ここ数日ルトバの住民が慌ただしいのは、連邦軍の空爆が始まると言う噂のためだ。ジオンの前衛拠点は街から離れているが、連邦軍から避難の呼び掛けが実際にあった。更に、市民の中に不安を煽り立てている者が混じっている。どうやら、これまで散発的に小さな拠点に仕掛けてきていた現地ゲリラが、連邦軍に本格的に協力しているらしい。
「すまんな、エド。少し粘ってくれよ。増援は必ず送る。」
サラサールへの後退準備を進めるハリソン・サトー少佐は、エドガー少尉に通信を送った。
ルトバの前線基地に、間もなく連邦軍の空爆が始まる。空爆が終われば、戦車隊と、タンク型MSの長距離砲撃を散々浴びせかけらた後に、歩兵、戦車、MSが列を為してなだれ込んでくるのだろう。現在ルトバを守備している、レッドショルダー隊がMS2個中隊の20機。マゼラ・アタックをはじめとする陸上兵器と、ガウ攻撃空母2隻とドップの編隊。迫りくる連邦軍を防ぐには戦力としては申し分ないところだが、トルコから南下してくる連邦軍に対応するサラサール基地からの増援要請に、戦力の半数を引き上げることになった。ガウで運べない機体は陸路を徒歩で撤収させるため、明け方には既に出発していた。
ルトバには、副官のエドガー少尉を残して、1個中隊9機を指揮させることになった。
(あからさまな捨て駒だな。)
ハリソンは心の中で毒づく。
『お気になさらず。少しでも戦力を減らして、サラサールに合流します。適当なところでこの拠点は放棄して構いませんね。』
エドガーは冷静だ。
せめてもの掩護として、ガウ攻撃空母を一隻と、ドダイ、ドップ、マゼラ・アタックで掩護を行わせる。指揮はアーサー・クレイグ大尉に任せた。
「大尉も、くれぐれも無理をするな。ガウの爆弾をばら撒いたらすぐに退け。」
了解、と明瞭な返事を聞いた後、伍長にも無茶をさせるな、と付け加えた。
~~~~~~~~~~~~~~~
『紅白の"のっぺらぼう"ではなく、キャノン砲を両肩に担いだ、赤っぽいやつ。あれが手ごわいですね。』
アーサーはガウを離陸させる前に、地上に残るエドガーと最後の打合せをする。
「例の連邦のニュータイプ部隊に、そういう奴がいると聞いたな。そちらからの増援か。ヨーロッパを横断して行ったと聞いていたのだが。」
分かりません、とエドガーは答えたが、しかし、と付け加える。
『随分遠くから空中のドップを撃ち落されました。パイロットの集中力はかなりのものです。』
「遠目の効く狙撃手が、ビーム兵器を使ってくるなら、なるべく砂をまきあげるように戦え。向こうも砂漠の戦いには慣れていないはずだからな、積極的に打ち出して、乱戦に持ち込め。」
『分かりました。まずは、最初の空爆と砲撃を凌ぎましょう。』
エドガーは落ち着いている。
敵がベイルートに上陸したことを掴んだ時点で、空爆に備えて掩体壕を強化させていたらしいが、果たしてどれほどの戦力が持ちこたえられるのか。
「先に上にあがる。可能な限り、連邦の蝿どもは撃ち落しておこう。」
『頼みます。』
エドガーの返事は、いつも短い。
■■■■■■■■■■■■■■■
出撃前の格納庫の中を、”キッド”が慌ただしく動き回っていた。
「何をしている。」
イギー・ドレイク少尉が尋ねる。
「関節の防塵処理を強化してました。ちょっとしたコツがありまして。今のままでも十分ですが、この方がよりスムーズに駆動しますし、砂も入りににくくなります。」
一応、処理されたところを覗いてみたが、イギーには違いがよく分からなかった。
「そうだ、お前の親分に言っとけよ。乱戦にはあんまり顔を出すなって。」
「ああ、ザクだから、ですね。」
「そうだ、間違って撃っちまう。ミヤギ曹長は鷹の目だからな、信じられないくらい遠くからでも撃たれるぞ。」
「伝えておきます。」
しかし、本当に”ロレンス”のザクが出てきたらどうするのか。誤射で撃墜してしまうことは十分にあり得る。
「ゲリラの連中は、あっちはあっちで勝手にやる。気を遣って作戦行動に支障をきたすことのないように、各員心得ろ。」
ラッキー・ブライトマン少佐は”キッド”の存在に構わず、格納庫内の兵に呼び掛けた。
「と、言うことだ。イギー少尉からの伝言と一緒に伝えてほしい。そちらもそう心得よ、とな。」
