【コラボ】雷鳴の伝灯・第2話

  • 736
  • 31
  • 1

Chap.2 U.C.0080 1月6日

◁◁     ▷▷

 神はいない。 いるのならば、かくも罪深き我ら人類に、とうの昔に鉄槌を下しているはずだ。 UC0079、12月。 ”青鬼”……”蒼壁の鬼神”、と、いつの間にか呼ばれた。 巨大で分厚いシールドと、パーソナルカラーにしていた青のせいだ。「相変わらず、容赦のない戦い方ですね……。」 至近距離からビームスプレーガンを、これでもかというほど撃ち、ぐにゃぐにゃの鉄塊と化したザクの残骸を見て、副官のローワン・ジョウが言う。「徹底的に敵を喰らいつくす……まるで食人鬼(オーガー)ですね。」 そのやり方は、味方も怯えます、と、静かに付け加えた。 別に、構わん。 怯えるのなら、勝手に怯えておけばよい。 わたしは、わたしの戦いを続けるだけだ。 わたしは――憎きジオンを潰す。この手で。 この宇宙で、最も罪深い連中に……神が裁きを下さないと言うのなら、わたしが、この手で――。●●●●●●●●●●●●●●●

 神はいない。

 いるのならば、かくも罪深き我ら人類に、とうの昔に鉄槌を下しているはずだ。

 UC0079、12月。

 ”青鬼”……”蒼壁の鬼神”、と、いつの間にか呼ばれた。

 巨大で分厚いシールドと、パーソナルカラーにしていた青のせいだ。

「相変わらず、容赦のない戦い方ですね……。」

 至近距離からビームスプレーガンを、これでもかというほど撃ち、ぐにゃぐにゃの鉄塊と化したザクの残骸を見て、副官のローワン・ジョウが言う。

「徹底的に敵を喰らいつくす……まるで食人鬼(オーガー)ですね。」

 そのやり方は、味方も怯えます、と、静かに付け加えた。

 別に、構わん。

 怯えるのなら、勝手に怯えておけばよい。

 わたしは、わたしの戦いを続けるだけだ。

 わたしは――憎きジオンを潰す。この手で。

 この宇宙で、最も罪深い連中に……神が裁きを下さないと言うのなら、わたしが、この手で――。

●●●●●●●●●●●●●●●

 UC0078、12月。 調子っぱずれなアメイジング・グレイスが聞こえる。 デニー・マイセン・ライオスは、ドアの向こうから聞こえるその声を聞いて、思わず微笑んだ。「ただいま!」 娘のアリスが、元気な声で扉を開けて家に入ってきた。その後ろには、優しく微笑みながら、妻のアイリーンが続く。日曜のミサから、帰ったところだ。「ちちと、こと、せいれいのみなにおいて……」覚えたての祈りの言葉を、アリスが一生懸命話して聞かせる。「アリスのパパはパパだろう?」面白がって、マイセンが茶々を入れると、アイリーンがあなた!と嗜めるように、しかしどこか楽しそうに声をあげる。「さっきの歌、

 UC0078、12月。

 調子っぱずれなアメイジング・グレイスが聞こえる。

 デニー・マイセン・ライオスは、ドアの向こうから聞こえるその声を聞いて、思わず微笑んだ。

「ただいま!」

 娘のアリスが、元気な声で扉を開けて家に入ってきた。その後ろには、優しく微笑みながら、妻のアイリーンが続く。日曜のミサから、帰ったところだ。

「ちちと、こと、せいれいのみなにおいて……」

覚えたての祈りの言葉を、アリスが一生懸命話して聞かせる。

「アリスのパパはパパだろう?」

面白がって、マイセンが茶々を入れると、アイリーンがあなた!と嗜めるように、しかしどこか楽しそうに声をあげる。

「さっきの歌、"アメイジング・グレイス"だな。」

「そうよ、とってもきれいなうた!」

「そうだね、パパも好きだよ。」

言って抱き上げると、アリスは嬉しそうににっこりと笑う。

 アリスは、またアメイジング・グレイスを歌い始める。やはり、調子っぱずれで、ところどころ歌詞も間違えている。マイセンは、一緒に低く歌ってやる。そうしていると、アイリーンも優しい声で、歌声を重ねる。

「もうすぐクリスマスだな。」

「アリスね、サンタさんにもうプレゼント、お願いしたんだ。」

「何を?」

「ひみつー!」

 マイセンは、別に、神を信じていない。だから、妻子が通う教会にも一緒に行くことはない。

 だが、こうして温かい時間を家族と持てることに、人生における、愛や恵みというものは、確かにあるのだと確信できる。それくらいの人情は、彼も持ち合わせている。

●●●●●●●●●●●●●●●

 

