宇宙世紀0079年。後に一年戦争と呼ばれるジオン公国独立戦争の最中、9月23日、それは起きた。前日、9月22日、地球を目指すべく、ルナツーを出航した地球連邦軍第13独立部隊強襲揚陸艦ホワイトベースが、地球。南米ジャブローを目指す。
翌9月23日、地球を目の前に大気圏突入を敢行しようとする第13独立部隊に対し、その部隊の追撃任務をしていたジオン公国軍の部隊が奇襲を仕掛けたのだ。大気圏上で始まったその戦闘は長引き、互いの部隊は、大気圏突入時における帰艦不能ポイントを超えてしまう。そんな中、大気圏突入時の熱で燃え尽きるジオン公国軍のMSをよそに、第13独立部隊のMSが、史上初とも言える、MS単体での大気圏突入を成し遂げたのだ。
〜♪〜♫〜(0090年代に活躍したシンガー、ミユキ・カジマの楽曲「グラウンドスター」が流れてくる)
…これは、様々な苦難を乗り越え、MSの大気圏突入という偉業を成し遂げた、男達の物語である。
プロジェクトrX
〜暗闇から青い空へ!大気圏突入、男達が見上げた先にあるものは!〜
語り トーモロ・タグチ
※画像は再現映像
「RX計画」。地球連邦軍が、ジオン公国軍に遅れをとっていた宇宙戦略に対抗する為、MSの開発と、MS運用を前提とした、開発、配備計画である。ルナチタニウム合金といった新素材の開発などが行われ、続くV計画では、後に、その後のMS開発に重要な役目を持つ、コアブロックシステムなどの、基礎分野の研究、開発が進められた。後の、「V作戦」である。
その、基礎分野であるV計画において、ある提案がなされる。「MSに単体での大気圏突入能力を持たせられないか?」
…その提案は、多くの技術師達を悩ませた。
既に、RX計画、V作戦内における、フラッグシップとなる「RX-78」を始めとしたMSの使用書には、大気圏突入能力を持つ。と、明記されている以上、それがどんなに難しい事であっても、その機能は付加させなければならない。
…多くの技術者が、頭を、抱えた。
どのように、18メートルの巨人とも言えるMSに「単体」での大気圏突入能力を持たせるか?それには、多くの技術者から、様々な案が出る。
機体の装甲材担当の技師は言う。RX-78の、基本装備にある、シールド表面に、旧世紀に運用されたスペースシャトル底面のように、耐熱タイルを貼り、そのシールドに隠れる形で突入することが可能だと、その際、シールドの形状も、より大きく、羽状の突起を追加、スペースシャトルの底面の形状に近い形にすることで、大気圏突入後の機体の安定飛行が可能になる。と、しかし、その提案は軍上層部から、光の速さで、却下される。
…上層部より帰って来た答えはこうだ。シールドにそのような機能を追加する事は、シールド自体が重くなる事であり、ジオン公国軍のMS「MS-06」との戦闘結果から、MS戦には機動力が重要視される事が分かっていた軍上層部は、MSの軽量化に趣を置いていたのである。また、V作戦において、RX-78を始めとしたMSを運用する、強襲揚陸艦のMS積載量、重量などいった問題もある。大型のシールドは、艦艇としての運用にも負担をかけるのだ。…そもそも、シールド表面に耐熱タイルを貼ることは、そのシールドを本来の使用法である、防御に使用することが出来ないことであり、矛盾している。と、仮に被弾したとして、耐熱タイルが剥がれた場合、どの様な影響を及ぼすか…。軍上層部は旧世紀の記録から、それを知っているのである。
また、別の技師は、RX-78の装甲そのものに耐熱タイルを貼り付ける。という提案も出されたものの、やはり同じ理由、MS戦=機動戦闘という図式が、根強い考えとして軍上層部にある為、どんな理由であっても、機体自体の重量を増やすことは避けなければならない。重いタイルを貼り付けることは、軽量なルナチタニウム合金の利点を無くすものでもあったのだ。
こうした案が次々と提案され、消えていった。これらの事は、RX-78に、また、それに続くMSに対し、機体の外部装置ではなく、機体が持つ内部装置として付加されなくてはならないものとして、計画に関わる者全てに広まっていく。
