機動戦士ガンダム ウォッチ・ドッグス 第四章「人たち」

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 先の戦闘で敗走したMAUヒルデマリーを擁するスサンドラは、補給のためハイ・レゾナンス・ジオンの重要拠点ロムーレIIIを訪れていた。元はアステロイド・ベルトから持ってきた資源衛星の一つであった。二等辺三角形のメインブロックに幾重もの連結シャフトで繋がれたギザギザとしたブロックがある。スサンドラは東側のドッキング・ベイに係留されていた。

本島側の格納庫からスサンドラのモビルスーツデッキへ補給物資を積んだコンテナがガイドビーコンを渡って真っ直ぐ運ばれて来る。それを受け取るのは武装を廃した作業用のMS-05ザクIである。ロムーレIIIが襲撃されるような事態になれば、このような機体も戦闘に参加するかも知れない。非正規軍隊とはそういうものなのだ。

本島側の格納庫からスサンドラのモビルスーツデッキへ補給物資を積んだコンテナがガイドビーコンを渡って真っ直ぐ運ばれて来る。それを受け取るのは武装を廃した作業用のMS-05ザクIである。ロムーレIIIが襲撃されるような事態になれば、このような機体も戦闘に参加するかも知れない。非正規軍隊とはそういうものなのだ。