 UC0079、1月4日。 乗機のセイバーフィッシュが被弾し、退避した。付近にいたサラミスが収容してくれたが、そのサラミスは今、沈みかけている。ジオンの赤いMSが、艦にバズーカを叩き込んだからだ。「くそ……っ!」 マイセンは歯噛みしながら、あちこちから炎のあがる廊下を逃げるように走った。途中、砲座にいつまでもしがみついている、大男を見つけ、砲座から引き離した。「もういい、この艦は沈む。逃げるぞ!」『……。』「勇敢だな、その意気は買うぞ。名前は?」『……クリント・トーゴ少尉、であります……。』「噂の”デューク”か。」百発百中の砲撃主がいると、ちょっとした噂になっていた。「お前の砲撃でも落とせなかったか、あの赤いの……ありゃあホンモノのエースだ。放っておけ。」 そういう敵も、いるのだ。 通路に転がっていたノーマルスーツ用のバーニアを拾うと、”デューク”を抱え、外壁に空いた穴から宇宙に飛び出した。そのまま、近くをふらふらとさまよっているランチに捕まり、戦場を振り返る。 巨大なコロニーの、あちこちに巨大な火球が炸裂している。『……核か……。』 ”デューク”が呟く。「あんなものを使いやがって……。」 マイセンも、忌々し気に呟く。あれは、人類の生み出した、最も邪悪な兵器だ。それを、スペースコロニーに打ち込む行為は、何よりも非道で邪悪に見えた。コロニーの外の真空では、人間は生きてはいけない。コロニーの住民にとって、その間近で繰り広げられる戦闘は、逃げ場のない地獄の到来を意味している。 なぜ、スペースコロニー生まれの連中が、そんなことをできるのだ。いや、スペースコロニー生まれだからこそ、この行為の持つ意味を知っているのか。自分たちに歯向かうなと、牙を持たぬ宇宙市井に告げている——。(卑怯な——!)

 UC0079、1月4日。

 乗機のセイバーフィッシュが被弾し、退避した。付近にいたサラミスが収容してくれたが、そのサラミスは今、沈みかけている。ジオンの赤いMSが、艦にバズーカを叩き込んだからだ。

「くそ……っ!」

 マイセンは歯噛みしながら、あちこちから炎のあがる廊下を逃げるように走った。途中、砲座にいつまでもしがみついている、大男を見つけ、砲座から引き離した。

「もういい、この艦は沈む。逃げるぞ!」

『……。』

「勇敢だな、その意気は買うぞ。名前は?」

『……クリント・トーゴ少尉、であります……。』

「噂の”デューク”か。」

百発百中の砲撃主がいると、ちょっとした噂になっていた。

「お前の砲撃でも落とせなかったか、あの赤いの……ありゃあホンモノのエースだ。放っておけ。」

 そういう敵も、いるのだ。

 通路に転がっていたノーマルスーツ用のバーニアを拾うと、”デューク”を抱え、外壁に空いた穴から宇宙に飛び出した。そのまま、近くをふらふらとさまよっているランチに捕まり、戦場を振り返る。

 巨大なコロニーの、あちこちに巨大な火球が炸裂している。

『……核か……。』

 ”デューク”が呟く。

「あんなものを使いやがって……。」

 マイセンも、忌々し気に呟く。あれは、人類の生み出した、最も邪悪な兵器だ。それを、スペースコロニーに打ち込む行為は、何よりも非道で邪悪に見えた。コロニーの外の真空では、人間は生きてはいけない。コロニーの住民にとって、その間近で繰り広げられる戦闘は、逃げ場のない地獄の到来を意味している。

 なぜ、スペースコロニー生まれの連中が、そんなことをできるのだ。いや、スペースコロニー生まれだからこそ、この行為の持つ意味を知っているのか。自分たちに歯向かうなと、牙を持たぬ宇宙市井に告げている——。

(卑怯な——!)

