EMS-15S/H DUVAL’S GYAN SEIJI PACKS/HAKUJI PACKS
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宇宙世紀0079年──
のちに一年戦争とよばれる大戦のさなか、ツィマッド社の開発主任でありテストパイロットのジャンリュック・デュバル少佐は、ジオン公国軍次期主力機の座を賭けた熾烈なMS開発競争の只中に身を置いていた。
「1番機デュバル少佐、予定の試験項目を全てクリア。ガイドビーコンに従い左舷後部デッキへ着艦されたし。」
通信が終了すると、その大きな筆箱の様な艦は真っ直ぐに光の道筋を伸ばした。デュバルにはそれが栄光へと続く真っ直ぐな道に見えていたのかも知れない。彼は操縦桿を握りながら、かつてテスト中の不運な事故で落命した同期のことを思い出していた。
「フランツ見ているか、、、俺たちの夢がもう直ぐ叶うところまで来ているんだ。」
スプリット迷彩が施されたその機体が着艦すると、デュバルは乗組員からの拍手と大歓声をもって迎えられた。
「素晴らしいテスト結果です、デュバル少佐!」
評価試験を担当した技術士官が一番に駆け寄って握手を求めた。
「ありがとう。我が社が実用化に成功したビームサーベルの威力は文句ナシだ!それに比べてジオニック社のテスト機はまだビーム兵器の実装に手こずっていると聞く。ここへ来てコチラが大きく一歩リードだ。今日の試験結果を見れば軍の上層部も次期主力機に相応しいのは、このEMS-15ギャンだと確信するだろう!」
続いて密着取材で乗り込んでいるジオン国営放送の記者の取材に答えていた時、一人ツィマッド社のスタッフが神妙な面持ちでデュバル少佐に耳打ちをした。
「少佐、本社からの緊急連絡です。
先程、総帥府の筋からもたらされた情報ですが──それによりますと、
技術本部はガンダムのリバースエンジニアリングによる次期主力量産機の開発を決定。
次期主力MSは鹵獲された連邦軍MSのマスプロモデルに一本化される方針で決定した模様との事です。」
「ば、馬鹿な…そんな馬鹿な話があってたまるか⁉︎…
我々はジオニックと過酷な開発レースを何ヶ月も戦ってきたんだぞ…そしてようやく優位に立った…あと一歩、あと一歩という所で敗北だと?
しかも、負けたのはジオニックでもなく急に降って湧いてきた連邦の機体?何を言っている?MSをようやく作り始めた連邦の機体こどきにこのギャンが劣っているはずが無い…こんな…このような屈辱があっていいのか!??
…ギャンは制式化競争に敗れたのでは無い…政治に、デマゴーグに敗れたのだ…!!」
デュバルは一人艦の廊下に崩れ落ちた。
公国軍総帥府及び技術本部は、シャア・アズナブル少佐により鹵獲された連邦軍の白いMSの高い性能に着目。膠着していた戦況に一気に攻勢をかけるべく、大型MAビグザムとガンダムのリバースエンジニアリングによるマスプロモデル・ゲルググの量産に持てる国力を集中投入する事を決定した。
ここに、男たちの開発競争は勝者無きまま、その幕を閉じた……
かに見えた
が、EMS-15ギャンの開発中止命令は下されず、開発は続行された。
そして時は流れ宇宙世紀0083──
「セシリアは何をしている⁈いくらギレン総帥付きの秘書官といえど、ペーネミュンデ機関の職務を放り出して何ヶ月も音信不通とは?お陰で残った仕事は全てこちら回しだ‼︎」
モニク・キャデラック特務大尉の愚痴る様子をはた目にマルティン・プロホノゥ艦長は呟く。
「似ている、実によく似ている。クニでカミさんが飼ってるポメラニアンに。」
試験支援艦ヨーツンヘイムは第603技術試験隊の母艦として、試作兵器の評価試験のため地球衛星軌道上を航行していた。
「試作強化兵装ハクジ/セイジ──
どちらもツィマッド社の試作MS、EMS-15ギャンの追加装備として開発された強化プランの名称です。
ご存知の通り、ギャンは一年戦争時の次期主力MS開発計画においてテストされていたMSですが、MS-14ゲルググの量産決定に伴いコンペは中止、結局正式採用には至らなかった機体です。
本装備は、優れた格闘性能を持ちつつも比較的空間戦闘が苦手とされた本機を、追加兵装により高速戦闘に対応させるものであり、本試験でより高評価を得たものが制式採用される予定です。」
「しかし長いな〜。うん、デカい、、というより長い。MSの武装は今やビーム兵器が主流!って時代に、こんな馬鹿長い槍を抱えててアリなのかな?」
オリヴァー・マイ技術中尉の説明を一通り聞いて、同僚のヒデト・ワシヤ中尉はその追加装備の長さに驚いていた。
「グラナダの突撃機動軍近衛師団が採用に意欲を示しているという。キシリア閣下の仮想敵…もしや…」
そこまで口にしかけた艦長を、モニクの咳払いが嗜めた。
「ン、ン゛ン゛。
ともかく、いま我々に課された任務は余計な詮索ではなく、託された兵器の正当な評価。
ですね?艦長。
603はこれよりギャンの試験を開始する!
