「…よし、ここに置いて、…いいぞ」
「パパ、イスはここでいい?」
そうだね。そう言って息子の顔を見る。星明かりでうっすらとしか見えないが、赤く蒸気しているのがわかる。よほどこの週末を楽しみにしていたのだろう。早く、早くと言いながら、設置した天体望遠鏡をいじり始める。
「おいおい、星は逃げないよ」
そう言って望遠鏡のレンズを調整すると、隣で待ち遠しくしている息子に覗かせる。同時に息子の歓喜の声があたりに響く。
「…うん、見えるかい?…じゃあ、あっちを見てごらん。…望遠鏡から目を離して、あそこ、あれだ」
ほら、星が三つ並んで見えるだろう。そう言いながら、オリオン座の「腰」にあたる部分、オリオンのベルトを指差す。
「見えたよ!じゃあ、…あれが、ペテルギウス。あそこがリゲル…だね!」
すごい!勉強して来たのか?…どうやら、今日のことを相当楽しみにしていたのだろう。ペテルギウスは脇の下、リゲルは足って言う意味があるんだ。そんな話を聞く息子の顔は、満天の星空に負けないくらい、キラキラしている。
子供特有の熱を持った息子を抱き抱えるように座る。もう十月も半ばを過ぎ、夜になるとひどく冷え込んでくるのだ。抱き抱える息子の手を優しく包み込むと、その息子の指で星々を指す。
「あそこがオリオン座。その周りには双子座、おうし座、エリダヌス座、うさぎ座、いっかくじゅう座がある」
そう言いながら、息子の指でそれぞれの星をなぞって見せる。
「あのオリオン座の三つの星、あそこから南東、…下の方にいくと、すごく明るい星があるよね?…あれがおおいぬ座のシリウスだ」
息子はもう夢中だ。
「…あのシリウスと、こいぬ座の、…あれだ、プロキオン。そして、あの赤いペテルギウスで、見てごらん、…冬の大三角だ」
息子の指で大きく三角形を描く。抱えた息子が感嘆の息を吐くのがわかる。
「じゃあ今度は、ペテルギウスを中心に、リゲル、シリウス、プロキオン。…双子座のポルックス、ぎょしゃ座の、…カペラ、…おうし座のアルデバランで、…六芒星を描くと、…六芒星、わかるかな?…こうだ、冬のダイヤモンドだ」
…はしゃぎ、夢中になって星空を仰ぎ、望遠鏡を覗き込む息子のダウンジャケットのジッパーを首元まで上げてやり、ニット帽を目のすぐ上まで被せ直す。これじゃあ何も見えないよ。と言う息子に、
「寒くなってきたな、ホットココアを淹れてくるよ。…ほら、望遠鏡を覗いておいで」
そう言って、少し離れた所に停めた車に向かう。ココアを淹れ、二人分のマグカップを持って歩く私の耳に楽しげにはしゃぐ息子の声が聞こえてくる。
「すごいね!パパ、オリオンの”四つ”星にはすごく明るい星があるんだね!」
四つ星?…はは、三つ星だろう?そう言って息子の隣に立ち、星空を見上げる。それと同時に息子は言う。
「…ほら!オリオンのベルト。”四つ”の星が並んで…、すごく光っているよ!」
……何だ?あれは、おもわず目を見開く。…あんな所に星は、無い。隣で息子は喜びの声をあげている。
「パパ、パパっ!だんだん明るくなってくるよ!すごい!」
見せてくれ、望遠鏡から息子を退けると、慌てて覗き込む。その間も息子は空を指差し、すごい、すごいと繰り返す。
「あれは、何だ。…何だ。…アレは」
息子の声を聞きながら、私は見る。レンズの向こうのそれを、あれは星なんかじゃ無い。あれは、アレは、光を増しているのでは無い。アレは、大きく、…いや、「こちら」に向かって来ている。…こっちに、…向かって来ているのか?
