HGUC陸戦型ガンダム

「隊長、西側トーチカ群に攻撃を開始します！」

サンダースは180mmキャノンを地面に刺したシールドで安定させると砲撃を開始した。

「了解した。そこを殲滅して戦車部隊の進入路とする。頼んだぞ、サンダース」

「地図じゃ分からんけどこんな抜け道があるとわね」

エレドアは片手でヘッドホンを抑えながらコンソールパネルのマップを見た。

「元々小さな川だったんだけど干上がっちまってさ。そこが基地から丁度死角になるんだよ」

「流石だな～キキ」

ミケルは素直に感心する。キキはシローの陸戦型ガンダムから降りホバートラックに乗り込んでいた。

「だから川底に沿って行けばジオンには突然現れたみたいに見える筈だよ」

「よし、俺とカレンは基地に直接奇襲をかける!」

シローはそう言うと機体を走らせた。

「弾はいい!燃料だけ急いでくれ！」

オリバーはコクピットから機器のチェックをしながら整備兵達に指示をする。

「パドレス。お前は先に行け」

「ですがっ!」

「そのザクも貴重な戦力だ。オデッサが何故俺らを必要としているか、その意味は解るな?」

「…隊長、ドダイを残しますから必ず来てください」

「ああ」

パドレスはザクを滑走路に向けると輸送機のある方へ歩かせた。

「オリバー大尉、聞こえるか?」

「その声はエイプさんですか?」

「ああ、今コムサイから通信している。流石だな大尉。急ごしらえと言えど1人であれだけを相手にするとは」

「貴方のおかげです。礼をいいます」

「そのグフはもはやうちのMSだ。完成形の09が量産配備されればジオン地上軍は安泰だ。大尉、オデッサでまた会おう！」

エイプの声は明るかった。

「…では旅の安全を」

そう言うとオリバーは無線を切りコクピット内で一点を見つめる。

(…ジオンはこの戦争に負ける)

「隊長、敵MS来ます！数1、例のホバータイプです！」

エレドアが無線を入れ、ミケルがホバートラックの運転を担う。ホバートラックはカレン機と並走し前進した。

「確かに速い機動だ。カレン機は後ろについてくれ。俺が仕掛けてみる!」

「隊長がですか?…、了解!」

(指揮官自ら突っ込むなんてまた無茶を…)

カレンは呆れながらも段々この感覚に慣れ始めていた。フォワード(前衛)をシロー、バックス(後衛)がカレンが務めるフォーメーションを組む。シローの狙いはこうだ。射程は短いが広範囲をカバーできる100ｍｍマシンガン装備のシロー機が牽制し、高火力でロングレンジに対応できるビームライフル装備のカレン機が仕留める戦法だ。

(あれに似たMSを俺は知っている…)

シローは地球に降りる前に見た脚部が強化されたジオンのMSを思い出した。

(まさかあれにアイナが…?)

シローは走りながら射撃を開始する。先ずは案の定7小隊同様に弾は当たらず空を切る。

「今までの戦い方じゃ通用しないか!」

グフも左手の5連装マシンガンで応戦し、2機は互いを試すように射撃戦を繰り広げる。

「エレドア、7小隊の時にヤツに戦い方に特徴はなかったか?」

「特徴ってもなぁ…」

「…あっそういえば」

ミケルが思い出す。

「あのMS必ず接近して一撃で仕留めてます。格闘戦や接近戦が多くて戦車隊やジムもそれでやられてました」

「一撃?」

「ええ、電光石火の早業です」

シローは目の前のグフを相手にしながら頭を働かせる。グフの装備には確かに射程のあるものは見られない。だが一撃で仕留める所が気になる。なんとなくだがシローはある仮説を立てた。

(もしかしてあのMSは…)

「あれがガンダムというMSか…！」

オリバーも陸戦型ガンダムを相手に一筋縄ではいかないと感じていた。先刻のジムより動きが軽快で射撃も悪くない。普通のザクなら厳しい戦いになるだろう。だがこのグフは違う。

