【コラボ】雷鳴の伝灯・第2話

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Chap.2 U.C.0080 1月6日

 神はいない。 いるのならば、かくも罪深き我ら人類に、とうの昔に鉄槌を下しているはずだ。 UC0079、12月。 ”青鬼”……”蒼壁の鬼神”、と、いつの間にか呼ばれた。 巨大で分厚いシールドと、パーソナルカラーにしていた青のせいだ。「相変わらず、容赦のない戦い方ですね……。」 至近距離からビームスプレーガンを、これでもかというほど撃ち、ぐにゃぐにゃの鉄塊と化したザクの残骸を見て、副官のローワン・ジョウが言う。「徹底的に敵を喰らいつくす……まるで食人鬼(オーガー)ですね。」 そのやり方は、味方も怯えます、と、静かに付け加えた。 別に、構わん。 怯えるのなら、勝手に怯えておけばよい。 わたしは、わたしの戦いを続けるだけだ。 わたしは――憎きジオンを潰す。この手で。 この宇宙で、最も罪深い連中に……神が裁きを下さないと言うのなら、わたしが、この手で――。●●●●●●●●●●●●●●●

 神はいない。

 いるのならば、かくも罪深き我ら人類に、とうの昔に鉄槌を下しているはずだ。

 UC0079、12月。

 ”青鬼”……”蒼壁の鬼神”、と、いつの間にか呼ばれた。

 巨大で分厚いシールドと、パーソナルカラーにしていた青のせいだ。

「相変わらず、容赦のない戦い方ですね……。」

 至近距離からビームスプレーガンを、これでもかというほど撃ち、ぐにゃぐにゃの鉄塊と化したザクの残骸を見て、副官のローワン・ジョウが言う。

「徹底的に敵を喰らいつくす……まるで食人鬼(オーガー)ですね。」

 そのやり方は、味方も怯えます、と、静かに付け加えた。

 別に、構わん。

 怯えるのなら、勝手に怯えておけばよい。

 わたしは、わたしの戦いを続けるだけだ。

 わたしは――憎きジオンを潰す。この手で。

 この宇宙で、最も罪深い連中に……神が裁きを下さないと言うのなら、わたしが、この手で――。

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 UC0078、12月。 調子っぱずれなアメイジング・グレイスが聞こえる。 デニー・マイセン・ライオスは、ドアの向こうから聞こえるその声を聞いて、思わず微笑んだ。「ただいま!」 娘のアリスが、元気な声で扉を開けて家に入ってきた。その後ろには、優しく微笑みながら、妻のアイリーンが続く。日曜のミサから、帰ったところだ。「ちちと、こと、せいれいのみなにおいて……」覚えたての祈りの言葉を、アリスが一生懸命話して聞かせる。「アリスのパパはパパだろう?」面白がって、マイセンが茶々を入れると、アイリーンがあなた!と嗜めるように、しかしどこか楽しそうに声をあげる。「さっきの歌、

 UC0078、12月。

 調子っぱずれなアメイジング・グレイスが聞こえる。

 デニー・マイセン・ライオスは、ドアの向こうから聞こえるその声を聞いて、思わず微笑んだ。

「ただいま!」

 娘のアリスが、元気な声で扉を開けて家に入ってきた。その後ろには、優しく微笑みながら、妻のアイリーンが続く。日曜のミサから、帰ったところだ。

「ちちと、こと、せいれいのみなにおいて……」

覚えたての祈りの言葉を、アリスが一生懸命話して聞かせる。

「アリスのパパはパパだろう?」

面白がって、マイセンが茶々を入れると、アイリーンがあなた!と嗜めるように、しかしどこか楽しそうに声をあげる。

「さっきの歌、"アメイジング・グレイス"だな。」

「そうよ、とってもきれいなうた!」

「そうだね、パパも好きだよ。」

言って抱き上げると、アリスは嬉しそうににっこりと笑う。

 アリスは、またアメイジング・グレイスを歌い始める。やはり、調子っぱずれで、ところどころ歌詞も間違えている。マイセンは、一緒に低く歌ってやる。そうしていると、アイリーンも優しい声で、歌声を重ねる。

