約15年前、月刊モデルグラフィックスで提唱された「カラーリングの正常化」理論を実践してみることにし、手元のバックナンバーを数冊紐解き、改めて読み込んでから製作を開始しました。
ただし、当時掲載されていた作例をそのまま再現するのではなく、金属色を取り入れたり、スジ彫りを追加したりと、好みでアレンジを加えることにしました。
■主な使用カラー
①MSグリーン…頭部・胸部・大腿部・スネ等
②MSディープグリーン…両肩・フロントアーマー・サイドアーマー・リアアーマー等
③MSホワイト…各スラスター・膝関節等
④RLM02グレー…右手・腕部フレーム等
⑤パンツァーレッド⑵…コクピットハッチ・ミサイルハッチ・左指等
⑥ウォームグレー※…肩部・フロントアーマーと脚部のスラスター
※ウォームグレーについて…Mr.カラーには丁度良い色味のものがないため、ダークアース+ホワイト+ブラック少々で調色
■モデルグラフィックス誌で指摘があったガルスJの問題点
「紫と赤の差し色が全身に散りばめられ、必要以上に派手で散漫な印象を受ける。」
■「カラーリングの正常化」のポイント
「アクセントカラー=差し色のコントロール」、「部分的な空気遠近法の適用」、「ガンダム世界のツボを押さえる」
約15年前の模型誌において、すでにガルスJのカラーリングに関する的確な考察と指摘がなされており、その改善案について言及されていました。今回はその理論に基づいた塗装を実践しています。
■塗装について⑴
先述したカラーのうち、機体色の大部分を占めるグリーン系については、立体感を強調する目的でカラーモジュレーション塗装を行い、茶系のフィルターをかけて仕上げました。
■塗装について⑵
明るめに調色をして塗装しましたが、厳密に空気遠近法を取り入れると全体の印象がぼやけてしまうため、アクセントカラーとしてカラーリングデザインのバランスを取っているコクピットハッチや左手等の「差し色」に関しては意図的に空気遠近法を無視し、ビビッドカラーを使用しています。また、作品の印象をより引き締めを図るため、部分的に金属色での塗装や金属製パーツの配置を行いました。
■「カラーリングの正常化」の実践
紫の部分は調色したウォームグレーに置き換え、赤はガルスJのアイデンティティとしてはずせない部分のみ残し、スラスター等は白に変更しました。ウォームグレー(=赤系グレー)が補色の赤色としての機能することで、印象の引き締めを狙っています。
緑の部分は、明度を上げつつ彩度を落とし、ザクに近い色味に変更しました。これにより、ザクを始祖とするジオン系MSの進化系統樹にガルスJを置いた際、違和感が無くなると考えました。
■ベースジャバーとの組み合わせ⑴
劇中、量産機がベースジャバーを使用しているシーンがあるため、以前製作した作品に搭乗させてみました。武装は、手元にあったシステムウェポンキットのバズーカに変更しています。
■ベースジャバーとの組み合わせ⑵
折り曲げた状態の左手のフィンガー・ランチャーは、ベースジャバーのグリップにジャストフィットしました。
■ズサとの連携攻撃
取扱説明書には、「なお、ガルスJは同時期に開発されたAMX-102ズサとの連携が考えられた。ズサによるミサイル攻撃ののち、本機が白兵戦を行うという運用が想定されていた。」という記述があります。そのため、以前製作したズサと並べてみましたが、いかにも"接近戦用"と"遠距離支援用"との棲み分けがなされているようで、なかなか理に適った設定だと感心させられました。
奇しくも、ユニコーンガンダムではシュツルムガルスと袖付きズサがネェルアーガマに取りつきましたが、2機の連携攻撃の設定を踏まえたものであったと考えると、ガンダム世界の奥深さを感じます。
■出渕氏デザインの個性と力強さ
出渕氏のベースデザインに基づくMSたち(ガルスJ、ズサ、ハンマハンマ、Rジャジャ、バウ、ドライセン)は、総じてややトップヘビー(下半身に比べて上半身の方がボリューミィ)であり、それぞれ個性的でMSらしさや力強さを感じさせてくれます。
以前製作したZガンダムとのショットです。このZガンダムは、ライトニングZガンダムとRGゼータガンダムのミキシングビルドで製作しました。
同じく、以前製作したカラー変更したZZガンダムとのショットです。このZZガンダムは、月刊モデルグラフィックスの「カラーリングの正常化」案で示されていた一体を参考にして製作しました。
■各部の追加工作・修正箇所等
