【コラボ】遠雷の継灯・第4話

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Chap.4 U.C.0080 1月10日

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「マイロは、なんでそんなに戦いたいの?」 ”最後の夜”に、そう訊ね掛けてきた、サラの顔が忘れられない。 戦いたいわけじゃない、とでも、応えたはずだ。「でも、あの新型。」 ケンプファーのことだ。停戦の話は、サラも聞いている。白旗を上げながらの撤退だというのに、なぜ戦いの備えをするのか。そんな非難めいた思いを、言外に込めているような言い方だった。 マイロの中では、まだ戦時下だ。現に、今だに連邦の包囲は続いている。仕掛けてこられてもおかしくはない。その時の、もしもの備えであるということをサラに説明した。「何で、戦うの?」それでも、サラは納得しなかったようだ。 マイロは、少し考える。「……理由なんてないよ。仕事だからだ。」 貧民街の孤児だった。「貧しいジオンの中でも、俺の家は特に貧しかった。軍隊なら、もうすこし良い飯が食えると思った。」”家”などと口にしたが、身寄りはない。公的支援を受けた施設で育ち、図体だけはなんとか1人前にはなれたのだが、学もなければ、手に職が付くような教育を受けてきたわけでもない。仕方がないので、身体だけ大人になると、軍に入った。そこなら、多少はマシな飯が食えると思ったのだ。「獣と同じさ。とにかく、飯にありつくために、戦う。」「わかってるなら、電気屋になりなよ。」「なんだよ、それ。」「得意でしょ、MSいじるの。頑張って殺し合いするより、そっちのほうが、よっぽど人間らしいわ。」サラは、優しく微笑む。「あなた、飲み込み早いでしょ。MSのことだって、勉強始めたの、軍に入ってからじゃない。」確かに、上官からもよくそういう褒められ方をした。「電気屋の方が、MSよりずっと簡単。」「……電気屋に失礼だよ。」 そうだね、と、サラは笑う。「でもさ、MS乗りなんてさ、ホントはインテリがやる仕事だよ?なら、他の仕事もなんだって出来るよ。」せっかく地頭、良いんだから、と、サラは楽しそうに言う。「学がなくてもエレカはみんな運転するだろう。」 MSの操縦はOSが助けてくれる。乗って動かすだけなら、必ずしもインテリである必要はない、と、言うことをマイロは言いたい。現に、連邦で突如現れた

「マイロは、なんでそんなに戦いたいの?」

 ”最後の夜”に、そう訊ね掛けてきた、サラの顔が忘れられない。

 戦いたいわけじゃない、とでも、応えたはずだ。

「でも、あの新型。」

 ケンプファーのことだ。停戦の話は、サラも聞いている。白旗を上げながらの撤退だというのに、なぜ戦いの備えをするのか。そんな非難めいた思いを、言外に込めているような言い方だった。

 マイロの中では、まだ戦時下だ。現に、今だに連邦の包囲は続いている。仕掛けてこられてもおかしくはない。その時の、もしもの備えであるということをサラに説明した。

「何で、戦うの?」

それでも、サラは納得しなかったようだ。

 マイロは、少し考える。

「……理由なんてないよ。仕事だからだ。」

 貧民街の孤児だった。

「貧しいジオンの中でも、俺の家は特に貧しかった。軍隊なら、もうすこし良い飯が食えると思った。」

”家”などと口にしたが、身寄りはない。公的支援を受けた施設で育ち、図体だけはなんとか1人前にはなれたのだが、学もなければ、手に職が付くような教育を受けてきたわけでもない。仕方がないので、身体だけ大人になると、軍に入った。そこなら、多少はマシな飯が食えると思ったのだ。

「獣と同じさ。とにかく、飯にありつくために、戦う。」

「わかってるなら、電気屋になりなよ。」

「なんだよ、それ。」

「得意でしょ、MSいじるの。頑張って殺し合いするより、そっちのほうが、よっぽど人間らしいわ。」

サラは、優しく微笑む。

「あなた、飲み込み早いでしょ。MSのことだって、勉強始めたの、軍に入ってからじゃない。」

確かに、上官からもよくそういう褒められ方をした。

「電気屋の方が、MSよりずっと簡単。」

「……電気屋に失礼だよ。」

 そうだね、と、サラは笑う。

「でもさ、MS乗りなんてさ、ホントはインテリがやる仕事だよ?なら、他の仕事もなんだって出来るよ。」

せっかく地頭、良いんだから、と、サラは楽しそうに言う。

「学がなくてもエレカはみんな運転するだろう。」

 MSの操縦はOSが助けてくれる。乗って動かすだけなら、必ずしもインテリである必要はない、と、言うことをマイロは言いたい。現に、連邦で突如現れた"白い悪魔"、ガンダムに乗るエースは、年端もゆかぬガキだというではないか。

