あなたは、ガンプラとの出会いを覚えていますか？

・・いえ、記憶の正確さを確認するわけではありません。

出会った時の感動が今も続いているかどうかを思い返してほしいのです。

僕とガンプラとの出会いは、今でも僕の生活に彩りを与えてくれているー。

そんなお話を記事にしたいと思います。

１．退屈な白い世界

幼い頃は病弱だった。呼吸器疾患のため、日帰り入院のような事は度々あったけど、今回は違った。

マイコプラズマ肺炎。

とはいえ当時の幼い僕には医師から説明なんてされなかったから、恐怖や悲壮感なんてなかった。ただし、誕生日を数日後に控えていて、病室で過ごすことが確定したことにがっかりしたのはよく覚えている。

ほどなくして始まった入院生活。症状も落ち着いていたし、一日中いることになる病室は、日の光が降り注ぐ白くて清潔な場所だった。

ーそう、この白い病室がガンプラと初めて出会う場所になった。

僕はトランスフォーマーやラジコンが好きだった。しかし、当時はファミコンなどのゲームが流行っていて、ロボットやクルマのおもちゃは下火になっていた。

もちろん僕自身ゲームも好き。でもそれは、周囲の友達に合わせるため、仲間はずれにされたくないからでもある。実際、対戦ゲームではほとんどが「やられ役」に徹していた。そうすることで、輪の中にいることができる。

そんな役どころだったからか、病室にいる今でもゲームがしたいとはほとんど思わない。

ところが、それを差し引いても退屈すぎた。落ち着きがなかったり、呆けていたり、夜に理由もなくすすり泣くこともあった。一緒に寝泊まりしていた母が、看護師を呼んだりもしていた。

少し様子がおかしかったのは自分でもわかる。

病室で過ごす退屈な時間が、僕を一番苦しめていた・・・。

２．黄金の記憶

長い（と感じていた）入院生活が続くなか、数日ぶりに父と弟の顔を見た。

そこで父が唐突に渡してくれたのは、見たことのないロボットの箱。弟も覗き込むようにこちらに迫り、早く開けてみてよと催促する。

とっさにそれはおもちゃだと理解して開封したものの、出てきたのはバラバラの破片。ミニ四駆程度のバラバラ具合しかしらなかった僕にとって、開封しても形のない状態には大きな衝撃だった。

「なんだこれ！？」

と、戸惑いながらも、僕の顔はニヤけていたと思う。

「自分で組み立てるんだよ、それ」

父のその一言を聞いた途端、周囲が全く目に入らなくなった。時折点滴のチューブを引っ掛け、イタッとすることも苦にしないほど、夢中で組み立てた（ニッパーなんてなかったから手でもぎ取っていたハズ）。

ほどなくしてそのロボットは僕の前に現れた。眩しいほどに黄金だった。

それから毎日、僕の手のひらに支えられ、その黄金のロボットは病室を何度も舞った。看護師さんから、カッコいいね！なんて言われた時、まるで自分が褒められたかのようになんともいえない満足感があった。

僕の魂を一身に背負ってくれたその黄金のロボットが、携えた二刀の剣で白くて退屈な時間をすべて切り裂いたてくれたんだ。

それから数日後に誕生日を迎えた。共同だった病室で他の患者さんと看護師さんにおめでとうと拍手されたぐらいで終わった。父、母、弟もいたはずだけど・・思い出せない。だた、寂しい気持ちはなかった。なぜなら、翌日が退院予定日となっていたから。

翌日の最後の診察のときも、片手には黄金のロボットを抱えていた事を覚えている。しかし、僕の記憶は都合よくここで終わっている。

３．紡がれた未来

・・・それから３０年近くの月日が流れた。改めて「ガンプラ」というキーワードで僕の思い出を検索すると、懐かしいシーンが浮かんでくる。

弟と一緒にBB戦士武者頑駄無シリーズでガンプラバトルをしていたし、学区外なのにガンプラが買える模型店目指して１時間以上自転車を漕いだりもした。

一人暮らしだったとき、００８３のDVDをまる３日かけて全話見たり、なんとなく惹かれたストライクとイージスを組み立てて部屋に飾っていた。コアスプレンダーの発進シークエンスに毎週ワクワクしていたことも思い出せる。

就職が決まった時も、ミーティアは大事に梱包して一緒に引っ越した。

結婚後も、ミラージュコロイドを展開してガンプラだけは守り抜いてきた。

そして今年、最寄りのガンダムベースに初めて立ち寄ることができ、限定品のペルフェクティビリティを無事に積むことができた。

さらに先月には、エコプラキット（RX-78ガンダム）を息子と一緒に作ってきた。上半身と下半身を別々に飾るスタイルに、次世代の感性を感じたりもした。

こうして僕の生活にはいつも、ガンプラが彩りを与えてくれてた。

４．ガンプラは今も

・・・失礼かもしれないが、僕が子供の頃は、ガンプラ（模型製作）は陰キャの代名詞のようだったと記憶している。

ところが、昨今のアニメなどの世界的ブームに乗って、ガンプラも文化として一つの地位を獲得しつつあると思う。

ガンプラベースに行ってきたぜ！なんてつぶやきにも「いいね」をしてくれる人が世界中にいるし、40年を越えるガンダムの歴史によって、僕のようにガンプラと共に大人になった人がいるのではないだろうか。

そして、ガンプラを作ることが堂々と発信できる時代になり、あの時看護師さんに褒められた満足感（肯定感）を今でも感じることで、生活に彩りを与えてくれている。

・・・そんなガンプラという「文化」と出会えて、本当に良かった。

あなたは、ガンプラとの出会いを覚えていますか？

了

あとがき

はじめまして、to-be-a-factory（略してtb）と申します。

本業サラリーマン、副業で作家を目指していますが思うようにいかず・・・3ヶ月前、ふと大好きだったガンプラ制作に本腰を入れた矢先の今回の出来事でした。このような機会をいただき、多大なる感謝の意を示すとともに、全身全霊でキット製作と執筆に臨むことができました。ありがとうございました。

ライターとしてもモデラーとしても実力不足ではありますが、今後もGUNSTAにて活動して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

I wish you a merry Christmas!