HGUC ザクⅡ改(トライバル隊一般機仕様)

「クソっ、いい動きしやがる…！」

ゼノは頭部バルカンで牽制しつつビームライフルで仕留めようとする。しかし敵のザクの機動力は従来のものとはひと味違った。それに加えて性能だけでなくパイロットの練度の高さも垣間見える。残骸を避けながら確実にこちら動きを捕捉し射撃を行っている。それは並大抵の技術でなく実戦経験の豊富なゼノをも唸らせた。

「おいおいっ、なんだってサラミスがこんな前にっ!!」

ゼノの後ろから応援で来たサラミス級バンクーバーが前線まで上がってきた。先にやられたリヴァプールとセントルシアの乗組員を救助するのに前まで来たと思われるが少々迂闊である。

「敵の数が少ないからって強引に前に居座ろうってか!?」

ゼノがそんな心配をしている最中、ジムは次々に撃墜されていくが、いまだにザクに傷一つ付けられていない。戦場へのMS投入に出遅れた地球連邦軍は数こそ徐々に揃い始めたが、戦術や運用においてはまだジオン軍が先を行っていた。

「引き剥がせない！何でザクがあんな動きをっ！」

チェスターもゼノに続いて乱戦の中に飛び込むが、戦況は優位とは程遠かった。寧ろ後ろにつかれ煽られている。

「白兵戦がこんなに始末が悪いなんてっ！」

爆散したサラミスの残骸や味方MSを避けながら翔ぶが思うような機動が描けず苛立ちを露わにする。

「チェスター！出過ぎだ！もっと冷静になれ！」

「分かってますよっ！」

「分かっていないっ！もっと俯瞰で全体を見ろ！」

「何なんですかっ!?」

「お前一人が戦っているんじゃない。ここには敵味方だけでなく色んなモンがあるんだ。うまく使えっ！それからっ…！」

「言われなくたってっ！」

問答しつつチェスターはゼノの言葉を遮りジムを動かす。

「全く、あれじゃただ掻き乱しているだけだ」

ゼノは自身もザクを相手にしながらチェスターの動きも把握している。やはり経験の差が出ているがチェスターはそれには気づかず、ただひたすら目の前のザクに掛かりっきりだ。

「だから言った！今度はあっちかよっ!?」

戦況はどんどん流れていく。次はサラミスが悲鳴をあげる。メインブリッジが被弾したようで、そこから炎と煙があがり船体を赤く照らす。

「やはりおかしいっ⁉ザクにあれを落とすだけの力はない筈だ」

ゼノは先刻から妙な違和感を感じていた。敵のザクが並ではないのは分かる。しかしあのザクの装備から巡洋艦がこうもいとも簡単に落ちるのには些か不可解だと頭の片隅にあった。

(…敵はまだいる！)

「着弾確認。エネルギー残量32%、ジェネレーター出力異常なし。対象目標への誤差コンマ4、マニュアルにて修正。次発射まで再充填開始。発射まで76秒…あと一発がいいところか」

「もらったっ!!」

ゼノはチェスターを追い回していたザクⅡ改の後ろにつく。チェスターに気を取られ夢中になっているザクの隙をつきビームライフルを放つとヒートサーベルを持った左手にヒットした。

(狙いが甘いっ！)

ゼノは確実に胴体を狙っていたが、僅かに逸れてしまう。致命傷には至らなかったザクⅡ改はゼノに気づくと振り切ろうと急上昇する。立て続けにビームライフルを連射するがザクの加速力を前にビームは絣もしなかった。するとザクⅡ改の2機は不意に方向転換をし、この場を離脱する動きを見せる。

「畜生！逃がすかっ…！」

チェスターは逃げるザクⅡ改の背中を狙うが、味方の残骸に遮られ狙いが定まらない。自分が射撃位置に着こうとすると、悪戯に破片が流れてきて、まるでからかっているようだった。