デュバル少佐の1号機はH装備、ワシヤ中尉の2号機はS装備で発艦、テストを開始!」
複合兵装ハクジ──
MSの全高を遥かに超える全長27.3mにおよぶ長大な本体に、3門のレールガン、6基のプロペラントタンクとバーニア、超硬ガンダリウム合金製のスピアの機能を搭載したギャン専用の大型追加兵装である。
機体本体の改修ではなく、携行武装にギャンの性能向上の為の能力を付与させることで、運用性・整備性・生産性に優れ、被弾時・不要時には放棄することで一点突破型の強襲機から、本来の格闘戦重視へと即座に機体特性を変えられるという利点も持つ。
対するセイジ装備は、
連邦軍のV作戦で計画されていた支援機Gメカを参考に開発された重支援機Gチャリオット(ギャンチャリオット)によってギャンの機体性能向上を図るプランの呼称である。
3連ガトリング砲2門、ハイドボンブ、ニードルミサイルなどを備えるGチャリオットは、通常型バックパックと換装される形でギャン背部にドッキングし、出力強化型のハイビームサーベル、ビーム発生装置も備える攻防一体のギャンシールド改などを本体に供給することで機体本来の格闘継戦能力を活かして強化する。
主機関にはどちらも、かつて“傑作”と評されたツィマッド社の土星エンジンを上回る性能の新型エンジン『ウラヌスエンジン(天王星エンジン)』が搭載され、推力を大幅に向上させた。
それぞれ異なる試作装備のギャン2機は順調にテストをこなし、評価試験項目の山場である最大加速試験の為に揃って加速に入った。
「こちら2号機ワシヤ中尉、ウラヌスエンジンは間もなく最大出力に達する模様。
凄い加速力だ!MSのモノとは思えない!」
「こちら1号機デュバル少佐、ハハッ!まだまだだぞ!まだ試作段階のこの新型エンジンには安全装置のリミッターがかけられているが、我が社のエンジンの限界性能ならまだまだこんなものではないよ!」
2機のギャンが先を競い合うように加速を続ける中、突如として異常を知らせる警報音が二号機のコクピットに鳴り響く。
「な、何だ⁉︎エンジントラブル?暴走警報?
と、止まらない!エンジン制御が効かない!こちら二号機、ウラヌスエンジンに異常発生!繰り返す、ウラヌスエンジンに異常発生!」
「デュバル少佐、いえ、デュバル開発主任!どうゆう事です⁈絶対安全では無かったのですか?新型エンジンとは、ウラヌスエンジンとは一体何なんです?」
原因究明の為に返答を求めるマイの声に、デュバルは静かに口を開いた。
「ゼクノヴァ現象──
原因不明のサイコミュの暴走に関連したミノフスキー粒子の相反転現象。
一般的には三年前の第二次ソロモン会戦時に起きた大規模なものが知られているが、その後の研究により実は小規模なものは我々のいるこの宇宙でしばしば発生していることが判明した。
そして、ゼクノヴァ現象はエネルギーの流出に伴って空間転移・何らかの物質の位置交換も起こる事がわかった。
一年戦争時に突如出現したという謎のオブジェクト“シャロンの薔薇”のようにね。
終戦後、我々ツィマッド社も自社の管轄する試験宙域にてごく小規模なゼクノヴァ現象を観測、そしてそこに現れた正体不明のオブジェクトを回収し、それを“フォクソーの壺”と名付けた。
MSの頭部ユニットの様でもあるそれは、しかし公国軍のどの機体にも当てはまらず、解析を進めるうちに我々は画期的な推進機関の設計データを手に入れることに成功する。
それを元に建造されたのがウラヌスエンジンだった。
だが優れた性能を有しながらも、未知の技術を応用した為か、我々の技術では安定的な制御は困難を極めた。
ただ唯一、同じ世界から来たであろう“フォクソーの壺”だけがウラヌスエンジンを安定的に制御出来たため、オリジナルのオブジェクトは制御ユニットとしてGチャリオットの機首に組み込まれているのだ…」
「そんな、、そんな不安定なものを試験機に⁉︎」
「技術者はっ!!いつだって己の命の危険も顧みず最先端の技術開発にその身を捧げきた!君にだって分かる筈だ!その尊い犠牲の上に今日の科学技術がある事を!!そうでなければ…私は顔向け出来ない…この機体のために命を落としていった友のためにも…!!」
「ふん!呆れた正義感ね。」
デュバルの展開する持論を聞いていたモニクはそれを一刀両断する。
「まるで自己犠牲精神に酔い潰れているナルシスト。全てを分かって受け入れているならそれも許されるでしょう。かつてこの艦にやって来ては消えて行った試作兵器と男たちは、それを全て分かった上で覚悟を決めていたわ…でも、それを何も知らされていない部下にまで強要するのは訳が違う!とんだ独りよがりのパワハラ野郎よ!!」
「今は二号機の救出が最優先だ!