多くの部署が、多くの技師が頭を抱え、匙を投げていく。…そんな中、ある部署から声が、上がる。「見つかった」と。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
男は悩んでいた。
MSという18メートルの巨体。それを単体で大気圏突入させるという、軍上層部の要求。それは、自分達を含め、多くの部署に、技師達に、厚い雲を降ろしている。大気圏への単体突入。それは、機体全てに、その機体を操縦するパイロットに対しても、大きな影響を与えるのだ。…そんな軍上層部からの無茶振りとも言える要求に、多くの部署が、技師達が、頭を抱えていた。…男もその一人だ。
V計画内において、様々な部署がある。MSという巨大な工業品である以上、数えきれないほどの、ハード面、ソフト面の集合体として完成する。その中において男の担当する部署は、内装。または、梱包を主とする。人によっては、閑職。とも言える部署だ。…しかし、男はこの仕事に誇りを持っている。例えば、パイロットが座るコクピットシート。パイロットとMSの接点とも言えるシート。戦闘が長引けば、長時間座っている事になるだろう。パイロットに戦闘以外のストレスを与えないよう、様々な工夫を凝らす。男はその仕事に誇りを持っていた。だが、男にとって、全ての部署、技師らに与えられた、過去に例の無い、MS単体での大気圏突入という問題は大きかった。
大気圏へ突入する物体が、シンプルな形状であるならば、いくらでも案はあったのだろう。おそらく全ての部署を巻き込んでの大事には、ならなかっただろう。だが、MSは違う。「人型」なのだ…。機体の装甲表面に耐熱タイルを貼り付ける。と言う案も聞いた。だが、それでは駄目なのだ。人型である以上、人型である為に、そのまま大気圏突入するという事は、必ずどこかの時点で空気抵抗の問題が発生する。ましてや、大気圏への突入なのだ。大気との摩擦の問題は、熱の問題も含め、必ず克服しなければならない問題なのだ。
…そんな中、男が出した、提案。…それは、MSに、RX-78に「マント」を纏わせる。という案。MS用の耐熱性能のある外套を作る。というものだった。これならば、重量の問題、装着時においての機動性の確保、艦艇に搭載する際の様々な問題にも対処できる。しかし、自信を持って提案した男に対する軍上層部の返答。それは、「現実的では無い」…その、一言のみであった。
男達の苦悩をよそに、RX-78は完成していく。
だが、屹立する18メートルの巨体を日々、見上げる男はわかっていた。方向性は間違えてはいない。と…。
…プロジェクトアールエックス
…もう、何日残業したのだろうか。日付が変わる時間。もう寝ているであろう妻と、幼い娘を起こさないよう、玄関のドアを開ける。暗闇の中、リビングへ行き、ミュートにしたテレビをつける。隣の部屋で寝ている二人を起こさないよう、明かりはつけない。テレビの光だけの暗いリビングで音を立てないよう、上着をハンガーに掛けると、ダイニングテーブルの上に置かれたものに目をやる。そこには、一つの大皿にまとめられ、ラップをかけられた、チャーハンと野菜炒め。どちらも男の好物だ。その横には、二人からのメッセージが書かれたメモ。「お疲れ様」という妻の字の下に、「おとさん。おしごとかんばつてね。」と、最近、字を書くことを覚えた、娘の字。
…初めのうちは、遅くまで起きて、自分を待ってくれていた二人も、今は、こうして自分を待たずに夢の中だ。しかし、チャーハンと野菜炒めという、それなりに手の入ったものを作ってくれている以上、冷え切った関係にはなっていないのだろうと思う。音を立てないよう気を付けながら、皿をレンジの中に入れると「あたため」のボタンを押す。テレビの光だけがぼんやりと光る、暗闇の中で、レンジの音と、かすかに隣の部屋から聞こえてくる、二人の寝息を感じながら、考えるのは、仕事の事ばかり。…それほどまで追い詰められているのか。
