CEK-S07 BEGUIR-HEPTA
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機動戦士ガンダム 水星の魔女
オリジナルフォトストーリー
“This is a story not recorded at all.”
“これは、記録には残されていない物語である。”
「中世錬金術師の時代から、今なお変わる事のない人の夢は何だと思う?」
「不老不死…永遠の命…でしょうか?、カルド・ナボ博士?」
「…GUNDはそれと人とを繋ぐ架け橋となり得るものだ。」
アドステラ127年──
クワイエット・ゼロ騒乱と呼ばれた事件から5年、ヴァナディース事変からは数えて26年の月日が流れた。
騒乱の首謀者として裁判にかけられたシャディク・ゼネリの刑は確定し、連合第七監獄に収監された。
通称“セブンスヘブン”
連合刑務所の中でも最も警備が厳しく、脱獄不能と言われるここに集められてくるのは、皆、極刑を言い渡された凶悪犯ばかりである。
「こちらNフィールド警備隊062、北東方向より侵入してくる所属不明機を探知した。これより迎撃に向かう」
「コントロール了解。応援部隊も向かわせる」
迎撃に向かったのは堅守堅牢を誇るセブンスヘブン警備隊の中でもベテランのパイロットだった。
「所属不明機は旧グラスレー社製改造MSと確認…これより排除を開始する……な、なんだ!?」
だが、その所属不明機のシェルユニットが赤い光を放つと、彼の駆るグリューネッテをいとも容易く翻弄する。
「ま、まさか、、ヤツはGUNDフォーマットを積んでいるのか!?お、応援は、まだかっ!?」
その言葉を最期に警備隊機は通信を絶つ。
所属不明機は単機で警備網を突破。予め入手していたであろう情報を元に、シャディクの身柄を奪い去って逃走した。
一カ月後──
株式会社ガンダム CEO執務室
「まだなの!?まだ何の情報も掴めないの?スレッタの行方は?」
秘書を務めるラジャンにミオリネ・レンブランはいつも以上にキツく問いただしたが、返ってくる言葉には覇気が無かった。
「申し訳ありません、ミオリネ様。連合の捜索隊だけでなく、私的に雇った部隊も投入して全力で探しておりますが、未だに僅かな手掛かりすら掴めず…」
スレッタ・マーキュリーの乗った水星航路の連絡船が襲撃されてから3週間…ミオリネは不眠不休でその安否確認に奔走するが、未だにその消息は掴めず、憔悴しきっていた。
「水星の学校の様子を観に行くって、、こんな事なら1人行かせなきゃ良かった…」
いつも持ち歩いているホッツさんのキーホルダーの目が光り、ミオリネに慰めの言葉をかける。
「ミオリネ、キミのせいじゃないよ。2人で行方不明になっていたら今頃探してくれている人は誰も居なかった。宇宙海賊にでも襲われたのかも知れないけど、ほら、未だにクールさんからの信号は届いてる。位置までは特定出来ないけど、きっとどこかでスレッタは無事でいるんだ!」
「エリクト…あんた声だけは子供のままのクセに一人前に励ましてくれて〜〜!うぅっ💦」
「そういえば今朝、ミオリネ様宛てのメッセージカードが1通届いておりました。スレッタ様の件には関係無さそうでしたので、まだお伝えしてなかったのですが…」
「招待状? パーティーか何かかしら?」
生体認証のロックがかけられた電子メッセージを開くと、ミオリネの目つきは一変する。
ミオリネ・レンブラン様
世にも珍しき品々の数々を取り揃えての舞踏会を開催いたします。
さらに此度は目玉として、かつての魔女の錬金術につらなる秘宝中の秘宝“フレイヤの花婿”もご用意して御座います。
紳士淑女の皆々様方には仮面をご着用の上、心ゆく迄ダンスをお楽しみ下さいませ。
暗き闇の底で輝く迷宮にてお待ちしております。
ザザ商会
「こ、これは?」
「あくまで噂話程度の情報でしたが、聞いた事があります、暗礁宙域の廃墟フロントで非合法のMS地下格闘技大会が行われていると。
そこでは、表には出せないような法外な賭け金や盗品、密約、薬物、果ては人身まで、ありとあらゆる物が取引きされているそうですが、公には出来ない為、参加者は皆身分を隠して出場するらしく、それ故に『仮面舞踏会(マスカレード)』ならぬ『仮面武闘会(マスコリーダ)』と呼ばれるんだとか。
ザザ商会というのは、その裏社会を牛耳っている怪しい企業ですよ。」
5年前のベネリットグループの解体は、世界経済に大変な衝撃と構造の変革をもたらした。
だがしかし、すでに世界的に民間企業の枠を超える巨大な影響力を握っていたグループの突然の解散は、経済のみならず、治安維持、インフラ、安全保障などの各分野に大きな混乱を招く。
結果、闇経済の拡大や武力による違法行為が横行し、その中で力を付けたのがザザ商会の様な裏社会の組織であった。
「なるほどね、、
でも何故いま私にこんな招待状なんか…
フレイヤの花婿…何かの隠語よね…ノルド神話に伝わる女神、またの名をヴァナディース…
…ッ!⁉︎」
「いけません!ミオリネ様!闇闘技場など!