「もうすぐクリスマスだな。」

「アリスね、サンタさんにもうプレゼント、お願いしたんだ。」

「何を?」

「ひみつー!」

 マイセンは、別に、神を信じていない。だから、妻子が通う教会にも一緒に行くことはない。

 だが、こうして温かい時間を家族と持てることに、人生における、愛や恵みというものは、確かにあるのだと確信できる。それくらいの人情は、彼も持ち合わせている。

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 UC0079、1月4日。 乗機のセイバーフィッシュが被弾し、退避した。付近にいたサラミスが収容してくれたが、そのサラミスは今、沈みかけている。ジオンの赤いMSが、艦にバズーカを叩き込んだからだ。「くそ……っ!」 マイセンは歯噛みしながら、あちこちから炎のあがる廊下を逃げるように走った。途中、砲座にいつまでもしがみついている、大男を見つけ、砲座から引き離した。「もういい、この艦は沈む。逃げるぞ!」『……。』「勇敢だな、その意気は買うぞ。名前は?」『……クリント・トーゴ少尉、であります……。』「噂の”デューク”か。」百発百中の砲撃主がいると、ちょっとした噂になっていた。「お前の砲撃でも落とせなかったか、あの赤いの……ありゃあホンモノのエースだ。放っておけ。」 そういう敵も、いるのだ。 通路に転がっていたノーマルスーツ用のバーニアを拾うと、”デューク”を抱え、外壁に空いた穴から宇宙に飛び出した。そのまま、近くをふらふらとさまよっているランチに捕まり、戦場を振り返る。 巨大なコロニーの、あちこちに巨大な火球が炸裂している。『……核か……。』 ”デューク”が呟く。「あんなものを使いやがって……。」 マイセンも、忌々し気に呟く。あれは、人類の生み出した、最も邪悪な兵器だ。それを、スペースコロニーに打ち込む行為は、何よりも非道で邪悪に見えた。コロニーの外の真空では、人間は生きてはいけない。コロニーの住民にとって、その間近で繰り広げられる戦闘は、逃げ場のない地獄の到来を意味している。 なぜ、スペースコロニー生まれの連中が、そんなことをできるのだ。いや、スペースコロニー生まれだからこそ、この行為の持つ意味を知っているのか。自分たちに歯向かうなと、牙を持たぬ宇宙市井に告げている——。(卑怯な——!)

 UC0079、1月4日。

 乗機のセイバーフィッシュが被弾し、退避した。付近にいたサラミスが収容してくれたが、そのサラミスは今、沈みかけている。ジオンの赤いMSが、艦にバズーカを叩き込んだからだ。

「くそ……っ!」

 マイセンは歯噛みしながら、あちこちから炎のあがる廊下を逃げるように走った。途中、砲座にいつまでもしがみついている、大男を見つけ、砲座から引き離した。

「もういい、この艦は沈む。逃げるぞ!」

『……。』

「勇敢だな、その意気は買うぞ。名前は?」

『……クリント・トーゴ少尉、であります……。』

「噂の”デューク”か。」

百発百中の砲撃主がいると、ちょっとした噂になっていた。

「お前の砲撃でも落とせなかったか、あの赤いの……ありゃあホンモノのエースだ。放っておけ。」

 そういう敵も、いるのだ。

 通路に転がっていたノーマルスーツ用のバーニアを拾うと、”デューク”を抱え、外壁に空いた穴から宇宙に飛び出した。そのまま、近くをふらふらとさまよっているランチに捕まり、戦場を振り返る。