不意に鳴る。レンジの温めが終わった音に意識を戻される。二人が起きてしまったかと、隣の部屋の様子を伺う。…どうやら、起きなかったようだ。そのことに安堵しつつ、レンジの中から、チャーハンと野菜炒めの入った皿を取り出す。…ぴったりと張り付いたラップを、熱い水滴に気を付けながら剥がそうとするが、ラップの端がどこかに引っ掛かったのだろう、剥がした拍子に、手に、顔に、熱い水滴を浴びてしまう。
「熱っ!」
思わず声が出てしまう。…その時、二人を起こしてしまったかと顔を上げる男の脳裏に何かが閃く。
「…!!ッ」
…アニメ的、ニュータイプ的な表現をするならば、眉間に稲妻が走り、「テキーン!」と言う、アレだ。
男は叫ぶ。深夜だということも忘れ、男は叫ぶ。隣の部屋で寝ている、妻と幼い娘のことも忘れて…。熱々のラップを握りしめて、…男は叫ぶ。
「見つけたぞ!」
何事かと、眠い目をこすり、起きてくる妻と娘を一目見るなり、「ラボに戻るッ!」そう言って上着を羽織る。何が起きたのかわからない二人をよそに、男は、街灯に照らされた、暗い夜道をラボに向かって走る。
…その手に細長い、ラップの箱を握って。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
素材は決まった。
高い耐熱性能を持ち、薄く、それでいて頑丈なラップフィルム。これを機体に被せ、大気圏突入時の大気との摩擦に抵抗。突入後はそのまま使い捨て。
…果たして、この案は、連邦軍上層部に採用された。湧き立つ、担当部署の面々。その中に、男の姿もあった。…男は思い出す。あの夜のことを、残業を終え、家に帰ったスタッフらを呼び戻し、何事かと目を剥く彼らの前に、手に持ったラップの箱を突き付けた時のことを。「これを使う」と言った時の、スタッフ達の顔が忘れられない。疲れ果てた顔に、見る見るうちに、力が、目に光が宿るのを…。
しかし、湧き上がった彼らに再び試練が訪れる。「何処」に収納するのか?収納するとして「どの様に」収納するのか?
…男達は、再び頭を抱えた。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
RX-78は、モノコックフレームのMSだ。甲殻類のように、「骨」を構成する外装を兼用したフレーム内に、可動する為の機構を内包する。その為、機体に何かを収納するとなると、スペースに限りがあるのだ。彼らは、RX-78の設計図面を見直し、収納出来そうなスペースを探す。フレームに外装を取り付ける仕様ならば、外装の形状を変更することでスペースを無理矢理作ることも可能ではある。モノコックフレームの機体として設計されている時点で、機体の、RX-78の形状はすでに完成しているのだ。
収納スペースの問題。さらに収納方法の問題が続く。どのように収納するか?という問題。まさか適当な隙間に捩じ込んでおく訳にはいかないだろう。
まず、男達はどのように収納、どのような形態で収納するか。から始めた。収納するスペースを探し易くする為だ。18メートルもの巨体を覆うほどのサイズ。どれほど薄いフィルムであろうと、仮にそれを折り畳んでいくとすれば、かなりの厚さになるだろう。想像して欲しい、広げた一枚の新聞紙、それをどんどん二つ折りしていくと何回も折らないうちに、薄い新聞紙は厚くなり、折ることが出来なくなる。それと同じことが、薄いフィルムでも起きるのだ。
更に問題は続く。仮にフィルムをピッシリと折り畳むことが出来たとしても、RX-78の、MSの巨大な指は、畳まれたフィルムの端を摘めなかったのだ。
…男達は、頭を抱える他なかった。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
…しかし、その問題は割と呆気なく解決する。
モニター越しの会議の際だった。男が見ているモニターの向こう側の人物が、モニターの汚れを取ろうと手に取った物。モニター用のウェットティッシュ。…円柱状のケース上部からティッシュを抜き出す、「アレ」だ!