「とにかく軍なら、命を賭けてる分、他の仕事より稼ぎがいい。」

「貧しくてもいいわ、あなたと一緒なら。それより、2人で歌でも歌って、子どもも持って……ねえ、きっとよ、マイロ。」

そして、サラは”アメイジング・グレイス”を優しく口ずさむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きっとよ、マイロ。待っているから、わたし、ずっと。」

          ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 サラを乗せたザンジバルから火の手が上がったかと思うと、艦内からの爆発は勢いを増し、ザンジバルは巨大な火球と化した。 艦底から這い出してきたザクが、みるみる大きくなる火球に飲まれるのを見ながら、マイロは絶叫した。しかし、自分が何を叫んだのかは、定かではない。気づくと、青いガンダムと組み合っていた。『裏切ったのは、貴様らだろう!』 何だと。 何だと——!? それは、無能な上層部の話だ。 サラは、裏切ってなどいない。 サラは、貴様に、殺される謂れなどない。 サラは……サラは……——!   「サラ……サラ……っ!!」

 サラを乗せたザンジバルから火の手が上がったかと思うと、艦内からの爆発は勢いを増し、ザンジバルは巨大な火球と化した。

 艦底から這い出してきたザクが、みるみる大きくなる火球に飲まれるのを見ながら、マイロは絶叫した。しかし、自分が何を叫んだのかは、定かではない。気づくと、青いガンダムと組み合っていた。

『裏切ったのは、貴様らだろう!』

 何だと。

 何だと——!?

 それは、無能な上層部の話だ。

 サラは、裏切ってなどいない。

 サラは、貴様に、殺される謂れなどない。

 サラは……サラは……——!

 

 

 

「サラ……サラ……っ!!」

 吠えた。『分かっただろう、貴様らも!!』 うるさい。 何がだ? 何を、分からせる? 貴様ごときが、何をだ? 裁定者にでも、神にでも、なったつもりか?「貴様ぁっっっ!!!!」

 吠えた。

『分かっただろう、貴様らも!!』

 うるさい。

 何がだ?

 何を、分からせる?

 貴様ごときが、何をだ?

 裁定者にでも、神にでも、なったつもりか?

「貴様ぁっっっ!!!!」

 再び吠えたところで、ガンダムがマイロを振りほどき、距離を取った。ショットガンの銃口でガンダムを追う。戦場で叩き上げられてきた戦士の技倆は、いや、よく訓練された狩人のーーいや、違う、戦いの中に生きてきた、獣の本能は、真っ黒に思考を塗りつぶす殺意の中でも、悪魔のように冷静に働いた。敵の息の根を止めるべく、放った凶弾は、しかし、果たして、またしてもその分厚い壁のような盾に遮られた。 機体各所、それこそシールドにまで装備されたバーニアを思い切りふかして、敵機は後退した。「逃げるな、貴様ぁっ!!」マイロは機体を加速させようと、スロットルレバーを握ったが、既に乱戦が始まっている。ガンダムとの間に、数機の敵機が割って入る。

 再び吠えたところで、ガンダムがマイロを振りほどき、距離を取った。ショットガンの銃口でガンダムを追う。戦場で叩き上げられてきた戦士の技倆は、いや、よく訓練された狩人のーーいや、違う、戦いの中に生きてきた、獣の本能は、真っ黒に思考を塗りつぶす殺意の中でも、悪魔のように冷静に働いた。敵の息の根を止めるべく、放った凶弾は、しかし、果たして、またしてもその分厚い壁のような盾に遮られた。

 機体各所、それこそシールドにまで装備されたバーニアを思い切りふかして、敵機は後退した。

「逃げるな、貴様ぁっ!!」

マイロは機体を加速させようと、スロットルレバーを握ったが、既に乱戦が始まっている。ガンダムとの間に、数機の敵機が割って入る。

 両手に持ったショットガンは、黒髪眼鏡のメカニックの手が加わっている。ポンプアクションがオートマチック化し、片手でも取り回せるようにされている。ストックを器用に腕と胴体の間に挟んで銃身を安定させると、迫りくる敵の”のっぺらぼう”どもを撃ち落す。紅白の”のっぺらぼう”の装甲は、ガンダムや砂漠で戦った槍のヤツと違って、そう堅くはない。マイロの冷酷な射撃を受け、敵機は簡単に火を吹いた。(格闘戦だと、素人どもめ。) ビーム兵器の火力に頼ってか、あるいは急ごしらえのMSの、付け焼き刃のパイロットどもの練度不足なのか、敵は単騎で突出してくる者が多い。味方は、複数でそのバカを取り囲み、至近弾で落としていく。どちらが”喧嘩慣れ”しているかは、明白だ。 乱戦の最中、マイロは注意深くモニターに目を滑らせる。(あの、青いヤツは——ガンダムは、どこだ!?)