もし公になれば会社の信用や、今のお立場は勿論、、そのような得体の知れない場所で貴方様に万が一の事などあれば、、、ただでさえ、スレッタ様もいらっしゃらないのに…
何をお考えですか⁈」
「お願い!行かせてラジャン!!
今はどんなに小さな手がかりにでもすがる想いなの!
スレッタを捜さなきゃ…私、、スレッタに会いたい…!」
泣きすがるミオリネを見て、エリクトは暫くの沈黙を破った。
「…行こうミオリネ。スレッタを捜しに!ミオリネもスレッタも僕が必ず連れ帰ってみせる!!」
その座標は、“宇宙のゴミ捨て場”とも呼ばれる使われなくなったフロントなどが密集して廃棄されている宙域の奥深くを示していた。
デブリと岩塊を掻き分けた先に、異様に明るく光輝くフロントがひとつ。
それはまさに黄金で出来た宮殿を模した様な煌びやかさで、集まって来た来客たちを圧倒していた。
「地下格闘技って言うから、コソコソ薄汚い所で隠れてやっるかと思ったら、何この派手さと人の集まりは⁉︎
下手したらベネリットのインキュベーションよりも盛り上がってるわよ!」
「ザザ商会はベネリットグループの無き今や、それに替わる大きな力を持っています。警察組織や連合の内部にもその影響が届いていても不思議ではない。」
驚きを隠せないミオリネをよそに、開幕を知らせるアナウンスが会場に響き渡る。
「今宵は皆様、突然のご招待にも関わらずお集まり頂き有難う御座います。
今大会でも皆様のお眼鏡に叶います様、ザザ商会がグループの総力を結集して、この宇宙の隅々から世にも珍しき一品を取り揃え致しました。
皆様方には、この秘宝の数々をかけて、心ゆくまでの決闘(ダンス)をお楽しみ頂ければと思います。
まずはお集まりの皆様への余興と致しまして、只今より当商会の代表、イエル・オルグがエキシビションを演武いたします。
なお、当闘技場では武装の類いは全て実戦出力、リミッター等のレギュレーション適応は一切ございません。」
アナウンスが終了すると、早速闘技場のリングに2体のMSが入場した。
片方は現在警備用などとして配備されている旧オックスアース社製の黒い無人MS。もう一体は、どうやら旧ベネリット御三家の一つ、グラスレー社製の改造機体であり、長大な槍と白銀の鎧が眩しい、ベギル・ヘプタと呼ばれる白いMSであった。
「両者向顔」
「西に弱き敗者あり 東に強き敗者あり
勝者はただ最期まで踊り続けた者のみ!
決心解放!!(フィックスリリース)」
掛け声と共に両者、一気に距離を詰め合い組み合う。
ビームサーベルが火花を散らし合ったかと思うと、また一旦距離を取り、回避しながらの射撃戦を展開した。
「あの無人MSは旧式ですが、自律プログラミングはザザ商会がGUNDフォーマットの解析から独自に改良を加えたものだそうです。ベテラン兵並みの操縦パターンと高い演算処理能力。なかなかの強敵でしょうな。」
ラジャンがそう評した通り、しばらく両者譲らずの互角の闘いが繰り広げられたが、決着は突然に訪れた。
「そろそろ頃合いだろう。
パーメットスコア4!」
次の瞬間、ベギルヘプタのシェルユニットが赤い光を放ったかと思うと、右腕のユニットは本体を離れて自律行動を開始した。
本体と自律ユニットからの激しい攻撃の応酬に、無人MSは対応出来ずに、ベギルヘプタのランスに胴体を貫かれ爆散した。
「勝者 イエル・オルグ!!」
大歓声の中、コクピットから姿を見せたのは青紫のまとめ髪に目元を白い仮面で覆った青年であった。
「イエル・オグル……」
ミオリネがその名を呟いた時、背後から聞き慣れた声の赤髪の大男が姿を現した。
例の如く仮面でその顔を隠してはいたが、間違いなくそれはグエル・ジェタークのものであった。
「あぁ。アイツの、、シャディク・ゼネリの元の名だ。」
「グエル⁉︎ あっ、アンタ何やってるの!な、何でこんな所に?」
「シッ、あまり大きな声で目立つな。ドミニコス隊としての潜入捜査だ。
1ヶ月前にセブンス・ヘブンが襲撃を受けた事件は知っているな?連合は公表していないが、実はあの時に収監されていたシャディクの身柄が拐われた。俺は今、奴の行方を追って此処にいる。」
「シャディクが⁉︎…
一体誰がそんな事を?」
「まだ分からないが、シャディクのかつての名を騙るあの男に、あの機体のさっきの赤い光…あれはGUNDフォーマットだった。
この仮面武闘会…必ず何かあるはずだ!
お前は……わかってる、分かってるよ。スレッタ・マーキュリーを探しに来たんだろ?」
2人がその会話を終えぬうちに、会場では早くも次の試合の組み合わせが発表されていた。
「それでは、いよいよ本戦の開始と致しましょう!
1回戦Aブロック第一試合
この舞台に立つのは、、、
荒々しき炎の蜥蜴、ダリルバルデ ザラマンデルを駆るエントリーネーム・ボブ選手!
対
水に住まう麗しき氷の微笑、ファラクト ウンディーネを駆るエントリーネーム・氷の君選手!」
─機体解説─
CEK-S07 ベギルヘプタはザザ商会の幹部 イエル・オルグが搭乗するカスタマイズMSである。
古代剣闘士風のマスクでフェイス部分を変更するなど外観に手が加えられてはいるが、ベースとなった機体は、ミカエリスへの機種転換訓練用としてシャディク・ゼネリの為に旧グラスレー社のCEラインで製造された試作機であった。
ミカエリスに装備する武装のテストヘッドとしても使用され、ビームブレイザーの連結された右腕や、大型のランスにその原型を見て取れる。
しかしながら原型機がアンチドートシステムを運用する機体であったのに対し、改造された本機最大の特徴は正反対のGUNDフォーマットを搭載した事である。
パーメットスコア上昇時には、背部大型フライトユニットを展開し、文字通り通常の機体では考えられない『殺人的』な加速力を発揮する。
また、有線式であったビームブレイザーも無線誘導のガンビット化されており、単機でもより高度なオールレンジ攻撃を可能とした。
─あとがき─
予告の皆さんの反応があまりにも良すぎて、若干面くらいながらも何とか第一章をアップすることが出来ました〜😂
で、あんだけ新ガンダムをアピールしときながらも「活躍ないんか〜い!」という第一章でしたが、物語の導入部分として今少し勿体ぶらせてもらいましたw
今回主役に据えた機体は、8月にはもう制作が終わっていたベギルヘプタです。
ベギルペンデとミカエリスのミキシングで、フライトユニットは30MM、ランスはコトブキヤを使用しました。
ほぼベギルペンデですが、このキットを制作するのは二回目で、ゲテモノ顔とか言われつつも割とヒロイックにも決まる好きなMSです。(水星キットでは初のおかわりでした)
カラーリングもミカエリスやベギルベウに寄せることで、正統派感が出ました。
グラスレー社のロゴやらイエル・オルグのパーソナルマーク、ザザ商会のマーキングなど、今回も結構凝って自作デカールをデザインしました。
顔のマスクはネオジウム脱着で手甲パーツから制作しましたが、結構印象を変えてくれます。
仮面は芝居の上でも、得体の知れなさを出す良い小道具となります。
馬上槍試合をする騎士の如く、一点突破の一撃離脱を得意とするようなMSをイメージしました。
第一章に出て来た単語を見て、お!?っと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、実は今作はガンダム漫画と同時にかつてコミックボンボンで連載されていた熊倉裕一先生の傑作『王ドロボウJING ザザの仮面武闘会篇』にインスピレーションを受けて書き出した物語です。
美麗なイラストは勿論ですが、独創的な世界観や用語設定、名台詞など、及ばすながらもリスペクトを込めたオマージュが、かつて同じ時代を過ごしていた読者諸君へ刺さると嬉しいです☺️
さて、物語はいよいよ本筋へ!
次回こそは主人公機登場させますんで、宜しくお願いしますw
お読み頂きありがとうございました✨
次回おたのしみに🌈
水星の魔女の非公式外伝フォトストーリー連載開始❗️
コメント
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はじめまして、コメント失礼します。
わくわくするような巧みな設定と、テンポの良いストーリーに引き込まれました。
次回の対決、楽しみですね!ダリルバルデもファラクトもかっこよくて大好きなので、また活躍が見れるのが嬉しいです。エレンとグエルも、もちろん!
これからの展開も楽しみにしております(gundam-kao6)
UC.60生まれ
ジオン第四工科大卒
1年戦争時 工兵の不足により工業科学生でありながら学徒動員・徴用され第603技術試験隊においてオリヴァー・マイ技術中尉付きのメカニック見習いとして、様々な機体に携わり無事終戦まで生き残る。これは、彼の肉眼に映った兵器たちの記録である。
主に微改造・全塗装で仕上げている初心者モデラーです。
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