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コラム:ガンダムW 敗者/EW/FTの設定について その2

前回に引続き、今回は五飛を中心とした設定について紹介します。

ガンダムファンの新規層を開拓するために始まった新世紀シリーズ。
Gガンダムで子どもたちのハートをがっちり鷲掴みにしたサンライズは、次回作では女性層をガンダムに取り込もうと画策していた。

当時の女性層の人気コンテンツといえば、ジャ○ーズに代表される美少年アイドルグループ。特にガンダムWの放送が開始される1995年の直前は、デビューから長らく人気が出ていなかったSM○Pがようやく脚光を浴び始めた時期。
(結成された88年〜94年までオリコン1位が獲得できず、コンサート時も観客席のファンの顔がいつも来てくれる人ばかりだとわかるほど少なかった)

ならばガンダムWの主役は美少年6人となるのは当然であり、人気が頭ひとつ抜けていた木村○哉vs他5名という構成が考えられ、取り入れていたとしても不思議ではなかっただろう。(当時はまだギリギリ森○行が在席してました)

となるとあとはキャラデザイン。なるべく被らない属性で個性を出さないとファンがつかないのはどの業界も同じ。
・クールな一匹狼キャラ
・明るい陽気キャラ
・寡黙で頼れるお兄さんキャラ
・優しい弟キャラ
・真面目な熱血漢キャラ
・王道の王子様キャラ
とまあ、女性向け恋愛ゲームを参考にしたと思えるような個性に分けてデザインされた結果がみんなもよく知るガンダムチーム+ゼクスとなったんじゃないかな多分。

更にこれまでのガンダム作品と違い、メディア展開も本編よりストーリー無視したアイドルみたいなグラビアイラストを優先する徹底ぶり。本編で見ることなんて終盤くらいしかない5人揃ったカッコいいイラストが溢れ、本編より他メディアのほうが出番が多かったんじゃないかという始末。

さて、その結果はと言うと、見事女性人気を獲得。
一番人気に輝いたのは主人公ヒイロ・ユイを差し置いて、明るく陽気で面倒見も良いデュオ・マックスウェル。当時の人気は「ガンダムは知らないけどデュオ君がかわいいからデュオ君のガンダム作って」と、デスサイズのデの字も知らなくてもファングッズとして親兄弟彼氏に無理矢理ガンプラを作らせるほど。自分で作る気はサラサラない。

一方で全く人気が無かったのは五飛。
これにはいろいろな不幸が重なっていた。

まず、当時の女性に熱血漢は人気が無かった。
バブル期に流行したトレンディドラマなどの影響で、強い熱血漢より見た目重視のカッコいい二枚目、三枚目の人気がその後もまだ残っていたかもしれない。

ストーリー面でも単独行動が多く、ヒイロとデュオ、トロワとカトルのようなセットでの絡みがなく、ゼクスに至ってはゼクス側から共闘話を持ちかけられていたのに断る徹底ぶり。
また、印象面もよくキレる割には単独でトレーズに挑んで惨敗、セリフがナタクと正義しかないなどいいところもない。

ならば男性人気はというと、当時の評価が分かりやすい例としてスーパーロボット大戦シリーズ登場時を挙げると、
・経験値泥棒
・仲間になるのが一番最後
・仲間になったところで性能が低くて使えない
・精神コマンドも使い道がない
など、開発陣、ユーザー、攻略本編集者全方位からぞんざいに扱われ、「ごひ」の蔑称で呼ばれる始末。五飛が何をしたというのか。

極めつけは本人の性格を決定づけた過去エピソードを作画班の都合で丸々カットされ、空いた話数を総集編にされるという悲劇。ちゃんと説明していれば人気のV字回復も見込めたはずが、何もしないまま劇場版では敵ポジ。五飛が何をしたというのか(2回目)

余談としてガンダムチーム5人がバンドをしているイラストがあるのだが、最奥でぽつんと一人半裸でドラムを叩いている五飛の姿には涙を禁じえない。五飛が何をしたというのか(3回目)