望遠鏡から目を離すと、急いで隣の息子を抱え上げる。その時には息子もただ事では無いと気付いたのだろう。顔色もいつの間にか真っ青になっている。
「…パパ」
大丈夫だ。大丈夫、そう言ったものの、声が、足が震える。息子の重さを感じながら、車へと走る。不意に、後ろを見ている息子が叫ぶ。振り返った私が見たもの、それは。
その光は、いや、その「飛行体」は、光り輝くそれは、私達の真上で音もなくピタリと止まり。目も眩むような光を放つと…。
「パパっ、パパっ!…こわいよ」
息子の声が聞こえる。息子の重さが感じられる。眩い光の中、それすらも、…徐々に、…失われて、…そして
rX-ファイル 見下ろすもの
薄暗い部屋だ。たまに蛍光灯が目障りな点滅を繰り返す。空調機のファンの音も不愉快だ。部屋自体の広さはそれなりだが、今は自分一人だ。見ていた資料を傍に避けると、鼻と上唇の間に挟んだペンを揺らし、イスの背もたれに身体を預け大きく伸びをする。ギシギシと鳴るイスで数回転、イスが止まった目線の先の、壁に貼ってある写真に目をやる。大きく引き伸ばしたピンぼけ気味のその写真には、ひっくり返した底の深い皿のような銀色の物体が写っている。その横には、手書きで書かれた「I WANT TO BELIEVE(私は信じたい)」の文字。
伸びきった身体をほぐした僕は、さっきまで見ていた資料とは別の紙、そして写真の束をデスクに広げ眺める。…僕の名前は、デイビッド・モールダー。地球連邦政府内にある、地球連邦捜査局(Earth Federal Bureau of Investigation)、通称E.F.B.Iの捜査官だ。司法省の警察機関として主にテロやスパイ、汚職をはじめ様々な広域事件を捜査するのが僕達の仕事だ。で、その中にあって僕はというと、ここが僕の、僕達の課の部屋。通称Xファイル課と呼ばれる、この宇宙世紀にあってなお存在する未確認、科学では説明のつかない何かを捜査するのが僕達の部署だ。…まあ、いわゆる閑職とも言える。でも、僕にとってはここは楽園だ。
コンコン。開けっぱなしのドアをノックする音がする。
「ちょっとモールダー。あなたまだ、そんな所で何をやっているの?…スキナン副長官が呼んでいるのよ」
ドアの方、声の主を見ると、豊かなブロンドを揺らし、首を傾げながらデスクをまわり込みこちらにやって来る女性の姿。…彼女が、僕の相棒。ジリアン・スカーリ捜査官。捜査官でありながら医師、そして科学者でもある。素晴らしい女性だ。
何度か電話したでしょう。そう言うスカーリの声にデスクの上の電話機を見ると、赤いランプが光っている。
「資料はちゃんと読んでいるし…、だいたいスキナンの用事は何だ。これは只の行方不明事件だろう」
スカーリのデスクの上のさっきまで見ていた資料を指差し言う。きちんと整理された彼女のデスク、僕のとは大違いだ。イスから立ち上がりジャケットを着る僕の背に彼女が言う。
「残念、只の行方不明事件から、あなた好みの行方不明事件に変わったのよ」
「僕好み?」
「…ああ、そうだ」
不意にドアの方から、声がする。そこには、禿頭に眼鏡の男が、怒ったような、呆れたような顔で僕達を見ている。ミッチ・スキナン副長官。…僕達の上司だ。
「只の行方不明者が出た地点を中心に、高速で飛行する"謎"の飛行体の目撃証言が複数出ている」
彼は「謎」の部分を強調して言うと、続きは私の部屋でだ。そう言って行ってしまう。
「全く、私を呼びに来させるな!ここは地下三階だぞ」
廊下を行くスキナン副長官の声が響く。
資料 目撃証言
ああ、あの夜だろ。覚えてる。あの日はさ、ストロングズ(ベースボールチーム)が負けちまってむしゃくしゃしてたんだよ。だってよ、あそこでアイツを代打で出すか?あの監督わかっちゃ無いだろ(しばらくその監督に対する愚痴が続く)。…あ、ああ、すまねえ。ああ、あの夜だったな、まあ、そんなんでオレは腹いせにビールを空けてたんだ。…ありゃあ、三本目、四本目だったかな、犬がよう…。ああ、コイツな(隣にいるバセットハウンドを撫でる)、コイツがさ、吠えるんだ。…普段はおとなしいんだが、んで、吠えかたがおかしくてな、…あ?いつも一緒なんだ。吠えかたの違いくらいわかるさ。で、様子がおかしいなって外に出てみると、コイツが道の真ん中で吠えてる。呼んでも来ないからさ、そばにいってみたんだ。そん時気づいたんだよ、コイツ、上見て吠えてるって、…で、見たんだよオレも、あっちだ(東の方角を指差す)、あそこらへん。んーなんて言ったらいいんだろうな。銀色の、…金属のボウルみたいのがな、飛行機…じゃ無いと思う、なんて言うか、浮いてた?…止まってたからな。しばらくあそこに居た?んだもの。…しばらく見てたらさ、コイツの吠えかたが、…え、ああ、ずっと吠えてたよ。吠えかたがさ急に変わったんだよ。ああ、それまでワンワンって感じだったのが、ヒャンだとかキャンって感じに、見たらさ、コイツ、尻尾を後ろ足の間に隠して、あっち(道路の向こうの森を指差す)を見て鳴いてるんだ。…初めてだよ、コイツがあんな鳴きかたするの、んで、もう動こうとしないからさ、オレも何だか怖くなって…。コイツを引っ張って、やっと家に入ったんだ。…え、その浮いてたヤツ?家に入る時に見たんだが、もう何もいなかったんじゃないかな?