「はい、はい、勿論です。2号線沿いの露払いはしてあります。もしMSや戦車の進軍があった場合は、ちょっと対応できませんが、現地民の抵抗はないはずです。」
にやりと笑い、それはありがたい、と答えた後、ブライトマンは通信機に怒鳴る。
「爆撃機隊は出たな!?よし、600秒後に出撃!各員配置に付け!」
陸戦用のトレーラーに乗せられて、MS隊が出撃する。傍らを行くビッグトレー級は、陸路を使って東欧から送られてきた増援だ。オデッサでは87戦隊は最前線の戦線よりも後方からの進軍だったため、間近では見ていなかった。改めてみると、その威容に圧倒される。
ビッグトレーの艦上には、ガンキャノンの姿も見えた。キョウ・ミヤギ曹長の"特技"を考えれば、高台からの狙撃は理にかなった配置だ。
ミノフスキー粒子の戦闘濃度散布の指示が出る。深く呼吸をして、周囲の気配を探るように、集中力を高めていくが、特に何かを感じることはない。やはり、自分はニュータイプなどではない、と、ミヤギは改めて感じる。ベイルート上陸のときのような狙撃は、よほど集中しなければ出来はしない。乱戦の中では不可能だろう。
ただ、ヘントとイギーの存在は、何となく感じる。ダマスカスに夜襲があった夜、三人で飲んだことが関係しているかもしれない。
(楽しかったな。)
戦場だというのに、そんなことを考える。
(生き延びれば、また、三人で。)
二人を守ろう。そうだ。それは、戦う意味になる。
ミヤギは、その澄んだ瞳で砂漠の空を見つめた。
全軍にブライトマンから、全速前進の号令が掛かる。トレーラーに乗り切らないMSも、徒歩で続く。
ベルベット作戦、第3軍に当たるMS旅団は、ジオン軍サラサール基地攻略に向けて発進した。
【#18 Before the sand storm / Nov.23.0079 fin.】
紙粘土工作のビッグトレーは、ただの舞台装置です笑
ぼかしにぼかし、見切りに見切り、誤魔化しましたが、実物はこんな感じです。完全に、なつやすみのしゅくだいです笑
もう出番は終わりです、2度と画面には登場しません笑
砂漠戦は絵面が似通ってしまい、デジラマが手抜き風になってしまいます。すみません(gundam-kao10)
第2部のテキストはほぼ書き終えました。
まとめたら、第1部の3倍強の文章量になっていました。
あと7話が続きます。ここから一気にストーリーが動きますので、お付き合いください。
あと、調べたら地球連邦軍では、旅団を率いることができるのは准将以上、中隊は中尉以上なんですね(gundam-kao10)
この後の展開的に、めっちゃ無視してますが、もう最後まで書いちゃったので、このままいきます笑
それと、ちょっとアピールしておこうかな、と思うのが、サブタイトルです。
格好つけて、英語にしていますが、ときどきふざけてつけています。気になる話は、翻訳アプリで訳してみてください笑
それでは、今回も最後までお付き合いくださりありがとうございます。またのお越しを心よりお待ちしております。
オリジナルストーリー第18話
コメント
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ひょっとしてキッドさん登場してますか?笑。白い給食当番の帽子みたいなのに、黄色の半袖、茶色のズボン。ジ、ジャイアン!?笑。なんて。
今回のミヤギ曹長のくだり最高にいい出来ですね。なんだか切なくも逞しくもあるような。
よかったです👍あとオフショット作画もよきわあ
いつもありがとうございます。
はい、登場してます笑
ホントは服、赤にしたかったんですが、すみません笑
この後もたまに出てきます笑
ミヤギ曹長が順調に●●フラグを立てておりますが、はて、どうなることやら……ミヤギ曹長は、次の次の回からちょっといろいろやらかしてくると思います。
オフショット、いつも鉛筆画を写真に撮ってからペイントアプリで着色してましたが、直接描いた方が楽かもと思いました。タッチペンでも買おうかな。
やはり始まる前はワクワクしたり、ドキドキしたり、子供の頃のお気に入り番組を見るように感じます🥰👍✨💕
何時も楽しい時間をありがとうございますm(_ _)m
いつもありがとうございます。
うわー、子供の頃のって、それ、すごい嬉しいです!(gundam-kao3)