本機はパーティングラインが目立たないよう部品分割に工夫がみられ、ゲート後も目立たない位置にあります。全ての肉抜き穴を塞ぎ、ヒケ・ウェルドライン・バンダイエッジ等をヤスリで丁寧に修正しました。また、塗装後の塗膜の剥がれ防止と可動のクリアランス確保のため、ヒジやヒザの関節周辺をヤスリで削っています。
なお、塗装の剥がれ防止の観点から、全パーツ表面への400番~600番のヤスリがけ、サフ吹き前のプライマー吹き付け、ラッカー塗料による塗装に食い付きのよいプロユースシンナーで希釈、といった工程に丁寧に取り組みました。
■アーム・パンチについて⑴
下腕部に内蔵したシリンダー状のフレームは、左右の腕部に伸縮状態のパーツが付属しており、アーム・パンチを再現できます。個人的には、「精密な動きが要求されるマニピュレータやマシンガンの発射機構であるフィンガー・ランチャーで殴るのはどうかな?」とやや疑問に感じましたが、格闘時の奇襲にはその威力が発揮されると思われます。そういえば、νガンダムもサザビーをぶん殴っていましたね…。
■アーム・パンチについて⑵
「機動戦士ZZガンダム」劇中の序盤では、操縦に不慣れなジュドーのZガンダムにアーム・パンチが炸裂していました。
ガルスJは重装甲であり、装備もグフ系と類似点があること、派生型であるシュツルムガルスには格闘戦用の武装があること等を考えると、改めて接近戦に特化された機体であることが認識できました。
■工作の詳細について
[頭部]
モノアイは、SPプレート(φ1.5mm)とHアイズ(φ1mm)に変更し、キットのモノアイ部品を一部削って取り付けました。頸部は背中側に肉抜き穴があるため、プラ板で塞いで整形しています。
[腹部]
腰部との接続用ボールジョイントを切り離し、腹部下面に積層プラ板を挟み込んで再接着しました。剛性・強度の向上のため、φ1.0mm真鍮線でボールジョインには軸打ちを行い、ガッチリと固定しています。この加工により、腹部を3.0mm程度延長し、無骨ながらスタイリッシュにプロポーションを変更しています。
[バックパック]
エバーグリーンのモールド入りプラ板等によりディティールを追加しました。塗装後、スラスター内にハイキューパーツ製の金属パイプを設置し、精密感をアップさせています。
[リアスカート]
内側にジャンクパーツを組み合わせて製作したプロペラントタンク2本を増設しました。
[フィンガー・ランチャー]
指の肉抜き穴を瞬間接着パテやプラ板で塞ぐとともに、指先にピンバイスで穴を開け、ハイキューパーツ製の金属部品ガンマズル(φ1.0mm)を接着しています。
[その他ディティールの追加]
全身にスジ彫りを入れたり、既存のモールドをBMCタガネで彫り込んだり、腕の4つ穴をピンバイスで開口したり、脚部の裾にエバーグリーンのモールド入りプラ板の細切りを貼り付けて”凹凸モールド”を再現したりと、目線の行きやすい箇所にモールドを追加しました。
最後まで御覧いただき、ありがとうございました!
旧キット発売から38年振りのキット化、感慨深いものがあります。
ZZガンダムのMSたちについては、今後も最新技術でのHGの発売を楽しみにしています!
コメント
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筋彫りカッコイイですね~
家はパイプをコトブキヤの軟質パイプに替えて
腰、首の可動域広げましたよ
アニメより落ちついたカラーリングのガルスJ。リアリティが増して格好良いです❗️
左手の指の色が赤設定なのはなぜでしょうね⁉️ 地獄突きするためのアピール😅
T-Nonさん、コメントをいただき、ありがとうございます!
おそらく、左手の赤色ですが、宇宙世紀でも「黒い魔術師アブドーラ・ザ・ブッチャー」氏へのリスペクトが高まり、必殺技の「地獄突き」に対するリスペクトでそうなっているのだと思います…!?
確かにキットの指を伸ばした状態は「地獄突き」のスタイルそのものですね!
元々、ガルスJは派手で散漫な印象のあるMSでしたが、カラーリングをコントロールすることで、アニメのキャラクター性とミリタリズムとの塩梅をうまく調整することができたと思います!
主に1/144ガンプラがメインですが、1/35恐竜及びマシーネンクリーガー等もマイペースで製作している週末モデラーです。
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