 やがて、コロニーの巨体が、ゆっくりと地球に向けて傾いていった。ゆっくりに見えるが、はっきりと”動いている”のが分かる。コロニーの天文学的な大きさを考えると、それがかなりのスピードであることが分かる。「……なんだ?」マイセンは、思わず、息を飲んだ。スペースコロニーが、地球に吸い込まれていくように見えたのだ。「……まさか……落とすつもりか?あれを……地球に……?」 そんなことをしたら、どうなる? 核兵器どころの騒ぎではない。 だが、今のマイセンには、ただ見ていることしかできなかった。 地球への直接攻撃のため、ジオンに利用されたスペースコロニー”アイランド・イフィッシュ”は、1月5日からその巨体を地球に向けて悠々と進めた。地球連邦軍はその歩を止めることができなかった。 そして、UC0079、1月10日。 ついに、アラビア半島上空で四散。その前半部が、オーストラリア、シドニーを直撃した。  そこには、デニー・マイセン・ライオスの家族が暮らしていた――。 ●●●●●●●●●●●●●●● 

 やがて、コロニーの巨体が、ゆっくりと地球に向けて傾いていった。ゆっくりに見えるが、はっきりと”動いている”のが分かる。コロニーの天文学的な大きさを考えると、それがかなりのスピードであることが分かる。

「……なんだ?」

マイセンは、思わず、息を飲んだ。スペースコロニーが、地球に吸い込まれていくように見えたのだ。

「……まさか……落とすつもりか?あれを……地球に……?」

 そんなことをしたら、どうなる?

 核兵器どころの騒ぎではない。

 だが、今のマイセンには、ただ見ていることしかできなかった。

 地球への直接攻撃のため、ジオンに利用されたスペースコロニー”アイランド・イフィッシュ”は、1月5日からその巨体を地球に向けて悠々と進めた。地球連邦軍はその歩を止めることができなかった。

 そして、UC0079、1月10日。

 ついに、アラビア半島上空で四散。その前半部が、オーストラリア、シドニーを直撃した。

 

 そこには、デニー・マイセン・ライオスの家族が暮らしていた――。

 

●●●●●●●●●●●●●●●

 

 最悪の夢見で起床したのは、あの忌々しい”マリア”の”アメイジング・グレイス”のせいだ。 出来すぎている。 2度と戻らない妻子。2人が愛したあの歌が、今、流行歌としてそこら中から聞こえてくる。それを持ち歌にしている、バカな小娘が、自分の手を煩わせる。 こんなにも腹立たしいことがあるか――。「デニー大尉!」 いらいらしながらMSハンガーに向かって歩いていると、馴れ馴れしく名前を呼んでくるヤツがいる。マイセンにとって、名前を呼ばれることは逆鱗に触れるようなものなのは、同じ基地内にいる連中は知らないはずがない。いったいどこのどいつだ?振り返るマイセンの顔は、紅潮している。「デニー大尉、昨日の戦闘さすがでした!」 小走りで追いついたのだろう。息を切らしながら、細見の男が近づいてくる。向こうはこちらを知っているようだが、マイセンには誰か分からなかった。着ているノーマルスーツを見ると、一応、パイロットのようだ。顔はにこやかに微笑んで見えるが、目だけが笑っていないような、奇妙な顔をした男だ。マイセンの顔色にも、気づいていないようだ。「さすがです、やはり、ガンダムを任されている方は違う、と、皆が言っております!わたしの部隊も日夜厳しい訓練に励んでおります!」興奮して話すが、話の内容はぼんやりとして要領を得ない。「乗っている機体も、支持する兵の数も、この艦隊でデニー大尉に勝るパイロットはいませんよ!」どうやらマイセンのことを尊敬しているとか、そういうことを言いたいらしい。人様に敬意を表するのは大変結構なことではあるが、ここは戦場だ。本音なのかおべっかなのかは知らないが、興奮しながら社交辞令を述べているようなときではない。「おい。」 こちらの反応を無視して話し続ける相手の声を遮り、マイセンはドスのきいた声を出す。「まず、所属と、貴様の名を名乗れ。わたしは貴様のことなど知らん。」「し、失礼しました……!自分は、ケイン……」「それと、”デニー”と呼ぶな。それだけは、絶対に、だ。いいな?言ったぞ?2度と呼ぶなよ?」相手の名乗りなどまったく無視して、それだけを力強く告げ、マイセンは踵を返した。「……ルーキーですね、あなたのことをよく知らないと見える。」 いつの間にか、隣を華奢な男が歩いている。ローワン・ジョウ少尉だ。 マイセンが、ファーストネームで呼ばせていたのは妻だけだ。(わたしをデニーと呼んでいいのは妻だけだ。お前らはマイセンと呼べ。)新婚の頃は、自分で明るく吹聴していたが、コロニー落としで妻子を失ってからは、キラーワードだ。彼と一緒に務める連中は、その暗黙の了解を共有し合う。彼のことを、決して”デニー大尉”とは呼ばない。「褒めてくれるのは別に悪い気はしない。だが、自分の魂から出る言葉で語れないヤツは信用できん。」「何ですかそれ。」「階級章を見たが、下士官だ。下士官のくせに

 最悪の夢見で起床したのは、あの忌々しい”マリア”の”アメイジング・グレイス”のせいだ。

 出来すぎている。

 2度と戻らない妻子。2人が愛したあの歌が、今、流行歌としてそこら中から聞こえてくる。それを持ち歌にしている、バカな小娘が、自分の手を煩わせる。

 こんなにも腹立たしいことがあるか――。

「デニー大尉!」

 いらいらしながらMSハンガーに向かって歩いていると、馴れ馴れしく名前を呼んでくるヤツがいる。マイセンにとって、名前を呼ばれることは逆鱗に触れるようなものなのは、同じ基地内にいる連中は知らないはずがない。いったいどこのどいつだ?振り返るマイセンの顔は、紅潮している。

「デニー大尉、昨日の戦闘さすがでした!」

 小走りで追いついたのだろう。息を切らしながら、細見の男が近づいてくる。向こうはこちらを知っているようだが、マイセンには誰か分からなかった。着ているノーマルスーツを見ると、一応、パイロットのようだ。顔はにこやかに微笑んで見えるが、目だけが笑っていないような、奇妙な顔をした男だ。マイセンの顔色にも、気づいていないようだ。

「さすがです、やはり、ガンダムを任されている方は違う、と、皆が言っております!わたしの部隊も日夜厳しい訓練に励んでおります!」

興奮して話すが、話の内容はぼんやりとして要領を得ない。

「乗っている機体も、支持する兵の数も、この艦隊でデニー大尉に勝るパイロットはいませんよ!」

どうやらマイセンのことを尊敬しているとか、そういうことを言いたいらしい。人様に敬意を表するのは大変結構なことではあるが、ここは戦場だ。本音なのかおべっかなのかは知らないが、興奮しながら社交辞令を述べているようなときではない。

「おい。」

 こちらの反応を無視して話し続ける相手の声を遮り、マイセンはドスのきいた声を出す。

「まず、所属と、貴様の名を名乗れ。わたしは貴様のことなど知らん。」

「し、失礼しました……!自分は、ケイン……」

「それと、”デニー”と呼ぶな。それだけは、絶対に、だ。いいな?言ったぞ?2度と呼ぶなよ?」

相手の名乗りなどまったく無視して、それだけを力強く告げ、マイセンは踵を返した。

「……ルーキーですね、あなたのことをよく知らないと見える。」

 いつの間にか、隣を華奢な男が歩いている。ローワン・ジョウ少尉だ。

 マイセンが、ファーストネームで呼ばせていたのは妻だけだ。

(わたしをデニーと呼んでいいのは妻だけだ。お前らはマイセンと呼べ。)

新婚の頃は、自分で明るく吹聴していたが、コロニー落としで妻子を失ってからは、キラーワードだ。彼と一緒に務める連中は、その暗黙の了解を共有し合う。彼のことを、決して”デニー大尉”とは呼ばない。

「褒めてくれるのは別に悪い気はしない。だが、自分の魂から出る言葉で語れないヤツは信用できん。」

「何ですかそれ。」

「階級章を見たが、下士官だ。下士官のくせに"わたしの部隊"などと抜かしおったぞ。お前ら少尉連中が、きちんとしつけろ、ああいうバカはな。」

「よく分かりませんが、失礼いたしました。以後気をつけます。」

 ローワンという男は好きではないが、軍人としての仕事と考え方はしっかりしている。こういう理不尽な物言いにも、無駄に楯突かない。今日のように苛ついている日は、さっきのようなバカにまとわりつかれるよりも、この男と話している方がまだマシだ。

「……で、バカな小娘はどうなった?」

 ハンガー脇の更衣室で、ノーマルスーツに着替えながら訊ねる。

「さっき、交渉の使者が出ました。明日にも引渡が行われるんじゃないですか?」

声の方に視線を滑らせると、ローワンの白くしなやかな背中が見えた。何となく嫌悪感と羞恥心を抱き、マイセンはすぐに目を逸らす。

 

「敵に、腕の立つのがいた。」「赤い肩の連中ですね。」 さすがローワンだ。よく見ていた。「特にサラミスの腹の下から出てきたヤツ。思い切りが良いのに、操縦は繊細でしたね。」「俺の狙いはアイツだ。アイツと、心ゆくまでヤリたいもんだな。」「……。」 マイセンが興奮を滲ませて言うと、ローワンが目を細めてこちらを見ている。女が恥じらうような顔つきだった。「何だ?気色悪い顔はやめろ。」「言い方です、大尉。品がない。」「むっつりが。発想に品がないのはどっちだ。」 マイセンはふと、先ほどの白い背中を思い出す。「……お前、どっち派だ?」「その聞き方自体、お考えが、古い。」 まあ、仕事さえきちんとしてくれれば、どちらでもいいことだ。 大して意味のない会話を打ち切り、マイセンはハンガーに出た。まずは、機体の調整からだ。「

「敵に、腕の立つのがいた。」

「赤い肩の連中ですね。」

 さすがローワンだ。よく見ていた。

「特にサラミスの腹の下から出てきたヤツ。思い切りが良いのに、操縦は繊細でしたね。」

「俺の狙いはアイツだ。アイツと、心ゆくまでヤリたいもんだな。」

「……。」

 マイセンが興奮を滲ませて言うと、ローワンが目を細めてこちらを見ている。女が恥じらうような顔つきだった。

「何だ?気色悪い顔はやめろ。」

「言い方です、大尉。品がない。」

「むっつりが。発想に品がないのはどっちだ。」

 マイセンはふと、先ほどの白い背中を思い出す。

「……お前、どっち派だ?」

「その聞き方自体、お考えが、古い。」

 まあ、仕事さえきちんとしてくれれば、どちらでもいいことだ。

 大して意味のない会話を打ち切り、マイセンはハンガーに出た。まずは、機体の調整からだ。

「"ディック"軍曹がまだ来ていないぞ。しつけがなっとらん。」

 ローワンに向かって、低く呟く。一人前のパイロットならば、自分の機体の面倒も自分で見るものだ。

「失礼しました。指導しておきます。」

いつものように飄々と返すが、たぶんこいつは下士官共に、マイセンの考えるような"指導"など行ってはいない。

 マイセンは分かっている。

 そういう上官も、必要だ。それに救われる兵もいる。

(だが、ジオンの連中……。)

 あの、戦い慣れた対応力。あれは、厳しい戦場で叩き上げられ、生き延びてきた連中の動きだった。マイセンは、敵ながら、対戦したジオン兵たちに、ほのかな好感を抱き始めていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 UC0080、1月7日。 ローワンの見立てどおり、

 UC0080、1月7日。

 ローワンの見立てどおり、"マリア"はすぐに引き渡された。彼女を乗せたランチに、ジオンのMSが付いてきているが、先頭は赤い肩の連中だった。

(アイツか——?)

その中に、1機、油断なくこちらを見つめるような様子のザクがいた。その機体のパイロットが、狙いの"アイツ"だと、マイセンには直感的に分かった。

『今回は勝手にハジけないでくださいよ?』

ローワンが皮肉っぽく通信を送ってきたが、無視した。プレッシャーを放つ機体から、目が離せない。

 やがて、ランチの引き渡しが終わると、両陣営とも静かに宙域を離れていった。

 ドックに戻るや、マイセンは機体を降り、駆け出した。大尉、と、ローワンが大声で呼ぶのが聞こえたが、構わず駆けた。向かった先には、ランチから降りてきた

 ドックに戻るや、マイセンは機体を降り、駆け出した。大尉、と、ローワンが大声で呼ぶのが聞こえたが、構わず駆けた。向かった先には、ランチから降りてきた"マリア"がいる。

 "マリア"は、マイセンの接近に気付き、美しい亜麻色のストレートロングをなびかせて振り向いた。

 澄んだ色の大きな瞳と、視線がぶつかる。

「貴様――……!」

 マイセンは、歯噛みしながら呻いた。

 "マリア"は、冷静な目つきでマイセンの全身にサッと視線を巡らせ、青、と呟いた。

「無理に戦闘を始めた青いガンダム……バカなパイロットはあなたね?」

 バカ、だと――?