<添付された画像はその時に撮影されたもの>
「聞いているのか?スカーリ?」
ハンドルを握るモールダーが聞いてくる。ええ、聞いているわ。と私は窓の外を見ながら言い返す。車で数時間、私達は行方不明事件が起きた現場に近い街、そしてその北に位置する空軍基地に向かっている。といっても、直接基地に行くわけではないのだけれど。
「〜件の目撃証言があって…」
この数時間、車の中ではずっとこの調子。E.F.B.Iの中でもトップクラスのスプーキー(変人)と呼ばれているだけある。…もう慣れたけど、でも絶対に彼の方は見ない。…多分、いや間違いなく得意げな顔で話してると思うから。
「……例えばフーファイター事件。旧世紀の1942年、大戦末期に南太平洋上ソロモン諸島上空で目撃された。十数機の銀色の飛行体が、編隊を組んで飛んでいるのを陸、海、空、多数の兵士が見ている」
モールダーは続ける。運転しながらサイドポケットの地図を広げようとするのを、半ば奪い取るようにして広げてやる。狭い車内で広げられた地図には、今向かっている基地を中心に、その付近にある街、その周囲には複数のマル印が書かれている。運転しながらモールダーはそのマル印をなぞる。
「…さっきダイナーで書き込んでいたのはこれ?」
ミートパイをこぼし、所々油でシミになった地図上の印を順番に指差しモールダーは言う。
「目撃証言の場所を記してみた。こっちから、時間ごとに、…こう」
ちょっとモールダー、前を見て運転して。ふらつく車を落ち着かせると、再びモールダーは話し始める。
「旧世紀1942年のロサンゼルス事件、そして1952年のワシントン事件。これらの事件は街の上空を何か巨大な飛行体と思われる物体が通過して行った。街の上空だったこともあり、かなりの目撃証言があったみたいでね、軍が上空の物体に対し発砲した記録も残っているそうだよ」
モールダーの話は続く。
「目撃者の証言によれば、夜の空に複数の強い光がまとまっていた。と言う証言も多い。…これは、旧世紀1997年3月13日20時頃、アリゾナ州フェニックス上空で目撃された、フェニックス事件に似ている。五つ、もしくはそれ以上の光がV字や三角形の形を作り飛んでいた。と言う事件だ。この光は、十年後2007年2月6日に再び出現したそうだよ」
モールダーの話には終わりがない。彼の話を遮るように、広げられた地図の一点を指し、
「目撃証言があった場所は、今向かっているこの基地を中心に広がっているわ。地図によればここは連邦軍の空軍基地。単純に試験機か何かのテスト飛行。みたいな考えにはならないの?」
渋い顔をするモールダー。私から地図を奪い取ると言う。
「それは無いよスカーリ、見ろよ、この基地の規模を。試験か何かをやるとすればあまりに小さい。地形もテストには不向きだ。滑走路も足りないだろうしね。…まあ、地下に広大な秘密施設があるんだったら話は別だけど。それに、この基地はすでにティターンズに接収されているよ」
資料 目撃証言
あの晩のことは覚えているよぅ、…そうだねえ、五人、六人だったかな、ああ、アンドレが居たから六人だねえ。…アンドレ?ああ、ウチの常連さあ。みんないい感じに酒が回ってたと思うよ、あっ、酒の所為だ。って言うつもりはないよう、神に誓ってね。だってみんな見たんだもの。酔いだって一気に冷めちまったんだからね。…常連の一人がさ、真っ青な顔で店に飛び込んで来たんだ。大変だって、で空がだの、空にだの言うからさ、オーナーが様子を見に行ったんだ。そしたらオーナーも青い顔でカメラだ、カメラだって奥にいっちまったんで、みんなで外に出てみたのさ。あたしらみんなお祭り騒ぎが好きだからね。だってさ、気になるだろう、大の大人が二人も青い顔してさぁ。…そしたらさぁ、あそこ(北の空を指差す)、あそこにさ、浮いてたんだよ。こう、銀色のがさ、ふわふわって(手をヒラヒラさせる)、…え、飛んでた。じゃなく?