MS-06[Unidentified] ザクⅡ(伝シャア・アズナブル中尉機)
宇宙世紀0001。地球回復のため「人類はひとつになれる」のスローガンの下、地球連邦政府による人類宇宙移民計画の開始を以て宇宙世紀〈ユニバーサル・センチュリー〉へと改暦。
法令上移民は任意であったが、計画自体が全人類の移住を前提としており、特に政府広報による宣伝キャンペーン、その一環として予め全戸に対して期限付きの地球滞在許可証が発行された事等もあり、移民事業は異例の早さで進捗する。
なお移住に係る多額の費用は一部の補助を除き本人負担であり、多くの移民者が三世代にわたる負債労働を余儀なくされた。
宇宙世紀0050。総人口の90%近くの移民が完了すると、地球連邦政府は規定数に達したとして新規スペースコロニー開発の凍結を決定。事実上の移民計画撤回であると同時に地球居住者の世襲化をも意味し、連邦政府による棄民政策だったとする疑念が広まる。
地球連邦のコロニー管理省は「コロニー管理公社」へと改組、治安維持のため連邦宇宙軍が再編増強される。
宇宙世紀0058年9月14日。地球から最も遠い宇宙都市サイド3は共和国を名乗り地球連邦政府に独立を宣言。連邦は経済制裁と軍事的圧力を加えつつも実質的に放置。ほとんどのサイドが連邦に改めて恭順の姿勢を示し、共和国は孤立化を深める。
宇宙世紀0067。ジオン・ダイクンの提出したコロニー自治権整備法案が連邦政府により廃案とされる。ニュータイプの理念にも適う政治的決着という望みが絶たれ、翌0068年ダイクン失意の内に死去。
宇宙世紀0069年8月15日。デギン・ソド・ザビ、来るべき独立戦争に備えザビ家独裁の下、軍国主義体制を完成させるべく全権を掌握。公国制へと移行する。
宇宙世紀0071。ギレン・ザビ、”優性人類生存説”発表(ただし発表時は異なる表題であったともされる)。ジオニズムを政治理論として再構成したものに過ぎなかったが、「ジオン公国民こそ選ばれし優良種」とする拡大解釈によりナショナリズムを発揚、国民の熱狂的支持を獲得。
宇宙世紀0075。ミノフスキー粒子散布下における新型兵器モビルスーツ開発の成功を受け、ギレンは30倍以上の国力差を覆しうる千載一遇の機会として開戦を決意。
ジオン公国の掲げた大義は「人類一人ひとりの自由」であり、地球連邦政府によるコロニー統治機構からのスペースノイド解放こそがジオン独立戦争の目的であった。
具体的には連邦政府の宇宙における出先統治機関の完全排除、連邦宇宙軍の無力化、事実上の統治機構そのものといえるコロニー管理公社の解体・再編。その何れもが不可欠であり、特に公社の解体は講和条件として受け入れさせる必要があった。
宇宙世紀0079年1月3日7時20分、ジオン公国は宣戦布告と同時に”ブリティッシュ作戦”を発動、奇襲によりサイド1、2、4における地球連邦の駐留艦隊及び統治拠点等を殲滅すると、連邦軍総司令部ジャブローへのコロニー落としを敢行した。
既に戦後新秩序を見据えていたギレンは、地球とコロニーの相互依存関係で成り立つ地球圏の経済を可能な限り温存する観点から、双方の被害を必要最小限に抑えた上での早期決着を目指していたとされる。
地球連邦関連施設の集中する一部コロニーに対してのNBC兵器使用は事実ではあるが、反撃が困難な状況で連邦駐留艦隊の投降を狙う各サイド内での奇襲作戦や、可能な限り周辺被害を抑えるため細心の軌道制御が行われたコロニー落としに、その痕跡を確認することが出来る。
しかし新兵器モビルスーツを目の当たりにしパニックに陥った駐留艦隊がサイド内にも関わらず砲雷撃戦による反撃を行ったため、多数のコロニーが破壊され各サイドとも壊滅。
またコロニーの破壊より落下軌道の変更を目的とした連邦軍の迎撃作戦、それによる大気圏内でのコロニー崩壊によりブリティッシュ作戦は失敗。地球環境に対し想定限度を超える被害を及ぼしたため、軌道上からのジャブロー破壊は断念を余儀なくされる。
そして総人口の半数をも死に至らしめたという事実により思想的正当化の必要に迫られた結果、人類の進化のための淘汰選別の必然を説く”優性人類生存説”として大幅に改訂。自らが掲げた幻想に飲み込まれてゆくことになる。
この時点で戦争長期化はほぼ確定的となり、第二段階である連邦宇宙艦隊撃滅戦の実施が決定される。
もし連邦が一定の宇宙戦力を温存したまま防備を固め、ルナツー籠城によって長期戦に持ち込まれれば以後、連邦に講和条件を呑ませる機会は絶たれる。新兵器の優位性が存在する内に、無二の会戦による連邦宇宙戦力の撃滅が不可欠であった。
