妄想戦記
元々、現地改修のはてに誕生したザクハーフキャノンであるため、その配備数が少数だったのは当然であり、そのうちの一機がロイド・ガーランドの乗機であったのは確認されている。
ザクハーフキャノンは火力重視の機体だが、そこにさらに火力を加えたため、重心が通常の機体より高くバランスが悪くなっているのだが、それを問題なく操れるのは彼の腕というしかない。
そんな彼は今絶賛後悔中だった。
「何でこんなことになった⁉」
嘆いても始まらない。
まずはザクを走らせ続けなければならない。
でなければ死ぬ・・・機体が止まるのは大破したときだけである。
「クッソが!!」
一発撃てば大体十倍くらいの反撃が飛んでくる。
追撃してくるMSの数がそれくらいだからだ。
背後には彼を追撃してくる連邦のMSが十数機、いくら火力に優れた機体とはいえ、戦争は数だとどこぞの兄貴も言っていた。
「殺す、絶対あいつを殺すまで死なん‼!」
現在地はオデッサ、横目で見れば友軍撤退のHLSが打ちあがっている。
それはいい。
元々、地球撤退のために殿部隊に志願したのは自分だ。
おかしくなったのは戦いに闘志を燃え上がらせていたロイドのところに来た上司が開口一番、「戦闘は極力避け、逃げ回れ」という命令を自分だけに下したことだ。
漫画なら頭に?マークが浮かんでいただろうが、その意味はすぐに分かった。
彼の迷彩は森林以外ではとんでもなく目立つ、迷彩色とは実はかなり派手なのだ。
さっきから追撃の機体が徐々に増えていることがその証明であるQ・E・D
つまりあの意味不明の命令は「囮になって連邦を引っ掻き回せ」という意味である。
ジオンのパーソナルカラー持ち=エースの図式は連邦にも伝わっている。
そしてジオンのエースは赤とか青とかとにかく一騎当千であることが多いので、つまり=で連邦軍兵士のキル数が高いという図式も成り立つ。
それは目の敵にもされようというものだ。
何より一番怒りが沸くのは、彼の機体に迷彩色のパーソナルカラーをつけようと言い出したのも許可を出したのも件の上司という事だ。
しかも、申請がこの撤退作戦の直前であったことまで追加で着くとなれば…。
「最初から囮にする気しかしねエ!!」
実はロイドの戦績はエースと呼ぶには?がついてしまう程度なのに、パーソナルカラーに調子に乗って深く考えないロイドは自分で自分をセルフ説教をすべきだろう。
身の程を知れと…。
モニターに映るHLSの打ち上げに、多少なりとも自分が撤退に貢献していると自分を慰めながら、ロイドは逃げた。
ここまでくると火力を上るために機体の重量を上げた昔の自分を殴りたくなってくる。
とはいえ、逃げ続けるのも限界がある。
連邦はオデッサに包囲戦を仕掛けてきた。
つまり周囲は敵だらけ、包囲の輪がちじまれば自然と中心であるHLS発射場に追い込まれることになる。
案の定、ロイドはHLS発射場に追い込まれた。
その時点で、ザクは限界寸前、右手は吹き飛び、推進剤は残り少なく、残弾ゼロ、重さを減らすためにガトリングとミサイルポットはとっくに破棄している。
もはや投降するしかないかと思い、LETS投降と武装解除しようとした瞬間、彼は見てしまった。
今まさに飛立とうとしているHLSのブースターにビーム砲を打ち込もうとしているジムの姿を…彼の不幸は彼の性根が善性だったことだろう。
数十人の人間が殺されようとしているのを見捨てることができない人間だった。
だから気が付けばスロットルを踏み込んでいた。
残り少ない推進剤でザクが飛ぶ。
背後から不意打ちを受けたジムはそのままザクに羽交い絞めにされたまま諸共に地面を転がった。
問題は位置関係だ。
ジムは射程距離の短いビーム砲でブースターに真正面から打ち込もうとしていた。
そこに背後から組み付いて前に転がれば…次の瞬間ブースターの炎に二機は包まれた。
…結果を言えば、ロイドは生き残った。
偶然羽交い絞めにしたジムが盾になってブースターの炎を防いでくれ、ザクは黒焦げになったもののロイドは五体満足で生き残り、連邦の捕虜として終戦を迎えた。
彼はそこまでの不幸の揺り戻しじゃないかと笑いながら、終戦後に再開した親友で幼馴染で悪友の元上司(実は早い時点で投降し、同じ捕虜になっていた)にこぶしを叩き込んだ…極上の笑顔で…ちなみにこの上司、長い付き合いでロイドの運不運の偏りが大きいと知っており、とりあえず不幸な目に合わせておけば生き残るんじゃね?というところまで計算していた…のだが、それはそれとして殴るのはやめない。
最後まで見ていただいてありがとうございます。
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しがないプラモ好きですが、頑張って作ったのでよかったら見て行ってください。
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