「腕が立つようだな…。ならコイツでどうだ!」

グフは急加速すると右腕からヒートロッドを蛇のようにうならせ射出する。

ヒートロッドはマシンガンやヒートソードといった直接的ダメージを与えるのでなく高電圧で内部に支障をもたらせる07特有の装備である。だがそれだけに扱いが難しい反面があり、射程の感覚や鞭を振り回し対象物に当てるモーション等は他のMSでは共通する所がなく独特な戦闘センスが求められる。

グフは腕を下から上に振り上げるように動かすとヒートロッドはそれに応えるようにしなる。

それを陸戦型ガンダムはシールドでガード姿勢を取りながら避けるが一部のシステムに異常を検知するアラームが鳴った。グフはヒートロッドを一振りするとすれ違うように直ぐに離れたが、その間にシローは戦闘に支障がないのを確認する。シローはミケルが言った通りの戦い方をするグフにある戦法で挑むのを決めた。

マシンガンを投げ捨てシールドもパージすると脚部からビームサーベルを２本抜き両手で構え格闘戦に打って出る。

「隊長！なんのつもりです⁉」

「無茶ですよぉ！正面からやり合うなんて?!」

カレンとミケルの心配をよそにシローは言う。

「もし俺の読みが正しければ間違いなくこの誘いに乗る。そしてヤツの弱点はその時に出る！」

「どういう事です?」

「カレンはビームライフルをスタンバイ。俺の後ろで何とか狙えるロングレンジの距離まで下がってくれ！」

「さあ来いっ！受けてやる!」

これに気づいたグフは迷うことなくヒートサーベルを抜いた。

「その意気込みは気に入った…。買ってやる‼」

オリバーはヒートソードを振り上げ陸戦型ガンダムに斬りかかる。

「やってみせるさ!」

シローは唾を呑むと全神経を集中させる。

グフは加速したままヒートソードを振り下ろすとシローはそれをビームサーベル2本で食い止めた。

「ほう、これを止めるかっ?!」

オリバーはこの展開に息を荒くすると力づくでガンダムを押し倒そうとする。

「踏ん張れっ！気持ちで負けるなっ！」

シローはそう自分を鼓舞するとコントロールレバーとフットペダルを駆使し機体の姿勢を保つ。すると押されていた陸戦型ガンダムは止まり反転攻撃に移る。陸戦型ガンダムはバーニアを吹かし今度は逆に押し返すとグフは後退し動きが一瞬止まる。

「やはりそうかっ!」

シローが突いた弱点は「瞬発力」であった。熱格ジェットエンジンにより高速移動を可能とした分、その速さに乗るまで時間が掛かり突発的な動きに対応しづらい。だからグフは動きを止めない一撃離脱戦法を主とし機動力を殺さず攻撃をしていたのだ。

するとシローはバーニアの出力を全開にし上空に跳び上がる。

「カレン、今だっ！」

シローは後方のカレンに合図を送る。

「まったく困ったお人だよっ！」

カレンはスコープを覗きグフを狙うが、このタイミングとは思わなかった。まさか格闘戦に誘い込んで動きを止めた瞬間とは。最大望遠で見るが的は思ったより小さく僅かな誤差も許されない。カレンはスコープの十文字にグフを合わせると引き金を引いた。

「連邦の奴、戦いの感が良いようだな。この短時間でこちらのウィークポイントをつくとは…、だがなっ！」

カレンの放ったビームはグフの横をかすめ直撃にはならなかった。オリバーもMS乗りとしては一線級の腕を持ち、更に経験値から連邦軍が何か仕掛けてくるのは想定していた。紙一重で機体を前に倒しビームを避けると今度はオリバーが攻めにいく。