「こいつはなかなかの掘り出しもんじゃないか!」 整備兵のエルヴィス・ホーソーン軍曹が歓喜した。ヒルデマリーとアルムがコンテナの前へやって来た。そのコンテナは食糧コンテナである。「あ、お二人、食料品もいい品が揃ってますよ!」「アルム大尉、頼みましたよ」「まあまあ待ってなって」 アルムの手料理は職人並だ。現にヒルデマリーが彼にそういう感情を抱いた要因の一つでもある。そんなアルムの料理は隊員にとっては週末のご褒美である。西洋から中華、和とあらゆる料理に長け、隊員達の舌はテロリスト軍人とは思えないほど肥えてしまっている。「おっ、これグランツじゃないですか! 生産されてたんですね」「グランツ?」 ヒルデマリーがアルムの方を見る。「ドイツ系源流のジオン産ビールだよ。戦後に生産してたサイド3のコロニーが連邦に差し押さえられたせいでずっと生産が止まってたんだ。最近工場が復旧したって噂を聞いたけど、まさかこんな所まで送ってくるなんてな」「サイド3のジオン・シンパ達さ。うち以外にも物資を送ってる」 整備班長のボールデン・ブレンが横入りする。「そんなことで連邦にバレないのですか?」 アルムが尋ねる。「フロントってのをやってんのさ」 二十年ほど前までは「ジオン共和国」であったサイド3は度重なるジオン公国軍残党によるテロ行為の責任を取る意味を込め、宇宙世紀0100年をもって自治権を放棄した。 しかし未だジオン・シンパなる者達は少なくはない。だがそれは節目の年だからとはいえ、仮初ながら二十年続いた自治権を途端に脱ぎ捨てるなど無理な話である。特に武装解除を拒否し、脱走し、二年前にサイド4のフロンティア1を襲撃した極右組織「共和国解放戦線」などは過激な勢力である。だがほとんどの組織は戦力を持たず、他の反連邦組織への物資提供のためのフロント企業を起こす場合が多数である。ハイ・レゾナンス・ジオンへの協力者もその内である。「機体の補給パーツの方は?」 ヒルデマリーである。「なかなかの品が届いた。少佐の能力を存分に出せるはずだ」 ボールデンが自慢げに言った。「私の能力?」「まあ、出来てからのお楽しみってやつだなぁ。数日はかかるが、勘弁してくれよ」 ヒルデマリーは不満げな顔を浮かべた。「アルム」 ヒルデマリーはアルムを一瞥し、格納庫外のリフト・グリップに手を伸ばした。アルムもそれに続いた。「ヒリー、折角良い素材が入ったし、今日は二人でディナーしないか?」「最高ね」「それじゃ支度をするよ」 アルムは壁面を蹴り、調理室に向かうリフト・グリップに掴み直した。「やっぱりあの二人、“ああ”なんだ」 フレグ・ヒル少尉が一種の侮蔑の目を与えた。「ヒル少尉、物事はそう単純じゃないんだぜ?」 ボールデン・ブレンが警告した。 ヒルデマリーはノーマルスーツから緑の士官服に着替え、艦内食堂のすぐ近くにある廊下のベンチに腰をかける。重力ブロックで数少ない“外”を見られる場所だ。そこにアルムもやってくる。彼も士官服を着て、片手に蓋付きのバスケットを持っている。「お待たせ、待った?」「随分長く感じた」「それは楽しみだから?」「かもね」 アルムがバスケットを開くと、中にはホットサンドが四つ並んでいる。レタスとハム、チーズを挟んだ、一般的なホットサンドだ。アルムは包み紙を持って一つをヒルデマリーに渡した。それはまだ温かさを保ち、手の心地が良かった。ヒルデマリーが一口。故郷に帰ったような優しい舌触り、これがシェフ・アルム・アルバートである。「美味しいよ、アルム」「良かったよ。久方ぶりで腕が落ちている気がしてさ」「昨日の戦闘が酷かったからって、自分の何もかも疑っちゃダメよ。自信持ちなさいな」「落ち込んでいるのはヒリーの方じゃないのか?」「…どうしてよ」 ヒルデマリーは核心をつかれていた。だがプライドは固いのだ。「楽になったって良いさ。気休めが必要だな」「それはあなただけでしょ」 アルムの心が自然と読めてしまった。親しさ故の洞察力か、ニュータイプ的な何かか。それを知り得ないのがヒルデマリーなのだ。食べ終えたアルムはナフキンをしまった。「もうやめたものな」「そうしたのはあなたでしょうに」 ヒルデマリーは思い出すのだ。彼と、アルムと愛し合った日々。少しの間は一つ屋根の下でも過ごした。クリスマスだって誕生日だって…。「じゃあ、部屋に戻るよ」「待って」 ヒルデマリーはアルムの裾をクイっと引っ張ってやった。「君はそうやって無鉄砲に押さえつけるような人じゃなかったはずだ」 ヒルデマリーは手を下ろし、アルムはそのまま去っていった。 標準時で日が昇る頃になった。ヒルデマリーとアルムは士官服を着直し、ブリッジへ向かった。「補充パイロットだって?」「ノンク中尉がやられたからね」 ヒルデマリー自身はノンク中尉に対しては悪い印象はないが、ただの部下である。アルムとは違うのだ。 ブリッジには薄い緑の三つ編みを靡かせ、目の部分に白のレンズを仕込まれ鼻先の尖った仮面をつけた人物、ザ・シスターが立っていた。その見た目の通り、身元を明らかにしないが、ヒルデマリーと同じ少佐の階級を頂いている身である。「おはようペーターゼン少佐、それにアルバート大尉」「新しいパイロットなのね?」「聞いてるね。優秀な人が来るよ」「クレル・ノンク中尉よりも?」「正直わからない。でも感じは良かったよ」「そう…」「早速会ってもらいましょう」 ブリッジに入って来たのは黒髪を後ろで束ねた褐色肌の女性。細身ではないが、どこか華奢な印象もある。「本日付けでMAUヒルデマリーに配属されました、リリー・ハレルセン中尉であります。よろしくお願いします」

「こいつはなかなかの掘り出しもんじゃないか!」

 整備兵のエルヴィス・ホーソーン軍曹が歓喜した。ヒルデマリーとアルムがコンテナの前へやって来た。そのコンテナは食糧コンテナである。

「あ、お二人、食料品もいい品が揃ってますよ!」

「アルム大尉、頼みましたよ」

「まあまあ待ってなって」

 アルムの手料理は職人並だ。現にヒルデマリーが彼にそういう感情を抱いた要因の一つでもある。そんなアルムの料理は隊員にとっては週末のご褒美である。西洋から中華、和とあらゆる料理に長け、隊員達の舌はテロリスト軍人とは思えないほど肥えてしまっている。