 巨大なコロニーの、あちこちに巨大な火球が炸裂している。

『……核か……。』

 ”デューク”が呟く。

「あんなものを使いやがって……。」

 マイセンも、忌々し気に呟く。あれは、人類の生み出した、最も邪悪な兵器だ。それを、スペースコロニーに打ち込む行為は、何よりも非道で邪悪に見えた。コロニーの外の真空では、人間は生きてはいけない。コロニーの住民にとって、その間近で繰り広げられる戦闘は、逃げ場のない地獄の到来を意味している。

 なぜ、スペースコロニー生まれの連中が、そんなことをできるのだ。いや、スペースコロニー生まれだからこそ、この行為の持つ意味を知っているのか。自分たちに歯向かうなと、牙を持たぬ宇宙市井に告げている——。

(卑怯な——!)

 やがて、コロニーの巨体が、ゆっくりと地球に向けて傾いていった。ゆっくりに見えるが、はっきりと”動いている”のが分かる。コロニーの天文学的な大きさを考えると、それがかなりのスピードであることが分かる。「……なんだ?」マイセンは、思わず、息を飲んだ。スペースコロニーが、地球に吸い込まれていくように見えたのだ。「……まさか……落とすつもりか?あれを……地球に……?」 そんなことをしたら、どうなる? 核兵器どころの騒ぎではない。 だが、今のマイセンには、ただ見ていることしかできなかった。 地球への直接攻撃のため、ジオンに利用されたスペースコロニー”アイランド・イフィッシュ”は、1月5日からその巨体を地球に向けて悠々と進めた。地球連邦軍はその歩を止めることができなかった。 そして、UC0079、1月10日。 ついに、アラビア半島上空で四散。その前半部が、オーストラリア、シドニーを直撃した。  そこには、デニー・マイセン・ライオスの家族が暮らしていた――。 ●●●●●●●●●●●●●●● 

 やがて、コロニーの巨体が、ゆっくりと地球に向けて傾いていった。ゆっくりに見えるが、はっきりと”動いている”のが分かる。コロニーの天文学的な大きさを考えると、それがかなりのスピードであることが分かる。

「……なんだ?」

マイセンは、思わず、息を飲んだ。スペースコロニーが、地球に吸い込まれていくように見えたのだ。

「……まさか……落とすつもりか?あれを……地球に……?」

 そんなことをしたら、どうなる?

 核兵器どころの騒ぎではない。

 だが、今のマイセンには、ただ見ていることしかできなかった。

 地球への直接攻撃のため、ジオンに利用されたスペースコロニー”アイランド・イフィッシュ”は、1月5日からその巨体を地球に向けて悠々と進めた。地球連邦軍はその歩を止めることができなかった。

 そして、UC0079、1月10日。

 ついに、アラビア半島上空で四散。その前半部が、オーストラリア、シドニーを直撃した。

 

 そこには、デニー・マイセン・ライオスの家族が暮らしていた――。

 