ヨーツンヘイム、ブースター点火、機関一杯!!
デュバル少佐、まだ追いつけますかな?」
艦長の問いかけにデュバルはハッと我にかえり、一号機での追跡を開始した。
「こちらヨーツンヘイム。一号機デュバル少佐、推力がレッドゾーンに入らないよう気を付けて下さい!」
「無茶だっ!二号機のエンジン出力はとうにレッドゾーンを超えている!
こちらもリミッターを解除して最大加速する!!」
一号機のハクジもウラヌスエンジンの安全装置を解除、その限界性能をもって暴走した二号機にジリジリと肉薄した。
「限界です!ウラヌスエンジンの最大出力にギャンの機体強度が持ちません!」
「少佐エンジンカットをっ!!!…」
衛星軌道上を疾る2機のギャンが光に包まれたのはその直後の事であった……
「ぜ、ゼクノヴァです!ミノフスキー粒子の相反転現象を確認。ゼクノヴァ反応です!」
「誰なのだ?お前は…」
デュバルはその光の中、見た事も無い謎のMSと邂逅する。全く見覚えの無い外観だったが、ただ唯一機体にマーキングされていたツィマッド社のロゴと603の部隊章は彼のよく知るものだった。
「向こう側から来たというのか…?」
「ザ、ザァー…ォーツンヘイム、聞こえるか?」
激しいミノフスキー粒子の嵐の向こうから通信らしき声が聞こえた。
「ザァー…私はは今どの様に嘲られようとも一つも恥辱とは思わない。MSヅダはもはやゴーストファイターでは無い。この重大な局面で確かに戦っている。この独立戦争に厳然と存在しているのだよ。
この歴史の真実は何人たりとも消せはしない…ザ、ザザァー…」
そう言い残すと、そのMSは暴走し爆発寸前だったウラヌスエンジンのユニットを切り離し、それを抱えたまま、また光の向こう側へと消えていってしまったのだ。
報告
宇宙世紀0083年9月16日
第603技術試験隊は、我が社の試作MS EMS-15ギャン及びその追加装備である試作強化兵装ハクジ/セイジのテストを実施せり。
他の項目では優秀な結果を出しつつも、計らずしも最大加速試験中に二号機のセイジ装備ウラヌスエンジンが原因不明の異常をきたし突如暴走。ハクジ装備の一号機によりこれを追跡、救出する事に成功す。
この事からも複合兵装ハクジの直線加速性能、出力安定性には疑いの余地なし。ギャンの追加兵装としては本装備の制式採用が望ましいと考えられる。
なお、同時に同宙域にて小規模なゼクノヴァ現象を観測。暴走した二号機のウラヌスエンジンユニットはこれに巻き込まれ消失した為、回収しての事故調査は不可能であり、暴走の原因特定には至らず。
依然としてゼクノヴァ現象がもたらす宇宙移民国家である我が国への影響は未知数であり、一刻も早いその解明が望まれるものである。
ツィマッド社MS開発主任・テストパイロット
ジャン=リュック・デュバル少佐
この後にギャンとその追加装備ハクジはMS-15/Hとしてジオン公国 突撃機動軍 グラナダ近衛師団配備機として制式採用が決定する。
今回、衛星軌道上において遭遇したその未知の幻影について、
我々はまだその報告の術を知らない…
GQ版のギャンを再販でようやく手に入れたので、MSイグルー、ジャン=リュック・デュバル少佐機として制作してみました!