 両手に持ったショットガンは、黒髪眼鏡のメカニックの手が加わっている。ポンプアクションがオートマチック化し、片手でも取り回せるようにされている。ストックを器用に腕と胴体の間に挟んで銃身を安定させると、迫りくる敵の”のっぺらぼう”どもを撃ち落す。紅白の”のっぺらぼう”の装甲は、ガンダムや砂漠で戦った槍のヤツと違って、そう堅くはない。マイロの冷酷な射撃を受け、敵機は簡単に火を吹いた。

(格闘戦だと、素人どもめ。)

 ビーム兵器の火力に頼ってか、あるいは急ごしらえのMSの、付け焼き刃のパイロットどもの練度不足なのか、敵は単騎で突出してくる者が多い。味方は、複数でそのバカを取り囲み、至近弾で落としていく。どちらが”喧嘩慣れ”しているかは、明白だ。

 乱戦の最中、マイロは注意深くモニターに目を滑らせる。

(あの、青いヤツは——ガンダムは、どこだ!?)

『マイロ!』 スピーカーに、アビーの声が飛び込んでくる。気づくと、赤い肩のザク改が2機、ケンプファーにぴたりと付いて来ている。「ガンダムを墜とす、手を貸せ。」マイロは短く言うと、返事も無く、2機はマイロの機体をやや先行する形で上下に散開した。伝わったらしい。 モニターの隅に、稲妻のような軌道で飛ぶ青い機体が見えた。(見つけたぞ——!) マイロは、鋭角に機体の方向を変えた。 ガンダムもマイロの接近に気づいたらしい。加速してこちらに近づいてくる。ショットガンは既に撃ち尽くしている。マイロは銃を棄てると、背中にマウントしたバズーカを2丁、肩に担いだ。接近してくる敵機に、ゆっくりと照準を合わせた。 敵は一気に加速して、機体をぶつけ、ゴリゴリと押し込んできた。攻め手こそが、防御に働く時がある。敵はそのことを知っている。大仰な盾で身を隠すような戦い方をするヤツだが、これは、決して臆病者の闘い方ではない。

『マイロ!』

 スピーカーに、アビーの声が飛び込んでくる。気づくと、赤い肩のザク改が2機、ケンプファーにぴたりと付いて来ている。

「ガンダムを墜とす、手を貸せ。」

マイロは短く言うと、返事も無く、2機はマイロの機体をやや先行する形で上下に散開した。伝わったらしい。

 モニターの隅に、稲妻のような軌道で飛ぶ青い機体が見えた。

(見つけたぞ——!)

 マイロは、鋭角に機体の方向を変えた。

 ガンダムもマイロの接近に気づいたらしい。加速してこちらに近づいてくる。ショットガンは既に撃ち尽くしている。マイロは銃を棄てると、背中にマウントしたバズーカを2丁、肩に担いだ。接近してくる敵機に、ゆっくりと照準を合わせた。

 敵は一気に加速して、機体をぶつけ、ゴリゴリと押し込んできた。攻め手こそが、防御に働く時がある。敵はそのことを知っている。大仰な盾で身を隠すような戦い方をするヤツだが、これは、決して臆病者の闘い方ではない。

 敵の上下から、イアンとアビーが挟撃をしかける。イアンのザクが、ガンダムのライフルを斬り裂く。(いま——!!)マイロはバズーカでもう一撃を喰らわせようと、押し合う機体を離そうと試みた。そこに、敵の増援が割り込む。仕方なく、再び距離を取る形になった。~~~~~~~~~~~~~~~

 敵の上下から、イアンとアビーが挟撃をしかける。イアンのザクが、ガンダムのライフルを斬り裂く。

(いま——!!)

