【コラボ】遠雷の継灯・第2話

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Chap.2 U.C.0080 1月6日

 今度は、しっかりと白旗を立てたサラミスが、こちらの指定した宙域ぎりぎりで停泊した。そして、ランチが1隻、ゆっくりと進んでくる。注意深く、友軍の機体がランチを囲んでこちらに戻ってくる。 昨日の戦闘で捕縛した者の中に、民間人がいた。反戦シンガーの

 今度は、しっかりと白旗を立てたサラミスが、こちらの指定した宙域ぎりぎりで停泊した。そして、ランチが1隻、ゆっくりと進んでくる。注意深く、友軍の機体がランチを囲んでこちらに戻ってくる。

 昨日の戦闘で捕縛した者の中に、民間人がいた。反戦シンガーの"マリア"だ。兵員は、通例どおり捕虜として扱い、戦闘行為が終結したと確認が取れ次第返還される。だが、民間人である"マリア"の身柄が、いつまでもジオンに抑えられたままでは、地球連邦のメンツに関わるらしい。すぐに、引渡し交渉の使者が来た。

「あなたを迎えに来たのかしら?」 小綺麗な部屋の窓——と言っても、外部の様子を映すモニターだが、そこに見える連邦のスペースランチを見て、サラ・スミス軍曹は

「あなたを迎えに来たのかしら?」

 小綺麗な部屋の窓——と言っても、外部の様子を映すモニターだが、そこに見える連邦のスペースランチを見て、サラ・スミス軍曹は"マリア"に問い掛けた。彼女の身の回りの世話をするように言い付けられている。捕虜では無いので、来賓用の一室をあてがわれていた。

「いや、さすがに早すぎる。おそらく交渉の使者だ。」

 一緒に来ていたマイロが、部屋の入り口で腕組みをしながら言った。

 "マリア"は、動揺も恐怖もなく、ただ無表情にマイロを見た。ややキレ長ではっきりした目に、よく手入れされた亜麻色のストレートロングヘア。通った鼻筋と、健康的でつやのある肌の色。確かに美人だ。だが、その瞳には強い意志が宿っている。マイロを見る目も、冷静でありながらも、どこか挑むような気配がある。要するに、気の強そうな女だった。

「お前、いったい、何考えてたんだ?」

マイロはその鋭い視線から、自分の目を逸らさずに訊ねた。

「あたしは捕虜じゃない。」思ったとおり、気の強そうな、キッパリとした声色だった。「尋問には応じない。」「ちょっと、マイロ!」サラが困った顔で嗜めた後、ごめんなさいね、と、

