終わるさ。連邦のウスノロどもにザビ家が鉄槌を喰らわせてな。それまでにせいぜい軍功を上げとけ赤い彗星(笑)」
「そうだな、じきに終わる。ザビ家とともに。」仮面姿の若き将校は静かに席を立ち老士官に会釈した。
老士官は仮面の将校を見上げるかたちで言った。
「お、おうよ!ザビ家と共にあれだ。ザビ家バンザイだ!」
酒場でそれまで各々談笑に耽っていた兵たちは老士官のその言葉に気付き、口々に声を上げ始める。「ザビ家とともに!」「ザビ家とともに!」「ジーク、ジオン!」「ジーク、ジオン!」声は次第に高揚し気勢は止まらない。
その熱情の中、背を向けた去り際にニヤリとした若き将校の、仮面の下の瞳に宿る決意に満ちた怪しい光を老士官は知るよしもなかった。
旧ザクを製作しました: