機動戦士ガンダム ウォッチ・ドッグス 第十一章「アンノウン・サテライト」

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 グレッドはタントラのブリッジから外を見つめていた。星々が煌めく宇宙に、何があると言うのか。彼にもそれはわからなかった。

 突然、パスン! と扉が開く。そこからドリスとルクレ少尉がやってきた。

「大尉! おかしいですよ! 様子が!」

 ドリスが怒鳴った。

「放っておいてくれよ」

 グレッドは突き放した。その間、彼らの方はチラリとも見なかった。

「あなたがそんな調子じゃ、自分たちは動くに動けません。話してください。あなたの過去について」

 ルクレ少尉が問いただす。

「……」

「それが原因なんでしょう! 苦しい過去ってやつ!」

 ドリスが叫ぶと、グレッドはついに振り向いた。

「あぁ、そうさ。悪いか?」

「悪くないから! こうして聞こうとしてるんです! 少しは楽になるって!」

「……わかった…」

「それでいいんです」

 ドリスは表情を和らげた。

「俺が士官学校を出てすぐの頃だ。俺はニュータイプ適性があるっていろいろな実験に参加させられた。人体実験のようなものじゃなく、あくまでサイコミュ関連機器のテストってだけだ」

「そこには士官学校時代の友人だった女性がいた。優しい人だった。名前は……ラート・ハーライン」

 ドリスたちはグレッドの欲求を初めて知った。彼はそれほどに自分を封印していた。

「俺はある実験中にミスを犯した。俺とラートの共同作業だった。俺がサイコミュの操作でアームを動かして、彼女はそのアームの調整役だった。だがサイコミュが敏感で、俺の下心を読み取ってしまった。俺は彼女の後ろ姿を見て、思わずそれを掴もうと思考した。それがアームに反映された。彼女虚空に突き飛ばされた」 グレッドは再び宇宙を見つめる。「彼女は見つからなかった。捜索が打ち切られたとき、俺は一度拳銃を自分に突きつけたよ。俺の欲のせいで死んだ。俺がニュータイプだったせいだ」「だから、大尉はニュータイプを否定するんですか?」「俺が否定したのはニュータイプである自分だ。本質的なニュータイプは信じているさ。みんなが分かり合えるようになるっていうな。だが、俺はそれじゃないってことだ。分かり合うことなんて俺にはできない」「大尉……」 ドリスはレーゼンビーとアヴァロンの方を見る。「二人は知っていたんですか? 今のこと」 レーゼンビーとアヴァロンは目配せをする。「知っていた」「すぐ後にな」 二人は息を合わせていた。「もういいだろう。大尉の秘密は知った。それでいいんだろう?」 レーゼンビーが押さえつけるように言った。「わかりましたよ。これ以上は控えます。行こう、ルクレ少尉」「はい」 二人はブリッジを去った。「しかし、アディス中尉があの状態ではなぁ…任務も碌にできんだろう」「艦長、この付近に未確認の資源衛星があります。もしかすると、潜伏できるかも」「……行ってみるか。よし、その資源衛星に進路を取れ」 タントラは速度を上げた。 資源衛星へは数十分で辿り着いた。「あれか…」

「俺はある実験中にミスを犯した。俺とラートの共同作業だった。俺がサイコミュの操作でアームを動かして、彼女はそのアームの調整役だった。だがサイコミュが敏感で、俺の下心を読み取ってしまった。俺は彼女の後ろ姿を見て、思わずそれを掴もうと思考した。それがアームに反映された。彼女虚空に突き飛ばされた」

 グレッドは再び宇宙を見つめる。

「彼女は見つからなかった。捜索が打ち切られたとき、俺は一度拳銃を自分に突きつけたよ。俺の欲のせいで死んだ。俺がニュータイプだったせいだ」

「だから、大尉はニュータイプを否定するんですか?」

「俺が否定したのはニュータイプである自分だ。本質的なニュータイプは信じているさ。みんなが分かり合えるようになるっていうな。だが、俺はそれじゃないってことだ。分かり合うことなんて俺にはできない」