「あたしは捕虜じゃない。」

思ったとおり、気の強そうな、キッパリとした声色だった。

「尋問には応じない。」

「ちょっと、マイロ!」

サラが困った顔で嗜めた後、ごめんなさいね、と、"マリア"に言う。

「これ、朝のお食事です。」

 サラは、持っていたトレーを差し出した。乾きかけたパンが一切れと、薄いハムが2枚。あとは、冷凍のコーンとビーンズが少々と、コップ半分のミルク。 トレーを見て、

 サラは、持っていたトレーを差し出した。乾きかけたパンが一切れと、薄いハムが2枚。あとは、冷凍のコーンとビーンズが少々と、コップ半分のミルク。

 トレーを見て、"マリア"は初めて、少しの動揺の色をその顔に浮かべた。

「ジオンには、こんなものくらいしかないんです。」

サラが、恥ずかしそうに笑い、これでも贅沢なくらいです、と付け足した。

 "マリア"は目を閉じ、さっと小さく祈りを捧げると、ハムを一枚パンに乗せ、一口かじった。

「……ありがとう、ございます。」

 その一口をしっかりと味わって飲み込んだ後、ポツリと呟いた。

 そして、マイロにまた挑戦的な視線を向ける。

「こんな思いをして、まだ続けるの?」

「尋問には応じないと言ったくせに……。」

マイロはチッと小さく舌打ちをする。

「停戦交渉の使者気取りか?」

 "マリア"はキッと視線をあげる。

「政治屋や思想家のつもりはないよ。でも、そうでなくても誰でも分かる。」

「何がだ?」

「もうこれ以上は無理だ。いや、無駄だ。」

 マイロは、自身の顔から血の気が引くのを感じた。 この女に、何がわかると言うのだ。命を懸けて戦い、死んでいった人たちがいる。その戦いの先に、今の戦いがあると言うのに——「申し訳ないけど、こんな食事しか摂れないのに、もう戦争なんて続けられないでしょ。誰だってわかる。」「貴様……!」「マイロ!」 一歩踏み出したマイロに、サラが駆け寄る。「スペースノイドの自由のために、死んでいった人たちの戦いを……無駄だというのか!?」「アンタらの自由のために、地球にいた人たちを何人殺したの。」「お互い様だろう!」「そう、お互い様だよ。」激昂するマイロとは対照的に、

 マイロは、自身の顔から血の気が引くのを感じた。

 この女に、何がわかると言うのだ。命を懸けて戦い、死んでいった人たちがいる。その戦いの先に、今の戦いがあると言うのに——

「申し訳ないけど、こんな食事しか摂れないのに、もう戦争なんて続けられないでしょ。誰だってわかる。」

「貴様……!」

「マイロ!」

 一歩踏み出したマイロに、サラが駆け寄る。

「スペースノイドの自由のために、死んでいった人たちの戦いを……無駄だというのか!?」

「アンタらの自由のために、地球にいた人たちを何人殺したの。」

「お互い様だろう!」

「そう、お互い様だよ。」

激昂するマイロとは対照的に、"マリア"は冷静だ。

「お互い、もうこんな戦い、嫌なんじゃないの?なんでやめないの?」

「そう言う問題じゃない!」

「じゃあ、どういう問題よ?」

 ……そうだ。

 どういう、問題だろう……。

「俺たちのために、ここまで、戦ってくれた人が……その人たちの思いを……。」

「死者の本音なんて、誰にわかる?」

「……貴様、さっきから……!」

「マイロ!」

サラが、マイロに抱きつくように割って入る。

「……大丈夫だ。」

 うん、と、サラは宥めるように言う。

「……でも、彼女の言うとおりよ。」

 分かっている。そうだ。これ以上、戦いを続けるのは無理だ。食事も、弾薬も、もう長くは続かない。連邦もそれを知っているから、ゆるゆるとした包囲を続けるだけで、仕掛けてこないのだ。

「どうすんの?それでも、意地とか、誇りのために、命を懸ける?」

「どうすんの?それでも、意地とか、誇りのために、命を懸ける?」

"マリア"は続けるが、先程のような、挑んでくるような様子はない。しばらく、マイロとサラを、その澄んだ瞳でじっと見つめた。

「……2人は、愛し合ってる?」

しばしの沈黙の後、不意に、そんなことを口にした。

「ええ、そうよ。」

応えたのは、サラだ。冷静だが、強い意志のある声だった。

「だったら、そっちの"ボク"はさっさとMSを降りて、戦いを棄てなよ。」

「……!俺の方が年上だ!」

「うるさいね、生き方が"坊や"なんだよ!眼を見りゃわかる!」

声を張り上げる"マリア"に、マイロは思わず気圧されて、言葉を飲み込む。

「さっきからの話、大方戦死した先輩たちの、その背中を追いかけるとか、その誇りを受け継ぐとか、そういうことでも言いたいんでしょ?でもさ、死んじゃった人が今何を考えてるなんて、分かんないよ。」

"マリア"は、諭すような口調で言う。

「"アメイジング・グレイス"なんて歌ってるけど、あたしは別に神様は信じてないよ。だから、死んだ人の魂がどうなるかなんて知らない。でもさ、だからこそ、いま隣で生きてて、愛してる人のことを考えるべきじゃないの?」

そんなの、サルでも分かると思うよ、と、呆れたように"マリア"は言う。

「……つまり、君は自分の歌で、博愛主義を世の中に伝える、と?」

今度はマイロが"刺す"。

「君の歌が、地球圏に平和をもたらす?」

おとぎ話だ、と、マイロは吐き捨てる。

「博愛主義のつもりはない。でも、アンタらよりよっぽど、価値のある戦いはしているつもりは、あるね。」

刺したつもりだったが、臆する様子が微塵もない。

「少なくとも、この宙域のどの軍人より、あたしが"勝者"に近い。その証拠に、あたしの歌は、連邦もジオンも、みんな聴いてる。あたしの声は、アンタらが血を流して守ってるつもりの主義主張より、多くの人に届いてるよ。」

"マリア"は勝ち誇ったような、しかし傲りのない顔で言う。

「アンタは、死に急いでる。逃げるために、戦ってんだ。」

フン、と、"マリア"は鼻を鳴らした。

「戦うのに忙しいフリして、生き永らえた者が本当に担うべき役目から、逃げてんだよ。」

 してやられた気分だ。刺したつもりが刺し返された。 マイロは、それきり何も言えなくなり、サラに促されるまま、

 してやられた気分だ。刺したつもりが刺し返された。

 マイロは、それきり何も言えなくなり、サラに促されるまま、"マリア"の部屋を出た。

 気づくと、MSハンガーに向かっていた。何やら、ハンガー内が慌ただしい。

「さっきだ。他の宙域から逃げてきたヤツらが持ってきた。」

イアン・リー少尉が駆け寄ってきて言う。

「あの包囲を突破してきたのか?」

 マイロが、感心して言う。

「連邦の包囲も、案外ザルなんじゃないか?もうお互い辟易してるんだろう、この戦いに。」

イアンの応えが、先程の"マリア"との問答を思い出させた。マイロは、思わず口を尖らせる。

「なんだ?拗ねた顔して……。」

「なんでもない。で、あれは……?」

 見上げる先に、見慣れない機体が立っている。その、脱出してきた連中が持ち込んだ機体だろう。

「MS-18……強襲型MS、"ケンプファー"だそうだ。」

「知らないな。」

「一部の部隊にしか渡っていなかったらしい。高い推力で、突破力がある。ビームは使えないが、火器をたんまりマウントして、敵に突っ込む機体だ。」

「へぇ……!」

聞いて、思わず、目が輝いた。コンセプトが、自分好みだと思ったのだ。やはり、自分はただのMSと喧嘩好きの"坊や"なのか。

「乗るのはお前だ。」

 まあ、そうなるだろう。

「なら、一つ、頼まれて欲しい。」

「機体のことなら整備の連中に言え。」

「そうか……そうだな!」

 マイロは、"坊や"の愛称に相応しい、子どもっぽい笑顔を浮かべると、先程の"マリア"とのやり取りも忘れて駆け出した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「なるほど、例の大尉のリスペクトね。」

癖のある黒髪を、わしわしとかきながら、眼鏡をかけたメカニックの男は言った。

「そのくらいなら、全然。できるよ。」

「よし、頼んだ!」

マイロは、新たに自分に託される機体への要望がすんなりととおり、ぱっと明るい表情を浮かべた。

(可愛い顔で笑うじゃないか。)

その顔を見て、黒髪眼鏡のメカニックは、このエースパイロットのことを皆が"坊や"と親しみを込めて呼ぶ理由を理解した。

「仕様書は見れる?」

 マイロが言うので、手元の資料を渡してやる。

「イアンの言うとおりか。突撃して火薬をばら撒く。」

「ああ、でも、その"チェーンマイン"てヤツは持ってきてないみたいだな。」

「派手な火力がありそうなのにな、勿体無い。」

 マイロは、仕様書をしばらく睨んだ後に呟く。

「敵の

「敵の"ガンダム"、硬そうだった。デカいシールドを持ってて……。」

マイロは、言いながら、思い出している。

「ゴテゴテの武装だったが、推力もあった。対艦ライフルの炸裂弾じゃ、かわされていまいちダメージが通らなかった。」

ほぅ、と、メカニックは唸った。

「この機体なら、風穴、開けられるか?」

 どうだろうか、と、メカニックは腕組みをする。実は、この機体の実働報告を見たのだ。戦いの詳細は分からないが、相手は"ガンダム"だったらしい。"チェーンマイン"も持ったフル装備で挑んだが、"ガンダム"は破壊できず、ケンプファーは返り討ちにあったそうだ。

 ケンプファーの運用思想は、パイロットたちの解釈どおりで間違いない。言うなれば、この機体は戦場に突き刺さる鋭い槍、矛だ。だが、おそらく連邦の機体の重装甲を抜くには、それでも火力が足りない。