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 最悪の夢見で起床したのは、あの忌々しい”マリア”の”アメイジング・グレイス”のせいだ。 出来すぎている。 2度と戻らない妻子。2人が愛したあの歌が、今、流行歌としてそこら中から聞こえてくる。それを持ち歌にしている、バカな小娘が、自分の手を煩わせる。 こんなにも腹立たしいことがあるか――。「デニー大尉!」 いらいらしながらMSハンガーに向かって歩いていると、馴れ馴れしく名前を呼んでくるヤツがいる。マイセンにとって、名前を呼ばれることは逆鱗に触れるようなものなのは、同じ基地内にいる連中は知らないはずがない。いったいどこのどいつだ?振り返るマイセンの顔は、紅潮している。「デニー大尉、昨日の戦闘さすがでした!」 小走りで追いついたのだろう。息を切らしながら、細見の男が近づいてくる。向こうはこちらを知っているようだが、マイセンには誰か分からなかった。着ているノーマルスーツを見ると、一応、パイロットのようだ。顔はにこやかに微笑んで見えるが、目だけが笑っていないような、奇妙な顔をした男だ。マイセンの顔色にも、気づいていないようだ。「さすがです、やはり、ガンダムを任されている方は違う、と、皆が言っております!わたしの部隊も日夜厳しい訓練に励んでおります!」興奮して話すが、話の内容はぼんやりとして要領を得ない。「乗っている機体も、支持する兵の数も、この艦隊でデニー大尉に勝るパイロットはいませんよ!」どうやらマイセンのことを尊敬しているとか、そういうことを言いたいらしい。人様に敬意を表するのは大変結構なことではあるが、ここは戦場だ。本音なのかおべっかなのかは知らないが、興奮しながら社交辞令を述べているようなときではない。「おい。」 こちらの反応を無視して話し続ける相手の声を遮り、マイセンはドスのきいた声を出す。「まず、所属と、貴様の名を名乗れ。わたしは貴様のことなど知らん。」「し、失礼しました……!自分は、ケイン……」「それと、”デニー”と呼ぶな。それだけは、絶対に、だ。いいな?言ったぞ?2度と呼ぶなよ?」相手の名乗りなどまったく無視して、それだけを力強く告げ、マイセンは踵を返した。「……ルーキーですね、あなたのことをよく知らないと見える。」 いつの間にか、隣を華奢な男が歩いている。ローワン・ジョウ少尉だ。 マイセンが、ファーストネームで呼ばせていたのは妻だけだ。(わたしをデニーと呼んでいいのは妻だけだ。お前らはマイセンと呼べ。)新婚の頃は、自分で明るく吹聴していたが、コロニー落としで妻子を失ってからは、キラーワードだ。彼と一緒に務める連中は、その暗黙の了解を共有し合う。彼のことを、決して”デニー大尉”とは呼ばない。「褒めてくれるのは別に悪い気はしない。だが、自分の魂から出る言葉で語れないヤツは信用できん。」「何ですかそれ。」「階級章を見たが、下士官だ。下士官のくせに

 最悪の夢見で起床したのは、あの忌々しい”マリア”の”アメイジング・グレイス”のせいだ。

 出来すぎている。

 2度と戻らない妻子。2人が愛したあの歌が、今、流行歌としてそこら中から聞こえてくる。それを持ち歌にしている、バカな小娘が、自分の手を煩わせる。

 こんなにも腹立たしいことがあるか――。

「デニー大尉!」

 いらいらしながらMSハンガーに向かって歩いていると、馴れ馴れしく名前を呼んでくるヤツがいる。マイセンにとって、名前を呼ばれることは逆鱗に触れるようなものなのは、同じ基地内にいる連中は知らないはずがない。いったいどこのどいつだ?振り返るマイセンの顔は、紅潮している。

「デニー大尉、昨日の戦闘さすがでした!」

 小走りで追いついたのだろう。息を切らしながら、細見の男が近づいてくる。向こうはこちらを知っているようだが、マイセンには誰か分からなかった。着ているノーマルスーツを見ると、一応、パイロットのようだ。顔はにこやかに微笑んで見えるが、目だけが笑っていないような、奇妙な顔をした男だ。マイセンの顔色にも、気づいていないようだ。

「さすがです、やはり、ガンダムを任されている方は違う、と、皆が言っております!わたしの部隊も日夜厳しい訓練に励んでおります!」

興奮して話すが、話の内容はぼんやりとして要領を得ない。

「乗っている機体も、支持する兵の数も、この艦隊でデニー大尉に勝るパイロットはいませんよ!」

どうやらマイセンのことを尊敬しているとか、そういうことを言いたいらしい。人様に敬意を表するのは大変結構なことではあるが、ここは戦場だ。本音なのかおべっかなのかは知らないが、興奮しながら社交辞令を述べているようなときではない。

