死闘、決着——。
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『やられた!戦車隊と歩兵隊が!』
突如降下してきたザクを撃破したものの、イギーの叫びにヘントはハッとする。
「まだだ、イギー!上!」
今の攻撃は、自分たちを狙っていなかった。MSを狙った本命の攻撃が続くのではないか。
『3時、9時の上空!挟撃!』
通信機に、少佐の声が入った。
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「まだだ、イギー!上!」
『3時、9時の上空!挟撃!』
ヘントと少佐の声に、イギーはとっさに振り返る。ヒラメのように扁平な航空機の背面に乗ったザクが、低空から突っ込んできていた。
「…っ、野郎!」
マシンガンの掃射で、"ヒラメ"は爆散したが、爆風で加速したザクがイギーに組み付いた。十八番を奪われ、バランスを崩しながらも、シールドで押し返した。パワーはこちらが上だ。
敵機がマシンガンを構えて後退しようとしたところを、シールドを構えてそのまま突っ込む。そのまま、力任せに押し倒す。マシンガンを叩きこむ直前、コクピットからパイロットが転がり出た。
「思い切りがいい……っ!」
ジムの足元を思い切り駆け抜けて、後ろに抜ける。
「……ヘント!?」
敵を追った目線の先、巨大なガトリングを装備したジオンのMSの足元に、ガンダムが火を吹いて倒れているのが見えた。敵機はイギーに向けてもガトリングを斉射し、牽制する。敵の銃撃をしのぐシールド越し、先ほど逃がしたパイロットが、ワイヤーで敵機に取りつくのが見えた。
ふと、轟音が響く。敵の“ヒラメ”が、ジムの頭上すれすれをかすめた。
敵機はそいつに飛び乗り、そのまま戦線を離脱してしまった。
鮮やかな引き際に、イギーは放心し、敵の消えていった空を眺めていた。
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『3時、9時の上空!挟撃!』
通信機に、少佐の声が入った。無事だったか、と一瞬の安堵が、機体の動きとヘントの視線を迷わせた。3時方向にいるイギーを、振り返ってしまった。突っ込んできた敵機に、組み付かれているのが見えた。慌てて、自機も転回する。扁平な航空機の背から飛び降り、最大戦速でミサイルのように滑空してくる敵機が視界に飛び込んできた。
巨大なガトリングを向けられ、至近距離から機体に叩き込まれた。完全に、不意を突かれた。直撃だ。
「……っ!!」
激しい衝撃の後、ヘントの意識は途絶えた。
U.C.0079、11月9日。
地球連邦軍第4軍が、ジオン公国軍オデッサ方面採掘基地郡の絶対防衛線を突破したことを皮切りに、ジオン公国軍の戦線は崩壊。地球連邦軍はそのまま戦力を反転させ、ルーマニア以南の地域も制圧、ギリシャまでを勢力圏に取り戻した。
ジオン公国オデッサ方面軍の指揮を執っていたマ・クベ大佐も、司令の任を解かれ、ザンジバル級で宇宙に脱出。地球連邦軍全軍を率いるレビル将軍は、オデッサ作戦の完遂を宣言した。
第87対MS戦隊は、オデッサ市にてジオン軍のアーサー・クレイグ大尉の率いるMS隊と交戦。戦車隊、歩兵隊は事実上壊滅。ガンダムは中破、ビームライフルも喪失。87戦隊は解隊。L3038MS試験隊“ライオンズ”の残存機6機を統合し、新たに1機のMSと1名のパイロットを補充。MS中隊・第22独立部隊として再編。
87戦隊と交戦したジオン公国軍アーサー・クレイグ大尉、イアン・リー曹長、マイロ・アンダーソン伍長は、オデッサ市の宇宙港で洋上空母を接収、トルコのジオン勢力圏まで脱出。レバント地方に展開する、ジオン公国アフリカ方面軍に合流した。
【#10 / Nov.9.0079 / ”Soldiers” of sorrow fin.】
今回も文章量の割に、写真が多くなってしまいました。
ドダイを絡めると、どうも写真が多くなってしまいます(gundam-kao10)
シャドウファントムのオデッサ編はこれにて一度閉幕です。第2部も考えており、この続きを5話ほど構想しておりますが、追加の機体などを制作中なので、もう少しかかるかと思います。
当初は、架空戦記系の投稿をされているモデラ―の先輩方を真似て、
・大極に影響のない散発的な戦闘を描く
・主人公不在(ヘントらはあくまで狂言回し)のドライな列伝・叙事詩風のショートストーリー
を目指していました(gundam-kao10)
「オデッサ作戦の最後でちょっとほっとしたところで、通りすがりのグフカスタムにガンダムを撃破させる」というラストはずっと考えていたのですが、アーサーのようなキャラクターは作る気がありませんでした。どうしてこうなった……(gundam-kao10)