…違う、違う、こう、ふわふわって、風船みたいにさ。だってあたし、近所のセールの風船だと思ったもの。でもあれは風船なんかじゃあないね。銀色のキラキラした光り方じゃないもの、なんか金属の光り方だもの、うまく言えないけどさ。…え、一人で見たか?って、みんないたよう、みんなで見たんだよう。アンドレなんかさ、図体のわりにポカーンって口あけてさ、フフッ。オーナーなんて、夢中で写真撮ってるしさ、…写真?それなら店の中に貼ってあるよ。オーナー沢山撮ってたからさ。…他に変わったことは無かったかって?うーん、そうね、あっ!そうそう、最近店に来るようになったお客さんでさ、元軍人って人がいるんだけどさ。ほら、ずっと北の方に基地があるだろ、そこの人だったんじゃないかってみんな言ってるんだけどさ。…え、その時一緒だったかって、いたよう、いたいた。その元軍人さんがさ、…え、名前?知らないよう。その元軍人さんがね、言うんだよ。あれを見上げながらさ、ブツブツとさ、「俺は知らない」って。しばらく言ってたげど、急に頭を抱えてさ、知らないんだ。って叫んでどっかいっちまったよ。…あれから見てないねえ。…気にならなかったかって?それどころじゃなかったよ。だってあれがさ、こう、浮いてたと思ったらさ、急に上にいったり、下にいったりってさ(手のひらを上下に動かす)、何回かさ、行ったり来たりしたと思ったらさ、ビューっていっちまったんだ。…うん、ビューってさ(北の空を指差す)。
添付された写真はその時オーナーによって撮影されたもの
「そうだ、スカーリ。ティターンズといえば、こんな話は知っているかい?」
顔を綻ばせたモールダーが話し始める。
「…オーロラ計画。地球製のUFOを作ろうっていう計画があったんだ。その形状は、三角形、または、三角錐だったって言われてる」
「それと、ティターンズに何の関係があるっていうの?」
それだよ。と、モールダーは言う。
「オーロラ計画で作られた機体、旧世紀1994年から地球外の技術を使って開発された言われる。"TR-3B"コードネーム、アストラと呼ばれている。当時、アメリカで多発した黒い三角形の未確認飛行物体の目撃例はみんなそれだと言われてる。ブラックトライアングル、ブラックマンタなんて呼ばれていたらしいね」
「ふーん、その、名前がどうしたって言うの」
「名前じゃないよ、スカーリ。型式番号、TR-3B。TRナンバー。知ってるかい、今、ティターンズ内部では、TR計画なんてのが行なわれているそうだよ」
そこまで言ってモールダーは、何かを思い付いたように鼻の下に指を当てる。
「…そうか。目撃証言にあった飛行体は、そのTR計画に関連するものなのかもしれないな」
「でも、モールダー。今、ティターンズは宇宙にばかり気を取られているでしょう」
エゥーゴの主力は、今、宇宙に広く展開しているからね。モールダーは言う。
「…宇宙での決戦を考えるとしても、このタイミングで彼等が地上用の試作機、それもMAタイプを作るとは考えられない」
そう言ってしばらく考え込むモールダー。…何にせよ、今、向かっている基地がティターンズのものになっているのであれば、おそらく一筋縄ではいかないだろう。…あの連中、ティターンズだって言えば何をやっても許されると思っているんだから。
「そう言えば、スカーリ。ティターンズのMAタイプといえば、こんなのは知っているかい」
…また始まった。見れば、嬉々とした顔のモールダーと目が合う。…私の顔じゃなく、前を見て運転して。
「旧世紀2009年、12月9日深夜、ロシアクレムリン上空に奇妙な物体が出現した。それは、ピラミッドを上下に二つくっつけたような形をしていたそうだよ。P・UFO。ピラミッド型UFOだ。これは、2014年以降にかけて、各地で目撃されていたらしいね」
「…それが何か関係しているの?」
