GUNSTA5周年記念投稿コンテスト・第50位
UC0104、オーストラリア。その砂漠地帯を北上する部隊がある。四機編成、所属、部隊を表すものを全て消された機体。彼らは、「ゴースト」。
ジェガン陸戦型
コロニー内などの地表、「地面」がある場所での高機動に対応したジェガンを、地球、大気圏内地上用に再調整したモデルである。
「メガ粒子ッ、散開しろっ!」
センサー外から放たれたメガ粒子が半身を焼く。生身の体ではない。MS。18メートルにもおよぶ厚い装甲を纏った巨人だ。その巨人を塹壕のように抉れた地形に滑り込ませる。素早く被弾した左半身をチェック、エラー表示され反応の無いシールドをパージ。アラートが止まり静かになったコクピット内で敵の出方を伺う。
一発だけか、そう伺う自機の元に味方のジェガンが滑り込む。
「大丈夫ですか、大尉」
若い声、マイルズか。心配するマイルズにシールドが駄目になったこと、左腕の肘関節の不調を伝えながらハワードとジョナサンの位置を確認する。どうやら近くのコロニーの残骸の影にいるようだ。
敵は、一発撃ったまま動かない。おそらくは、一機。素早く敵の潜んでいると思われるポイントにアタリをつけると味方に指示を飛ばす。
「ハワード、ジョナサン、このポイントに俺の合図でミサイル。マイルズは、俺と一緒にヤツの右側から回り込む」
二つの、了解の声と同時にマイルズの声が言う。
「敵はこちらの丘の影にいるのでは」
マイルズは、これから回り込む少し盛り上がった地形の影に敵が潜んでいると思っているようだ。違うぞ、マイルズ。あの丘の影にいるとすれば、俺達の進行方向上、ヤツは俺の機体のシールドしか狙えない。だが俺の機体は、正面方向から撃たれた。だからヤツはこのポイントの何処にいる。
不意打ちとはそう言う物だろう。
「機影を確認ッ、くそっ、大尉ッ、とんがり帽子、レッドキャップですッ」
なんてこった、単機なワケだ。とんがり帽子、レッドキャップなどと呼ばれる機体。MSN-04サザビーの量産陸戦型と言えるMSだ。ホバー機動による高い運動性能、脚部を覆うように分厚いスカート状の装甲が、その機動力を守っている。
ミサイルの着弾による粉塵の中から、その特異なシルエットが浮かぶ。
「ハッ、まるでドグウだなッ」
前に暇つぶしに読んだ雑誌に載っていたニッポンの置き物を思い出す。自分達と同じサンドカラーに塗られたその機体がホバー機とは思えない初速で動き出す。速い。マシンガンの射撃音にかき消されるようにマイルズの声が聞こえる。
「落ち着け、マイルズ。残念だがヤツの方が性能は上だ、単機で俺達四機をヤレると思うぐらいはな」
マイルズのマシンガン、俺のヘビィマシンガンの攻撃を、その機体サイズに対して巨大とも言えるシールドで防ぎ、時に躱しながら、同じく巨大なマシンガンが耳障りな射撃音を奏でる。ファンネルコンテナの代わりに装着された二基のバズーカが、マシンガンとは違う射線で俺とマイルズの機体を狙う。
機体も良ければ、腕も良い。あのドグウ野郎、エースだな。
コールマン大尉機
大型のヘビィマシンガンを装備、重そうに見えるが銃身を包むように装着された、ジャケットによりそのように見えるだけで、実際には中はスカスカだったりする。背中にはバズーカを懸架している。「ゴースト」と呼ばれる彼らの部隊の隊長である。
マイルズ少尉機
マシンガンを装備しているのは隊の中でもっとも若いマイルズ機。軽量で連射性能の高さが特徴だが、集弾性能はそれほどでもない。その為、近接戦闘向けの機体設定となっている。
サーベルは左腕に二基。腰部左右にミサイルユニットが装備されている。バックパックに予備武装としてマシンガンが懸架。
互いに有効打を与えられないまま、時間だけが過ぎる。そんな中、ふ、とした疑問。大尉を狙ったメガ粒子砲。目の前の敵機は、実弾のみの兵装構成。量産タイプのサザビーは腹部メガ粒子砲はオミットされているはず。そんな疑問に大尉は、
「あのバカ巨大いシールドの裏に小型のジェネレーターらしいもんが見えた、おそらくソイツだ。だがソイツを未だつかわねぇのは、チャージに時間がかかるか。あるいは」
…命中率が悪いかだ。…たぶんドヤ顔で言っている。こんな近距離での撃ち合いであれば、精度なんて関係ないと思うけど。
いずれにせよ用心しておけ。そんな大尉の声を聞きながら回避運動、移動先を読んで撃ち出されるバズーカが、厄介だ。こちらも後方援護の形で、ハワード、ジョナサン、二機のバズーカによる攻撃をして、これである。ワンマンアーミーかよ。大尉の言う、シールドの動きに注意を払いながら、思う。
「マイルズ、ホバーに火を入れろ。八の字マニューバを仕掛ける」