「おい。」

 こちらの反応を無視して話し続ける相手の声を遮り、マイセンはドスのきいた声を出す。

「まず、所属と、貴様の名を名乗れ。わたしは貴様のことなど知らん。」

「し、失礼しました……!自分は、ケイン……」

「それと、”デニー”と呼ぶな。それだけは、絶対に、だ。いいな?言ったぞ?2度と呼ぶなよ?」

相手の名乗りなどまったく無視して、それだけを力強く告げ、マイセンは踵を返した。

「……ルーキーですね、あなたのことをよく知らないと見える。」

 いつの間にか、隣を華奢な男が歩いている。ローワン・ジョウ少尉だ。

 マイセンが、ファーストネームで呼ばせていたのは妻だけだ。

(わたしをデニーと呼んでいいのは妻だけだ。お前らはマイセンと呼べ。)

新婚の頃は、自分で明るく吹聴していたが、コロニー落としで妻子を失ってからは、キラーワードだ。彼と一緒に務める連中は、その暗黙の了解を共有し合う。彼のことを、決して”デニー大尉”とは呼ばない。

「褒めてくれるのは別に悪い気はしない。だが、自分の魂から出る言葉で語れないヤツは信用できん。」

「何ですかそれ。」

「階級章を見たが、下士官だ。下士官のくせに"わたしの部隊"などと抜かしおったぞ。お前ら少尉連中が、きちんとしつけろ、ああいうバカはな。」

「よく分かりませんが、失礼いたしました。以後気をつけます。」

 ローワンという男は好きではないが、軍人としての仕事と考え方はしっかりしている。こういう理不尽な物言いにも、無駄に楯突かない。今日のように苛ついている日は、さっきのようなバカにまとわりつかれるよりも、この男と話している方がまだマシだ。

「……で、バカな小娘はどうなった?」

 ハンガー脇の更衣室で、ノーマルスーツに着替えながら訊ねる。

「さっき、交渉の使者が出ました。明日にも引渡が行われるんじゃないですか?」

声の方に視線を滑らせると、ローワンの白くしなやかな背中が見えた。何となく嫌悪感と羞恥心を抱き、マイセンはすぐに目を逸らす。

 

「敵に、腕の立つのがいた。」「赤い肩の連中ですね。」 さすがローワンだ。よく見ていた。「特にサラミスの腹の下から出てきたヤツ。思い切りが良いのに、操縦は繊細でしたね。」「俺の狙いはアイツだ。アイツと、心ゆくまでヤリたいもんだな。」「……。」 マイセンが興奮を滲ませて言うと、ローワンが目を細めてこちらを見ている。女が恥じらうような顔つきだった。「何だ?気色悪い顔はやめろ。」「言い方です、大尉。品がない。」「むっつりが。発想に品がないのはどっちだ。」 マイセンはふと、先ほどの白い背中を思い出す。「……お前、どっち派だ?」「その聞き方自体、お考えが、古い。」 まあ、仕事さえきちんとしてくれれば、どちらでもいいことだ。 大して意味のない会話を打ち切り、マイセンはハンガーに出た。まずは、機体の調整からだ。「

「敵に、腕の立つのがいた。」

「赤い肩の連中ですね。」

 さすがローワンだ。よく見ていた。

「特にサラミスの腹の下から出てきたヤツ。思い切りが良いのに、操縦は繊細でしたね。」

「俺の狙いはアイツだ。アイツと、心ゆくまでヤリたいもんだな。」

「……。」

 マイセンが興奮を滲ませて言うと、ローワンが目を細めてこちらを見ている。女が恥じらうような顔つきだった。

「何だ?気色悪い顔はやめろ。」

「言い方です、大尉。品がない。」

「むっつりが。発想に品がないのはどっちだ。」

 マイセンはふと、先ほどの白い背中を思い出す。

「……お前、どっち派だ?」

「その聞き方自体、お考えが、古い。」

 まあ、仕事さえきちんとしてくれれば、どちらでもいいことだ。

 大して意味のない会話を打ち切り、マイセンはハンガーに出た。まずは、機体の調整からだ。

「"ディック"軍曹がまだ来ていないぞ。しつけがなっとらん。」

 ローワンに向かって、低く呟く。一人前のパイロットならば、自分の機体の面倒も自分で見るものだ。

「失礼しました。指導しておきます。」

いつものように飄々と返すが、たぶんこいつは下士官共に、マイセンの考えるような"指導"など行ってはいない。

 マイセンは分かっている。

 そういう上官も、必要だ。それに救われる兵もいる。

(だが、ジオンの連中……。)