宇宙世紀0079年1月15日22時、ルウム戦役として知られる戦いの火蓋が切って落とされる。
再度コロニー落としを狙うと見せ掛け、誘き出された連邦宇宙艦隊の背後を突撃機動軍が突くことで、サイド5内に布陣した宇宙攻撃軍の正面突破を余儀なくし、身動きの取り辛いコロニー周辺での乱戦状態へと持ち込む事に成功。
物量に勝る連邦が圧倒的有利に見えたが、航宙機による直掩も困難な状況で、満を持して全面展開したモビルスーツ部隊により徹底的な殲滅戦が行われた。
当時ジオン軍の主力機は核バズーカ使用のため耐核装備が施されたMS-06C《ザクⅡ初期型》であったが、ルウムでは対象コロニーを防衛するという作戦目的上、主戦場において核バズーカの使用は制限された。
そんな中、宇宙攻撃軍第6機動大隊第4小隊隊長シャア・アズナブル中尉は、赤いザクを駆り単騎5隻もの戦艦を連続撃沈するという大殊勲を上げた。
この時の搭乗機は、塗装未完了の下地状態で配備されていた予備機であり、制御系のリミッター設定はおろか放射線遮断液の注入さえ済んでいなかったという。
地球圏全体に「赤い彗星」の二つ名を鳴り響かせることになる所謂「シャアの五艘飛び」であるが、一説によると使用機体はMS-06Cに偽装された高性能試作機であったともされる。
総帥府ペーメミュンデ機関は戦争の長期化を見越し、プロバガンダのため”戦争の英雄”を必要としており、候補者たるエースパイロットには事前に特別な機体が手配されていたという。
次期主力モデルMS-06F《量産型ザク》ではモビルスーツ本来の特長である機動性能を最大限に生かすため、耐核装備を撤廃し徹底した軽量化が採用される予定であったが、更に上位機種としてMS-06S《指揮官用ザク》が開発中であった。
宇宙空間でのモビルスーツは制動可能な速度が、その機体にとって事実上の最高速度となる。つまり耐核装備により重量が大きくAMBAC効率に劣り最高速度を低く抑えざるをえないザクⅡ初期型に対し、それらの問題点が解決された指揮官用ザクであれば、パイロットの技量次第で3倍の速さでの戦闘も現実に可能であったという。
まだエースパイロットや指揮官機のパーソナルカラーによる個別塗装は制度化されていなかったため、機体色には戦場で目立ち、かつ味方に不自然さを感じさせにくい防錆下地塗料に擬したものが選択されたのだという。
目撃情報を綜合するとルウム戦役当時、複数の”赤いザク”が同時に存在していた事を示唆しているが、敗戦時の機密文書焼却により裏付けとなる史料は現存しない。
元々突撃機動軍においては親衛隊など一部の特殊部隊で部隊カラー等の特別な機体色が採用されていたがルウム戦役の後、機体のパーソナルカラー塗装が制度化されるにあたって停止となる。
突撃機動軍第7師団第1MS大隊司令部付特務小隊「黒い三連星」の機体も例外ではなかったが、レビル中将(当時)捕縛の功績により3名同一のパーソナルカラーとして特別に使用が許可された。
恩賞の一つとして与えられたMS-06S《ザクⅡS型》では突撃機動軍の特殊部隊を象徴する黒と紫の二色による塗分けであったが、MS-06R-1《高機動型ザクⅡ改良型》への機種転換に際し、脚部の塗装完了を待たずに受領したため、機体の一部は未塗装下地状態であったとされる。
再現映像等では乗機がアンテナ付きのMS-06SやMS-06R-1Aとされるなど誇張や脚色も多いながら、ルウム戦役の英雄として大々的に宣伝されたものの、後にジオンにとって最悪と言えるタイミングでレビルが脱出に成功したため、将軍捕縛という偉勲も国内放送での取扱いは激減、自然「赤い彗星」が注目と人気を独占することとなった。
投入戦力の約80%を喪失して壊滅状態の連邦宇宙軍はルナツーに逼塞、ジオン軍の損失も決して小さなものではなかったが絶対制宙権を獲得、地球降下作戦を遂行するにあたっての障害は完全に排除された。
当初の想定とは大幅に異なる状況と言え、宇宙における圧倒的優位な形勢を背景に近日、南極で行われる停戦交渉は事実上の降伏文書調印になると目されていたが――
コメント
コメントをして応援しよう
コメントにはログインが必要です
いいことかんがえた
ザクⅠB型(実戦配備カラー)
MS-05B ザクⅠ後期生産型(実戦配備カラー) 一年戦争緒…
ザクⅡF型(ツィマット社製)
MS-06F(Zi) 量産型ザク(ツィマット社製)
ザクⅡFS型(ロールアウトカラー)
MS-06FS 指揮官用量産型ザクⅡ(ロールアウトカラー)
ザクⅡS型(ロールアウトカラー)
MS-06S 指揮官用ザクⅡ(ロールアウトカラー)