妄想戦記
トリントン基地襲撃から撤退に成功したイフリートシュナイドは袖付きの潜水艦に救助され、撤退に成功していた。
「艦長、どんだけ感謝してもしきれないよ」
パイロットのフレッドは艦長のロイ・キサラギに惜しみない感謝の言葉を贈った。
二人の視線の先では、潜水艦の格納庫で修理を受けているイフリートシュナイドが鎮座している。
「さらには強化まで面倒見てもらえるなんてな」
「同志への協力は惜しまんよ」
「ははっ光栄だね、それで‽修理したイフリートと俺に何をしてほしいんだい?」
「……」
ここまで手厚くされて見返りを求められないと思うほど、フレッドは子供ではないし、むしろこれで何も要求されなければ何の裏があるのかと疑う程度には世間にもまれてきた。
無言でついてくるように促され、案内されたのは艦長室だった。
よほど人に聞かせられない話らしい。
「君には一つのユニットを破壊してほしい」
「ユニット‽何かの部品か?」
「いや、それ自体は完成している戦略兵器だ」
「物騒な単語が混じって来たな‽資料はないのか‽」
「ない。すべて破棄したからな詳細は私の頭の中にしかない」
「資料も残せないなんてどんだけやばいもんなんだよ‽」
「これから語るものがすべてだ。なのでミッションを終えたらすぐに忘れてほしい。まあ最後まで聞いたらさっさと忘れたいと思うかもしれないが」
全ては一年戦争時、ニュータイプ研究所以下NT研が一つの試作品を作り、地球に降下させたことにある。
UVによって降下したそれはしかし、地上のジオン軍が回収するはずだったが降下中に位置情報を伝えるビーコンが消失、連邦に撃墜されたのではないかと思われていた…のだが…。
「それが最近になって現存している可能性が出てきた…っと‽」
「その通りだ」
「こういっちゃなんだが、一年戦争時の兵器がいまさら出てきたところで意味があるのか‽」
トリントン基地を襲撃したからこそわかる。
技術の進歩はもはや手に負えないレベルに達している。
トリントン基地にあれだけの損害を出せたのは相手の練度不足が大きいとにらんでいるがあながち間違いではないだろう。
そんな世界に、いくら一年戦争時には最新鋭だったとはいえ、今では型落ちになっているだろう兵器が一つ発掘された程度で何がどうなるというのだろうか‽
せいぜい博物館の展示物が一つ増えるだけだ。
「そう思うのは仕方がない。しかし、このユニット【バーサーカー】は話が違う」
「どう違うんだ‽」
「これはな、伝説の一騎当千を現実にしてしまう可能性がある。物がユニットだから一基当千かもしれないがね」
部屋の温度が数度下がった気がしたのは面白くないジョークのせいではないだろう。
「君はNT能力の一つに他者との精神感応能力があるのは知っているか‽」
「戦場の眉唾話としてなら、何でも一人のNTが戦艦のクルーを避難させるのに使ったとかどうとかという」
「その話、おそらく本当だ」
「マジかよ」
「NT研の実験で実際に同様な事例が確認され、それが【バーサーカー】開発の発端になったらしいからな」
ロイは語り始めた。
ホワイトベースの例を見るとNTではない人間にもNTの精神感応は影響を及ぼしていた。
ならば問題は才能ではなく出力となる。
そしてNT同士の精神感応においてイメージを贈ることも可能なことは確認されていた。
「ということはだ。間違ったイメージを送り込むことは理論上可能ということになる。フレッド君‽今君の目の前にいる私が連邦の憎むべき相手で、そうだな…武器を構えているとしたらどうする‽」
「問答無用で撃つだろうな」
「そういうことだ。これを連邦相手に使うと周り全ては敵に見えて同士討ちするだろう。あとは生き残った少数を処理すればいい。資源の少ないジオンにとっては喉から手が出るほど欲しい兵器だっただろうな」
「ことばがでねえ」
これは確かに文字通りの意味で一騎で千に当たるの故事を体現する兵器だ。
影響範囲次第では万にも届くかもしれない。
兵器の質など関係ない…いやむしろ強力であればあるほど被害は拡大する。
しかも精神感応など防ぐ手段も思いつかない。