「大尉……」

 ドリスはレーゼンビーとアヴァロンの方を見る。

「二人は知っていたんですか? 今のこと」

 レーゼンビーとアヴァロンは目配せをする。

「知っていた」

「すぐ後にな」

 二人は息を合わせていた。

「もういいだろう。大尉の秘密は知った。それでいいんだろう?」

 レーゼンビーが押さえつけるように言った。

「わかりましたよ。これ以上は控えます。行こう、ルクレ少尉」

「はい」

 二人はブリッジを去った。

「しかし、アディス中尉があの状態ではなぁ…任務も碌にできんだろう」

「艦長、この付近に未確認の資源衛星があります。もしかすると、潜伏できるかも」

「……行ってみるか。よし、その資源衛星に進路を取れ」

 タントラは速度を上げた。

 資源衛星へは数十分で辿り着いた。

「あれか…」

 その姿は拳のような形で握り込まれるようにドラム型のエンジン重力ブロックが埋め込まれている。しかもそのブロックは依然として稼働していた。「人がいるというのか? こんな辺境の惑星圏に?」 レーゼンビーはその衛星に疑いの目を向けた。「罠…ですかね?」「そうとは限らん。入ってみないことには何も始まらん」「進入しますか?」「そう言った」 タントラはゆっくりと進んでいく。「……! 艦長、レーザー通信です!」「衛星からか?」「はい」「代わってくれ」 レーゼンビーは通信機を耳に当てる。「こちら地球連邦軍第百二十七独立戦隊所属タントラ。入港を求む」「こちらメルト管制室。入港を許可する」「感謝する」 妙にあっさりとした対応に、疑いが加速した。「死んだらその時か…」 レーゼンビーは腹を括った。 港のハッチが開くと、タントラはそこにすっぽりと収まった。港自体はスペースコロニーのそれと比べれば小さいが、標準サイズの軍艦なら余裕のあるサイズだ。 この衛星がしっかりと機能していた際には、もう少し小さな輸送船などが多数入港できるようになっていたのだろう。 レーゼンビーとアヴァロンは船外に降りた。 するとそこにはノーマルスーツを着込んだ細身の男が立っている。「ようこそお越しくださいました。司令部へご案内しましょう」「あ、あぁ……」 二人は疑心暗鬼のまま男についていった。 道中会話もなく、淡々とエレベーターで階を上がっていった。「こちらです」 扉が開くと、そこは執務室のようで、広々とした部屋の突き当たりには大きな机と椅子、そしてそこに体格のいい男が座っている。「よく来たな、旅人よ」 男はそういうとこちらに振り向いた。髪は逆立ち、顔にはいくつかの傷があった。口には葉巻を咥え、吐き出した煙が一瞬顔を覆ってすぐに消えた。「私はこの資源衛星メルトの領主、ロコ・プロコだ。軍人だそうだな? よろしく頼むよ」「私は地球連邦軍のウディ・レーゼンビー大佐、こっちがアロン・アヴァロン中佐だ。受け入れに感謝する、ロコ・プロコ殿」「ここは来るものを拒まん。かつてはアステロイド・ベルトにあった資源衛星、今ではこの金星圏で寂しく放浪しているのだよ」「ここには何がある?」「工場と採掘場、そして労働者の街。私はその全てを治める」 レーゼンビーは用件を思い出す。「実は、うちの部下が負傷したんだ。ここで治療を受けられるか?」「街に医者の家がある。ストンゴッズ通りのネールシュタインという家だ。部下が案内してくれるさ」「ありがとう」 レーゼンビーとアヴァロンはそのまま扉を出た。外には先ほどの男が立っている。レーゼンビーは通信機を開く。「グレッド、アディスを診てくれるそうだ。運べそうか?」 グレッドはもちろんと返し、数分後に担架に乗ったアディスが運ばれてきた。「こちらへどうぞ」 ノーマルスーツの男がアディスを大型のエレカに積み込んだ。 そこにはグレッドが同乗し、レーゼンビーたちはタントラに戻る。「あとは頼むぞ」「任せてください」 エレカはそのまま走り出した。