 マイセンは思わず声を張り上げる。

「バカはどっちだ!?」

「まだ戦争なんか続けてるアンタらがバカよ。ア・バオア・クーは陥ちた。なら、もう終わりでしょ?」

「ふざけるな……ギター片手に敵陣に……お前のお歌で戦争が止められるとでも思っているのか?」

 それ、あるかもね、と、"マリア"は挑戦的な視線を送る。

「あたしの歌なら、届くかもしれないって、信じてる。でなきゃ、こんなことしてない。」

「バカか!アニメじゃないんだよ!」

「ロボット乗って戦争って、そっちのがよっぽどアニメでしょうが!」

「小娘が――……!」

減らず口を、と、歯を食いしばったところで、ローワンが追いついた。

「大尉!」

「うるさい!」

「ダメですよ!」

「殴りはせん!」

 気づくと、マイセンの気迫に押され、護衛の兵士も遠巻きになりかけている。

「ジオンでも……。」

 "マリア"が、静かに話し出した。

「同じことを言われた。そんなのはおとぎ話だと。」

 ふー、ふー、と2度息を吐くと、"マリア"の顔を見る。

「そのとおりだ。」

「でも、あたしはやめないよ。これがあたしの戦いだ。」

「意固地になりやがって……!」

「意固地になってるのは、アンタらだ!」

"マリア"が、声を張り上げる。

「気づいてんだろ、こんな戦争もう無駄だって。お互いもう嫌なんだよ!そのくらいは分かり合えるんじゃないの!?」

音楽はさ、と、"マリア"は続ける。

「みんなが、良いって思えれば、伝わる。国とか、主義とか、時代も超えて。"アメイジング・グレイス"がいい例だろ!?」

あたしだって、別にクリスチャンでも何でもない、と、マリアは言う。

「何が言いたい?」

 "アメイジング・グレイス"という言葉に、敬虔な妻と、無垢な娘の姿を思い出しながら、マイセンは砕けるのではないかというほどに、奥歯を強く噛み締める。

「互いに同じ人間同士だってこと、忘れたフリして、くだらない意地張り合ってるような……アンタらのマッチョイズムのアニメ脳こそ、あたしの歌でぶっ壊してやるっつってんのよ!」

「お前のそのメルヘンなアニメ脳に付き合って、死んだ兵士がいるんだろうが!!」

「大尉!」

 ローワンが後ろから抱きついて止める。

「ジオンの飯は不味くて貧しかったよ……ひもじい思いをしてんだ。そんなヤツらをくびり殺して、自分は誇り高き宇宙の戦士を気取るわけ?」

"マリア"は侮るような視線を投げ掛けながら続ける。

「アンタらは、分かり合えないんじゃないよ。分かり合うことを拒否してるだけだ。それじゃどれだけ戦っても、誰も"勝利者"にはなれやしないね。」

「禅問答か?学があることで……。」

こめかみに青筋を浮かべて、マイセンは言う。

「あたしの言ってること、分かんないんだ?」

 マイセンは応えない。応えられない、と、言っていい。

「逃げてんだよ、アンタらは、"戦うこと"でね。どうしたらいいか、分かんないフリして、今までどおりのやり方に逃げてるだけ。分かり合ってくだらない戦いを捨てることから逃げてる。逃げてる先に、栄光の勝利なんて、あるはずないよね?」

フン、と鼻を鳴らし、ギターケースを担ぎ直すと、"マリア"はクルリと背を向けた。

第2話・完

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ジオン編 遠雷の継灯 第二話はこちら

連邦編 雷鳴の伝灯 目次はこちら

押忍やすじろうさんとのコラボ企画第二弾!第二話をお届けしました。いかがでしたでしょうか。

全て、ヤスさん作ストーリーとデジラマになります。

遂にマイセンの悲しい過去が明かされましたね。

悲しみの果てに鬼神と化してしまったマイセン、獣の如き若きエースパイロットマイロ、亜麻色の歌姫マリアの運命やいかに!!

今回のこの企画の意見を出し合うなかで、数々のキャラが登場しました。またオイラからのキャラ設定や展開の断片、セリフなどの要望や無茶ぶりを、100%通してくださりうまくストーリーに落とし込んでくれたヤスさんの才能と力量に感謝✨。そして、ヤスさんの本編、シャドウファントムからもちらほら出演させてくれています。気づかれましたか😙? 

今回のこの企画の意見を出し合うなかで、数々のキャラが登場しました。またオイラからのキャラ設定や展開の断片、セリフなどの要望や無茶ぶりを、100%通してくださりうまくストーリーに落とし込んでくれたヤスさんの才能と力量に感謝✨。

そして、ヤスさんの本編、シャドウファントムからもちらほら出演させてくれています。気づかれましたか😙?

 

最後まで読み切ったオイラがあえて言おう。絶対に読んで後悔はない。そして、きっと読み返したくなるはず。素晴らしい作品です😁。最後までお付き合いありがとうございます。次回もどうぞよろしくお願いします。

最後まで読み切ったオイラがあえて言おう。絶対に読んで後悔はない。そして、きっと読み返したくなるはず。素晴らしい作品です😁。最後までお付き合いありがとうございます。次回もどうぞよろしくお願いします。

コラボ企画第二弾!第二話!

