機動戦士ガンダム ウォッチ・ドッグス 第十二章「センチメンタル・ビート」

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 アディス・フレクソンが最後に見たのは、強烈な熱と光が降りかかる光景である。そこで気を失ったのだろう。

 目が覚めると、医療用ベッドの上にいた。周りはカーテンで囲まれ、腕には点滴が刺さっていた。体を起こし、五感が機能していることを確認すると、少し声をあげてみる。

「おーい」

 すると奥から物音が聞こえ、カーテンが開いた。そこから出てきたのは綺麗な銀髪を靡かせた女性だった。歳はアディスと同じ二十代半ば頃に見える。

「起きましたか、アディス・フレクソンさん」

「あぁ、えっと、ここは?」

「ここは資源衛星メルトの診療所です」

「メル…ト?」

「あなたがお怪我をなさったから、タントラって軍艦の皆さんがここに来られたんです」

「他のみんなは?」

「船にいらっしゃるそうですよ。アディスさんはどうされます? 安定はしていますけど」

 酷く迷惑をかけたとアディスは後悔した。

「少し外に出たい」

「私が同行の上なら構いませんよ」

「ここはいいのか?」

「本当は休みですから」

「あんた、名前は?」

「ホープ、ホープ・スタインフェルドです」

「ホープ…さん…」

 アディスは自分の身体を見つめる。

「俺の体、どうなったんだ?」

「軽い裂傷と火傷です。衝撃が強かったせいか、意識をなくしていたみたいですけど」

 彼は自分の機体の装甲に感謝した。

「それじゃあ、少し外に出る」

「わかりました。どこへ行かれます?」

「案内してほしい」

「それじゃあ、このストンゴッズ通りを廻りましょうか」

 アディスは立ち上がり、カーテンの外に出た。

 街は寂しいもので、人の活気などないに等しい。あるのは工業機械とコンテナ。

「私たち、見ての通り貧しいんですよ。特にこの辺は殆どが工場で、住んでるのも貧しい労働者ばっかり。私だってそうよ。それにパパだって……」

 彼女はすっと立ち止まる。

「親父さん、どうかしたのか?」

「本当はあの診療所もパパのなんです。でも、最近はレジスタンスに夢中で……」

「レジスタンス?」

「ブラザーフッド・オブ・アンダーグラウンド。この衛星の首領のロコ・プロコに反抗する組織よ。私も入ってる」

「ロコ・プロコってやつはどんなやつなんだ?」

「第二次ネオ・ジオン抗争頃には反連邦組織エグムに所属して、そこから金星圏に渡って、放棄されていたこの衛星メルトにやってきた。それからは私たちランデッガーの人間が連れて来られて、圧政が続いてる」