男は声を上げる。
円柱状のカートリッジケース内に、緩く渦を巻くように収められたフィルムは、ケース先端部よりガス圧によって少し押し出される。それならばRX-78の指先でもフィルムを摘むことが出来る。何度も重ねた実証の結果に男達は湧き上がる。その勢いのまま、男達は、カートリッジ式のユニットにした耐熱フィルムの収納の為、すでにほぼ完成していたRX-78の一部のデザイン変更を、軍上層部に打診したのである。
その部位は、腰、股間部。
手が届き易く、取り出し易い。取り出した後もすぐに機体前面に展開し易い場所。この、急とも言えるデザイン変更は、驚く程の速さで受理されると、数日後には、全ての部署に変更された仕様書、図面が渡された。
かくして、耐熱フィルムの収められた円柱状のカートリッジケースは、RX-78の腰部前面装甲、三つの装甲の真ん中、盛り上がった股間部の中に収められた。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
RGM-79。言わずと知れたRX-78の量産モデル。始めRX-78の腰周りのデザインもシンプルなものだった。しかし、耐熱フィルムの入ったカートリッジケースを収めるにあたり、より複雑な形状を持つに至った。
ここで、RGM-79の腰部前面の装甲、フロントアーマーについて見てみよう。RGM-79のフロントアーマーには、大きく三つのデザインパターンが確認される。シンプルな一枚板のもの、そのデザインのまま、左右に分割された二枚板のもの。そして、RX-78のデザインに近い、股間部の装甲の左右に二枚の板がある、三つの装甲があるものだ。
この三種類の中で、三つの装甲に分割されたモデルが、RX-78と同じラインで製造された。最初期のモデル。RX-78の腰部と構造を同じくしたこのモデルには、RX-78と同様に股間部アーマー内に、耐熱フィルムの収められたカートリッジケースが収納される。当時、後に一年戦争と呼ばれることになる戦争の舞台は、地球。そして、地球に近い宇宙空間だったからだ。その為、RX-78に続き地球及び、地球軌道上に広く配備されたRGM-79には、量産モデルではあるものの、一部ではあるがRX-78と同様の機構を持たせる必要があった。大気圏突入能力である。
しかし、地球、地球軌道上を中心に、優先して配備運用されたものの、実際にRGM-79タイプの機体が大気圏突入を行なったという記録は無く、地球連邦軍が優位になるにつれ、戦場は地球から離れた宇宙空間が舞台となっていった。そうして、運用方法の変化、コストの見直しによるマイナーチェンジにより、RGM-79のフロントアーマーはシンプルな一枚板の物が主流となっていったのだ。実際、戦争中期から後期にかけての空間戦闘には、複数機のRB-79との編隊を組んでの連携を主とした運用がなされており、個としての機動能力より、連携を密とした移動可能の砲台としての運用が多くなる。その為、防御性能の高い、シンプルで頑丈な一枚板のタイプが多く生産された。それに伴い、その腰部のフレーム構造も耐熱フィルムのカートリッジケースを内蔵しない、シンプルな構造のものにマイナーチェンジされている。
その中にあって、より機動性を重視する遊撃部隊、隊長機や、エースパイロット向けの換装オプションとして、脚部の可動を妨げない、左右分割の二枚板のフロントアーマータイプのものが配備された。
…プロジェクトアールエックス
※画像は再現映像
果たして、股間部に耐熱フィルムの収められたカートリッジケースを内蔵しRX-78は完成した。
MS技術試験場の敷地に立つ、八割ほどの外装を身に付けた18メートルの巨人、RX-78を見上げ、男達は歓声を上げる。これから、大気圏突入用耐熱フィルムの展開試験が行われるのだ。その場にいる誰もが、試験の成功を願った。