 矛と盾の対決。

「ム・ジュン、か。今回は矛の方が分が悪いが……。」

メカニックは腕組みをしたまま呟く。

「何だって?」

「最強の矛と盾の話さ。」

厳密にはそこが話の核ではないが、今のマイロの気分には、そういう説明の方が合っていそうな気がした。

「オーケイ、あの分厚い盾を貫きたいなら、俺がもう一つ、アンタのために最強の矛を用意しておいてやるよ。」

 メカニックがニッと笑うと、ドックの片隅で、わっと歓声が起こった。

 2人でそちらに目をやると、人だかりができている。

 "マリア"だ。

 これから一曲やるらしかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「それで、言い負けちゃったわけ?」 

「それで、言い負けちゃったわけ?」

 "マリア"を囲う輪の中で。アビーことアビゲイル・エイジャー中尉は、カラカラと笑いながら言う。

「そうなのよ。」

 話し相手の、サラも楽しそうに応える。

「"坊や"らしいね。」

そうなの、と、サラはもう一度同じことを言う。

 サラとアビーは、同い年で、気安い間柄だ。何でも話せる関係で、今も先ほどのマイロと"マリア"の舌戦を肴に盛り上がっていた。

「MS以外、からきし能のないヤツだからね、アンタが付いててあげなきゃ、危なっかしくて見てられないよ。」

アビーが言うと、一瞬、サラは寂しげな目をした。しかし、すぐに、"マリア"が話し始めたので、アビーはそのことに気づかなかった。

「じゃ、一曲目は……あたしの歌じゃないけど、ジャパニーズロックの名曲を!」

 "マリア"は、アコースティックギターをゆったりと掻き鳴らすと、メロウなメロディでドブネズミを褒めだした。

「なにこれ?」

サラが不思議そうに呟く。

「え?知らないの?」

アビーはわくわくした顔をしている。知っている曲らしい。やがて、ギターが激しく掻き鳴らされると、女性の名前のようなよく意味の分からないフレーズを連呼しだした。

「変なの!」

「違う、魂を震わすんだよ、これが!」

「なんか分かんないけど、素敵ね!」

サラは楽しそうに、皆と一緒に手拍子を叩く。

 ノリのいい一曲目を終えると、今度は明るいトーンの反戦歌が始まる。これは、"マリア"のオリジナルの楽曲だ。

「ねえ、アビー。」

明るい音楽の中で、サラがそっと囁く。

 なに、と、アビーは笑顔で顔を向けたが、サラの神妙な面持ちに思わずハッとした。

「わたしに、何かあったら……あの子のこと、お願いね。」

「何言ってんの!」

逆でしょ、と、小さく叫ぶ。

「死ぬ目に遭うのは、あたしらパイロットの仕事!」

「わかってる。でも、嫌な予感がするの……。」

「ちょっと、やめてくんない?結構さ、験かつぐんだよ、パイロットって!」

「うん、ごめんね。」

 その瞬間、アビーの胸を鋭い痛みが突き抜けた。サラの潤んだ瞳に映っているのは自分なのに、彼女の口から出るのは別の男の名前。

「ホントさ、縁起でもないこと言わないでよ、二度とさ。」

無造作に言葉を投げ返しながら、アビーは自分の震える指先を隠すように強く拳を握りしめた。

 アビーは、サラを愛している。

 それは、友愛の情とは、違う。もっと甘く、切なく、深く、そして、情欲すらも伴う感情だ。だが、サラが愛しているのは、自分ではない。分かっていた。分かっていたからこそ、彼女の「遺言」のような信頼が、どんな銃弾よりも深くアビーの心を抉った。

「なんだ、"アメイジング・グレイス"じゃないのか?」

 マイロがやってきて、サラの隣にピタリと寄り添った。

「マイロ……!」

 先程の会話が聞かれていないかと、サラは慌てているような声をあげたが、どうやら大丈夫そうだ。サラの愛しの"坊や"はすぐ顔色に出る。あんな不吉な会話を聞かれていたなら、サラでなくとも、すぐ分かる。

 曲は、三曲目に入っている。これも、旧世紀の反戦フォークだ。人は、いつになれば、いくつの戦いを経れば、分かり合えるのか、と、その歌は投げかけてくる。だが、答えは、風の中だと、サビが繰り返している。