「ランデッガーって、あのミドル・モビルスーツ大手の?」

「そう。社長のオイエル・ランデッガーが消えて、不安定な時期だったし」

「あんたと親父さんもそうなのか?」

「父がランデッガーのテストパイロットだった。だけど事故で片足をなくしてからは診療所をやってた。まさか連れ去られるなんて思わなかった」

 顔も知らぬ王にアディスは怒りを露わにした。

「レジスタンスの拠点は?」

「行くの?」

「念の為にな」

 ホープは少し反芻し、

「……向こうのバーよ」

 アディスは歩き出し、ホープもそこに続いた。

「君は嫌なんじゃないのか?」

「一人にしておけない」

 彼女は人を大切にしている。自らの趣向は二の次である。

 そのバーは煉瓦壁のクラシカルな内装で、どこからかジャズ・ミュージックが響いていた。「いらっしゃいませ」 ベストを着たマスターが二人に挨拶する。「ウォッカを半分水割りで」「かしこまりました。ではこちらへ」 マスターはカウンターの裏へ二人を導く。中には下へつながる螺旋階段がある。降っていくと、そこは打って変わって殺気に溢れた空間だ。「パパ!」 ホープが叫ぶと、その場は静まる。「ホープか!」 口髭を生やした銀髪の男が左足を引き摺り、二人に近づいてくる。「ホープ! 来てくれたか!」 その男の目は光が限りなく少なかった。「この人が見てみたいって」 ホープはアディスの肩を叩く。「君は……見ない顔だが、まさか噂の連邦軍の?」「はい、アディス・フレクソンと言います」「私はブレナン・スタインフェルド。レジスタンスのリーダーだ。連邦軍が味方となるのは心強い! よろしく頼むよ」 二人は固く握手をしたが、アディスは戸惑いが勝っていた。「早速だが、二人に見てほしいものがある。こっちへ」 二人は格納庫のような場所に案内された。そこには長髪の男と目の隠れた女がいる。「彼はレオーナ・ライト、私の副官だ。こっちがソル・バブラー、うちのメカニックだ」 二人は少し手を振る。「それじゃあお見せしよう。うちの最終兵器だ」

 そのバーは煉瓦壁のクラシカルな内装で、どこからかジャズ・ミュージックが響いていた。

「いらっしゃいませ」

 ベストを着たマスターが二人に挨拶する。

「ウォッカを半分水割りで」

「かしこまりました。ではこちらへ」

 マスターはカウンターの裏へ二人を導く。中には下へつながる螺旋階段がある。降っていくと、そこは打って変わって殺気に溢れた空間だ。

「パパ!」

 ホープが叫ぶと、その場は静まる。

「ホープか!」

 口髭を生やした銀髪の男が左足を引き摺り、二人に近づいてくる。

「ホープ! 来てくれたか!」

 その男の目は光が限りなく少なかった。

「この人が見てみたいって」

 ホープはアディスの肩を叩く。

「君は……見ない顔だが、まさか噂の連邦軍の?」

「はい、アディス・フレクソンと言います」

「私はブレナン・スタインフェルド。レジスタンスのリーダーだ。連邦軍が味方となるのは心強い! よろしく頼むよ」

 二人は固く握手をしたが、アディスは戸惑いが勝っていた。

「早速だが、二人に見てほしいものがある。こっちへ」

 二人は格納庫のような場所に案内された。そこには長髪の男と目の隠れた女がいる。

「彼はレオーナ・ライト、私の副官だ。こっちがソル・バブラー、うちのメカニックだ」

 二人は少し手を振る。

「それじゃあお見せしよう。うちの最終兵器だ」

 そこにあったのは四両の軽戦車だ。飛び出た前輪には威圧感があった。「テンペスタ型軽戦車だ。これだけあればロコの近衛くらいは余裕さ。それにミドル・モビルスーツのギガシィだってある。決起は明日の朝! ようやくやってきたんだ!」 ホープは誇らしげに語る父に限界を感じた。「いい加減にしてよ! そんな兵器で何しようって言うの? 私がそれに乗って戦うの?」「お前だってレジスタンスな一員だ」「そんなの……」「プレナンさん!」 アディスが割って入る。「娘さんはこの活動に乗り気じゃないってわからないんですか? わからないにしたって、娘に死んでこいなんて言う父親がどこにいると言うんです!」「……」 ブレナンは俯くしかなかった。「もういいです。行きましょう、ホープさん」 二人はその場を後にする。ブレナンはただ立ち尽くしていた。新兵器は彼なりの優しさであったのだ。「ごめんなさい。巻き込んで」「いいんだ。それに行こうって言ったのは俺だ。俺こそ連れて行って悪かった」「でもありがとう、守ってくれて。嬉しかった」 ホープは少し顔を赤らめて言う。アディスはそんな彼女の姿をかわいらしく感じた。「せっかくだから、楽しい話しましょう?」「あ、あぁ」 アディスは少し動揺していたのだ。「アディスって、ご両親はいるの?」「お袋がいる。親父は数年前に病死した」「ごめん、無神経だったね。でも家と逆ね家、ママが死んじゃったから」「そっか…」「でももう乗り越えてる。それにアディスさんだっているんだし」「俺が?」 それが意味することは今のアディスにはわからなかった。「なんでもないよ」 そうして二人は会話を続けていた。

