ザクΙ

「総理。ガンプラジャンク再生法案可決前にザク１にそれを適用した事への説明を求めます。」

「あ～、ガンプラジャンク再生法は法案検討中から与党野党からの充分な合意を得ており、可決は決定的であるとの見地から前倒しで適用した次第であります。」

「ですが総理、我が国は法治国家であり、民主主義国家でもあります。そのような国家のリーダーが議会を蔑ろにするような言動は常識を疑いますよ？ザク１ジャンクを見つけて先走ったんじゃないんですか？！どうなんですか！」

「え～、そうではありません。法案可決が決定的ならば あえて施行を可決まで待つ意味はないと判断したまでです。ザク１というアイテムが問題とも考えてはいません。」

「ならば総理。もし、もしですよ。本法案が否決されたらどうするおつもりなんですか？既にザク１は再生されてしまってるんですよ？しかも新たに部品追加で予算も投入しているじゃないですか！もし否決となったら どう責任をお取りになるんですか？！総理の辞職くらいじゃ収まりませんよ？！」

「あ～、本法案の否決という事態は、私は想定していません。与野党の合意という確約がある以上、それはあってはならないだろうし また、あってはならない事だと認識しています。もしここで否決という事になれば、野党並びに議会の存在意義すら揺らぎ兼ねない事態であると認識しています。それは我々はもとより国民の皆様の望むところではないと信じております。」

「それは我々としても同意しますが、ならば何故可決まで待ってくれなかったのか？何故 施行前に一言無かったのか？それだけが残念です。このような事が二度と無いようにお願いして次の質問に移ります。さて総理。 今の話からザク１再生は あえて、あえてよしとしましょう。しかし何故再生の舞台が冬景色なんですか？不景気で国民の心が寒く感じる昨今に、季節も春だというのに何故 わざわざ冬を選んだのか？その真意をお聞きしたい。」

「え～、冬景色の選出は 正直なところ偶然であります。厳密に言えばザク１のボディ配色が冬季色だった事に起因します。これは再生経費削減にもつながっており、もしこれを熱帯カラーやジオン緑に染めた場合、クレオスカラーの投入が余儀なくされ 新たな予算の追加となります。それは本法案の自前でエコを楽しむという法自体の趣旨を覆すものであり、政府の望むところでないからであります。」

「なるほどわからない話ではありません。ですが総理、別カラーにした場合とそうでない場合の比較算出をしましたか？してないでしょう。みなさんのお手元にある資料からもそれは明白です。“リメイクするなら新作と言える程のものにしなければ意味がない”  これは前のプラモ再生法の時の総理のご発言です。覚えてらっしゃいますね？この言葉を有言実行するなら別カラーにすべきだったんではないですか？！」

「え～、その言葉はよく覚えています。確か砂ドムの時です。忘れたわけではありません。その証拠という訳ではありませんが、ザク１にも加筆しております。確かに御指摘の通り本体はそのままですがザク１スナイパーのジャンクから流用した腕脚には剥げた冬季迷彩をかけております。また、ジャンプ用ブースターや背面のタンク等は新しく作り足しており、ご周知の通り台座も新たに作っております。」

「まぁ確かに新作の部分がある以上、総理の言われるリメイクとしては及第点なのでしょう。では総理、その新作の中にショートタイプのザクマシンガンが在りますが、これは熱帯仕様の銃なんじゃないんですか？！冬季ビネットには場違いなんじゃないんですか？！総理の明確なお答えをお願いします。」

「あ～、ショートタイプザクマシンガン、長いので短バレルと略させていただきますが、この短バレルは確かに熱帯ザクの装備として有名ですが、なにもそれに限定されている訳ではありません。政府としてはこの短バレルは内部に熱交換器を付随させており、熱帯や寒冷地等の厳しい環境下で規定の性能を発揮できる銃と理解しています。その上で弁明させていただけるならば、本作の場合は混然とした末期のジオン兵站を表現しており、寒冷地でも重宝する短バレルをアフリカ方面行き便から急遽、連邦北極基地襲撃作戦に付随した兵站に廻されたことを現しております。設定上の詳細はお手元の資料に記載してございます。」

「資料には、サイクロプス隊の北極基地襲撃をサポートする形で前もって基地MS戦力を誘い出し可能な限りその数を減少させ、サイクロプス隊の連邦新型NT用MS奪取という目的から“戦闘”という無駄を減らす事を目的とした『オペレーション・ビーネ』とあります。、、、総理。これ、嘘ですよね？少なくとも公式にはないですよね？でまかせですか？総理の誠意あるお答えをお願いします。」

「え～、でっち上げ と言えばそうとも言えますし、嘘かと問われれば そうかも知れない とお答えするしかありません。しかしながら、ガンダム界においては今や何が正解で何が出鱈目なのか？その境界もあやふやであり、また公式ですら後付け設定が後を断たない状況の中で世のガンプラーの方々の類い希なる発想と発明が世間一般で言われる“オレ設定”であり その中で取捨択一が何度も繰り返されながら数多くのイカす！カッコイイ！が非公式ながら生まれてきました。中には後に公式として開花したものも存在します。国としても こういった流れに目を向け、時流として捉えなければならない時代に入っていると考えております。過去には国鉄や郵政事業、電々公社等の民営化という世の流れがありました。今度はガンプラの民から公へのシフトというのもまた世の流れではないのではないかと考え、こういう形で具現化してみた次第であります。」

議長：「切磋琢磨の議論が続きますが、本国会は ここで休廷といたします。」