「おっ、これグランツじゃないですか! 生産されてたんですね」

「グランツ?」

 ヒルデマリーがアルムの方を見る。

「ドイツ系源流のジオン産ビールだよ。戦後に生産してたサイド3のコロニーが連邦に差し押さえられたせいでずっと生産が止まってたんだ。最近工場が復旧したって噂を聞いたけど、まさかこんな所まで送ってくるなんてな」

「サイド3のジオン・シンパ達さ。うち以外にも物資を送ってる」

 整備班長のボールデン・ブレンが横入りする。

「そんなことで連邦にバレないのですか?」

 アルムが尋ねる。

「フロントってのをやってんのさ」

 二十年ほど前までは「ジオン共和国」であったサイド3は度重なるジオン公国軍残党によるテロ行為の責任を取る意味を込め、宇宙世紀0100年をもって自治権を放棄した。

 しかし未だジオン・シンパなる者達は少なくはない。だがそれは節目の年だからとはいえ、仮初ながら二十年続いた自治権を途端に脱ぎ捨てるなど無理な話である。特に武装解除を拒否し、脱走し、二年前にサイド4のフロンティア1を襲撃した極右組織「共和国解放戦線」などは過激な勢力である。だがほとんどの組織は戦力を持たず、他の反連邦組織への物資提供のためのフロント企業を起こす場合が多数である。ハイ・レゾナンス・ジオンへの協力者もその内である。

「機体の補給パーツの方は?」

 ヒルデマリーである。

「なかなかの品が届いた。少佐の能力を存分に出せるはずだ」

 ボールデンが自慢げに言った。

「私の能力?」

「まあ、出来てからのお楽しみってやつだなぁ。数日はかかるが、勘弁してくれよ」

 ヒルデマリーは不満げな顔を浮かべた。

「アルム」

 ヒルデマリーはアルムを一瞥し、格納庫外のリフト・グリップに手を伸ばした。アルムもそれに続いた。

「ヒリー、折角良い素材が入ったし、今日は二人でディナーしないか?」

「最高ね」

「それじゃ支度をするよ」

 アルムは壁面を蹴り、調理室に向かうリフト・グリップに掴み直した。

「やっぱりあの二人、“ああ”なんだ」

 フレグ・ヒル少尉が一種の侮蔑の目を与えた。

「ヒル少尉、物事はそう単純じゃないんだぜ?」

 ボールデン・ブレンが警告した。

 ヒルデマリーはノーマルスーツから緑の士官服に着替え、艦内食堂のすぐ近くにある廊下のベンチに腰をかける。重力ブロックで数少ない“外”を見られる場所だ。そこにアルムもやってくる。彼も士官服を着て、片手に蓋付きのバスケットを持っている。

「お待たせ、待った?」

「随分長く感じた」

「それは楽しみだから?」

「かもね」

 アルムがバスケットを開くと、中にはホットサンドが四つ並んでいる。レタスとハム、チーズを挟んだ、一般的なホットサンドだ。アルムは包み紙を持って一つをヒルデマリーに渡した。それはまだ温かさを保ち、手の心地が良かった。ヒルデマリーが一口。故郷に帰ったような優しい舌触り、これがシェフ・アルム・アルバートである。