…静まり返る試験場に、試験開始の合図が鳴る。誰もが固唾を飲んで見守る中、ゆっくりとRX-78の腕が動く。股間部のカバーが開き、かるいガスの噴射音と共に吐き出される耐熱フィルムを、RX-78の太く、力強い指が捉える。…しなやかに動くRX-78の腕は、そのまま、展開したフィルムを機体を覆うように、頭から被る。
…だが、その場にいた全員が、息を殺し、見上げる中、それは起こった…。
「破れた」のだ。
薄く軽量な耐熱フィルムではあるが、18メートルもの機体を覆うほどとなると、やはり、それなりの重さになるのである。そのフィルムは、RX-78のデザイン上最大の特徴である、頭部に装着された「ツノ」。ブレードアンテナによって、破かれたのだ。
鋭利に尖ったブレードアンテナの先端が、薄く軽量とはいえ、それなりの質量を持ってしまった耐熱フィルムを破ったのだ。
その場を支配する重い沈黙。
このような結果になることを、誰も想像しなかったのだろうか。いや、気付いていた者もいただろう。しかし、言えなかったのだ。時制は早急にこのMSの、V作戦の完成を望んでいた為である。
…やがて、沈黙がざわめきへと変わっていく。周りから聞こえてくる、ため息、悲観の声、または嘲り。天を仰ぐ者、頭を抱え込みしゃがみ込んでしまう者。だが、その中にあって一人、たった一人だけ、その惨状から目を離さず、前を向いて、毅然と立ち続ける男がいた。男はゆっくりと周囲を見渡すと、静かに、それでいてよく通る声で言う。
「皆さん、大丈夫です。…方法はあります。」
もう完成しているのです。男は言う。耐熱フィルムも、このRX-78も。男が静かに、それでいて力強く言った言葉に、周りの人達が、目を丸くして聞いている。男は言う。
「方法は…あるんです」
…プロジェクトアールエックス
RX-78「ガンダム」このMSの特徴の一つとして、その頭部のデザインがある。ジオン公国のMS。MS-06の無機質な一つ目に対し、このRX-78の頭部は、何処か人間を思わせる、二つの目、デュエルアイを持つ、そして、その額にV字の意匠を持つ、ツノのようなアンテナ、ブレードアンテナが装着されている。…この、鋭く尖ったブレードアンテナが、無情にも耐熱フィルムを破ったのだ。
しかし、男は分かっていた。まるでスローモーションのように、破れた耐熱フィルムがRX-78の足元に落ちていくのを見ながら、自ら先になり、この耐熱フィルムを開発してきた。長く辛い日々を思い出す。予想は、していたのだ。フィルムを使おうと思った時に、RX-78の仕様書を読んだ時に。
思いがけず男に与えられた試練。もう何度頭を抱えてきただろう。しかし、男は諦めなかった。RX-78は完成した。男達は完成させたのだ。MSを単体で大気圏に突入させることのできるシステムを。男は奮起する。…ここで、ここで負けてなるものか。
もう、その場にいた誰もが男の案を待っていた。皆の期待を一身に背負い、男が打ち出した案。それは…。
「カバー」を付ける。
シンプル。余りにシンプル。鋭く尖ったブレードアンテナの先端にカバーを被せたのだ。後に、「フラッグ」と呼ばれることとなるカバーは、ブレードアンテナのデザインを邪魔しないよう、樹脂素材により成形され装着された。成形の容易な樹脂素材を使用することで、様々な形状のアンテナにそのデザインを変えることなく、装着することが出来たのだ。男の提案は、瞬く間に採用され、中にはアンテナの先端を、最初からカバーが付いたように成形されたモデルも生産されたほどであった。
…プロジェクトアールエックス
男は、男達は、やり遂げた。
ブレードアンテナの先端にフラッグを装着したRX-78が、耐熱フィルムを被った時、あの、割れるような歓声を。男達は、軍上層部は忘れられないだろう。…男達の汗と涙、そして、苦悩にまみれた。努力と知恵の物語を。…忘れないだろう。
〜♪〜〜♫〜(0090年代に活躍したシンガー、ミユキ・カジマの楽曲「前照灯、後方赤色灯」が流れてくる)