コメント

コメントをして応援しよう

コメントにはログインが必要です

  1. meg-ocero 15時間前

    まいせ〜ん(zaku-kao9) 

    荒ぶる男は復讐のオーガだったんですね…そんなもの、きっと奥さんも娘さんも望んでやいないとでしょうが、戦うしか能のない軍人の哀しき性なんですかね😭これが哀戦士か…

    さぁ!続き続き!w

  2. SC30 1週間前

    押忍さんの件があって、二話見落としてました😅。

    マイセンのバックボーンが語られイメージが少し変わりましたね😄。このままの勢いで三話行きます😁。

    • ヨッチャKID 14時間前

      あれ?おいらもその件でこのコメント見落としてたってことで😅😅笑。マイセンのイメージのひっくり返しは狙ってたとこです👍ありがたい感想あざます😁!

  3. 今回もありがとうございます(gundam-kao6)

    サムネ、ガンダムにならずにすみませんでした笑

    「マイセンは嫌なやつ」というミスリードがまあまあうまくいった?第1話から、皆さんの反応が少しでも変われば嬉しいですね笑

    次もよろしくお願いします!

    • あ、オイラもそろそろコメント入れようかと思ってました笑。最近いろいろあって疲弊してたんで、お互いに。

      ほんとに素晴らしい展開で、初見のときは過去の悲しいシーンはゾクゾクしました。アイリーンとアリスの写真も雰囲気あってめちゃくちゃいいです🤤。

  4. 赤いザクからの戦慄のコロニー落としの下り🤣思わず読み返しちゃいました😆

    次辺りで来るのかな?連邦視点でのガンダムとケンプファーの死闘が楽しみです。

    • パテさんあざます!第二話はマイセンの悲しい過去が判明してゾクゾクとしませんでした?

      二人の運命はこれからどうなっていくんでしょうか😁楽しみにしててください✌️

       

      • 話が進むにつれ、それぞれのキャラに対する感情移入の変化も楽しみですよね😄

        • 少なくともマリアという存在がいろんな人物に影響を与えるのは間違いないです。おいらはもうラストまで目を通してるんですが、感動しました😭。ヤス氏って実はプロの人なんじゃないかと密かに思ってます笑

  5. SenGoku 3週間前

    ちょっと出張してる間に企画第二弾

    ボリューム満点ですね

    今からゆっくり楽しみなから拝読させていただきます

    ╰(*´︶`*)╯♡

    • 寒い中出張お疲れ様です〜SenGokuさんの少しでも暇つぶしになれば😁!ストーリーは最高にいいんでご期待くださいませ👍

  6. つぐお 3週間前

    シールドに記されたAAの意味が明らかになりましたね。公式創作問わず、コロニー落としの惨劇は本当にいたたまれないものです。
    あちゃらさんは最強の盾に対して究極の矛を準備しているようですね。ほこxたて対決に目が離せません!

    • つぐおさん、あざます!AAのマークは制作中に閃いて急遽ねじ込んでもらいました笑。オイラちょいちょいあって、わがまま言ってます😁

  7. T-Non 3週間前

    逆さまジオンに蜂の一刺しマークが素敵👍️

    矛盾の盾たるガンダムの巨大な盾❗️

    これから矛との闘いを予感させます🙂‍↕️

    面白いなぁ👍️👍️👍️

  8. MSV-K 3週間前

    製作お疲れ様です🙂‍↕️

    お二人はまるでビルドファイターズのセイとレイジのようです✨

    作り手と操縦をお互いで補うようで良きコンビネーション!🎇

    続きもまた頑張ってください!🙌

    • Kさんあざます!

      なんだかんだ、余計な話も結構喋ってるんで過分にも感じますがワイワイやって😁コンビネーションは取れてるかもしれません。Kさんとモトッチさんみたいな感じですかね〜🤔けどそれだと言いすぎか笑

  9. 投稿、お疲れ様です

     

    戦争はいつだって非現実的なもんさ。戦争が現実的であったことなど、ただの一度もありゃしないよ

     

    ちょっとパトレバー2の荒川の台詞を思い出しました

     

    そして、戦争は個人の思想のぶつかり合いでもあるのだと言うこともあらためて感じました

    抜いた刀を仕舞うのが1番大変なんですよね

    • 確かに、マイセンはわかっちゃいるけどなかなか刀を収められないのかもしれませんね😙。二人の主人公の心境の描写ここから見事に仕上がっています。次回もお楽しみに!

