HGUCリック・ドム(トライバル隊仕様)

「こちらアルファ・リーダー・スモーカー02からグラーフツェッペリンへ。全ダミーバルーンの展開完了。指示を願う」

リック・ドムからの通信に艦隊旗艦グラーフツェッペリン通信士は同じブリッジにいる艦長へ顔を向けた。

「いかがなさいますか艦長？」

「各MSは直ちに帰投。作戦開始時間までかなり押している。MS収容後、パイロット達をこの艦のブリーフィングルームに集めるように」

「了解」

通信士は指示を聞くとコンソールパネルを操作しながらリック・ドムに応答する。

「こちらグラーフツェッペリン、アルファ、ブラボー、チャーリーの各小隊は艦に戻られたし。帰投後、パイロットはブリーフィングルームに集合してください。以上」

「アルファ・リーダー・スモーカー02了解」

続いて他の小隊長も了解の旨を伝える通信を入れる。艦隊旗艦のチベ級ティベ型高速重巡洋艦の周りにはリック・ドムが展開した多数の岩塊ダミーバルーンが、その船体を隠すように周囲を囲んでいた。

「中々の腕じゃないか。新型の09Rを使いこなしている」

艦長のフォン・ヘルシングは艦橋から外で活動するリック・ドムを眺めながら隣にいる佐官へ話しかける。

「いえ、あの程度は当然です」

隣にいる男はヘルシングに顔も向けずブリッジの正面を見たまま言葉を返した。身長が2m近くあり、身体つきも筋肉質なのが制服の上からでも分かる位の男は独特な威圧感を醸し出している。

「グレイシー少佐はパイロット歴は長いのかね?」

「開戦前より乗っています」

「では、かなりの腕前と見てよろしいかな。乗っているMSも変わっているようだしな」

「‥‥‥」

モア・グレイシーは口を閉ざすと体をブリッジの扉の方へ向け外へ出ようとする。

「‥少しはコミュニケーションを取らんか、少佐。貴官らはここじゃゲストなんだ。そもそも君達の所属もよく分からんしだな」

「‥‥機密ですので」

一度動きを止めるがモアはそう言うと扉のスイッチを押しブリッジから出ていった。

「艦長、なんですアレ?」

通信士の1人が不満げな顔で聞く。

「さあな、キシリアの懐刀なんだろう」

「例の新設されるキマイラとか言う部隊ですか」

「いや、トライバル隊と言う月のMS隊らしい」

「トライバル隊?聞いたことないです」

「私もだ。キシリアめ。極秘任務といえど、得体のしれない連中を寄こしてくれたものだ」

「おいっ！ハンガーに固定したらこっちに寄せろ！」

MSデッキでは整備兵達が機体チェックをすべく働き蟻のように忙しなく動く。

「09なんか弄った事ねぇよ！誰かツィマット系に強い奴いねぇか?!」

「お前担当だろ！マニュアル見てねーのかよ!」

「あんな短時間で解る訳ねぇだろ！」

整備兵達は新型のリック・ドムに戸惑っていた。今迄このグラーフツェッペリンではジオニックのザク系統しか扱った事しかなくツィマットの機体には不慣れであった。

「見慣れねーMSに見慣れねーパイロット。一体何なんだ?」

愚痴る整備兵に同じチームの整備兵が近づき体を寄せる。

「おいおい、聴かれるぞ」

接触の秘匿回線で宥めると言葉を続ける。

「何でも月のエース部隊って話だ」

「月だあ‥?けどよ、グラナダじゃ見た事ねえぜ」

「それなんだよ。元々連中は艦隊所属じゃなくて守備隊って噂なんだがグラナダのもんでもないらしい」

「じゃあ何処だよ。ソロモンやサイド3の流れ者か?」

「さあな、でもこの前のドムの点検で解ったことがあるんだよ」

「なんだお前、もう09はバッチリなのか!」

「整備用裏マニュアルをコクピットで立ち上げたら『ルーニック・ベース』って出たんだ」

「ルーニック・ベース?知らねぇな。ジオンにそんな基地あったか?」

「俺も知らんが奴らの出処は多分そこだろう」

2人はしばし会話をしていると突然、怒声がヘルメット内に響く。

「何やってんだ貴様ら！さっさとドムの駆動チェックをしやがれっ！」

チーフメカニックの一喝に2人はビクっとすると慌てて作業に取りかかった。

「これ見た目ザクですけどF型とエライ違うや」

こちらでも整備兵が嘆いている。

「スマンな。このFZ型は統合整備計画の先行型でな。貴官らの為の機体でもある」

ザクFZのパイロット、マサムネ・キリュウ大尉は穏やかな口調で話す。

「ああ、例のマ・クベ大佐プランの。とはいっても、まさかいきなりここに来るとは」

「まあ、よろしく頼む」

マサムネは整備兵の肩を軽く叩くとブリーフィングルームに近い通路へ向かった。その後ろ姿を肩叩かれた整備兵は暫くの間眺めていると別の整備兵が声をかける。

「どうしたんだ?」

「‥いや、どうもな‥」

「何だよ?」

「口調は優しいんだが、何かこう殺気だったものを感じてな」

「パイロットなんて気が立っていて、みんなそんなモンだろ」

「あの細く鋭い目が何とも。身のこなしも隙がない感じがして。昔サイド3の映画館で観た「サムライ」みたいな奴だな‥」

「明日、6:00(ロクマルマル)にトライバル隊はキリュウ大尉を指揮にザクFZ1機、リック・ドム9機による攻撃隊が出撃する」

ブリーフィングルームではこのトライバル隊の隊長であるモアが作戦内容について説明をはじめる。そこにはトライバル隊の面々と艦長のフォンのみで最小限の人間のみでミーティングは行われる。