マイロはバズーカでもう一撃を喰らわせようと、押し合う機体を離そうと試みた。そこに、敵の増援が割り込む。仕方なく、再び距離を取る形になった。

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 マイロが増援の”のっぺらぼうを、バスーカで撃ち落すのが見えた。アビーは、イアンに声を掛け、マイロの許に再び集合した。『やはりガンダム、手ごわいな。』イアンも息を切らしている。『それでも、やる。』マイロの、不気味なほどに冷静な声が聞こえた。『サラの——仇だ。何があっても、殺す。あの、青い、ガンダム——。』 アビーは、ハッとした。(ねえ、アビー。わたしに、何かあったら……あの子のこと、お願いね。)つい、数日前、そう言って、寂しそうに微笑んだ、友人の顔と、その時の会話が、脳裏を過ぎる。  (何言ってんの!逆でしょ!死ぬ目に遭うのは、あたしらパイロットの仕事!)(わかってる。でも、嫌な予感がするの……。)(ちょっと、やめてくんない?結構さ、験かつぐんだよ、パイロットって!)(うん、ごめんね。)   スロットルレバーを握りしめ、アビーは歯噛みした。(だから……言わんこっちゃないってのに……サラ!)『いいな、手を貸せ。もう一度、囲い込む。』 マイロが機体を走らせようとする。「待て、死ぬ気だろう、アンタ。」『当たり前だ。でなきゃ、ヤツは倒せん。』 やはりだ。この”坊や”は……。(サラがいなくちゃ、生きてる意味もないってのか?) アビーが何かを言う前に、マイロは、再びガンダムに向かって行く。『”坊や”は死ぬ気だぞ、アビー!』イアンが叫びながら、追随する。「分かってる!」 舌打ちしながら、アビーも続いた。 そうだ。 死んで仇討など、あの娘が——サラが、そんなバカなことを、マイロに望むはずがないのだ。(”坊や”は、生きて帰す——。) そうだ、サラのために——あたしが愛した、あの娘のために——。

 マイロが増援の”のっぺらぼうを、バスーカで撃ち落すのが見えた。アビーは、イアンに声を掛け、マイロの許に再び集合した。

『やはりガンダム、手ごわいな。』

イアンも息を切らしている。

『それでも、やる。』

マイロの、不気味なほどに冷静な声が聞こえた。

『サラの——仇だ。何があっても、殺す。あの、青い、ガンダム——。』

 アビーは、ハッとした。

(ねえ、アビー。わたしに、何かあったら……あの子のこと、お願いね。)

つい、数日前、そう言って、寂しそうに微笑んだ、友人の顔と、その時の会話が、脳裏を過ぎる。


 

 

(何言ってんの!逆でしょ!死ぬ目に遭うのは、あたしらパイロットの仕事!)

(わかってる。でも、嫌な予感がするの……。)

(ちょっと、やめてくんない?結構さ、験かつぐんだよ、パイロットって!)

(うん、ごめんね。)


 

 

 スロットルレバーを握りしめ、アビーは歯噛みした。

(だから……言わんこっちゃないってのに……サラ!)

『いいな、手を貸せ。もう一度、囲い込む。』

 マイロが機体を走らせようとする。

「待て、死ぬ気だろう、アンタ。」

『当たり前だ。でなきゃ、ヤツは倒せん。』

 やはりだ。この”坊や”は……。

(サラがいなくちゃ、生きてる意味もないってのか?)

 アビーが何かを言う前に、マイロは、再びガンダムに向かって行く。

『”坊や”は死ぬ気だぞ、アビー!』

イアンが叫びながら、追随する。

「分かってる!」

 舌打ちしながら、アビーも続いた。

 そうだ。

 死んで仇討など、あの娘が——サラが、そんなバカなことを、マイロに望むはずがないのだ。

(”坊や”は、生きて帰す——。)

 そうだ、サラのために——あたしが愛した、あの娘のために——。

 マイロがシュツルムファウストを放つのが見えたが、やはりガンダムは受け流した。再び、イアンと二人、ガンダムに挟撃を仕掛けたが、今度は読まれていた。敵は、アビーの射撃を無視して、イアンだけを確実に墜として見せた。「イアン……!!!!」叫んだ瞬間、自身のコクピットも衝撃に見舞われた。ガンダムに随伴していた、別の青いMSからの射撃だった。機体の右腕を吹き飛ばされ、そのまま機体が後ろに流されていく。「クソっ……!」マシンガンも吹き飛ばされた。これでは、戦えない。『大尉!退がってください!』流されていくと、味方の下士官のザクに助けられた。『ここはもう駄目です!』「これ以上、どこに退くんだ!」『ですから、予定通り降伏でしょう!』大尉は、基地まで後退してください、と、アビーを押し出した後、その下士官のザクも目の前で爆散した。 爆光の後ろ、ガンダムとケンプファーが組み合うのが見えた。 気づくと、味方もずいぶん数を減らしている。戦術の練度は上でも、圧倒的な数と、ビーム兵器の火力に押され、どうしようもない。このままここに留まっていては、全員、死ぬ——。(ならば……!)アビーは、カスコ少佐から生前託された任務を全うすべきだと思った。(サラ、ごめん……!)

