アドバンスド・ダミーバルーン“ヴォルヴァ”　(ガンヴォルヴァ)

1. RX-93を親機とするサイコミュ操作型ダミーバルーン。ADB-93の93は親機の形式番号を示す。

2. グリプス戦役からラプラス事変の時代の戦闘には、敵の攻撃を回避撹乱するためのデコイとして艦船やMSのダミーバルーンが多用された。これらは敵の前に圧縮ガスで一気に拡張したMS（または艦船）を模した風船を複数散布するものだが、基本的に散布したらあとは放置したまま、という泥臭い原始的な戦法だ。

3. しかしミノフスキー粒子散布下の戦闘において殊の外効果を発揮し、そのコストパフォーマンスの良さから時代のトレンドとなった。

そのダミーバルーンの開発製造でシェア８０％を占めるのがオックスアース・コーポレーションであり、アナハイム製モビルスーツにはほぼ100%同社製のダミーバルーンが装備されるまでとなった。

4. アナハイム・エレクトロニクスのνガンダム開発責任者であるオクトバー・サランはサイコフレームをνガンダムに取り入れた先見の明のある開発者として有名だが、実はこのとき並行して、サイコフレームをサイコミュ受信機として無人機に組み込み、親機パイロット（ニュータイプ）の遠隔操作によるサイコミュドローンも発案。有人機ではありえない挙動による敵の撹乱・攻撃を可能とする稼働型デコイ、そのプロトタイプの製造をサイコフレームのサンプル供与と合わせてオックスアース・コーポレーションにもちかけていたのだ。

5. それまでダミーバルーン一筋だったオックスアース・コーポレーションによる無人機開発は、特にパイロットの搭乗に関するあらゆる措置が不要である設計の自由度からアナハイム製モビルスーツとは全く異なる構造・外観となった。

6. しかし、本来の立ち位置がダミーであるがゆえに、カラーリングだけは親機に準じたものとなっている。

7. 武装はあえて実体弾ライフルが装備されている。バレルに６つの円筒形の電磁加速器が搭載された簡易レールガンのような試験型武装だ。双方ビーム兵器全盛期時代だからこそ、ビーム撹乱膜の影響を受けず、敵のiフィールドを突破し、iフィールドジェネレータを実体弾で破壊し、親機の魁となる役割を担わせた。

8. なお、額と胸の発光部分にサイコミュレシーバーとなるサイコフレームが組み込まれている。

9. ●アムロ「オクトバー、ダミーバルーンをサイコミュで操作するなんて、すごいアイデアじゃないか」
●チェーン「そうよ、すごいわよ」
●オクトバー「アムロ大尉のファンである部下のアイデアに触発されたんです。私だけでは思いつきませんよ。」

10. ●アムロ「ところで、アドバンスド・ダミーバルーンというけれど、こいつ実際はバルーンじゃないんだろう？」
●チェーン「そうよ、ダメよ」
●オクトバー「ええ、バルーンのように畳んで開いてっていうものではないですね。実際は・・・。」

11. ●アムロ「バルーンというよりはドローンなわけだよな？」
●「でもまあ、ダミーバルーン大手のオックスアースに作ってもらったんで、バルーンと名付けたほうが認知されやすいかな、と思いましてね。ほら、ファンネルだって、もはやファンネル（ろうと）の形したものなんて、今じゃ一つもないじゃないですか。あれと同じですよ。」

12. ●アムロ「そういうものなのか？」
●チェーン「そうよ、ダメよ。」
●アムロ「チェーン、そうなのか、そうじゃないのか、どっちなんだい？」
●オクトバー「・・・」

13. アムロのニュータイプ能力と相まって基本テストにおけるサイコミュドローン、もといアドバンスド・ダミーバルーン“ヴォルヴァ”は上々の機動や性能を示した。

14. しかし、アムロの思念がイメージシミュレーションなのか実際の指示なのかの判別ができず、全て実行に移してしまう感度の高さに調整の課題が残っていた。

15. そうこうしているうちにネオ・ジオンのアクシズ落としが早まり、あおりでνガンダムの納期をラー・カイラムから１０日も短縮されたことから、テスト不十分で“ヴォルヴァ”の搬入・実戦投入は見送られた。

16. その後の最終決戦でシャアのみならずアムロも消息不明となってしまったことから、サイコミュドローンとしてのテストは頓挫。　以後、レーザー通信が届く範囲で一般MSパイロットが遠隔操作する拠点防衛用無人MSとして数機が活用されたらしい、というのがもっぱらのウワサだ。