「……なんでも分かっているようなことを言ってても、アイツだって、分かっていないんじゃないか。」

マイロは憎々しげに呟いた。意外と、きちんと歌詞を聞いている。

「なに?口喧嘩で負けたの、根に持ってんの?」

アビーが面白そうに囃した。

「うるさいな、何で知ってるんだよ!?」

「わたしが話したからね。」

サラがくすくす笑う。

「お、いいな、両手に花か?」

 今度はイアンだ。

「そんなんじゃない!」

 アビーは、ムキになって否定した。

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 イアンと、アビー。ここに、ハリソン少佐や、エドガー少尉、そして、アーサー・クレイグ大尉もいた。 皆と並ぶと、死んでいったあの人たちの背中を、思い出してしまう。(死んだ人の魂がどうなるかなんて知らない。)先程の

 イアンと、アビー。ここに、ハリソン少佐や、エドガー少尉、そして、アーサー・クレイグ大尉もいた。

 皆と並ぶと、死んでいったあの人たちの背中を、思い出してしまう。

(死んだ人の魂がどうなるかなんて知らない。)

先程の"マリア"の鋭い言葉が蘇る。

(でもさ、だからこそ、いま隣で生きてて、愛してる人のことを考えるべきじゃないの?)

 そうなのかもしれない。

 曲は、メロウなラブソングに入る。 隣の、サラの手をそっと握ると、サラは一瞬驚いたようにこちらを向き、そして、はにかみながら笑った。その微笑みを見て、マイロは吸い込まれるように、唇を重ねた。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 曲は、メロウなラブソングに入る。

 隣の、サラの手をそっと握ると、サラは一瞬驚いたようにこちらを向き、そして、はにかみながら笑った。その微笑みを見て、マイロは吸い込まれるように、唇を重ねた。

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「おいおい……。」 イアンがにやにやしながら言うと、アビーは赤くなった顔を掌で覆い、呆れた、と、ため息をつく。アビーが掌で顔を覆ったのは、照れ隠しではない。二人のあまりに純粋な幸福を直視すれば、自分の中に澱のように溜まった醜い感情が決壊してしまいそうだったからだ。 (……あんたが選んだ男だ。文句は言わないよ。だけどさ、サラ……。) 指の隙間から漏れるドックの灯りと、よく通るマリアの歌声が、やけに目と耳に痛かった。 そして、曲は、大トリ、

「おいおい……。」

 イアンがにやにやしながら言うと、アビーは赤くなった顔を掌で覆い、呆れた、と、ため息をつく。アビーが掌で顔を覆ったのは、照れ隠しではない。二人のあまりに純粋な幸福を直視すれば、自分の中に澱のように溜まった醜い感情が決壊してしまいそうだったからだ。 

(……あんたが選んだ男だ。文句は言わないよ。だけどさ、サラ……。)

 指の隙間から漏れるドックの灯りと、よく通るマリアの歌声が、やけに目と耳に痛かった。

 そして、曲は、大トリ、"アメイジング・グレイス"に入った。

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 UC0080、1月7日。 

 UC0080、1月7日。

 "マリア"が連邦に帰る。マイロたち、"レッドショルダー隊"は、引渡し予定宙域まで、彼女を乗せたランチを護衛することになった。

「この期に及んで、まだ新しいのを用意するわけ?」

ランチに乗り込む直前、組み上げ中のケンプファーを見上げて"マリア"が毒づいた。

「それが言いたくて呼んだのか?」

 わざわざザクのコクピットから降りてきていたマイロは、苛立ちを隠さずに応えたが、"マリア".は構わず続けた。

「人前でも平気でキスできるほど大事な人がいるならさ、いい加減やめなよ、こんなの。さっさと白旗あげなって。」

「考えたさ。」

へえ、と、"マリア"は聞く姿勢を見せる。

「俺だけなら良いが、捕虜の女がどんな目に遭うか分からん。戦場で皆、血が滾っている。南極条約も、どこまで遵守されているのかは、互いに藪の中だ……こちらも、そうして酷い目に遭わせた敵兵がいる。そういうのは、俺も見てきた。」