 マイロがシュツルムファウストを放つのが見えたが、やはりガンダムは受け流した。再び、イアンと二人、ガンダムに挟撃を仕掛けたが、今度は読まれていた。敵は、アビーの射撃を無視して、イアンだけを確実に墜として見せた。

「イアン……!!!!」

叫んだ瞬間、自身のコクピットも衝撃に見舞われた。ガンダムに随伴していた、別の青いMSからの射撃だった。機体の右腕を吹き飛ばされ、そのまま機体が後ろに流されていく。

「クソっ……!」

マシンガンも吹き飛ばされた。これでは、戦えない。

『大尉!退がってください!』

流されていくと、味方の下士官のザクに助けられた。

『ここはもう駄目です!』

「これ以上、どこに退くんだ!」

『ですから、予定通り降伏でしょう!』

大尉は、基地まで後退してください、と、アビーを押し出した後、その下士官のザクも目の前で爆散した。

 爆光の後ろ、ガンダムとケンプファーが組み合うのが見えた。

 気づくと、味方もずいぶん数を減らしている。戦術の練度は上でも、圧倒的な数と、ビーム兵器の火力に押され、どうしようもない。このままここに留まっていては、全員、死ぬ——。

(ならば……!)

アビーは、カスコ少佐から生前託された任務を全うすべきだと思った。

(サラ、ごめん……!)

"坊や"なら、自力でなんとかするだろう。マイロは一度、ここに置いていく。

「ガンダムなんて、倒せなくて良い……!」

アビーは、敵を追いかけ遠くに流れて行こうとする"坊や"に呼びかける。

「ハリソン少佐や、アーサー大尉が、アンタを逃してやったんだ——その意味、ちゃんと考えな……!」

返事はない。たぶん、通信自体が届いていないのだ。

 ちゃんと、直接、言ってやれば良かったと、今更ながら後悔が湧き上がる。だが、今は、他の仲間のこともある——なにしろ、アビーは、この時のために"大尉"に任命されたのだ。アビーは、意を決して、拠点に後退した。

(死ぬんじゃないよ、”坊や”——!)

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「貴様……貴様っ!!」 サラだけでなく、イアンまで殺された。 火器の弾薬は既に底を尽き、最後の手段とも言うべくビームサーベルを抜いている。 邪魔な敵機を斬り裂きながらガンダムに向かったが、一瞬見失う。ふと、後ろから衝撃。ガンダムが組みついてきていた。直接回線が開く。『いい腕だ、若造。』 何を、言っている——こいつは? 先ほど、こいつは、コロニー落としを糾弾した。 そして、こちらの仲間を虐殺した。 ”分かっただろう”、と、裁定者じみたことを口走った。 つまり、戦争の悲しみに、過ちに、浸っていたはずだ。 それが、なんだ——この戦いの最中、今度は、古のサムライごっこにでも興じるつもりか?「無駄話など!」『敵ながら天晴れと言っている。こっちの若い連中とは、違う。骨がある!』 やはり、か。「……貴様、なめているのか!?」 馬鹿馬鹿しい。応じたくもなかったが、つい、応えてしまった。『違うな、わたしを超えてみせろと言っている!』 何が、違う。 なめているだろうが。 戦いは、自己実現の場ではない。 これは、生きるか死ぬかの——獣同士の、本能のぶつけ合いだ。 矜持などない。 大義などない。『敵でもいい……わたしを……わたしの哀しみと、闘いを、

「貴様……貴様っ!!」

 サラだけでなく、イアンまで殺された。

 火器の弾薬は既に底を尽き、最後の手段とも言うべくビームサーベルを抜いている。

 邪魔な敵機を斬り裂きながらガンダムに向かったが、一瞬見失う。ふと、後ろから衝撃。ガンダムが組みついてきていた。直接回線が開く。

『いい腕だ、若造。』

 何を、言っている——こいつは?

 先ほど、こいつは、コロニー落としを糾弾した。

 そして、こちらの仲間を虐殺した。

 ”分かっただろう”、と、裁定者じみたことを口走った。

 つまり、戦争の悲しみに、過ちに、浸っていたはずだ。

 それが、なんだ——この戦いの最中、今度は、古のサムライごっこにでも興じるつもりか?