 あの、戦い慣れた対応力。あれは、厳しい戦場で叩き上げられ、生き延びてきた連中の動きだった。マイセンは、敵ながら、対戦したジオン兵たちに、ほのかな好感を抱き始めていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 UC0080、1月7日。 ローワンの見立てどおり、

 UC0080、1月7日。

 ローワンの見立てどおり、"マリア"はすぐに引き渡された。彼女を乗せたランチに、ジオンのMSが付いてきているが、先頭は赤い肩の連中だった。

(アイツか——?)

その中に、1機、油断なくこちらを見つめるような様子のザクがいた。その機体のパイロットが、狙いの"アイツ"だと、マイセンには直感的に分かった。

『今回は勝手にハジけないでくださいよ?』

ローワンが皮肉っぽく通信を送ってきたが、無視した。プレッシャーを放つ機体から、目が離せない。

 やがて、ランチの引き渡しが終わると、両陣営とも静かに宙域を離れていった。

 ドックに戻るや、マイセンは機体を降り、駆け出した。大尉、と、ローワンが大声で呼ぶのが聞こえたが、構わず駆けた。向かった先には、ランチから降りてきた

 ドックに戻るや、マイセンは機体を降り、駆け出した。大尉、と、ローワンが大声で呼ぶのが聞こえたが、構わず駆けた。向かった先には、ランチから降りてきた"マリア"がいる。

 "マリア"は、マイセンの接近に気付き、美しい亜麻色のストレートロングをなびかせて振り向いた。

 澄んだ色の大きな瞳と、視線がぶつかる。

「貴様――……!」

 マイセンは、歯噛みしながら呻いた。

 "マリア"は、冷静な目つきでマイセンの全身にサッと視線を巡らせ、青、と呟いた。

「無理に戦闘を始めた青いガンダム……バカなパイロットはあなたね?」

 バカ、だと――?