「その【バーサーカー】があっちゃいけない兵器だってのはわかった…が、一つ聞きたい。あんたこれを回収ではなく破壊といったな‽袖付きも懐事情はよくないだろう」
「…ロマンチストかもしれないがね、戦争とはいえ超えてはいけない一線というのはあると思うんだよ。これを開発したのはNT研と言っただろう‽それだけで察してくれ…詳細を語りたいとは思えないんだ」
「そりゃ…」
ジオンの闇ともいえるNT研、そしてあからさまにNT能力を利用した兵器…NT能力の機械化はこの時代になってもなされていない。
となれば、だ…どう転んでもろくでもない話にしかならない。
「戦争は終わらない。しかし世代交代位は認められてもいいだろう‽”彼ら”ももう安らかに眠りたいだろう」
「…一人じゃねえのか‽」
「リビングデット部隊っていうのを知っているか‽」
「確かジオンの四肢欠損した傷病部隊だな…まさか…」
「少し話はずれるが、人が最もパフォーマンスを発揮する状況とは何かわかるか‽」
「生死がかかった状況だ」
実際、そういった状況を何度も潜り抜けてきたフレッドは即答した。
それに異論はないのかロイもうなづく。
「それを前提とすると宇宙世紀になってNTの存在が確認されたことにも理由が付く、我々は宇宙服や隔壁に守られる事で宇宙でも生きていられる。しかし、だ。逆に言えば布一枚、壁一つ向こうに出れば真空と宇宙線で即死する。宇宙にいる間、我々は常に命の危機に直面しているというわけだ。それは新しい能力の一つや二つ発現してもおかしくはないと思わないか‽」
「…そりゃあ環境適応だろ‽ダイクン様のNT論とは違うんじゃないか‽」
「さて、何を持ってNTというのか明らかにしないまま彼の御大は遠い所に行ってしまったからな、話を戻すが、そんな宇宙という空間で戦場という極限まで命の危険を感じる環境にハンデを背負って居続けた場合、NTに目覚める可能性はどれだけ高まるのだろうな‽実際、サンダーボルト宙域で部隊壊滅する間際には傷病兵の一人がNTに覚醒したという話もある」
「兵士を追い込んで覚醒を促し、兆候が見えれば…元々傷病兵だから適当な理由付けで後方のNT研にご案内ってか…最悪だ」
「最初から聞かない方がいいと警告していただろう‽ついでに言えば自分の腕や足を奪った相手はさぞ恨めしかろうな…無理もない」
「最悪だな」
「だからこそ、終わらせてやりたいのだよ」
「誰だよこんなこと考えた奴は‽」
「NT研が絡んでいるという時点で察してほしいな」
「コロニー落としといいこれといい。あの一族にはろくな奴がいねえな」
「ドズル閣下とガルマ様、後デギン公は割とまともだったよ。長兄と長女が突き抜けたろくでなしというだけだ。今頃二人そろって地獄の責め苦を受けているだろう。仲よくかどうかは知らんがね」
「…いいだろう。このミッション、受けるのに異論はねえが、上層部から文句は来なかったのか‽」
「変な事を言うな、誰だって知らないことに文句なんて付けられるわけないだろう‽」
「つまり情報を握りつぶしたか…あんたバカだろう‽」
「そんなバカな自分が大好きなんだ」
思わずフレッドは噴出した。
彼自身そういうたぐいの人間であり、こういう考えは好物だ。
翌日ー
「フレッド、イフリートシュナイドアーマード、発進する‼」
潜水艦の発進口から追加装備を付けたイフリートシュナイドアーマードが出撃した。
イフリートアーマードシュナイド
本来のイフリートシュナイドに追加装備を施した形態、主に足とバックパックに追加のバーニアを追加して推力を上げた奇襲メインの装備、武器の射程の問題から刀上のブレードを日本追加し、右手のクローは射出して敵に突き刺すことができるうえ、電流で感電させる機能も搭載されている。
射撃武器が少ないのはできるだけ音と光を少なくして奇襲力を高めるためである。
最後まで見ていただいてありがとうございます。
クナイだらけのスタイルに惚れました
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しがないプラモ好きですが、頑張って作ったのでよかったら見て行ってください。
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