「ティターンズが開発した試作機の中に巨大なピラミッド型をしたMAがあるんだ。通称サイコシップと呼ばれたそれは、その名の通りサイコミュを搭載したニュータイプ専用機だったらしい。…名前は、何だったかな。確か、ゲム…、ゲミヌス…だったと思う」
「…つまりは、目撃証言にある、飛行物体はそういった試作機の類いかも。ってことなんでしょう」
「…これらの奇妙な符合は無視出来ないよ、スカーリ。こうした未知の技術、地球外の何らかの存在が、ティターンズ、しいては連邦軍をも裏から動かして…」
…モールダー。あなた疲れているのよ…。呆れ顔でモールダーを見る。落ちてきた日の光がモールダーの顔を照らす。…目的地は近い。
資料 目撃証言?
……あ。大きな星がついたり消えたりしている。…あはは。大きい!…彗星かな?いや、違う。…違うな、彗星はもっと、バァーって動くもんな!
「こっちだ!スカーリ!」
深夜、あまり星も出ていない闇の中、モールダーは丘を登る。この丘の向こうは例の基地だ。私達は、夕暮れ前に行方不明事件のあった街に着くとすぐに聞き込みをした。案の定、その小さな街は、行方不明者の話題。そして、それに劣らず謎の飛行物体の話題で持ちきりだった。それにモールダーが食い付かないわけが無い。
「スカーリ!」
丘の上でモールダーが呼ぶ。…基地は逃げないわよ、モールダー。丘を登りきり、身を低くして基地を見下ろす。広大な敷地をぐるりとフェンスで囲まれた何の変哲もない基地。気になるといえば、必要以上に掲げられたティターンズの旗。ほとんどの建物に大きく描かれたティターンズのエンブレムが目立つぐらいかしら。
「モールダー、ティターンズの基地よ。ここ」
ああ、そうだね。気のない返事をするモールダーは双眼鏡を覗いている。あれだ。とモールダーが指す先を見ると、滑走路へと向かうミデア輸送機が見える。…こんな夜中に発進するの?建物と同じく必要以上にティターンズのマーキングの施されたミデア輸送機は、その巨体を滑走路へ入れると、ゆるゆると加速を始める。
「見ろよスカーリ。滑走距離が長い。…何か重いものを積んでいるな」
グングンと加速するミデア輸送機は、その巨体をやっと持ち上げると暗い空の向こうにその姿を消して行く。隣のモールダーは双眼鏡から目を離していない。私は、ミデア輸送機が消えて行った方角をぼんやりと見ている。
その時だ。私が見ている先、ミデア輸送機が消えて行った空に、複数の強い光が一斉に光ったと思うと、次の瞬間、それぞれがバラバラの方向に動き消えて行ったのだ。
「モールダー。今の、見た?」
隣のモールダーは気付いていない。再び空を見上げようとする私に、身を起こしながらモールダーが叫ぶ。
「まずいぞ!スカーリ!奴ら、僕達に気付いたみたいだ」
嘘でしょ!立ち上がりながらモールダーの言う方を見る。基地のあちこちにサーチライトが点り始め、サイレンが鳴る。複数のティターンズ兵が、ジープに、トラックに乗って丘を登って来るのが見える。…かなりの人数だ。身を翻しながら、空を見るがさっきの光はもう見えない。
「急げ!スカーリ!」
隣を走るモールダーの声が夜の闇の中に響く。
資料 写真画像
ある地球連邦軍空軍部隊が偶然撮影したもの。と言われている画像。ミノフスキー粒子下では無いにもかかわらず、レーダーをはじめとした全てのセンサー類に何の反応も無かったという。撮影したという部隊の名は明かされていない。
「急げ!スカーリ!車に走れっ!」
先に行かせたスカーリに叫ぶ。クソ!奴ら、いつ気が付いたんだ?走りながら考えるが、当然、それどころでは無い。乾いた音と共に、足元の土が弾ける。撃ってきているのだ。警告も無しに!…何度か振り返るが、振り返るごとに追ってくる兵士の数が増えている様な気がする。車までの距離が無限に感じる。…右側から複数の人の気配。クソ!また増えた。
新手の方をチラリと伺う。その瞬間、思わず足を止めそうになる。新たに現れたティターンズ兵、その先頭の男の顔に見覚えがあったのだ。…少し目の離れた四角い顔。…アイツは!