…この数ヶ月後。彼等に一つの情報がもたらされた。南米ジャブローへと向かうべく、大気圏突入を敢行した、第13独立部隊の強襲揚陸艦が、ジオン公国軍の追撃を受けながらも、大気圏突入に成功。そして、その艦の艦載機として運用されていたRX-78が、敵MSとの戦闘の末に、史上初となるMS単体による、大気圏突入に成功したと…。
男達の情熱は、MSの歴史を変え、RX-78のパイロット。…一人の少年兵の命をも守ったのだ。
男は見た。その一報を聞き、喜ぶ仲間の姿を。腕を高く突き上げる者、目頭を抑え、頭を垂れる仲間の姿を。男は見た。男は忘れることは無いだろう。…この、喜びを。
〜♪〜〜♪〜
一年戦争後、ラボは解体。バラバラになった男達。
始め、巨大なシールドに耐熱タイルを貼り付けることを提案した男は、0087年、参加していた反地球連邦運動(A・E・U・G)内で、同じく参加していたエゥーゴ少年兵のアイデアを基に、新しいサブフライトユニット。フライングアーマーの開発に関わると、その後に続くエゥーゴのフラッグシップとなる、新可変MSのプロジェクトメンバーとして名を連ねることになる。
耐熱フィルムの開発に心血を注ぎ。MS単体での大気圏突入という偉業を成し遂げる中心となった男は、ラボ解体後、様々な職を転々としたが、終わらない戦争に、荒んでいく地球圏の惨状に見切りをつけ、家族と共に木星へと旅立つ。木星圏での事業に成功した男は、ある分野で大きな業績を上げた。…その後、男の開発した技術は、思想は、様々な人に、事業に伝わっていった。その技術は近年、地球から遠く離れた、木星圏で、「ビームを弾く布状の装備品」として…。
プロジェクトrX
〜暗闇から青い空へ!大気圏突入、男達が見上げた先にあるものは!〜
語り トーモロ・タグチ
…と、いうことで、0140年代(Vガンダムの頃?)あたりに放送された番組といった感じでやってみた。提供は多分アナハイム。設定なんかは大分でっち上げている(酒を飲みながら考えたので当然だ)ので、公式の設定とは一切関係無いことを明記しておきます。…まあ、気になっていた、いろんなグレードで出ているジム(RGM-79)のプラモデルの腰フロントアーマーの形状の違いに対する考えを、内容にうまく組み込んででっち上げれたので自分としては大変満足している。
そして、今回の影の主役。大気圏に突入している写真と、地球の空を舞っている写真は、彼です。ベストメカコレクション1/144RX-78-2ガンダム(REVIVAL Ver.)!
コビト少佐の手により、各関節に針金を仕込まれた彼は、割とびっくりするような微妙な可動性能と、TV版の設定画のようなシルエット。なんか最新のガンダム最終話で観たような気がする何とも言えない雰囲気?(コビト少佐談)を持つに至ったのだ。
こんな感じで針金が仕込まれている。針金の太さは2ミリのアルミ線。特に股関節部の恩恵が凄まじく、脚が長くなり、ハの字に開けることで、立ち姿に艶が出てくるのだ。
…なんと雑な再現シーンか。
こんな感じにグネグネ動かせるのもちょっと楽しいのだ。夏休みの針金工作。やってみよう!
コメント
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AEラップ👍️
読ませますねぇ〜❗️田口トモロヲさんの声が聴こえて来ました。
あまりに楽しく、コメント失礼致しました🙇♂️
熱い👍 熱い👍 まさにプロジェクトX😁 語り尽くされるドラマ👍
大気圏突入の裏にはこんなに熱いドラマがあったなんて、感激しながら読みふけっていました。
ガンダムタイプのHGを作るときは真っ先にアンテナフラッグを切り落としていましたが、今後はそれが正規の仕様であると認識して切り落とさないよう心得ておきます。
プラモ好きの40代
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