「出し惜しみはなしだっ！」

グフはスラスターにまだ余力を残しており、ここぞとばかりに全開にする。そしてそれに伴うように砂煙が舞い上がるとグフも重力を振り切るように空に飛んだ。

「貴様のような感の良い奴は野放しに出来ん！」

グフは落下してくる陸戦型ガンダムに対し真正面から斬りかかる。シローはカレンの狙撃が外れ、グフが自分に向かって来るとは思わず僅かだが判断が遅れた。

「くそっ、体勢が間に合わない！」

すれ違いざまにグフの一撃はガンダムの右腕を切り落とすと振り返りホバリングの様にその場に浮遊する。そのまま落下するガンダムを見下ろすと次は仕留めるとばかりにもう一度ヒートソードを構えた。

陸戦型ガンダムは膝から地面に着くとその姿勢のまま動きを止める。シロー自身も着地の衝撃で身体を大きく揺さぶられ一瞬操縦が出来なくなる。「もらったっ‼」

大きく振りかぶったその時。一閃のメガ粒子砲がヒートソードを握ったグフの手を貫いた。炎と煙を上げながらグフは着地するとビームが撃たれた方角を見る。

「あの距離から狙ったのか？」

「つくづく世話の焼ける…」

カレンの顔から頬を伝って一筋の汗が流れ落ちる。こちらの最大射程限界からの狙撃だ。カレンは相当な集中力を擦り減らした。グフの胴体を射抜けばシローも爆発に巻き込まれる為、ピンポイントで腕だけを狙う必要があった。

「右腕がなくてもまだコイツがある！」

オリバーは左腕の5連装マシンガンをひざまずくガンダムに向けた。そしてトドメとばかりにトリガーを引くが弾は発射されなかった。

「ジャム(弾詰り)を起こしたか?!」

何度もコントロールレバーのトリガーを引いても反応せずオリバーも決め手を失う。

「運が良いな連邦のパイロット…」

オリバーは他からも接近するMSを確認すると基地へ引き返した。

「隊長!無事ですかっ⁉」

トーチカ群を殲滅したサンダースがシロー機に合流する。

「ああ何とかな」

するとホバートラックからも通信が入る。

「無茶し過ぎですよ隊長〜」

「ま、しゃーねーさ。無茶はうちの隊長のオハコだからな」

「まあ、シローらしいって言えばシローらしいけど」

「今回ばかりは肝を冷やしたな。ていうか何でキキが呼び捨てなんだよ！」

「細かいことは気にすんなよ!シロー!」

「隊長!」

カレンもここに集まる。

「カレンか。よくやってくれた。感謝する」

「いえ、初弾は外しましたので」

「でも流石ですカレン姐さん。あの距離から狙うなんて。結果的に隊長も命拾いしましたしね」

「前にも言ったろ。仲間なら信じ合わなきゃな」

ジオン軍は最終的に基地からほぼ全部隊が撤退に成功しオリバー大尉の功績は多大なものとなる。結果として地球連邦軍が基地を制圧したが、かなりの痛手を負い連邦軍としても勝利とは言い難い状況であった。

だがこの戦いから数週間後、地球のミリタリーバランスは大きく変わろうとしていた。

〜to be continued〜

皆様お楽しみいただけたでしょうか?

08小隊は好きな作品なので力が入りすぎた最終回となりました(；・∀・)

ではガンプラ紹介HGUC陸戦型ガンダムです。作りはいつもと同じですが陸戦型ガンダムはウェザリングが似合いますね。

顔も汚れているほどイケメンに見えます。つや消し

ホワイトにグレーを混ぜて塗装しましたが最終的に汚しとつや消しをするのでグレーは控えめにしました。陸ガンの白って悩む所で設定画によってはかなりグレーの印象が強いものもあり好みが分かれると思います。

リアビューですが細かい所にデカール貼ってます

今作出演のガンプラキャストの皆さん。様々なポージングお疲れ様でした。

次回は特別短編として陸戦型ジムを予定してます。一応08小隊が舞台ですが箸休め程度のショートストーリーにするつもりです。それが終わったら自作の為のまたガンプラ作りに励むので少し更新まで間が長くなります。

皆さんまたコメントしてくれたり見てくれたら嬉しいです(∩´∀｀)∩

では〜