      それと、すーさん😙このストーリーは完全にヤス氏の作品です。おいらはあくまで裏方に徹したいわけですよ😙。だっておいらポージング頑張ってるだけなんだもん笑

    • やすじろうさんのほう、見ましたよ〜

      ヨッチャさん、もう謙虚すぎ 笑

       

      もっとアピールして下さいよ

      全部、オレがやったぜーって 🤣

       

      あっ、それは言い過……

      ( `・д・)っ))ナンデヤネンッ

       

  10. 与一 3週間前

    辛い思いをした人々は何を目標に生きていけば良いのでしょうか?

    生きる為にはそれが呪いであろうと支えにして生きていく。大切な人を亡くした人々は、それしか無いと言う事もあるでしょう。「それは弱さである」と言うモノの言い方は哲学者にでも任せておけば良い。

    結果は兎も角、マイセンが戦いの中で亡くなる時はどう言う気持ちになるのか、もし生き残ったならどう言うふうに、何を支えに生きていくのか……

    第2話人の心の中にあるもの、その思い…

    オススメの通り凄く良いストーリーですね🩵これからもっと楽しみになりました🥰👍✨✨✨💖

    もう終わっているかも知れませんが、頑張って下さいませm(_ _)m

    ヨッチャ様ありがとう御座いました❗m(_ _)m🤍😆💕🌟

    • 企画段階でヤス氏には、どうしても戦争のお話なので、悲しみ、辛さ、結果戦争なんてよくないよね、何も残らないよねってのを表現したいとお伝えしました。そこから産まれたマイセンは悲しいことばっかりでかわいそうな奴にしてしまいましたが、いつか笑える時がこればいいなぁと思っています。与一さん、すごく丁寧に読み取っていただいてほんとにうれしいです。最後まで是非お付き合いください✌️

  11. お疲れ様でした😊

    読み耽りますね🧐

    見知ったキャラが出てくると、胸が熱く成って😤

    その日一日が爽快いな気持ちで過ごせます

    ((o(^∇^)o))

    • ミズカさん、ありがとうございます😁!

      ほんとにいい具合にまとまっているので是非お付き合いいただければと思います✌️

  12. cinnamon-1 3週間前

    マイセンの過去。

    ジオンの暴虐、コロニー落とし😥 が全ての始まり。

    レッドショルダー隊との戦闘を望むマイセン、連邦、ジオンに関係なくマリアの歌は彼らに届くのか?

    考え方の違う者同士、今後の展開がとても楽しみです😁😆

    • 小さい頃から見ていたコロニーが落ちるシーン、そこからは全くの悲劇は変わんじられませんでした。ただ、こうしてこの作品に触れるとこうゆうことだったのかと改めて実感したんです。悲しいけどこれ戦争なのよね。って奴です。

       

  13. Sont@ 3週間前

    マイセンにそんな過去が…その戦い方にも納得がいきました!マリアとの考え方の違いによる衝突…この先、2人の関係性に変化はあるのか!?気になりますね😄✨

    • そうなんです、企画スタートした初期の頃からマイセンの悲しい過去は決まってました。

      マリアはすごく重要で影響力のある人物です。どう展開するのか、期待しててください😁

  14. @244 3週間前

    バサラっぽいすね🥰

    ボンバーとか言い出しかねんですな😂

ヨッチャKIDさんがお薦めする作品

【予告】コラボ企画第2弾『LIGHTNING REDEMPT…

【予告】コラボ企画第2弾『LIGHTNING REDEMPT…

MSZ-008X2 ZZII アーティファクト

可動化 ZZガンダム MSZ-010 アーティファクト

17
【コラボ】雷鳴の伝灯・第4話

【コラボ】雷鳴の伝灯・第4話

Chap.4 U.C.0080 1月10日 ◁◁     ▷…

12
【コラボ】雷鳴の伝灯・第3話

【コラボ】雷鳴の伝灯・第3話

Chap.3 U.C.0080 1月8日 ◁◁     ▷▷

15
【コラボ】雷鳴の伝灯・第1話

【コラボ】雷鳴の伝灯・第1話

Chap.1 U.C.0080 1月4日 ◁◁     ▷▷

8
【予告】コラボ企画第2弾『LIGHTNING REDEMPTION』連邦編

【予告】コラボ企画第2弾『LIGHTNING REDEMPT…

人はいつかは死に、誰しもがその歩みを終える。 死は平等にやっ…