幼いころ、まだ素組と部分塗装程度で満足していたあの頃も、こんな妄想をしながらガンプラを眺めてにやにやしていたなあ、と思い出しながら、続けてまいりました。自分の頭の中にあった世界を、このような形で出力できた楽しさに加え、皆様にもご好評をいただいて、大変うれしい限りです。(ちなみに、ときどき自分で読み返して、表現を直したり、写真を直したりしています(gundam-kao5一度お読みいただいた話も、ストーリーは変わっていませんが、少しだけ表現が変わっていたりします。)
今回も、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今後とも、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
オリジナルストーリー第10話、第1部 オデッサ作戦編・完結
コメント
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名作「機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編」を彷彿とさせる重厚な雰囲気、悲壮感、迫力のある戦闘シーン、魅力的なキャラクターたちが織りなす人間ドラマ、ほんっと最高でした🤣🤣🤣いつも頭の中で描いている妄想を、ひとつひとつ形にしていくことって、本当に楽しくて嬉しい事で、それをこんなに素晴らしい作品として実現出来る幻之介さん、凄いです!
コメント失礼致しますm(_ _)m
映像(写真ではなく敢えてそう呼ばせて頂きますm(_ _)m)の出来映えはオデッサのストーリーに入る前から絶賛🤩🤩❇️❇️✨✨する程良く出来ていて、非常に満足のいくものでした🥰👍💖👍
ストーリーについても、オデッサ作戦の話に厚みを加える部隊等の戦いとして此方も十二分に満足致しましたm(_ _)m💃💘☺️🙆
私が一番良かったと思うのは、各陣営のパイロット達がイキイキと各々の思いや、考えを語り生きたキャラでいた事でした(ストーリーの為だけのご都合主義ではなく)なので、キャラが勝手に動き出したのかと思います🥰🥰💖💖🙇この辺りが凄く良くカッコ良い作品だったなと思い返します💘💘本当にありがとうございました🙇m(_ _)m
長々とすみませんm(_ _)mお邪魔致しましたm(_ _)m
いつの日か過去においてきた大切なもの掘り出して持ってこれましたね。
圧巻でした。流石としか言いようがありません。イギーの視点、ヘントの視点、ドダイの呼び方から性格を出すあたり、にくいなぁと思ってニヤついてしまいました。思う存分ペンを走らせてほしいです。おいら最後まで付き合いたいです!
いつもありがとうございます。
素敵なコメントありがとうございます。ホントに、過去の思いを形にできたなと思います、楽しかったです(gundam-kao6)
ドダイの呼び名、気づいていただけましたか!さすがです(gandam-hand2)性格の違いが出るように、意識しました(gandam-hand1)
なんとなくぼんやりと、第一次ネオ・ジオン抗争くらいがヘントとイギー、ブライトマンのゴールかなあ、とは考えていますが、ペンよりも機体が揃わなそうです笑
ぼちぼち進めて参ります(gundam-kao5)
オデッサ編お疲れ様でした、
ストーリーの中に引き込まれました😆
今回の結末は全くの予想外でした。また、続編があるとのこと、とても楽しみです。
これからもガンプラ楽しみましょう😊
いつもありがとうございます。
オデッサ編、最後までお付き合いいただきありがとうございました(gundam-kao6)
ガンダムは最初から壊そうと思っていたんですが、どうやって倒させようかなぁ、と思っていました(gundam-kao10)
続きもいずれ投稿してまいります。お楽しみいただければ幸いです。
もちろん楽しみです😊
巧くなくとも、誰かの心に少しでも何かが残れば、こんなに嬉しいことはない、と思っています。
技術がないので、基本的に無改造。キットの基本形成のままですが、できる限り継ぎ目けしや塗装などをして仕上げたいと思っています。
ブンドド写真も多めなので、同じキットを何度も使って、様々なシチュエーションの投稿をする場合もあります、あしからず。
F91、クロスボーン、リックディアスあたりが好きです。
皆さんとの交流も楽しみにしておりますので、どうぞお気軽にコメントなどもいただけますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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