「スカーリ!奴だ!クライショックがいる!」
前を走るスカーリに叫ぶ。
「なに?モールダー!聞こえない!早く、急いで!」
破れたフェンスの端を持ち上げるスカーリに僕は叫ぶ。
「スカーリ!いけ!僕に構うな!」
そう叫びながら、お気に入りのコートがフェンスに引っ掛かり破けるのも構わずにくぐり抜ける。…車はもう、すぐそこだ。
星もどこかに行ってしまった夜の闇の中、僕達の乗って来た車のシルエットが浮かび上がる。その横に立つ人影、スカーリに叫ぶ。
「乗れ!スカーリ…、急げ…」
潰れそうな肺から息を絞り出すように言うと、ボンネットに手をつく。しかし、
「ダメよ、モールダー。車が…」
顔を上げるとスカーリと目が合う。…やられた。僕達の乗って来た車、エレカ(電気自動車)が強力なジャミング照射でダメにされたに違いない。…クソッ!スカーリの手を取る。走って逃げるか?
「むだよ、モールダー」
どこか冷たいスカーリの声。見ると、彼女は僕の後ろを見上げている。その時、僕は初めて後ろに、…背後に何か巨大な気配を感じる。恐る恐る振り返った僕の目に飛び込んできたもの。それは。
巨人。20メートルもの巨人、銀色のMSが僕達を見下ろしていたのだ。一体いつの間に、あれだけの質量体が側にくればわかる筈だ。僕達を見下ろすMS、銀色のアッシマーを僕達は、力無く見上げることしか出来なかった。
僕達の前に立ち塞がるアッシマーの足元から、ティターンズ兵が溢れてくる、後ろからも、左右からも、囲まれたのだ。複数の銃口が、僕達二人を睨む。
眩いライトに照らされた僕達を囲むティターンズ兵。見回すが、クライショックの姿は無い。突然、僕達を囲む兵の壁の一部が割れると一人の男が前に出て来る。ティターンズ士官の軍服姿の男は、細い目でニヤリと笑う。その目と色白の肌のせいか、まるで爬虫類を想像させる男だ。手に持った端末と僕達の顔を見比べながら、笑顔?で言う。
「デイビッド・モールダー捜査官。ジリアン・スカーリ捜査官…で、間違いないですね」
男は、慇懃無礼な態度で言うと、隣の兵士に一言二言、耳打ちすると、貴方達を拘束させて貰いますと言い放つ。
「…何を言ってるの!私達は地球連邦捜査官よ!…私達の捜査の邪魔をする権限はいかにティターンズといえど無いはずよ!」
スカーリが吠える。それに対し、男は僕達二人の顔を睨むと、君達は"機密"という言葉を知っているかな?と言う。
「よせっ、スカーリ。…むだだよ、たぶん奴らは…」
一瞬で数えきれないほどの銃口が僕達に向くのがわかる。観念した僕達を見て、男は満足したのだろう。拘束しろ。そう言って行ってしまう。…そうして、僕達は、いつの間にか近くに来ていた、やはり、わざとらしく大きく描かれたティターンズのエンブレムが目立つ軍用トラックに押し込まれる。身体中に付いた泥を落とすこともさせて貰えないまま、トラックの荷台に座らされると、向かいに腰掛けたスカーリに、何も言うな。と目で合図する。頷くスカーリ。僕はそんな彼女を確認すると、隣に座ったティターンズ兵を、彼らの「服」を見る。
僕達は、ここに来るまで泥だらけとまではいかないものの、かなり汚れていると言っていいだろう。それに比べて彼等の軍服はどうだ。綺麗なのだ。シワひとつ無い、綺麗な服。僕達を追ってきた時の泥汚れはある。だが、そこにある違和感。普段からその服を着ていない感じ、まるで、僕達を追ってくる際に、"わざわざティターンズの軍服に着替えて"追って来た。ように思えるのだ。"糊"が効いているのだ。僕達を囲んだ全てのティターンズ兵の軍服が。あの士官の服さえも。…スカーリは、気付いているのだろうか。
「釈放だ。出ろ」
次の日の深夜。牢に入れられている私達をまるで動物か何かを見るような目で見ながら、格子の向こうで年若い青年兵が言う。
「あなた達っ!所属名、部隊名、上司の名前。…あなたの名前もいいなさい。報告書に書かせて貰うわ!」
後ろで、よせ。とモールダーが言う。
「私達は、地球連邦捜査官なのよ。あなた達に私達の捜査を邪魔する権限は無いわ!」
これだけ言っても、目の前の兵士はどこ吹く風だ。…丸一日も拘束されたのよ。
「…もう行こう。スカーリ」
モールダーが肩に手を置く。…でも、そう言おうとモールダーを見る。彼は何かを言いたそうな顔を横に振ると、行ってしまう。