 そこにあったのは四両の軽戦車だ。飛び出た前輪には威圧感があった。

「テンペスタ型軽戦車だ。これだけあればロコの近衛くらいは余裕さ。それにミドル・モビルスーツのギガシィだってある。決起は明日の朝! ようやくやってきたんだ!」

 ホープは誇らしげに語る父に限界を感じた。

「いい加減にしてよ! そんな兵器で何しようって言うの? 私がそれに乗って戦うの?」

「お前だってレジスタンスな一員だ」

「そんなの……」

「プレナンさん!」

 アディスが割って入る。

「娘さんはこの活動に乗り気じゃないってわからないんですか? わからないにしたって、娘に死んでこいなんて言う父親がどこにいると言うんです!」

「……」

 ブレナンは俯くしかなかった。

「もういいです。行きましょう、ホープさん」

 二人はその場を後にする。ブレナンはただ立ち尽くしていた。新兵器は彼なりの優しさであったのだ。

「ごめんなさい。巻き込んで」

「いいんだ。それに行こうって言ったのは俺だ。俺こそ連れて行って悪かった」

「でもありがとう、守ってくれて。嬉しかった」

 ホープは少し顔を赤らめて言う。アディスはそんな彼女の姿をかわいらしく感じた。

「せっかくだから、楽しい話しましょう?」

「あ、あぁ」

 アディスは少し動揺していたのだ。

「アディスって、ご両親はいるの?」

「お袋がいる。親父は数年前に病死した」

「ごめん、無神経だったね。でも家と逆ね家、ママが死んじゃったから」

「そっか…」

「でももう乗り越えてる。それにアディスさんだっているんだし」

「俺が?」

 それが意味することは今のアディスにはわからなかった。

「なんでもないよ」

 そうして二人は会話を続けていた。

 メルトの司令部ではロコ・プロコとその目の前には黒に金のインナーカラーの入った髪の若い男が話している。傍では秘書のヴァレンタインが真面目に前を向いていた。「久しぶりですな、ミハエル・トラウトマン大尉」「お久しぶりです、ロコ・プロコ殿」 トラウトマンはワインを一口飲む。「それで、ここに例の連邦の船がいると言うのですね?」「あなた方が誘導してくださったおかげですよ」「よく言う」 二人はグラスで乾杯した。「それで、タイミングは?」「レジスタンスが明日の朝行動を起こすと聞いた。そこであなた方の出番です」「ロコ・プロコ殿はどうなさるおつもりで?」「ガブール・ベルグソンがあります」「旧式では?」「ランデッガーの技術で改修はしてありますよ」「流石は領主だ」 「アディス、大丈夫なのか」 ドリス・マードックがつぶやいた。「心配か?」「大尉こそ」 二人は素直になれないところがある。「まあ、酷い怪我じゃないって言うし、すぐ帰ってくるさ」「だと良いですけどね」

 メルトの司令部ではロコ・プロコとその目の前には黒に金のインナーカラーの入った髪の若い男が話している。傍では秘書のヴァレンタインが真面目に前を向いていた。

「久しぶりですな、ミハエル・トラウトマン大尉」

「お久しぶりです、ロコ・プロコ殿」

 トラウトマンはワインを一口飲む。

「それで、ここに例の連邦の船がいると言うのですね?」

「あなた方が誘導してくださったおかげですよ」

「よく言う」

 二人はグラスで乾杯した。

「それで、タイミングは?」

「レジスタンスが明日の朝行動を起こすと聞いた。そこであなた方の出番です」

「ロコ・プロコ殿はどうなさるおつもりで?」

「ガブール・ベルグソンがあります」

「旧式では?」

「ランデッガーの技術で改修はしてありますよ」

「流石は領主だ」

 

「アディス、大丈夫なのか」

 ドリス・マードックがつぶやいた。

「心配か?」

「大尉こそ」

 二人は素直になれないところがある。

「まあ、酷い怪我じゃないって言うし、すぐ帰ってくるさ」

「だと良いですけどね」

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