そんな哀しき男・五飛だが、実はヒイロがいなかったら他のどのキャラより主人公適性が最も高かったりする。

前置きだけで既にお腹いっぱいだが、ここからは敗者/EW/FTでようやく日の目を見るようになった五飛の正しい設定や過去を掘り下げていこう。

○五飛について

張 五飛(チャン・ウーフェイ)
出身:L5コロニー
妻:竜 妹蘭(ロン・メイラン)
L5コロニーの名家、張家の出身。
武術にも精通しているが、本人は勉学を好み学者を志望していた。

老子OがL5コロニーの守護者として作り上げたトールギス始龍が高性能故にコロニーの守護を担う竜一族の誰にも扱えなかったため、天才と認められた五飛がパイロットに選ばれる。
また、竜一族に加える目的と、14歳になったら結婚しなければならないという竜一族のしきたりで14歳になったばかりの竜妹蘭と婚姻結ぶことになる。

「正義など存在しない」という持論から、正義を志す妹蘭との折り合いが悪く、夫婦となってからも険悪な関係が続いていた。

本編より少し前、対立していた連合が殺菌と称してL5コロニーを強襲。連合の攻撃からL5コロニーを守るために妹蘭がトールギスを駆って交戦する。
その姿に心を動かされた五飛も未完成のシェンロンガンダムで出撃し辛くも難を逃れるが、妹蘭はトールギス始龍のGに体が耐えきれず重症を負い、ようやくお互いを認め合うことができた直後に妹蘭は五飛の腕の中で永遠の眠りにつくことになる。

上記の経緯から、妹蘭の信念であった「正義」を志すようになり、同時に本当の正義とはなにかを探し続けるようになる。また、トールギス始龍を扱えるほどの力がなかった妹蘭が無理をして戦場に向かい命を落としたため、妹蘭のように大切な人を残したまま死ぬようなことをしてほしくないという思いから「弱い者が戦場に出るな」とあえて相手に強く当たるようになる。

オペレーション・メテオの概要を知った際、L5コロニーを地球に落とすことに反対し、完成したシェンロンガンダムを持ち出して地球に降下する。
反対の理由は、コロニー内にある妻・妹蘭のお気に入りの花畑と墓を守るためであり、オペレーション・メテオが発動する前に連合を潰してしまえばコロニーを落す理由がなくなると考えたため。

以降は本編の流れになるが、ただでさえ主人公クラスの過去を持っているのに本編でも主人公ムーブ全開でした。

・トレーズの策略でガンダム達が呼び寄せられた際、五飛のみ罠と気付いて合流しなかった。
・トレーズの居場所をいち早く突き止め、トレーズの命にあと一歩のところまでたどり着いていた。MSで建物ごと破壊すれば早かったが、あえて1対1の生身で挑んだのは正義の信念から卑怯な手を使わず正々堂々挑みたかったからと思われる。
・トレーズに敗北後に悔しさを叫んだのは、負けたことへの悔しさではなく、上記の正義を成し遂げる力が足りなかったことへの悔しさと思われる。
・様々な人と関わることで、自分の弱さを受け入れた上で再度立ち上がる。
・ゼロシステム初見で唯一システムに耐える。
・ガンダムを開発した5博士がOZに捕まったことを知り、機体の宇宙適応と強化を狙いOZに投降したふりをして、見事5博士の協力を得て機体強化に成功する。
・L5コロニーを人質に取られた際、人質となった竜一族と妹蘭への想いに縛られた五飛を開放するため、竜一族の長がコロニーを自爆させる。結果、自由と引き換えに帰る場所と守りたかった妻の墓を失う。
・トレーズとの再戦に勝利するも、トレーズが自分の志す正義の信念からあえて悪を演じ、信念を成し遂げたこと、それに気づくもトレーズを上回る正義で五飛が勝利する機会を永遠に失ったため、勝ち逃げされたと感じたと思われる。
・EW内での謎セリフである「あと何回少女と子犬をころせばいい?」というヒイロの問に対して「あれがまた繰り返されるのか」という返答を呟いたのは、正義を成すには悪が必要で戦いを終わらせるべきじゃないと考え、ガンダムを破壊せずあえて悪についていた五飛が、人々が戦争を繰り返すと、妻を失い故郷も失った五飛の悲しみと同じ思いをする人が現れ続け、これから先もその悲劇が永遠に繰り返されるのか、ということに気付いたセリフだと思われる。
・L5コロニーの遺産でもあり亡き妻と同じ異名で呼び続けたアルトロンガンダムを竜一族含むL5コロニー出身者の故郷で自爆させ、過去に別れを告げる。