おっしゃるとおり、出撃前のパートにいつも時間を割くのは、そういう高揚感がわたしも好きだからです(gundam-kao6)ここからは毎回何か起こる、はずです!笑
砂漠の砂の舞ってる表現が流石ですね。アニメでは描かれなかったそれぞれの戦闘が楽しめます。展開が益々楽しみです。ガンキャノンカッコいいなぁ。
いつもありがとうございます。
砂埃は有料アプリなので、ちょっとズルかなっておもってます(gundam-kao10)
映像化されなかったところにも物語を想像する余地がある、ガンダム世界の懐の深さ、すごいですよね。
わたしも、このお話進めていくうちにガンキャノンが好きになってきました(gundam-kao6)
いよいよって感じ、緊迫感がとても伝わります。
言葉、セリフひとつひとつに意味合い、含みがありますね。果たしてどのような展開に😁
ワクワクです😆
いつもありがとうございます。
いよいよです!戦いの展開は決めているのですが、画像が作れるかが心配です(gundam-kao10)
一応、伏線みたいなものは回収したつもりですが、どうでしょうか笑
読み進めてみたら大した意味がなかった、なんてことも多そうなので、そこはご勘弁を笑
毎作品ごと、とても楽しく拝見致しております。
私にはこのような素晴らしいストーリーやミヤギ曹長を書き上げる才能はないので、読み応えがないなどのご心配はされなくても大丈夫だと思います。
次回作も楽しみにしてます😊
ありがとうございます(gundam-kao9)
生き延びれば、また3人で…
って、何か旗がパタパタ🏳️してませんか⁉️ 気のせいでありますように…💦
いつもありがとうございます。
皆さんニュータイプですね~(gundam-kao6)
旗がパタパタという話題は……まあ、ちょっとお楽しみに。
全文読み終わってミヤギちゃんしか思い出せん(;^ω^)
「鷹の目だからな」かっこいい!!また作画が・・・♡
鷹の目→未来を見通す力が覚醒するのかな?いやするんです!
4機も水泳部製作する事になったお返しです(笑)嘘ですよ~
いつもありがとうございます。
ん?またもニュータイプですか?笑
SenGokuさんこそ、鷹の目でいらっしゃるようで笑
次の次の話あたり、お楽しみに(gundam-kao6)
大戦に向け動き出す両軍…熱くなってきましたね(zaku-kao2)
数で勝る連邦、質で粘るジオン、その中でのミヤギ曹長の存在ー
少年時代に翌週のジャンプ待ってるくらいの期待度ですね😁
ビッグトレーもお疲れ様でしたw今後の出番がないこいつの処遇が気になります😅
いつもありがとうございます。
普通に考えたら、連邦軍が数でガッといって終わりなんですが、ジオンにどう粘らせようか、色々考えております笑
その期待感、めっちゃ嬉しいです!がんばります!ここから、「ジャンプ」というか「りぼん」かもしれませんが……(gundam-kao10)
ビッグトレーの処遇は……娘の絵の具遊びのお供になるのか、わたしの工作技術向上の日まで眠りにつくのか、検討中です笑
コメント失礼します。この前呟かれていたビッグトレーかなりかわいいですね
鹵獲ザクが誤射されないことを祈ってます
いつもありがとうございます。
ビッグトレー、作った意味あるのかなー、と、割と真面目に後悔しています笑
自分でイラストでも描いて合成すればよかったと、今更ながら思います笑
意外と支持されている鹵獲ザク、ちょっと活躍するかもしれませんので、お楽しみに(zaku-kao5)
ぶんどどデジラマストーリー投稿アカウントです。
技術がないので、基本的に無改造。キットの基本形成のままですが、できる限り継ぎ目けしや塗装などをして仕上げたいと思っています。
ブンドド写真は同じキットを何度も使って、様々なシチュエーションの投稿をする場合もあります、あしからず。
F91、クロスボーン、リックディアスあたりが好きです。
皆さんとの交流も楽しみにしておりますので、どうぞお気軽にコメントなどもいただけますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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