「無駄話など!」

『敵ながら天晴れと言っている。こっちの若い連中とは、違う。骨がある!』

 やはり、か。

「……貴様、なめているのか!?」

 馬鹿馬鹿しい。応じたくもなかったが、つい、応えてしまった。

『違うな、わたしを超えてみせろと言っている!』

 何が、違う。

 なめているだろうが。

 戦いは、自己実現の場ではない。

 これは、生きるか死ぬかの——獣同士の、本能のぶつけ合いだ。

 矜持などない。

 大義などない。

『敵でもいい……わたしを……わたしの哀しみと、闘いを、"引き継げ"!!』

 黙れ、そんな、くだらないことで——貴様の自己陶酔に、サラを巻き込んだのか——?

 サラの命を、奪ったのか——!?

 俺の、すべてを——サラを!!

「冗談も大概にしろ!!!!」

 ガンダムを振り払うと、返す刀で、敵が担いでいたバズーカを斬り裂いた。互いにビームサーベルを抜いて斬り結ぶ。

 ガンダムを振り払うと、返す刀で、敵が担いでいたバズーカを斬り裂いた。互いにビームサーベルを抜いて斬り結ぶ。

 マイロは激しい機動で敵と渡り合ったが、敵はその老練さがよく分かる、粘り強い太刀筋を見せた。戦いが長引くほどに、こちらの隙を確実に突いてくる。マイロも、疲れを自覚しだした。 敵はサーベルを、別のものに持ち替えた。激しいプラズマ光を放つサーベルを斬り下げてくる。マイロは咄嗟に、ビームサーベルで受けたが、サーベルはそのまま断ち割られるようになり、受け損ねた。高出力のビームサーベルだ。 敵はそのままケンプファーの右脚を斬り飛ばし、次いで、右腕も斬り落とした。マイロはバランスを崩し、きりもみするように後ろに流れると、デブリに背中を打ち付けるようにしてようやく機体が止まった。

 マイロは激しい機動で敵と渡り合ったが、敵はその老練さがよく分かる、粘り強い太刀筋を見せた。戦いが長引くほどに、こちらの隙を確実に突いてくる。マイロも、疲れを自覚しだした。

 敵はサーベルを、別のものに持ち替えた。激しいプラズマ光を放つサーベルを斬り下げてくる。マイロは咄嗟に、ビームサーベルで受けたが、サーベルはそのまま断ち割られるようになり、受け損ねた。高出力のビームサーベルだ。

 敵はそのままケンプファーの右脚を斬り飛ばし、次いで、右腕も斬り落とした。マイロはバランスを崩し、きりもみするように後ろに流れると、デブリに背中を打ち付けるようにしてようやく機体が止まった。