 マイセンは思わず声を張り上げる。

「バカはどっちだ!?」

「まだ戦争なんか続けてるアンタらがバカよ。ア・バオア・クーは陥ちた。なら、もう終わりでしょ?」

「ふざけるな……ギター片手に敵陣に……お前のお歌で戦争が止められるとでも思っているのか?」

 それ、あるかもね、と、"マリア"は挑戦的な視線を送る。

「あたしの歌なら、届くかもしれないって、信じてる。でなきゃ、こんなことしてない。」

「バカか!アニメじゃないんだよ!」

「ロボット乗って戦争って、そっちのがよっぽどアニメでしょうが!」

「小娘が――……!」

減らず口を、と、歯を食いしばったところで、ローワンが追いついた。

「大尉!」

「うるさい!」

「ダメですよ!」

「殴りはせん!」

 気づくと、マイセンの気迫に押され、護衛の兵士も遠巻きになりかけている。

「ジオンでも……。」

 "マリア"が、静かに話し出した。

「同じことを言われた。そんなのはおとぎ話だと。」

 ふー、ふー、と2度息を吐くと、"マリア"の顔を見る。

「そのとおりだ。」

「でも、あたしはやめないよ。これがあたしの戦いだ。」

「意固地になりやがって……!」

「意固地になってるのは、アンタらだ!」

"マリア"が、声を張り上げる。

「気づいてんだろ、こんな戦争もう無駄だって。お互いもう嫌なんだよ!そのくらいは分かり合えるんじゃないの!?」

音楽はさ、と、"マリア"は続ける。

「みんなが、良いって思えれば、伝わる。国とか、主義とか、時代も超えて。"アメイジング・グレイス"がいい例だろ!?」

あたしだって、別にクリスチャンでも何でもない、と、マリアは言う。

「何が言いたい?」

 "アメイジング・グレイス"という言葉に、敬虔な妻と、無垢な娘の姿を思い出しながら、マイセンは砕けるのではないかというほどに、奥歯を強く噛み締める。

「互いに同じ人間同士だってこと、忘れたフリして、くだらない意地張り合ってるような……アンタらのマッチョイズムのアニメ脳こそ、あたしの歌でぶっ壊してやるっつってんのよ!」

「お前のそのメルヘンなアニメ脳に付き合って、死んだ兵士がいるんだろうが!!」

「大尉!」

 ローワンが後ろから抱きついて止める。

「ジオンの飯は不味くて貧しかったよ……ひもじい思いをしてんだ。そんなヤツらをくびり殺して、自分は誇り高き宇宙の戦士を気取るわけ?」

"マリア"は侮るような視線を投げ掛けながら続ける。

「アンタらは、分かり合えないんじゃないよ。分かり合うことを拒否してるだけだ。それじゃどれだけ戦っても、誰も"勝利者"にはなれやしないね。」

「禅問答か?学があることで……。」

こめかみに青筋を浮かべて、マイセンは言う。

「あたしの言ってること、分かんないんだ?」

 マイセンは応えない。応えられない、と、言っていい。

「逃げてんだよ、アンタらは、"戦うこと"でね。どうしたらいいか、分かんないフリして、今までどおりのやり方に逃げてるだけ。分かり合ってくだらない戦いを捨てることから逃げてる。逃げてる先に、栄光の勝利なんて、あるはずないよね?」

フン、と鼻を鳴らし、ギターケースを担ぎ直すと、"マリア"はクルリと背を向けた。

第2話・完

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ジオン編 遠雷の継灯 第二話はこちら

連邦編 雷鳴の伝灯 目次はこちら

押忍やすじろうさんとのコラボ企画第二弾!第二話をお届けしました。いかがでしたでしょうか。

全て、ヤスさん作ストーリーとデジラマになります。

遂にマイセンの悲しい過去が明かされましたね。

悲しみの果てに鬼神と化してしまったマイセン、獣の如き若きエースパイロットマイロ、亜麻色の歌姫マリアの運命やいかに!!

今回のこの企画の意見を出し合うなかで、数々のキャラが登場しました。またオイラからのキャラ設定や展開の断片、セリフなどの要望や無茶ぶりを、100%通してくださりうまくストーリーに落とし込んでくれたヤスさんの才能と力量に感謝✨。そして、ヤスさんの本編、シャドウファントムからもちらほら出演させてくれています。気づかれましたか😙? 

今回のこの企画の意見を出し合うなかで、数々のキャラが登場しました。またオイラからのキャラ設定や展開の断片、セリフなどの要望や無茶ぶりを、100%通してくださりうまくストーリーに落とし込んでくれたヤスさんの才能と力量に感謝✨。

そして、ヤスさんの本編、シャドウファントムからもちらほら出演させてくれています。気づかれましたか😙?

 

最後まで読み切ったオイラがあえて言おう。絶対に読んで後悔はない。そして、きっと読み返したくなるはず。素晴らしい作品です😁。最後までお付き合いありがとうございます。次回もどうぞよろしくお願いします。

最後まで読み切ったオイラがあえて言おう。絶対に読んで後悔はない。そして、きっと読み返したくなるはず。素晴らしい作品です😁。最後までお付き合いありがとうございます。次回もどうぞよろしくお願いします。

コラボ企画第二弾!第二話!

コメント

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  1. @244 2時間前

    バサラっぽいすね🥰

    ボンバーとか言い出しかねんですな😂

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