「この地下にザクが隠してあるとでも?」
男はうんざりした様子を露骨に表情に浮かべながら、自身を無理矢理連れ出した女をみる。
アクシズ程ではないが、かなり大きな小惑星の中でエレベーターに乗せられ、そこそこの時間が経過している。
「ザクではないな。」
女が悪戯っぽく笑う。
もう随分前、まだ女が幼い少女であった時によく見た表情だ。
ある時を境に彼等は袂を別ち、その顔を見ることはなくなっていた。
女は続ける。
「私もお前も、影武者だ、クローンだ、と散々周囲に振り回されている現状は面白くないだろう?さぁ、着いたぞ」
女の言葉が終わると同時に、エレベーターの扉が開く。
「これは…」
目の前に現れたのは、男が最後に搭乗したMS。かつて、隣でほくそ笑む女とも死闘を繰り広げた愛機。
「…百式」
「小佐!いや、大佐…ガハハ、総帥とお呼びした方がよろしいか!」
「貴様、生きていたのか」
かつての一年戦争時代、年上の副官がそこにいた。
「拾われましてな。一年戦争後もしばらくくはアクシズにおりました」
かつての副官は、仰々しく襟を正しながら言う。
「本当に大佐が立たれるのであれば、微力ながらお力添えさせていただきたいと思っております」
見事に修復された機体を見て男が呟く。
「足が…」
かつて、MSの性能差を、自身の技術で埋めつつ交戦していた戦いで、最後は無惨な姿にさせてしまった機体だ。それが、ここまで見事に復元されている。
その呟きが聞こえたのか、フロントアーマーの当りで作業をしていた整備員が男に声をかける
「MSの足は飾りじゃないです、浪漫ですよ、ロマン」
聞いたことのある声だった。
「君も生きていたのか」
足なんて飾りです、当時そう言いきった青年は、相変わらず屈託のない顔で笑う。
男が慣れた手付きでMS起動させた。キュイン、という独特の甲高いメインエンジンの起動音が懐かしい。
「形は以前と同じだが…、なんという数値か。アクシズを押し返せるな」
「MS4機と戦艦1隻」
現状の戦力を女は事も無げに言い放った。
しかも、パイロットはまだ揃っていないらしい。うち、1人は面識があるらしい話であったが、詳しくは聞いていない。
今はそれより、自身の新しいMSに思考の全てを奪われていた。
パワーゲイン、反応速度、どれを取っても限界が見えない。
「見せてもらおうか、新しい百式の性能とやらを」
誰に言うでもなく、男が呟いた。男は予感していた。不本意ながらも、再び戦場に立つことを。
そして、男と百式は金色の彗星となり、再び宇宙を駆け巡る。
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あまり政治的な整合性、社会性とかは考えずに、場面ごとに妄想しています。
ヒカル・ミナモト、18歳。ロクハラTD(士官学校)の生徒会長。MSの操縦技術にたけ、特に格闘戦では不敗を誇り、シズカが唯一勝てない相手である。
ピースレスト・コンツェルンにより両親を殺され、その正体を隠したまま、復讐のために軍に身を置いている。搭乗機はF91。
シズカ・フロント、18歳。黒髪吊り目の美少女で、同校生徒会副会長。あらゆる分野に於いて、天才的な才能を誇る。Fシリーズの考案者。MS戦で、ヒカルと対等に戦える数少ない人物。ピースレスト家の嫡子、カグヤ・ピースレストである。搭乗機はビギナギナ。
トモエ・フロント、16歳。シズカの妹としてロクハラTDに入学してきた、ピースレスト家の従者だが、カグヤの30体目のコピーであり、寿命のリミットは18歳までである。オリジナルであるカグヤに対し、不幸の連鎖を止めてくれるように願っている。生体コンピューターとして、ラフレシアに取り込まれることになる。
ムラサキ・シキブ、18歳。同校生徒会書記。天真爛漫で、何事にも物怖じしない少女。御三家の一家、シキブ家の第一位後継者。シキブ家所有のブラックバンガード隊を率いる。シズカの正体を知る数少ない人物。搭乗機はF90。七夕会戦で、12種類のミッションパックを次々に換装して使いこなし、「十二単衣の怪物」と呼ばれた。
聖・ショウ・ナゴン、年齢不詳。仮面により素顔を隠したシキブ家の客将。カグヤの3体目のコピーである。
MG F90 ブラックバンガード仕様
搭乗者 ムラサキ・シキブ。カグヤ・ピースレストの設計による次…
MG F91 ブラックバンガード仕様
搭乗者 ヒカル・ミナモト。半壊したF91をムラサキが回収し、…
RE ビギナ・ギナ(ピースレストフラッグシップ)
搭乗者カグヤ・ピースレスト。月面制圧作戦で、ピースレスト家の…
MG F91
搭乗者 ヒカル・ミナモト。ジェネレーターコントロールシステム…