(マイロは、なんでそんなに戦いたいの?) ……またか。凄まじい衝撃に、靄のようにぼんやりとした意識の中、いまはもう手の届かないものになってしまった声が聞こえた。「言っただろう、仕事なんだ……それしか、生きる術を、知らない。」朦朧とした意識の中、愛おしき幻に対して、喘ぐようにマイロは応えた。(違うわ、マイロ。)……違う?何が……?(違うわ、それしか、なんてことは、ないのよ……人間は。)そうだろうか。(そうよ。生きてさえいれば、人は……。)君がいない世界に、生きる意味なんて、ない。(それも、違う。マイロ。あなたは、あなたを生きて。)それこそ、違う。戦うことしか知らなかった俺の、生きる意味は君だけだった。君は、もう俺の一部だ。だから、君が死んだとき、俺も、死んだ。もうじき、俺は、あの”青鬼”が叩きつける怒りの雷に貫かれ、この世界から消えて無くなる。完膚なきまでに、その肉体は消え失せるだろう。(マイロ、わたしがあなたの一部だと言うのなら……。)だと、言うのなら……?(あなたが死ねば、わたしも、死ぬ。生きて、マイロ。わたしのぶんまで、わたしと一緒に。あなたが、生きている限り、わたしは、あなたと共に生きていける。)そんなの……サラ……!(人は、生きている限り、どうとでも変わっていける。だから、これしか、なんてことはないの。マイロ。生きて。約束を果たして。あなたは言ったわ。どんな境遇でも、何としても生き延びて、帰るって。お願い。マイロ。生きて——。)  ……幻聴だ。 ……幻だろう、これは……だとしたら、俺は……。 (俺は……生きたいと、思っているのか?) サラのいない、この世界でも?     (大丈夫、わたしは、あなたと、一緒にいるから——ずっと——。)     『小僧、生きているか?名前くらいは聞いてやる、返事をしろ。』 直接回線に飛び込んできた低い声に、ハッと我に返る。見下ろすような姿勢のガンダムが、モニターいっぱいに映っている。 何か応えようとしたが、身体が動かない。声も、出ない。どうやら、もう、限界らしい。 応えずにいると、ガンダムはビームサーベルを構え直した。『勇敢だったぞ、小僧。仲間の許へ逝くがいい。お前のことは、このわたしが、覚えておいてやる。』(……すまん、サラ……。) だが、それで、君の許へ行けるのなら……それはそれで、悪くはない。 マイロは、絞り出すように、彼女が口にしたあのメロディを歌った。 ”アメイジング・グレイス”。 愚かなる人々に降り注ぐ、大いなる神の恵み。 この、愚かで無益な争いの幕引きに——少なくとも、俺という、愚かな兵士の、個人的な幕引きに、これほどまでに相応しいメロディがあるだろうか。 何より、こうすることで、彼女と、一緒に、いられるような気がした。    ——……一緒に?                       炎に包まれた時、彼女は、孤独ではなかっただろうか——。                      ふと、そんなことが思い浮かんだ。(もしそのときは一緒じゃない。いっそ、その方がいいわ。) あの時、彼女はそう言った。はっきりと、そう言ったのだ。その通りに、すればよかったのだ。(意地を張って……俺は……。) 彼女を、ひとりで死なせた。 彼女がそう望んだと言うのに、最期の瞬間、傍にいてやれなかった。 だと言うのに、自分は、彼女と、一緒に、だと……?(サラ……。) 今更、涙が溢れてくる。 もう、この世にいもしない、彼女の面影を抱いてなど——(サラ……!)  そうだ。     君は、もう、この宇宙の、世界の——         ——どこにも、いない……——。

(マイロは、なんでそんなに戦いたいの?)

 ……またか。凄まじい衝撃に、靄のようにぼんやりとした意識の中、いまはもう手の届かないものになってしまった声が聞こえた。

「言っただろう、仕事なんだ……それしか、生きる術を、知らない。」

朦朧とした意識の中、愛おしき幻に対して、喘ぐようにマイロは応えた。

(違うわ、マイロ。)

……違う?何が……?

(違うわ、それしか、なんてことは、ないのよ……人間は。)

そうだろうか。

(そうよ。生きてさえいれば、人は……。)

君がいない世界に、生きる意味なんて、ない。

(それも、違う。マイロ。あなたは、あなたを生きて。)

それこそ、違う。戦うことしか知らなかった俺の、生きる意味は君だけだった。君は、もう俺の一部だ。だから、君が死んだとき、俺も、死んだ。もうじき、俺は、あの”青鬼”が叩きつける怒りの雷に貫かれ、この世界から消えて無くなる。完膚なきまでに、その肉体は消え失せるだろう。

(マイロ、わたしがあなたの一部だと言うのなら……。)

だと、言うのなら……?

(あなたが死ねば、わたしも、死ぬ。生きて、マイロ。わたしのぶんまで、わたしと一緒に。あなたが、生きている限り、わたしは、あなたと共に生きていける。)

そんなの……サラ……!

(人は、生きている限り、どうとでも変わっていける。だから、これしか、なんてことはないの。マイロ。生きて。約束を果たして。あなたは言ったわ。どんな境遇でも、何としても生き延びて、帰るって。お願い。マイロ。生きて——。)


 

 ……幻聴だ。

 ……幻だろう、これは……だとしたら、俺は……。


 

(俺は……生きたいと、思っているのか?)

 サラのいない、この世界でも?


 


 


 


 


 

(大丈夫、わたしは、あなたと、一緒にいるから——ずっと——。)


 


 


 


 


 

『小僧、生きているか?名前くらいは聞いてやる、返事をしろ。』

 直接回線に飛び込んできた低い声に、ハッと我に返る。見下ろすような姿勢のガンダムが、モニターいっぱいに映っている。

 何か応えようとしたが、身体が動かない。声も、出ない。どうやら、もう、限界らしい。

 応えずにいると、ガンダムはビームサーベルを構え直した。

『勇敢だったぞ、小僧。仲間の許へ逝くがいい。お前のことは、このわたしが、覚えておいてやる。』

(……すまん、サラ……。)

 だが、それで、君の許へ行けるのなら……それはそれで、悪くはない。

 マイロは、絞り出すように、彼女が口にしたあのメロディを歌った。 ”アメイジング・グレイス”。

 愚かなる人々に降り注ぐ、大いなる神の恵み。

 この、愚かで無益な争いの幕引きに——少なくとも、俺という、愚かな兵士の、個人的な幕引きに、これほどまでに相応しいメロディがあるだろうか。

 何より、こうすることで、彼女と、一緒に、いられるような気がした。


 


 


 

 ——……一緒に?