元々のギャンのデザインはこれといって好みでは無かったんですが、GQ版のアレンジされたいかにも「これから馬上槍試合やります❗️」みたいなデザインは刺さりました!後傾したいかにも早そうなフェイスが堪りません!
ギャンといえばツィマッド社、ツィマッド社のテストパイロットといえばこの人!で、ヅダカラーも似合うだろうな〜という構想は、実はジクベレよりも前から思い付いていたネタでした🤣
アイコンやモデラー名にもするぐらいイグルー、603大好きなワタクシにとっては推しカラーであります🥰
ヅダを参考にしたカラーとスプリット迷彩が特徴です。迷彩はマスキング塗装で肩アーマーと脚部、シールドに施しています。
20年近く前の超初心の頃、筆塗りでヅダのスプリット迷彩を再現しようとして全く上手くいかなかった事を思い出しながら、あの頃からすると(エアブラシ の力もかなり大きいですが)随分綺麗に塗れるようになったなぁ、と少し感慨深くなりました🥹
ツィマッドと603のマーキングを施せば、もうそれは紛れもなくかなりヅダw
最新のキットなので改修もモノアイのhアイズ化とちょっとした部分の開口、目立つ合わせ目処理ぐらいです。
ハクジ装備。設定どおりですが、めちゃくちゃ長いw
ですがこんな長物を天に向かってビシっと立てたら、造形としてはメチャクチャ決まりますな✨
ハクジはモナカ割だったので、合わせ目消しから、レールガン開口、スプリット迷彩、タンクの塗り分けまで1番手をかけたパーツかも知れません。
セイジ装備。名前の由来はハクジ(白磁)に対しての青磁から。
ギャンを購入した模型店で大量にビルド系のヴァリアブルポッド売れ残っていたので、「ちょっとデザインにネタ色が強すぎるかな〜?」と思いながらも買って合わせてみました。
そこはギャン。
やはり似合いますw
「サザキ・ススムがもし最初に見たのがGQだったら」の世界線のビルドファイターズに登場しそうなギャンバルカンと言っても差し支え無いでしょう。
最近は組み上げ後の最後のトップコートは横着をしてバラさないまま全部つや消しにする事が多かったんですが、今回はメタリック部分は徹底的にギラつかせたいと思い、もう一度バラして、光沢、つや消しをパーツごとに吹き分けました。
GQ世界のMSのこのパイプやワイヤーのデザイン、個人的にすごくツボです👍
正史でも開発競争ではゲルググに敗れますが、GQ世界ではライバル・ジオニックのMSでもないゲルググの皮を被ったGMに掠め取られるというとんでもないバタフライエフェクト横槍を入れられたギャンさん。
デュバル君は何度やり直しも制式採用レースに勝てない呪縛にでもかかっているのか?
ジオンの要人が滞在する古城を警備するギャン。
グラナダ近衛師団の選抜には、この長大な槍を微動だにせず真っ直ぐに構えられるほど操縦技術に優れた者という条件があったとか、なかったとか。
デュバル少佐機ということで、今回のショートストーリーはGQ世界での603技術試験隊を妄想して書いてみました。
みんなが知っている宇宙世紀によく似てはいるんだけど、どこかちょっとずつ違う歴史を歩む世界。
この世界では恐らくヅダは開発や評価試験はされておらず、デュバルもその姿を知らないままギャンのテストパイロットをしています。が、この世界のギャンもどこかヅダと似たような運命を辿り、「軌道上に幻影は疾る」似たような状況になっていく…
クライマックスにキラキラの中で現れるヅダは別の世界線で爆散する瞬間にゼクノヴァで時限を超えて来た存在であり、GQ世界のデュバルは違う世界の自分とヅダに窮地を救われたとでも考えて頂ければ幸いです☺️
ゼクノヴァはマジで超便利設定過ぎる…w
ご覧頂きありがとうございました❗️
フォクソーの壺…あれは良いものだ✨
コメント
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UC.60生まれ
ジオン第四工科大卒
1年戦争時 工兵の不足により工業科学生でありながら学徒動員・徴用され第603技術試験隊においてオリヴァー・マイ技術中尉付きのメカニック見習いとして、様々な機体に携わり無事終戦まで生き残る。これは、彼の肉眼に映った兵器たちの記録である。
主に微改造・全塗装で仕上げている初心者モデラーです。
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