「美味しいよ、アルム」

「良かったよ。久方ぶりで腕が落ちている気がしてさ」

「昨日の戦闘が酷かったからって、自分の何もかも疑っちゃダメよ。自信持ちなさいな」

「落ち込んでいるのはヒリーの方じゃないのか?」

「…どうしてよ」

 ヒルデマリーは核心をつかれていた。だがプライドは固いのだ。

「楽になったって良いさ。気休めが必要だな」

「それはあなただけでしょ」

 アルムの心が自然と読めてしまった。親しさ故の洞察力か、ニュータイプ的な何かか。それを知り得ないのがヒルデマリーなのだ。食べ終えたアルムはナフキンをしまった。

「もうやめたものな」

「そうしたのはあなたでしょうに」

 ヒルデマリーは思い出すのだ。彼と、アルムと愛し合った日々。少しの間は一つ屋根の下でも過ごした。クリスマスだって誕生日だって…。

「じゃあ、部屋に戻るよ」

「待って」

 ヒルデマリーはアルムの裾をクイっと引っ張ってやった。

「君はそうやって無鉄砲に押さえつけるような人じゃなかったはずだ」

 ヒルデマリーは手を下ろし、アルムはそのまま去っていった。

 標準時で日が昇る頃になった。ヒルデマリーとアルムは士官服を着直し、ブリッジへ向かった。

「補充パイロットだって?」

「ノンク中尉がやられたからね」

 ヒルデマリー自身はノンク中尉に対しては悪い印象はないが、ただの部下である。アルムとは違うのだ。

 ブリッジには薄い緑の三つ編みを靡かせ、目の部分に白のレンズを仕込まれ鼻先の尖った仮面をつけた人物、ザ・シスターが立っていた。その見た目の通り、身元を明らかにしないが、ヒルデマリーと同じ少佐の階級を頂いている身である。

「おはようペーターゼン少佐、それにアルバート大尉」

「新しいパイロットなのね?」

「聞いてるね。優秀な人が来るよ」

「クレル・ノンク中尉よりも?」

「正直わからない。でも感じは良かったよ」

「そう…」

「早速会ってもらいましょう」

 ブリッジに入って来たのは黒髪を後ろで束ねた褐色肌の女性。細身ではないが、どこか華奢な印象もある。

「本日付けでMAUヒルデマリーに配属されました、リリー・ハレルセン中尉であります。よろしくお願いします」

「彼女は先日のニュー・マンハッタンでの暴動に参加し、物資提供も行ってくれた。お父様は旧ネオ・ジオンのグレミー親衛隊のアダム・ハレルセン元大尉だ。ペーターゼン少佐のお父様なら知っているね?」「何度か父から話は聞いた。勇猛果敢なアクシズの騎士であったと」「父は父ですよ。私は父には及びません。親と別の道を進めたあなたを尊敬しているのです、少佐」「ハレルセン中尉への一通りの説明は済ませてあります。隊の皆さんで格納庫へ向かって。リリー・ハレルセン中尉の機体の整備ができているはずです」 ヒルデマリーを先頭にし、隊員は格納庫へ向かう。「しっかりと接続しておけ!バランサーの調整も済んでないんだ!」 ボールデン・ブレンの怒鳴り声が格納庫に響いていた。ヒルデマリー達は壁を蹴って格納庫に入った。「お、おはようさん。新人さんも一緒だな?」「改めてよろしくお願いします、ボールデン・ブレン技術大尉」「畏まらんでいいさこんな親父に」「それでハレルセン中尉の機体はできたの?」「ああ!早速見てもらうとしよう。エルヴィス、シート剥がせ!」 ヒルデマリーの真正面にある大きな白いシートがバッと剥がれ、無重力を漂い巻き取られた。「これは…」

「彼女は先日のニュー・マンハッタンでの暴動に参加し、物資提供も行ってくれた。お父様は旧ネオ・ジオンのグレミー親衛隊のアダム・ハレルセン元大尉だ。ペーターゼン少佐のお父様なら知っているね?」