 その姿は拳のような形で握り込まれるようにドラム型のエンジン重力ブロックが埋め込まれている。しかもそのブロックは依然として稼働していた。

「人がいるというのか? こんな辺境の惑星圏に?」

 レーゼンビーはその衛星に疑いの目を向けた。

「罠…ですかね?」

「そうとは限らん。入ってみないことには何も始まらん」

「進入しますか?」

「そう言った」

 タントラはゆっくりと進んでいく。

「……! 艦長、レーザー通信です!」

「衛星からか?」

「はい」

「代わってくれ」

 レーゼンビーは通信機を耳に当てる。

「こちら地球連邦軍第百二十七独立戦隊所属タントラ。入港を求む」

「こちらメルト管制室。入港を許可する」

「感謝する」

 妙にあっさりとした対応に、疑いが加速した。

「死んだらその時か…」

 レーゼンビーは腹を括った。

 港のハッチが開くと、タントラはそこにすっぽりと収まった。港自体はスペースコロニーのそれと比べれば小さいが、標準サイズの軍艦なら余裕のあるサイズだ。

 この衛星がしっかりと機能していた際には、もう少し小さな輸送船などが多数入港できるようになっていたのだろう。

 レーゼンビーとアヴァロンは船外に降りた。

 するとそこにはノーマルスーツを着込んだ細身の男が立っている。

「ようこそお越しくださいました。司令部へご案内しましょう」

「あ、あぁ……」

 二人は疑心暗鬼のまま男についていった。

 道中会話もなく、淡々とエレベーターで階を上がっていった。

「こちらです」

 扉が開くと、そこは執務室のようで、広々とした部屋の突き当たりには大きな机と椅子、そしてそこに体格のいい男が座っている。

「よく来たな、旅人よ」

 男はそういうとこちらに振り向いた。髪は逆立ち、顔にはいくつかの傷があった。口には葉巻を咥え、吐き出した煙が一瞬顔を覆ってすぐに消えた。

「私はこの資源衛星メルトの領主、ロコ・プロコだ。軍人だそうだな? よろしく頼むよ」

「私は地球連邦軍のウディ・レーゼンビー大佐、こっちがアロン・アヴァロン中佐だ。受け入れに感謝する、ロコ・プロコ殿」

「ここは来るものを拒まん。かつてはアステロイド・ベルトにあった資源衛星、今ではこの金星圏で寂しく放浪しているのだよ」

「ここには何がある?」

「工場と採掘場、そして労働者の街。私はその全てを治める」

 レーゼンビーは用件を思い出す。

「実は、うちの部下が負傷したんだ。ここで治療を受けられるか?」

「街に医者の家がある。ストンゴッズ通りのネールシュタインという家だ。部下が案内してくれるさ」

「ありがとう」

 レーゼンビーとアヴァロンはそのまま扉を出た。外には先ほどの男が立っている。レーゼンビーは通信機を開く。

「グレッド、アディスを診てくれるそうだ。運べそうか?」

 グレッドはもちろんと返し、数分後に担架に乗ったアディスが運ばれてきた。

「こちらへどうぞ」

 ノーマルスーツの男がアディスを大型のエレカに積み込んだ。

 そこにはグレッドが同乗し、レーゼンビーたちはタントラに戻る。

「あとは頼むぞ」

「任せてください」

 エレカはそのまま走り出した。

 車窓から見えるのは、360度を覆った居住ブロック。ストンゴッズ通りは22度左に存在する。街の様子は殺風景で、作業用のミドル・モビルスーツが物資を運んでいるのが見えるくらいだ。環境がいいわけではないのだろう。「着きましたよ」 男はエレカを降り、担架を運び出した。

 車窓から見えるのは、360度を覆った居住ブロック。ストンゴッズ通りは22度左に存在する。街の様子は殺風景で、作業用のミドル・モビルスーツが物資を運んでいるのが見えるくらいだ。環境がいいわけではないのだろう。

「着きましたよ」

 男はエレカを降り、担架を運び出した。

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