「ちょっと、モールダー?」
言いたいことは分かるよ。スカーリ。そう言ってさっさと車に乗ってしまう。納得のいかないまま、助手席に座る私にモールダーは言う。
「…彼等、ティターンズじゃ無いよ。…いや、軍ですらないかも知れない」
…そう言って、車を発進させる。
〜数分前〜
…釈放だ。と言う声に、すぐさま女性の声が反論する。「彼」の相方だという女性だろう。なかなか優秀な捜査官らしい。モールダーとスカーリが拘束されていた牢がある通路の角、その陰の壁に、男は背を預けている。軍の施設内にはそぐわない、きっちりとスーツを着た初老の男だ。兵と女性のやり取りを聞いていた男は、ゆっくりと、懐から今ではもう珍しい紙パッケージのタバコを取り出すと、口に咥え火をつける。…モールダー達のやり取りを満足そうに聞いていた男は、笑みを浮かべると、まだ半分も残っているタバコを灰皿へ押し付ける、そして静かに薄暗い施設の奥へ歩いて行く。…コツコツと足音を残して。
「ちょっとモールダー。軍ですらない。ってどう言うこと」
「…奴がいた。…肺ガン男。……僕には分かる」
資料 写真画像
着陸脚?を展開していると思われる瞬間を捉えた貴重な画像。これがもし着陸する瞬間であったのならば、撮影者のすぐ近くに着陸したはずである。この画像が収められたカメラは、ハイカーらによって山中で発見され届けられた。
カメラの持ち主は、不明である。
資料
NRX-044 アッシマー
連邦軍で⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️された。⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️であり、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️によって、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️である事が分かっている。この技術は、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️にも採用され⬛️⬛️⬛️⬛️など、以後⬛️⬛️⬛️⬛️などにその技術が転用されていると思われる。しかし、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️は、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️。
この⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️は、後に試作された、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️や、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️などのMS⬛️⬛️⬛️⬛️。そう考えると⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️だという考えにも納得いくものであると言えるだろう。
(以後の文章は、全て削除されている)
THE rX FILES
見下ろすもの
製作総指揮 コビト少佐
……THE TRUTH IS OUT THERE
……真実はそこにある
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いや、違う。…違うな、彗星はもっと、バァーって動くもんな!
で全部忘れた笑
プラモ好きの40代
サッと色塗ってパッと作るあまり複雑な改造はしない人(最近はパッと作ってはいない)
MDN-6632+1 ディランザ カッティーヤ
…敵、…ガンダムは、敵ッ! 注意 「コレ」は、水星の魔女最…
ガンダムvsシャークゴッグvsモサゴッグ 海獣大決戦!
夏がきたっ(もう遅い)!それはサメ映画の季節っ!ヤツらが、…
水星から吹く風ッ!それは黄金の疾風(かぜ)ッ‼︎
チュアチュリー•パンランチには、…夢があるッ!
RGM-F0 GUNDAM CALISTEPHUS
見上げ、夢見て、追想の先に、見上げた先になにを見るのか…。