「何度か父から話は聞いた。勇猛果敢なアクシズの騎士であったと」

「父は父ですよ。私は父には及びません。親と別の道を進めたあなたを尊敬しているのです、少佐」

「ハレルセン中尉への一通りの説明は済ませてあります。隊の皆さんで格納庫へ向かって。リリー・ハレルセン中尉の機体の整備ができているはずです」

 ヒルデマリーを先頭にし、隊員は格納庫へ向かう。

「しっかりと接続しておけ!バランサーの調整も済んでないんだ!」

 ボールデン・ブレンの怒鳴り声が格納庫に響いていた。ヒルデマリー達は壁を蹴って格納庫に入った。

「お、おはようさん。新人さんも一緒だな?」

「改めてよろしくお願いします、ボールデン・ブレン技術大尉」

「畏まらんでいいさこんな親父に」

「それでハレルセン中尉の機体はできたの?」

「ああ!早速見てもらうとしよう。エルヴィス、シート剥がせ!」

 ヒルデマリーの真正面にある大きな白いシートがバッと剥がれ、無重力を漂い巻き取られた。

「これは…」

「R・ジャジャの改修機だな。確かアルス・ジャジャとか言ったか」「父の機体だった物です」「なるほど、だからグレーと金か。良い趣味をお持ちだ。頭部に大型アンテナ、右肩部ビーム・サーベル、左肩部レドームセンサー、腰部ミサイル・ポッド、かなり改修されているな」「中尉という立場で僭越です」「気にするな。言い方は悪いがタダでこれだけの装備とパイロットが入ったんだ。万々歳さ」 リリー・ハレルセンは愛想笑いを投げかけた。「隊長さんと副隊長さんの機体はまだ時間がかかる。それまではしばらく、フレグ・ヒル少尉とリリー・ハレルセン中尉が主な戦力になるかねぇ」「私だって出られるさ」 ザ・シスターが格納庫へ入って来た。「シスター、あなたやるつもりなの?」「この仮面をつける前はパイロットだったんだ」「それは知っていてよ」「ヒルデマリー・ペーターゼンに無理はさせないよ」「お前は働き過ぎなのさ。だからそんな仮面をつける羽目になったんでしょうに」 ザ・シスターがヒルデマリーの目を見つめた。「人の為に戦って失ったものなの。好きでやったことには対価が必要でしょう?」 ヒルデマリーは黙りこくった。「わかったわシスター。でも無理はいけない。ヒル少尉やリリー・ハレルセン中尉だっていてくれるんだから」「好きにやらせてもらう!」 ヒルデマリーは溜息をついた。「変わった方ですのね」 リリー・ハレルセンである。「仕事が好きすぎるのよ。そのせいで傷も沢山あって、それがあの仮面を着けさせてしまった。どうかあいつを守ってちょうだい、ハレルセン中尉」「まだ何も言えませんけど、力量というのが私にあれば、やってはみせます」「お願いね」 リリー・ハレルセンはコクリと頷いた。

「R・ジャジャの改修機だな。確かアルス・ジャジャとか言ったか」

「父の機体だった物です」

「なるほど、だからグレーと金か。良い趣味をお持ちだ。頭部に大型アンテナ、右肩部ビーム・サーベル、左肩部レドームセンサー、腰部ミサイル・ポッド、かなり改修されているな」

「中尉という立場で僭越です」

「気にするな。言い方は悪いがタダでこれだけの装備とパイロットが入ったんだ。万々歳さ」

 リリー・ハレルセンは愛想笑いを投げかけた。

「隊長さんと副隊長さんの機体はまだ時間がかかる。それまではしばらく、フレグ・ヒル少尉とリリー・ハレルセン中尉が主な戦力になるかねぇ」

「私だって出られるさ」

 ザ・シスターが格納庫へ入って来た。

「シスター、あなたやるつもりなの?」

「この仮面をつける前はパイロットだったんだ」

「それは知っていてよ」

「ヒルデマリー・ペーターゼンに無理はさせないよ」
「お前は働き過ぎなのさ。だからそんな仮面をつける羽目になったんでしょうに」

 ザ・シスターがヒルデマリーの目を見つめた。

「人の為に戦って失ったものなの。好きでやったことには対価が必要でしょう?」

 ヒルデマリーは黙りこくった。

「わかったわシスター。でも無理はいけない。ヒル少尉やリリー・ハレルセン中尉だっていてくれるんだから」

「好きにやらせてもらう!」

 ヒルデマリーは溜息をついた。

「変わった方ですのね」

 リリー・ハレルセンである。

「仕事が好きすぎるのよ。そのせいで傷も沢山あって、それがあの仮面を着けさせてしまった。どうかあいつを守ってちょうだい、ハレルセン中尉」

「まだ何も言えませんけど、力量というのが私にあれば、やってはみせます」

「お願いね」

 リリー・ハレルセンはコクリと頷いた。

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