大尉の言葉が終わるより早く、ホバーシステムをオンにする。八の字マニューバ。ホバー機動により、相手に対し挟み込むように8の字描くように機動、その交差する前後の決定的なタイミングで有効打を撃ち込む。この部隊の十八番と言えるマニューバだ。
「いくぜ、ロックンロールッ!」
大尉の叫び声、大尉、四十手前でその叫び声は、恥ずかしいです。
それぞれ左右に分かれて、自機と大尉の機体が、敵機に迫る。ハワード、ジョナサンのバズーカに動きを止めた、敵機に攻撃。シールドの動きを誘導、そうして空いた敵機の隙に、大尉のヘビィマシンガン銃身下部のランチャーが…。
「喰らえッ、ドグウ野郎ッ」
一発コッキリの特殊弾頭を至近距離でくらわせる。すれ違いざまの一撃、機体を半回転させドグウ野郎を伺うと、自慢の分厚いスカートを半壊させ、おみ足をあらわにした機体が距離を開けるのが見える。周辺の地図を素早く確認した俺は、三機に指示を飛ばす。
「ハワード、ジョナサン、このポイントにトリモチで蜘蛛の巣を張れ。マイルズは俺とドグウ野郎を追い込むぞッ」
俺達のシールドには、先端にトリモチランチャーが装備されている。そして、ここいら一帯は、シドニーにコロニーが落ちた際、その破片が大小問わず降り注いだ場所だ。二人に指定したポイントは、そんな残骸が林のようになっている。なぜ、と聞いてくるマイルズに言う。
「いいか、ホバー機動が優位なこの開けた場所だが、ヤツは脚部(ホバーユニット)を守るスカートを失った。もし、このままこの開けた場所で戦うなら、足を守りながら戦わんとならんだろうよ」
だったら、このポイント。遮蔽物だらけの場所で、ホバー機動に頼らない戦闘する。あのドグウ野郎は、ホバーに頼らなくても、俺らの機体より性能は上だ。
ドグウ野郎は、驚くほど素直にそのポイントに追い込まれる。どうやら考えることは同じだったらしい。
ハワード、ジョナサン機
二人は少尉。主に後方支援を担当する。彼らの武装はバズーカ。銃身横には小型ミサイル、銃身下部に装着されているのは、ショットガン。MS用では無いようだ。コールマン機の背に懸架しているのもこれと同型。
ホバー機動が可能となっている。使用されている武装が全て実弾なのは、ビーム兵装に回す出力を、ホバーシステムに回す為。本機は、陸戦型と銘打っているものの、あくまで機体の調整により陸上機となっているだけであり、調整と一部パーツの取り外しのみで、空間戦闘が可能である。
シールドには、ロケットランチャーの他、先端裏側に、トリモチランチャーが装備されている。胸部には対地用のバルカンが、ショットガンといい、対MS戦闘以外の武装が多いようだが。
コールマン機以外の機体がバックパックに懸架しているマシンガン。紛らわしい形状をしているが、実弾兵装である。
また、彼らの機体は細かい調整の違いがあるものの、同一の機体である。
所々が黒くなったサンドカラーの機体。その機体からのぼる煙。各部にまとわりついたトリモチが焦げ付いている。そんなかつての強敵を前に、随分と外れてしまった進行ルートの再設定をしていると、弾薬の補充を済ませたマイルズが話しかけてくる。
「大尉、途中から、ドグウヤロウとか言ってましたけど、なんです、それ」
おまえ、深刻そうな声して聞くことかそれかよ。知らねえのか。ニッポンの置き物だよ。知りません。と即座に返ってくる返事に、仕返しとばかりに言い返す。おまえは、何でもかんでも言うことにツッこんでくるのを止めろ。そんなんじゃ、イイ奴がいても相手にしてもらえんぞ。
ぐっ、気にしていることを…、そんなマイルズの声を聞きながら、偵察から戻ったハワードらの報告を聞く。どうやら敵はこの一機だったようだ。足元に横たわる機体を見る。
ハワード達の会話聞こえてくる。
「おい、預言者だか、なんだか言うテロリストが、活動を再開したらしいぞ」
「リーダーは、処刑されたはずでは」
「………」
「影武者、それとも…」
「ゴースト」と呼ばれる部隊、表向きには存在しないことになっている。
コールマン、ロックンロールな人。
マイルズ、ツッコミ担当。
ハワード、情報収集マニア。
ジョナサン、無口。
そんな四人。
コメント
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サンドカラー、ボリューム満点の火器、防塵用とも思える重厚なフロントスカート…渋いですね、凄いカッコいいです!
良いモノを観れました。
好きな要素しかない
ジェガンかっこいいです!
思わず惹き込まれるストーリー、合致してるMSに脱帽です。参考にさせて頂きます!
近藤版だー(ニッコリ
プラモ好きの40代
サッと色塗ってパッと作るあまり複雑な改造はしない人(最近はパッと作ってはいない)
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