「攻撃目標は地球連邦宇宙軍の最重要拠点、ルナツーだ。ルナツーの艦隊は現在地球に向け多数発艦しており防備は手薄でありMSの数も少ない筈だ」

モアの説明にフォンが口を開く。

「進路からルナツーに何か仕掛けるとは思ったが、偵察ではなく、奇襲攻撃をするのか?」

フォンはこの内容に驚いたが、動揺を気取られまいと冷静なトーンで聞く。

「そうです。本作戦はキシリア・ザビ少将からの特命です」

「だから私にも本作戦の詳細を知らせず突然貴官らがこの艦に乗り込んで来たのか?」

「この任務の作戦重要度はAAAクラス。故に詳細を知る者を最小限にするのは当然の処置です」

フォンはいけ好かない連中だと思っていたが、やはりキシリアの飼犬かと納得した。

「‥‥そうか。では艦長として2つ程質問をいいかね、少佐?」

「お答えできる範囲なら‥」

「何故、貴官は敵が手薄だと分かる。更に敵艦隊が地球に向け発進しているとはどういう事だ?」

「それについてはお答え致しかねます。ですが貴方も艦隊旗艦の艦長であれば今地球がどういう状況か噂程度はご存知でしょう?」

「‥‥‥」

「また、情報の出処については私も詳細は知りません」

「では別の質問だ。仮にも敵の宇宙最大拠点を叩くのだ。この作戦の貴隊らの作戦成功率は？」

「‥‥未知数です」

6:00作戦名「C.O作戦」開始

「ドムにジャイアントバズーカを持たせろっ！」

「カタパルトから離れろ！フッ飛ばされるぞっ！」

「4番機まだ出れないのか⁉2分で済ませろっ!」

MS発進の為に整備兵や甲板兵達の怒号が飛び交う。整備兵達が慣れないのはリック・ドムだけでなく、それらが装備する火器についても同じだ。特にこの09用のジャイアントバズーカは今までザクが携行していたザクバズーカ280ｍｍ口径よりも大口径の360ｍｍで全長、全高、全幅どれを取っても大きく狭いデッキでの取り扱いに苦労は免れなかった。リック・ドムは右のマニュピレーターでジャイアントバズーカを握りしめると背部に固定した電磁カタパルトで勢いよく射出されていく。

「トライバルリーダー・ブシドー01より各リーダーへ。各小隊はフォーメーションスラッシュを組み後に続け」

「アルファ・リーダー・スモーカー02了解」

「ブラボー・リーダー・ブルズアイ05了解」

「チャーリー・リーダー・ビッグベア08了解」

グラーフツェッペリンから飛び立ったMS達は設置したダミーバルーンが流されないように、スラスターを吹かさず機体を操る。そして艦からある程度の距離を取るとメインスラスターを入れ再加速する。

隊長であるキリュウ大尉のザクが殿を取りリック・ドム達はそれを追いかける。その練度は高く直ぐ様フォーメーションを整えるとルナツーへ向かった。

「艦隊からの出撃なんて久しぶりだぜ」

「俺もルウム以来だな」

「あのカタパルト。見た目の外観と違ってかなり荒い」

「新造艦って言っても結局はチベと変わらないか?」

小隊長達は久しぶりの母艦からの発進に会話が弾む。

「各小隊長、我々は基地守備隊だがこのような出番が回ってきたという事は、それだけジオンが劣勢にさらされているという事だ。そして我々の実力を必要としている時だとも言える。各員成り上がりのジオン軍人だと揶揄されないよう奮闘せよ！」

「了解！」

グラーフツェッペリンからトライバル隊が出撃した頃、地上でも地球連邦軍の一大作戦、オデッサ作戦が開始されようとしていた。オデッサ作戦は地球連邦軍地上軍が主体となる作戦だが、実際は宇宙軍も連携した地上と地球上空の二面を叩くものであった。モアの言う通りルナツーの地球連邦宇宙軍艦艇は地球に向けて出撃する。今ここに知られざるオデッサ作戦が始まる。

〜to be continued〜

ご覧いただきありがとうございました(._.)

以前予告編でありましたように今作は長編なので息切れしないよう頑張ります。

ではガンプラ紹介です！こちらはHGUCドム/リック・ドムをベースにマイナーチェンジしたトライバル隊仕様リック・ドムです。改造と言ってもカラーチェンジと細かな付け足しが主です。エアブラシ塗装でウェザリング、スミ入れは定番のシャーペン、4B鉛筆、粉状パステル。あと艶消しトップコートです。

トライバル隊は赤いコーションが特徴で、これについてはいつか別で説明したいと思います(^_^;)

背部はミニプロペラント・タンクと補助バーニアがあります。タンクはこの機体が後の統合整備計画の機体(ツヴァイ)に繋がっているという設定で付けました。更に0080系には定番のシュツルムファウストをを腰部に装備で雰囲気を出してます。男子はみんなドムが大好きです(;ﾟ∀ﾟ)=3

今回からの「宇宙の挽歌」はオラ設定が多いので用語設定集をストーリーでデジラマ付きで展開したいと思います（´-`）.｡oO

次回は最後に登場した謎の地球連邦軍機をご紹介します！因みにボールじゃないですよ！ボールのガンプラは一切使っておりません。お楽しみに！

また見てくれたら嬉しいです

(人∀・)ﾀﾉﾑ