そこには丸みを帯びた緑の巨人が映っている。頭についたピンクの一つ目がこちらを見つめて輝いたのだ。
「ジオンのザク系モビルスーツだろう。ロサ・ギガンティアIIの対空監視データに残っていたらしい」
「合成ですよ…!こんな物…」
非現実的な光景にレーゼンビーは動揺を隠せなかった。
「だがロサ・ギガンティアIIが襲われたことは事実だ。それに以前金星帰りのパゾリーニから聞いていた。金星圏に一年戦争後から住み着いているジオン残党勢力がいるとな。よってレーゼンビー大佐、君には金星への遠征艦隊の指揮を執ってもらいたい」
「もし罠であったら?」
「その罠を乗り越えられるだけの戦力は用意できた。残念ながらECOAS《エコーズ》は出せなかったがな。それでも大統領には感謝しかないよ」
この軍縮傾向が一般化した連邦軍において戦力の確保ほど困難なことはあまりない。
「私に務まるのでしょうか…?」
「君がエゥーゴにいた時から私は君の指揮官としての才能を評価してきた。それをふんだんに使える時が来たのだよ」
レーゼンビーはエゥーゴの志願兵であった。そこで一度モビルスーツ部隊の指揮をした際の活躍がストームウッドの胸を強く焼いたのだ。
「狡いですよ中将」
ストームウッドは自慢げに鼻を鳴らす。
「部隊名は第百二十七独立戦隊、通称『ウォッチ・ドッグス』だ」
その名はかつてロンド・ベル隊の再編計画の際に上がった新部隊名である。その際はロンド・ベルの中核であったアムロ・レイやブライト・ノアなどの行方がわからないとして却下された、所謂ニュータイプ部隊であった。
「ニュータイプ部隊を作るのですか?」
「そうだな。君ならやれるさ。明日の正午、君は月面のF・Bへ向かえ。ここまで来て送り返すようになってしまうが、許してくれよ」
レーゼンビーは敬礼し、司令官室を後にした。彼はタクシーを呼び、ホテルで一息ついてからシャトルに乗ることにした。
その頃、F・Bのアナハイム・エレクトロニクス社実験部隊は訓練を終え、待機していた。
「中佐、ストームウッド中将から通信です」
「すぐに出る」
彼はブリーフィングルームへ向かうと、モニターを起動した。
「久しぶりだなアヴァロン中佐」
「こちらこそご無沙汰しております中将」
「早速だが、君らの部隊に辞令を出す」
「はい?」
レーゼンビーはシャトルを降りた。F・Bもまた検問は厚い。モビルスーツが防衛網を張っているのがよく見えた。アナハイム社のビルから数キロ先に連邦軍の基地もある。レーゼンビーはそこに入る。
「ウディ・レーゼンビー大佐だ」
「どうぞこちらへ」
レーゼンビーは誘導された第五格納庫へ向かった。驚いた。そこには実験部隊の面々が全員いたのだ。
「お前たち…」
「待っていましたよ、大佐」
アヴァロンが右腕を横に広げて言った。
実験部隊の面々だけではない。彼のいたサイド4のコロニー駐留軍の元メンバーたち等彼の馴染みの将兵たちがずらりと並んでいた。
「よく来てくれた皆。改めて第百二十七独立戦隊ウォッチ・ドッグスの司令官、ウディ・レーゼンビー大佐だ。今回の遠征は我が師であるジャレク・ストームウッド中将の命である。私は中将の招集に感謝している。君たちとまた会えたことに、そしてその司令官という光栄な立場を与えられたことに」
レーゼンビーは少し俯いた。
「我々はこれより金星圏に向かい、ロサ・ギガンティアII襲撃事件の真相を追う。出発は明日の一二〇〇だ。それまでに準備を整えておけ。以上だ」
彼は一礼して退がっていった。
グレッドはF・B基地の司令官室の前に立っている。
「失礼致します。グレッド・パトラス大尉であります。大佐、ハルサメ小隊は装備が整いました。いつでも発進できます」
「ご苦労、警備は重要だからな」
グレッドはそのまま自室に帰ろうとする。
「大尉、少しいいか?」
レーゼンビーが神妙な顔つきで聞いてきた。
「はい、構いませんが?」
長年の付き合いで見せなかったその顔にグレッドはちょっとした戸惑いを覚えた。
「お前はニュータイプを信じるか?」
「散々自分がそうだと言われてはいますが…正直信じきれてませんよ」
「だと思ったよ。『ニュータイプか?』と言われても不服そうにするだけだものな」
人間観察はニュータイプに匹敵するのではないかとグレッドは考える。
「いくら民間人の少年がモビルスーツに乗って大戦果を挙げたからと言って、それがニュータイプですなんてそう簡単に受け入れられませんよ。しかも自分がそうかも知れないなんて…」
「でもなグレッド、あのガンダムにはニュータイプ用のサイコミュが積まれてる。元々のパイロット達もニュータイプ適性があった。お前だって同じさ」
グレッドは俯くしかなかった。
遂に出発の時が来た。レーゼンビー、アヴァロン、ハルサメ小隊らは旗艦であるアーガマ級宇宙巡洋艦「タントラ」に配属された。ストームウッド中将の温情であろう。レーゼンビーはエゥーゴで乗っていたこの船に郷愁を覚えた。他のクルー達はブリッジや格納庫などそれぞれの持ち場に着く。レーゼンビーはブリッジの艦長席に腰を下ろし、右手のテレフォンを掴んだ。
「これより第百二十七独立戦隊は本艦を中心にこのF・Bを発つ。全艦、発進!」
大型ブースターを取り付けられたタントラは急激に高度を上げる。館内の立体音響装置からはとてつもない轟音が響いた。続いてカイラム級二隻、クラップ級三隻も飛び立つ。F・Bの地表が大きく揺れた。ここから中継基地であるホルストVIIまでは一週間ほどである。


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