何だろう。ここまで纏めてたら、外伝で主人公やるべきだったんじゃないかと思えてきた。他の主要キャラとほとんど絡まないし、正直五飛だけで1本作れそうな気がする。

今回はここまで。世の「Wにごひいらなくね?」と思ってる人々の考えが変わってくれたら幸いです。

コメント

  1. 1年前

    五飛愛が凄まじくて、ごめんなさい、思わず笑ってしまった。

    ただ、確かに、wの制作と販促の方向性から、五飛が切り捨てられたのは明らかな制作サイドの故意。

    確かEWはOVA先行で、全巻発売後に再編集された劇場版EW特別編だったかな。

    OVA発売と同時期くらいに発売された『小説版EW』が五飛過去ネタを扱った最初の出典ですかね。

    リアルタイムで読んだ。

    TV版を小説版に再構成した(イラスト美樹氏)のはそもそもラストに5人は火星に旅立つエンドだったため、完全なるアナザー。

    まあ、『機動戦士ガンダム』生みの親、富野氏からして、横槍が入らない文章版はやりたい放題好き放題していたので、ガンダム小説版はこんなもんですよ。

    水星の魔女も小説版は既に『原作である』アニメと乖離した部分があるみたいですしね。

    おっさんはどうも富野氏の異様さが合わず、宇宙世紀モノ(TVシリーズの意)では氏に捨てられたZZが一番好き、ファースト、Zは一番嫌い、なんて捻くれ全開で、アナザーシリーズは大好物だった感じですね。アナザー三作の中では、見始めた当初(岡山ではリアルタイム視聴は未放映だったために不可能)は、W→G(再放送)→X(そもそも観てない)が、レンタルビデオを使い全部観た後は、X→G(あの熱さは良い、ちゃんと『ガンダムしてる』点も高評価)→Wに変わっちゃったりしましたが。
    MS関連は00来るまではWが一番好きな感じでしたね。

    現在は、00が質実ともに不動のトップです。

    Wはネタは現状豊富ですが、再映像化には、好き勝手にやった分だけ、本編であるハズのアニメ版との矛盾点が高い他界ハードルになってしまった辺りは、個人的にはとても残念でなりません。

    せめて、OVAでFTを観られたらーとは、思いますけどねー。

    • AAA 1年前

      敗者たちの栄光とFTもアニメで出してほしいですよね。OVAというシステムは当時のビデオテープを買って利益を得るシステムだから、今だと○○チャンネル限定配信とかになってしまうかもしれませんが。
      思い返してみればOOはWのキャラをベースにきちんと過去も掘り返ししつつ、アレルヤハレルヤの二重人格化による2キャラ統合や1stから2ndで人間味が増したティエリア、優秀な兄にコンプレックスを抱くライルなど、より個々が引き立つよううまく人事を調整させた感がありますね。
      富野作品の異様さは、多分ですが劇中で重要な事象について説明しないこととストーリーに全く関係がないシーンが多いこと、やたら戦死者が多いところですかね。リアルな戦争中にアニメのようにわざわざタイミングよく説明する人なんていない(アニメですが)、どれだけ重要な人でも行動が悪手なら都合よく生存しない、全く関係のない会話や行動だって人間なら当たり前に行う、という現実のリアルさを表現することでテンポが悪く感じてしまうところもあるというのが異様さのひひとつかもしれません。

      • 1年前

        確か、00はキャラネタの方向性はW出典とか黒田氏辺りが公式コメントしていましたね。

        富野氏の作品は正におっしゃる通りなのですが、やはり映像『作品』である以上、無造作に●●出されて分かれ。は、少々強引すぎるきらいがあり、そんな辺りがやはりどうしてもユーザー側の反応を真っ二つにしてしまうのでしょうね。

        まあ、ザンボット3をやらかした方なのでw

        刺激優先な辺りがたぶんあるのでしょう。

        Wの新作映像化ないかのぉ。

        あと、欲を言えば、何でもかんでも『プレミアムバンダイ』はやめてほしいですねw

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