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 炎に包まれた時、彼女は、孤独ではなかっただろうか——。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 ふと、そんなことが思い浮かんだ。

(もしそのときは一緒じゃない。いっそ、その方がいいわ。)

 あの時、彼女はそう言った。はっきりと、そう言ったのだ。その通りに、すればよかったのだ。

(意地を張って……俺は……。)

 彼女を、ひとりで死なせた。

 彼女がそう望んだと言うのに、最期の瞬間、傍にいてやれなかった。

 だと言うのに、自分は、彼女と、一緒に、だと……?

(サラ……。)

 今更、涙が溢れてくる。

 もう、この世にいもしない、彼女の面影を抱いてなど——

(サラ……!)


 

 そうだ。


 


 


 


 

 君は、もう、この宇宙の、世界の——


 


 


 


 


 


 


 


 


 

——どこにも、いない……——。

(すまない、サラ……。)  嗚咽するように、マイロは、その喉の奥からメロディを絞り出した。                   『アメイジング……グレイス、だと……っ!?』

(すまない、サラ……。)

 

 嗚咽するように、マイロは、その喉の奥からメロディを絞り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アメイジング……グレイス、だと……っ!?』

 瞬間、動揺の声がスピーカーに入るのを、マイロは聞き逃さなかった。いや、聞き逃せなかった。獣が本能的に動くように、身体に刻まれた、戦士としての習性が、敵の一瞬の動揺を、完璧に捉えた。マイロという天才的なセンスを持ったパイロットには、相対する敵の息の根を確実に止められるであろう、その、決定的な”隙”を——”見逃せなかった”。 あれほど萎えていたはずの、身体が、動いた。 コンマ0秒、神速の反応。 マイロはスロットルペダルを思い切り踏み込み、再び機体を押し出すと、残った左腕で、腰にマウントされた”秘密兵器”を、ついに抜いた。(ぶっとくして、1回だけ、刺す——できるな!?)あのときの、メカニックの言葉を信じて、スピアを思い切り繰り出す。 敵も、電光石火の反応を見せた。機体を捻り、例の巨大なシールドをグルンと回してくるのが見えた。 そして、マイロの視界は、まばゆい光に包まれた——。 第4話・完  【ガンダム編・「雷鳴の伝灯」第4話はこちら】激闘の様子を、ガンダム(マイセン大尉)視点からもどうぞ!”シャドウファントム”シリーズをお読みくださっている皆さんにはもうおなじみ?の”彼女”も、ちらっと登場しています笑【予告ページを目次にしてあります】            あ、あと今晩、第3部のシークレットミッション投稿予定です。

 瞬間、動揺の声がスピーカーに入るのを、マイロは聞き逃さなかった。いや、聞き逃せなかった。獣が本能的に動くように、身体に刻まれた、戦士としての習性が、敵の一瞬の動揺を、完璧に捉えた。マイロという天才的なセンスを持ったパイロットには、相対する敵の息の根を確実に止められるであろう、その、決定的な”隙”を——”見逃せなかった”。

 あれほど萎えていたはずの、身体が、動いた。

 コンマ0秒、神速の反応。

 マイロはスロットルペダルを思い切り踏み込み、再び機体を押し出すと、残った左腕で、腰にマウントされた”秘密兵器”を、ついに抜いた。

(ぶっとくして、1回だけ、刺す——できるな!?)

あのときの、メカニックの言葉を信じて、スピアを思い切り繰り出す。

 敵も、電光石火の反応を見せた。機体を捻り、例の巨大なシールドをグルンと回してくるのが見えた。

 そして、マイロの視界は、まばゆい光に包まれた——。


 

第4話・完

 

 

【ガンダム編・「雷鳴の伝灯」第4話はこちら】

激闘の様子を、ガンダム(マイセン大尉)視点からもどうぞ!

”シャドウファントム”シリーズをお読みくださっている皆さんにはもうおなじみ?の”彼女”も、ちらっと登場しています笑

【予告ページを目次にしてあります】
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あと今晩、第3部のシークレットミッション投稿予定です。

コラボ・ジオン編第4話

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