「…くそっ…くそ、くそ、こんなはずじゃないんだーっ」

チェスターはヘルメットの中で響く程絶叫した。

「……俺は、俺はもっとやれるんだ…」

チェスターは額から汗を流し息を切らせながら2機のザクⅡ改の背中を見つめた。ジムスナイパーカスタムのロングレンジ限界まで使い再度狙撃を試みるが、ゼノが近づきそれを静止する。

「もう止せチェスター、終わったんだ」

機体を寄せお肌の触れ合い会話で直接通信で呼びかけた。

「…俺は…、俺は…」

「落ち着けチェスター。敵はもう引いたんだ」

「この機体で何で…、何でもっとうまくやれないんだ…」

興奮と落胆が混ざり合い冷静さを保てなくなっているチェスターにゼノは言う。

「お前が満足のいく結果が残せなかったのなら、それはお前の甘さが原因だ」

「そんな事っ！」

「だから分かってない。テストパイロットだと鼻高々になり自分が何者か理解していないんだ」

「…説教ですか?」

「お前の今日の戦い方は0点だ。あのような戦い方をしていたら味方を巻き込みかねない。まあ今のお前には言葉より拳で教えた方が良さそうだな?上官として帰ったら修正してやる」

「…………」

「遠くからとは、やはり性に合わんな…」

モア・グレイシーは落ち着いた前線を眺めると呟いた。

「次弾までまだかなり時間がかかる。再充填と冷却装置にまだ改良の必要があるな」

計器やシステムに不具合がないかチェックし友軍機へレーザー通信を入れる。

「こちらトライバル・リーダー・ウォーリア01から各機へ。護衛対象のコムサイは予定進入路で大気圏突入を開始する。作戦終了につきこれより当宙域から撤退を開始する」

モアは機体を反転させるとその場から離脱した。

「私が出るまでもなさそうだな、軍曹?」

「そのようで。席に着いてください、大佐殿」

そう促されると赤い軍服を身に纏った若き士官はコクピット後部の座席に座りシートベルトを締めた。

「大気圏突入前には良い記憶がなくてな。心做しか落ち着かずにはいられなかったよ」

「そうでしたか」

「もっとも連邦の艦を見たときはキシリア殿に一杯食わされたかと思った次第だ」

「…まさか。大佐に昇進早々でそれは…」

「連邦へ私の首を手土産にするか、あわよくば不慮の遭遇戦を装い撃墜されるか。その為の昇進だったかも知れん」

「…………」

「少々口が過ぎたようだ。にしても我軍にも骨のある部隊がいるようだな?」

「ええ、詳細は知りませんが特務の者のようです」

「ほう、私が行くマッドアングラーも敵の大部隊に対しこれくらい気概のある連中だと頼もしいがな」

「ご武運を祈りますよ。大佐殿」

〜to be continued〜

第二幕「青き星の上で瞬くのは」〜完〜

第二幕無事完走！観ていただきました皆さん誠にありがとうございますm(_ _)m

地球連邦軍の試験隊を中心に物語は展開しましたが最終回はトライバル隊隊長、更にゲストに赤いあの方が登場いたしました(´∀｀*)ｳﾌﾌ

ではガンプラ紹介。ザクⅡ改(トライバル隊一般機仕様)ですが以前のキリュウ機(第一幕より)の頭とランドセルを付け替えたものです。特に見どころは前と変わらないので細かい所は割愛します（；^ω^）

指揮官機ではないので角なし

プロペラントタンクもなしです。

第一〜ニ幕は各陣営の紹介を主体にした物語でしたが第三幕は両軍をフォーカスした前編になります∠( ﾟдﾟ)／

ここで登場するある機体が私のガンプラ人生で指折りに入る物となり、作っている最中に手の皮捲れました(TдT)

まさかの「ビックリ」するかも

製作中で先行のエピソード0も載せる予定ですので、そちらもぜひご覧ください!

あと、まだ第一幕を観てない方も良かったら見ていってください。更に一年前にはアツい夏にピッタリ08小隊スピンオフも投稿してますのでどうぞ！

08は好きなんでまた作品作りたい〜

また見てくれたら嬉しいです！

(人∀・)ﾀﾉﾑ