「だったら尚のこと、隣にいて守ってやんなよ。」

「……MSがなければ、俺は無能だ。それに、ザンジバルに乗れば丸腰だ。」

"マリア"はため息をついた。

「やだやだ。ホント、何が悲しくて何世代にも渡ってこんなことしてんのかね、あたしら人類はさ。」

言って、ギターケースを担ぎ直すと、言葉を続ける。

「やっぱ、アレ?ジオン・ダイクンの。」

「……?」

「人類みんなが宇宙に上がって、ニュータイプになれってやつ。そしたら戦争が終わるかな?」

「どうかな。俺が知ってる"ニュータイプ"らしき連中は、戦争の道具に成り下がっていた。」

ふっと寂しそうに笑って、マリアはランチに乗り込む。

「じゃ、まあ、帰り、しっかり送ってね。」

 なんだその軽いノリは。

 俺は友達じゃないぞ、と、マイロが抗議する前に、ランチのハッチは閉じた。

 そして、

 そして、"マリア"の身柄は、無事、連邦に引き渡された。


 

第2話・完

 

【ガンダム編・「雷鳴の伝灯」第2話はこちら】

【予告ページを目次にしてあります】

 コラボ編第2話です。いかがでしたでしょうか。

 冒頭のサラミス、全然しっかり白旗たててません。すみません笑

 さて、本編のキャラクターや機体設定について……コラボ先のヨッチャKIDさんは遠慮されてお話なさらなそうなので、こちらで触れさせていただきます。

 本コラボは、デジラマとテキストは私が作成していますが、機体設定のコンセプトや、キャラクターメイクはほとんどヨッチャKIDさんによるものです。

 スタート地点は、「連邦VSジオン」「両陣営の主役機のコンセプト(今回メカニックが言っていた”矛盾”です)」「マイセンのキャラクター」でした。

 例えばガンダム編の主役のマイセン。

 このキャラクターを主役に、というのが、企画のスタート地点の一つでした。「臆病者の嫌味爺ィ」とか「キャプテンアメリカ風の真面目なお兄ちゃん」とか、色々アイディアを出し合いましたが、妻子との関係や、巨大な盾を持ったガンダムなど、諸々のアイディアをまとめて、現在のキャラクターに収まりました。

 そして、”マリア”。両陣営を繋ぐ気が強い非戦闘員の女性キャラ、なにか、アイドル的な存在を、というのも、発想のスタートはヨッチャKIDさんでした。第4部にもちょこっとだけ出ていますが、このころにはキャラクターの骨子はできていました。動かし始めたら、もう楽しくて楽しくて、2人とも”マリア”は気に入っています。……と、思っているのですが、どうでしょうか、KIDさん笑

 そして、ローワン。本当は彼が指揮官で、マイセンの上官になる予定でした。「上官だがマイセンより若く、気弱なせいで舐められ、何も言えない」みたいな設定からスタートしたはずが、気づいたらああなっていました笑 ローワンの名前も、ヨッチャKIDさん命名です。由来もきちんとありますので、気になる皆様はぜひ、ヨッチャKIDさんにお聞きください笑

 などなど、アイディアを頂いて、わたしの方では好き勝手キャラと機体を暴れさせる、というコンセプトでやっています笑 アイディアのきっかけはかなり重要で、ここがハマると一気にストーリーが出来上がっていく感じがします。いいアイディアをご提供くださったヨッチャKIDさんに、改めて感謝申し上げます! さて、物語は次回、緊張感を高めて、次々回でクライマックスの戦いに突入する予定です。 マイセンとマイロ、戦士として微妙に惹かれ合う二人の運命は!? そして、死亡フラグを立てまくっているサラはどうなるのか!?!? 次回もぜひよろしくお願いします(gundam-kao6)

 などなど、アイディアを頂いて、わたしの方では好き勝手キャラと機体を暴れさせる、というコンセプトでやっています笑

 アイディアのきっかけはかなり重要で、ここがハマると一気にストーリーが出来上がっていく感じがします。いいアイディアをご提供くださったヨッチャKIDさんに、改めて感謝申し上げます!

 さて、物語は次回、緊張感を高めて、次々回でクライマックスの戦いに突入する予定です。

 マイセンとマイロ、戦士として微妙に惹かれ合う二人の運命は!?

 そして、死亡フラグを立てまくっているサラはどうなるのか!?!?

 次回もぜひよろしくお願いします(gundam-kao6)

コラボ・ジオン編第2話

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