連邦軍によってRX-78 ガンダムの後継機として開発された機体[9]。3機が試作されたとする資料[10]の他、4号機の存在に言及した資料[11]もある[注 5]。なお、型番の「RX-178」の日本語表音は「あーるえっくすいちななはち」と読む[注 6]。
開発はティターンズ主導で行われ[13]、U.C.0085年にスタート[10]。ジャミトフ・ハイマンの意向によって[14]旧ジオン公国系の技術者は外され、地球連邦系技術者の選りすぐりで開発が行われた[10][注 7]。開発主査はフランクリン・ビダン大尉が務め、U.C.0087年1月20日に完成[16]。
本機は対外的にはティターンズのフラグシップ機として開発された[14]。その意義は単なる戦術兵器に留まらず、アースノイドのスペースノイドに対する示威の象徴でもあった。ゆえにその完成式典に際しガンダムMk-IIは、ティターンズ側をして「我々の、我々による、我々のためのガンダム」と称されたのである[17]。また、主にスペースコロニー内部での戦闘を想定した設計となっている[18]。
MS用新素材の研究が進まなかったため、装甲やフレームに旧来の「チタン合金セラミック複合材」を用いるなど、技術的に旧式な部分も少なくないが、全身にムーバブルフレームを採用した初の機体である[16][注 8]。脚部の可動部の露出が目立つのは、ビーム兵器を効果的に防御できる装甲が存在しない以上、重装甲化によって機体重量の増加を招くよりも、軽量化によって機動力を向上させ、被弾率を低下させるという当時主流となっていた設計思想に基づいている[19]。
同時期の機体に存在したエネルギーサプライシステムはエネルギーCAP実装と、構造の複雑化を避けるため廃止された[20]。バックパックには4基のメインスラスターに加え、ビーム・サーベルホルダーを兼ねたフレキシブルバーニアスラスターを装備する。このスラスターを開発するにあたってタキム重工のトップエンジニアを技術士官として招聘するなど、破格の待遇で集められた[21]。また、脚部のムーバブルフレームは構造的に柔軟性を有してはいたが、構造材の強度に問題があったため、瞬発的な外力に対し剛性が不足していたとされる。このムーバブルフレームは合計6回にわたる設計変更が行われたが、問題点を解決するには至らなかった[10]。
U.C.0087年3月2日[20]、サイド7グリーンノア1内での運用試験中にフランクリンの息子カミーユ・ビダンにより奪取され、そのままエゥーゴに鹵獲される。その後は紆余曲折あったものの、結局はティターンズ所属のエマ・シーンの離反により、3機がエゥーゴの手に渡る。4号機は強奪事件以前にグリーンノア1内で実施された高速機動試験中に墜落事故を起こしたとされる[11]。
ムーバブルフレームをはじめとする本機のデータはΖガンダムなどの可変MSの開発に大きく貢献した[22]。最終装甲を交換する事で各種戦闘に対応可能な設計となっていたが、エゥーゴによる奪取後は生産ラインに乗せるに足る機体ではないと判断され、再調整を行い3機分のパーツから1機を運用した[23]。また、地球連邦軍(エゥーゴ、カラバ)はジムIIIに設計の一部を取り入れている[注 9]。
ビーム・ライフル
型式番号:BLASH・XBR-M86b[26][27], BAUVA・XBR-M-86-C2[14][注 13](ティターンズ運用時期)[25], A・E-Br・XBR-87-C[20]
開閉式のターゲット・センサーと可動式のフォアグリップを備える[注 14]。E(エネルギー)パックを採用しており[注 14][注 15]、出力は2.6メガワット[29](Eパック出力は2.2メガワットとされる[30])。左側面にモード・セレクト・スイッチがあり、左を押すとEパック1基につき最大出力で3発、右を押すと低出力で7発の発射が可能[注 14]。出力の切り替えがOS・ソフトウェア依存式ではないのは機体と武装の両方が試作品であることから、運用テスト中に不具合が発生することを想定した上での措置とされる[30]。また、両側面後部に腰部側面にマウントするラッチを備える[注 14]。
ウェブ企画『A.O.Z Re-Boot』では、複数のメーカーによって同じモデルの製造が行われ、メーカーごとに異なる形式番号が付けられたと解説され、記事中ではBLASH・XBR-M86bが紹介されている[27]。
ビーム・サーベル
型式番号:XB-G-1048L[14](ティターンズ運用時期)[25], A・E-Br・G-Sc-L[20][32]
バックパックのバーニア・アームに1基ずつ、計2基が装備される[注 14]。出力は0.45メガワット[29]。形状は専用にデザインされているが、内装するビーム発振デバイスは標準的な規格品を改造したものである[33]。グリプス戦役前期の主力MSよりは出力がやや高いが、後期の新鋭機に比べると劣っている[29]。ビーム・ジャベリンとしては使用できない[34]。
バックパックにエネルギー・サプライ・デバイスが装備されており[35]、装着した状態でエネルギーを充填可能[20]。また、本体に小型のジェネレーターを内蔵しており、ほかの機体と比較して最大出力で長時間の使用が可能となっている[20]。鍔部にスイッチがあり[注 14]、マニピュレーターでオン・オフの切り替えが可能[36]。
劇中では、アッシマーにバックパックから奪われ、危機におちいっている。
