MS-06 ZAKUⅡ (ZAKU SANTA) War is over,if you want it. -Merry X’mass UC0080 in SIDE 3-

『親愛なるマイ博士

久しいが元気にしているか？恐らく技術屋は戦後復興にあちらこちら引っ張りだこだろうな。こちらもなかなか顔も見せれずに居たが、クリスマスには何とかそちらにも戻れそうだ。もし良ければ弟とも一緒に食事でもしてやってくれないか？

12月24日午後3時　ズムシティ　国営第六墓地にて待つ』

差出人の無い手紙であったが、オリヴァー・マイには心当たりがあった。

彼女と会うのは、サイド3に帰港したヨーツンヘイムを降りて以来だった。

当日現れた彼女は、見慣れぬ私服と髪型とメイクで、一見は別人のようだったが、眼鏡の奥の眼差しはモニクに間違いなかった。

'エルヴィン・キャディラック　UC0079.12.30.

祖国の盾となりし若人　ここに眠る'

碑文の刻まれた墓跡に白薔薇を供え、しばらくの黙祷の後、2人は墓地をあとにして、街の小さなレストランへと向かう。

「皆は元気にしているのか？連絡を取り合っている者は？」久々に友人と会うのを許されたかのようにモニクは目を輝かせる。

「マルティン艦長は、あの後引退されて今は奥様と愛犬と暮らしてらっしゃいます。ヨーツンヘイムは武装解除されたあともまだ現役でしたので、副長が船長を引き継がれて、クルー達と共にサイド3への定期航路に。ワシヤ中尉は復員した貴重な元公国軍パイロットということで、アナハイムのグラナダ支社に出向しています。この間、婚約したって写真も送って来ましたよ。ジオン工科大から徴用されていた学生たちも復学して、時々、僕の研究室の手伝いに来てくれますしね。」

マイも知っている限りの、元戦友たちの近況を語る。

「軍事法廷での有罪判決は免れたが、その後の監視もなかなか厳しくてな。今は偽名であちこちを転々としている。」

ワインが注がれたところで彼女はようやく近況について語ってくれた。

「大尉には本当に申し訳無く思っています。オッゴのような急造兵器の試験をおこなわなければ、エルヴィン達少年を戦場に駆り立てる事も無かった。若者たちばかりが先に逝って、私たち咎を背負うべき大人は生き残り、、、」

マイの謝罪に、ワイングラスにしばし目線を落としてモニクが答える。

「それを言い出してしまえば、そもそも国民を戦争へと先導した私も重罪だ。戦争が終わり、私も何度となくあの時を悔やんだが、彼らが戦ったからこそ、本土決戦は避けられた。数千万の一般人を戦火から守ってくれたんだ。」

我々職業軍人は、スペースノイド自治独立の為、真に価値ある技術を開発する為、と大義名分を掲げて、結局は多くの「生きられたかも知れない命」を地獄の炎に晒した。神はこんな私達にも贖罪の機会を与えて下さるのだろうか。。

「マイ、今日はエルヴィンとの約束を果たしてくれてありがとう、礼を言う。私もずっと心残りだったんだ。弟の最期の願いだったからな。」

「いえ、こちらこそありがとうございました、、、大広場まで少し歩きませんか？」

「ん？、あぁ、そうするかな」

駅前の大広場には久々に巨大なクリスマスツリーが飾られていた。その横には赤いモビルスーツ。連邦政府の制裁によりエネルギー供給にも不備をきたしていた戦後ジオンには、イルミネーションに回せるほどの余剰電力がまだ無かった。しかしこの冬こそは何としても暗く沈みきった人々の心に明かりを灯したい。そう直に訴えて来た学生たちの相談に、マイはあるアイデアで応えることにした。

終戦後武装解除された後放置されていたザクⅡ。そのイヨネスコ型核融合炉を電源として利用したのだ。ジオン美術大学の学生らによってサンタクロースに扮した姿に塗り替えられ、思い想いのデコレーションが巨体を飾る。

かつて戦争の象徴でもあったMSが、クリスマスの光景に寄り添い、人々が憩うツリーに明かりを灯す。一種、異様な光景にも映るがそれが宇宙世紀0080年、一年戦争後のクリスマスだったのだ。

その足元には、鎮魂の祈りを込めた無数のキャンドルが灯されていた。

シールドを取られ、武器も取られ、気付けば丸腰になっていたザクⅡさん笑。

ともすればネタ回とも取られかねませんが、ガンスタアドベントカレンダーも始まり、皆さまの熱いコラムに触発され「自分も何かクリスマスに寄せてしたい❗️」との思いから熱量のままに作りました🎅

材料は全て100均で揃えたものになりますが、この素材を見て誰が今からガンプラを作ると思うでしょう🎄

公然わいせつ罪のサンタなど、頭部を切断してやりましょう❗️と息巻いたはいいですが、プラスチックかと思いきや、ポリレジンというめちゃくちゃに硬い素材でヒィヒィ言いましたw

袋は自作しようとも思いましたが、ちょうど自宅にあったアクセサリー用の小さな袋がピッタリでしたんで使いました。完全に武装解除されたザクという設定なのでバックパックも外して背中に開けた3ミリ穴に入れこみました。これが今回唯一といえる工作です。バックパックを取ると裏からは何故か本体唯一のメカメカしいモールドが出てきました。

白、赤、黒の3色で塗り分けた躯体にデコレーションを施していきます。白のふわふわはコットン、クリスマスシールと、ネイル用のビジューで飾り付けます。モノアイも点灯しないほうが戦争が終わった感があります。

イグルー本編では悲しいながらも死亡フラグとなってしまった、エルヴィンとの終戦後の食事の約束。ずっと気掛かりだったので、ショートストーリーとして描かせていただきました。

2023年を振り返ると、ウクライナ、パレスチナをはじめ依然として世界中で戦争・紛争の終結も見えない一年であったと思います。ガンプラはMSという兵器をモチーフにした模型であり、戦争がテーマの物語です。しかし、私たちが普通に模型作りという趣味を自由に楽しめるというこの日常は平和な社会無しでは有り得ません。私はMSをロボットとしてカッコ良いと思ったり、メカとしてのリアリティに単純に惹かれたりもしますが、それらはあくまでガンプラの中だけで充分と考えています。どうか、これらの兵器がいつまでもプラモデルの中だけの話であります様、ガンプラという趣味が平和な日常の象徴としてあり続けますよう。祈りを込めてこの作品を投稿させて頂きます。