ハイエナ・ファット　グレイズ四脚計画

機体名「ハイエナ・ファット」

.......これは俗称だったか。

あまりにも脚が遅く機動性も悪い。最新のMSが数秒で音速に達する時代に四足歩行型はあまりにも時代遅れだった。

要は主力があらかた片付けた後の始末にしか使えない、ハイエナのようにおこぼれを貰うが太ってる故に脚が遅いからファット。掃討には必要な戦力ではあるが、既存MSでも賄える。現代の新兵器としては不合格だったのだ。

見る者を恐怖させ、威圧感を植え付け、破壊の限りを尽くす禍々しいデザイン。火力や姿勢制御は充分、AIの思考パターンが生物由来である為、補給等も自動で行えるという売り文句の筈なのだが.....

屈辱だった。何年も持続可能な戦闘は魅力的な筈ーーーしかし予算を大幅に....いや、会社が傾く程に注ぎ込んでしまったのだ。

上からは見放され、閑職に追いやられ、各社からの負債は増えるばかり。

.....もう俗称でもいいか、ハイエナの維持にも莫大な経費がかかることが判明した。

脳とAIの情報伝達に必要な新種の鉱物、パーメットと言ったか。ソレの調達に金がかかるのだ。栄養と同じく欠かせばハイエナの脳は死ぬ。再開発は倫理的にも予算的にも上が許さないだろう。しかし維持も許されない現状だ。

あの女狸め、こうなる事を見越しての「袖の下」というわけだ。

そして「私」の人生は唐突に終わりを迎え、新しい[ワタシ]が始まった。

[ヒケンタイ　0720バン　キドウ]

脳内に無機質なマイコ音声が流れる。

ーーここはどこだ....最後に覚えている光景は...手術台...?ーー

[0720バン　キドウシテクダサイ　サクセンクイキマデ　300ビョウ]

ワタシは意識を感覚を[立ち上げる]

ーーーーッ！身体中に激痛が走るッ！？

身体！？ワタシの身体は何処だ！？無いッ！無いッ!ワタシの身体は!!!何故[脚が四本]有るのだ!!

[キドウ　シッパイ　0720バン シャットダウン　ノチ　サイキドウ]

けたたましい警告音と共にワタシの意識がまた遠のきかけるーーーまたーーー？いや、コレをワタシは何度か経験しているーーー？

そうか、そういう事か。思い出した。クローン培養の脳では無く「私」の脳を使ったのか！上の奴ら、やりやがったんだ！

事情を理解したワタシはシステムのコントロールも理解した。AIからの情報が流れてくるのが解る。

何度か起動に失敗したようだが今回はーーーいけるーーー

[シャットダウン　ガ　ヒケツサレマシタ　0720バン キドウ　セイコウ　サクセンガイヨウ　ヲ　カクニンシテクダサイ]

膨らむ負債に手を焼いた我が社上層部と、融資してくれた企業達が痺れを切らして...私自身を拉致なりなんなりしてMSに取り入れたのだろう。

コントロールの主導を握ってからは苦痛もいくらか和らいできた。人機一体とはこの様な気分なのか。案外悪くは無い。

ワタシ自身が律するならば、パーメットは必要無いだろう。これならば永続的に闘えるッ！

[0720バン　コレヨリ　サクセンヲ　ツウタツスル]

.....子供が興味を無くした玩具を放り投げる様に、船体に吊られたワタシの身体がアンカーから切り離され無造作に投げ出される。ロマン主義の名残である四本脚が難無く瓦礫の地面を受け止めた。

主力部隊が暴徒を掃討したので残存勢力を刈り尽くして来いとの命令だ。期間は未定、作戦区域外に出る事は許されない。

が、こいつのーーーワタシの実力ヲ魅せル時だ...殺っテヤる.....

私がワタシを受け入レた瞬間、私ノ意識はワタシに飲マれ、消えテイッタ...

此処が何処ナのか...ワタシにハもう興味ガ無イ....

敵は...敵h a ド　こだ....出撃か　ra dぉれだけ

　   　時kaんガ経ッ　t...a.... nぁん　年...keい過...

マクギリス事変の十数年後.....

火星の辺境にかつてあった街。

ギャラルホルンの過激派によって弾圧されたといその街の廃墟に、人語に近いとされる奇怪な機械音が聞こえるという噂が立った。

廃墟街は汚染されており、ここ十数年は誰ひとり近寄る事は無かった筈だが...

治安維持の自警団としてオレが偵察時にその発生源ーーーMA(mobile ai)と接触ーーー討伐した際に機体のログから判明したのが上記の回顧録だった。

オレの母達から聞いた事がある。人格をモビルスーツと一体化した機体ーーーグレイズアインーーー父も苦戦した機体の名を。恐らくこの機体の技術がグレイズアインとなり父を苦しめたのだろう。

そのMAもとい開発者は、誰一人残らない辺境の地に作戦という建前の元に廃棄され、存在しない目標を只々求めて十数年間もの間彷徨っていたのだという。

開発者への意趣返しとしては余りにも過酷で無慈悲なのだろうか。

撃墜数0機、0人殺害、それが戦果だった。

脳の腐敗が進んだのか、AIのバグによるものなのか、後年は自機の破壊を目的に行動しようとした形跡が読み取れた。しかし自衛プログラムが書き換えられており自壊は叶わなかったようだ。

先程対峙した際に「解放　助かる　感謝」と辛うじて聞き取れる人語を発して事切れた。抵抗も殆どなく呆気ない最後だった。

狂気に取り憑かれ災厄を復活させようとした者の末路とはこのようなものなのか。

自警団として仕事を終えたオレ、「暁・オーガス・ミクスタ・バーンスタイン」はハイエナ・ファットの技術が今後悪用されない様、粉砕し丁重に埋葬した後.....母達に教わった地球式を真似て静かに手を合わせた。

fin

Twitterで見かけた四脚グレイズ、それはもうカッコよくてカッコよくて.....

技術も知識もない.....せや！真似したろ！

のノリで手を付けたは良いものの、なかなかどうしてレシピ通りに作ってた筈なのに本家には遠く及ばない.....

なら！とデカールを貼り貼り。

今回も中央町戦術工芸様のデカール

かいてんちょっぷ様の(架空の)企業ロゴデカール

AI云々の設定は同架空企業のアイスバーグ・ラボラトリーからお借りしました。本来は機械少女の戦闘AI開発養成機関らしいのですが.....カッコいいロゴと企業姿勢に惹かれました。

グレイズ二体をミキシング、武装はコマンドウルフから貰いました。

前回のザウォートで味を占めたのか、今回もガンメタで塗装しました。

今回も僕にしてはよく出来た方だと自負してます。超高校級の不器用なので...

どうやら僕は使い物にならない設計の新兵器、というのが好きなのだと今回改めて自覚しました。

次作るのも実用性皆無のロマンMSにしようかなー！

ここまでお読みいただきありがとうございます。

いかんせん全てにおいて素人なので、設定や構成、プラモへのアドバイス等はやんわりと頂けると嬉しいです。

後ろ姿を見てみたいとおっしゃってくださる方が居たので
腰のメッシュパイプは隙間に捩じ込んでレジンで固定しました。見えない所だしまぁ多少はね？

グレイ's「「え⁉︎俺ら最後まで組み立てて貰えないんスか!?!?!?」」

グレイズ君達ごめんね.....ごめんね....ミキシングしたかっただけなの.....

グレイズとしての姿を一度も見る事なく完成してしまったのですが、彼らには可哀想な事をしてしまいました。

ケジメにセプクします。