バルカン・ポッド・システム
型式番号:VCU-505EX-Gry/Ver.009[14](ティターンズ運用時期)[25], VCU-505EX-V・B/Ver.012[20], VCU-505EX-V・B/Ver.021[32]
本機の頭部にはムーバブル・フレームを統合管理するプロセッサー・フレームが追加されているため、バルカン砲は外装式のオプション兵装とされている[20]。従来の機体では頭部に内蔵されているため装弾数が極めて少ないが、外装式にしたことにより[37]1,400発と増加している[38]。口径はRX-78 ガンダムと同じ60ミリ[39]。銃口は左側に斜めに2門あり(2門の砲口から交互に弾丸が発射される)、右側はマガジンで(バランサーを兼ねる)、この左右ユニットを給弾ベルトで連結した構造となっている[注 14]。左側側面と右側前面にリリース・スイッチを備える[注 14]。弾丸はカートリッジレスのため、空薬莢は排出されない[注 14]。
通常のバルカン砲と同じく、主に近接防御に適するが、一部の例を除いてMSに致命打を与えることはできていない[25]。
シールド
型式番号:RX・M-Sh-VT/S-0001B[14](ティターンズ運用時期)[25], RX・M-Sh-VT/S-001[20], RX・M-Sh-VT/S-008[32]
ガンダム試作1号機にも採用されていた[29]スライドによる伸縮機構を備えており[注 14]、慣性モーメントの調整が可能[33]。表面には耐ビームコーティングが施され、数回のビームの直撃を耐える性能を有している[20]。RX-78 ガンダムで採用されていたシールド同様に覗き窓が付いており、グリップはなく腕部のマウントラッチを介して装着する[注 14]。裏面にはビーム・ライフルのEパック2基を装着することができるが[注 14]、この状態では覗き窓は使用不可となる。
テレビ版『Ζ』第49話及び劇場版『Ζ-III 星の鼓動は愛』では、シールドをマウントする左腕が破壊されたため、応急処置として左肩の付け根にシールドを装着した状態で出撃している。
ムーバブルフレーム
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→詳細は「ムーバブルフレーム」を参照
ジム・クゥエルの腕部やガンダムTR-1[ヘイズル2号機]のポッド可動フレームなどの技術をより発展させたもの[16][24]。このムーバブルフレームを全身に採用した機体は本機が初となる[16]。本機に搭載されたムーバブルフレームの構造は斬新かつ優秀で、同時期に開発されたリック・ディアスやプロトΖガンダムに搭載されたフレームの設計を凌駕している。そもそもジオン系MSはモノコック構造、連邦系MSはセミモノコック構造と設計概念が異なっており、この時代のMSは両者を必要に応じて使い分けていた[19]。純粋な連邦系技術のみで開発することにより、統一したフレームで機体を構成するムーバブルフレームの発想に至ったとも言われている[19]。
ムーバブルフレームは装甲や武装を機体の基本構造(フレーム)と分離させることによってフレーム自身を可動優先の理想的な構造に設計することが可能であり[19]、装甲は可動に応じてスライドしフレームを保護するものである。これによって機体の運動性能が大幅に向上し、メンテナンス性も向上することになった。このムーバブルフレームにはフィールドモーター技術が使用されており[19]、フレーム自体が伸縮するうえ、ねじれることでストレスを軽減することが可能である。また、フレーム各部に設けられたヒンジやシリンダーは自重や加速、衝撃時の応力を分散させる機能も兼ねている。
フレームには各種のセンサーが内包され、得られたデータを頭部に設けられたコ・プロセッサーを介してメイン・プロセッサーに伝達するとともに[19]、プロセッサーから各アクチュエーターに指令を出し、応力や衝撃の分散を最適化する機能を有している。しかし、これらのデータはメイン・プロセッサーで統制しきれないほど膨大な量であったため、データに優先度を設けて処理がおこなわれている。
本機はフレーム材質の問題から関節軸の摩耗が生じたが、この偏摩耗の情報はデータ処理の優先度の関係から機体制御へ十分に反映されていなかった[注 10]。しかし、ムーバブルフレームの採用によって可動軸が増えたため、機体全体として偏摩耗による影響を無視することができなくなり、パイロットはこれを補正しながらの操縦を強いられた。これらの機体の不安定さが、後述する墜落事故をはじめとする事故の頻発の要因となっていた。後にエゥーゴはこれらの欠陥を改良し、本機を主戦力として活用した。結果として、本機はエゥーゴに強奪されることで本当の意味で完成したMSとなり、その性能を発揮することとなった。
また、本機はコア・ブロック・システムを廃し、一年戦争末期に提案された球形コクピットを発展させた全天周囲モニター・リニアシートを採用している。コア・ブロック・システムは「機体制御」と「パイロットの保護」の2つの役割を兼ねていたが、イジェクション・ポッドの採用でこれらを分離することが可能となり、機体制御を四肢にまで委ねるというムーバブルフレームへと昇華した[19]。
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