魔女の愛機

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UC.0096.2月某日。フリージャーナリストで元WB隊のカイ・シデンは北米国連軍最大基地であるシャイアンマウンテン基地群の片隅にある試験場へ来ていた。この基地には重要施設も多数ある事から入るのは容易ではない。また、配備されている部隊も外周部隊はともかく中心に近ければ近いほど精鋭といえる。しかし、

[緊張感がないね〜]

カイにそう言われた案内役の技術少尉マイケル・アダムスは苦笑した。

[ココを直接攻めようとする連中は宇宙の彼方ですから]

そしてカイとアダムスは目的地へ辿り着いた。そこにはカイにとって懐かしい機体がテストを終えて立っていた。

[RX-77-2ガンキャノン。あの戦いの後に唯一残った機体です。カイさんの機体は確か…]

[俺のはア・バオア・クー陥落時に燃えちまったよ。これはシイコさんの機体だ]

RX-77-2ガンキャノン203号機。カイやその仲間たちが戦ったあの一年戦争の最終決戦で唯一生き残ったWB隊のMSでア・バオア・クーから脱出したカイたちのランチを迎えに来た思い出深い機体だった。だが、カイがここへ来たのは感傷に浸るためでは無かった。

[最近ここにシイコさんが来なかったか?]

カイが来た目的。それはここ数週間サイド6イズマコロニー周辺に現れる謎のガンダムについて、その正体を知っているであろう元WB隊シイコ・スガイの足取りを掴むためだった。サイド6軍警察と協力して執拗にガンダムを仕留めるべく追い続けている彼女ならあのガンダムの正体を知っている。そのためなかなか足取りが掴めないシイコを追ってカイはシイコの目撃証言があったこのシャイアン基地へ来ていた。しかし、

[スガイさんなら2週間ほど前に来ましたよ。ただ、この機体のコックピットに乗っただけで何もしないで帰りました。自分の愛機を見に来ただけだったみたいです]

カイが欲しい情報は特に得られなかった。彼女は2週間前にここに来てかつての愛機のコックピットに座り、何もせず帰った…ただそれだけだった。この展開はカイもそうであろうと予想していたので空振りかと思っただけだった。ただ、アダムスはこんな話をカイにした。

[あのガンキャノンはもしかしたら今も”魔女”の帰りを待ってるのかもしれませんね]

[どういう事だ?]

[変な話ですけど一年戦争が終わって、あのガンキャノンがテスト機として運び込まれましたが、スガイさん以外誰一人としてまともに動かせないんです。テスト機なのにまともに動かせないなんて話にならないので破棄する話もありましたが、スガイさんが来た時だけ普通に動くので上も扱いに困りまして、結局半ば記念機扱いでここに置いてるんです]

[MSに魂でも宿ってるとでも?]

[さあどうでしょうか。ただ、もしかしたらあの203号機は今も”主”を待ってるかもしれませんね]

カイが見上げたガンキャノンは何も言わない。カイもあのガンキャノンとシイコの活躍は知っている。間違いなく自分以上にガンキャノンを使いこなし、クルーたちからはその縦横無尽な活躍からニュータイプではないかと言われていたが彼女は頑なにそれを認めなかった。全ては訓練の賜物だと。だが、[シイコさん…アンタの愛機も認めてるんだ。いい加減アンタも認めろよ]カイはそう呟いてシャイアン基地を後にした。

カイが見上げたガンキャノンは何も言わない。カイもあのガンキャノンとシイコの活躍は知っている。間違いなく自分以上にガンキャノンを使いこなし、クルーたちからはその縦横無尽な活躍からニュータイプではないかと言われていたが彼女は頑なにそれを認めなかった。全ては訓練の賜物だと。だが、

[シイコさん…アンタの愛機も認めてるんだ。いい加減アンタも認めろよ]

カイはそう呟いてシャイアン基地を後にした。

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