音も光も届かない水深2000フィート、マヴと二人取り残された。残圧30、使える酸素は片道1人分。お前ならどうする?
宇宙世紀0080年、ジオン公国は独立戦争に辛くも勝利する。しかし、それは“小が大を治める”長い戦後の始まりでもあった───
地球連邦政府からの独立を果たすと共に、地球侵攻作戦において占領した地域の一部を租借。地球連邦軍の再軍備を監視する為に、各拠点には公国軍が駐留した。
当初は終戦協定を受け入れない連邦軍残党の散発的な抵抗などがあったものの、戦後五年を迎える頃にはそれらも収まり、ジオン駐留軍の主な仕事は治安維持活動や残された地雷・機雷処理に移行していったのである。
航海日誌
UC.0085年7月21日 6時
気温30℃ 湿度80% 快晴
マドラス海軍基地を出航後13日目
マッドアングラー級潜水母艦タルバは、マラッカ海峡を経て、南太平洋 ソロモン諸島近海を航行中。
波は穏やかだが、訓練海域では午後からタイフーンの接近が予想されるもよう。
今日からジオン海軍士官学校の卒業試験がはじまる。
実技は、MSを用いた機雷掃海実地試験。本物の不発弾処理作業だ。
今まで沢山迷惑かけたけど、かならず主席で卒業して、きっと母さんを楽にしてみせる。
そう書き終えると、セリア・イーゼントは日記帳を閉じて真っ直ぐに背筋を伸ばした。
同部屋であり、士官学校に入学してから組まされたマヴであるリファ・ビゼンはまだベッドの中である。
陽気で人当たりのいい性格ではあるものの、成績はいまいちパッとしない。
悪いがコイツに足を引っ張られる訳にはいかない。自分には自分の人生がある。
そう自分に言い聞かせると、セリアはビゼンを起こし朝礼に向かう支度を済ませた。
「本日からの最終試験だが、目標は全て前大戦中に敷設された実弾である。これまでの模擬弾ならば不合格だけで済まされたミスが、文字通り命取りとなる。
安全だった学校を卒業すれば、貴様達の向かう先は命の保証など何一つない最前線だ。
いいか!海は甘くなんかないぞ!
戦後5年経った今でも我々海兵は命を賭けた任務に当たっている。
発進前に遺書を提出しろ。総員、今までの数倍の緊張感を持ってこの試験に臨め!」
「はい!!!」
教官からの厳しい檄が飛ぶ。
予定海域に到着すると、訓練機たちは次々に発艦し、海中機雷の除去作業に向かった。
セリアとリファの2機も、割り当てられた最も深い位置にある機雷の撤去に向かう。
熱帯の色鮮やかな珊瑚礁をこえて遥か深く。太陽の光も僅かしか届かない静寂の世界で、水中機雷は5年経った今なお、獲物を待ち構えているようだった。
「こちらリファ、目標を確認。公国軍じゃなく、連邦製のものみたいだから解除コードを送っての無力化は無理そうだ。ただ、これ…センサーはとっくの昔に死んでるんじゃないの?」
「リファ、不用意に近づき過ぎるなよ。連邦製の機雷には、センサー式じゃなく磁力で金属に反応する旧式のものもあるって、たしか教本に、、、!?」
と言い終わる前に、リファの機体は巨大な爆発に巻き込まれてしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
舞い上がった砂に視界は一瞬遮られたが、何とかリファ機のモノアイの発光を発見出来た。
「リファ?リファ!?応答しろ!大丈夫か?」
「セ、セリア。コクピットは何とか無事だ。ただ、今の衝撃で圧搾空気のボンベがやられたみたいだ。ボディにも少し浸水があるみたい。」
セリアは落ち着いてリファにエアの残量を確認させたが、それは絶望的な数値であった。
セリア機はまだ辛うじて浮上出来るだけのエアを残してはいたが、それは僅かに片道分であり2機を浮上させるにはどう計算しても不足していた。
「2機とも浮上したとしても途中で共倒れだ。セリア、君が浮上して助けを呼んできてくれ。」
リファが言い出したその案は、この状況下では取りうる最善の策ではあった。浮上した一機は助かる可能性が高いだろう。
だが、この広大な地球の海で深海に取り残されたもう一機を、酸素が尽きる前に再び探し出せる確率は限りなく0に近かった。
「僕は大丈夫さ。安心して助けを待っていられる。
だってセリアは、僕のマヴは、落ちこぼれの僕をいつもカバーしてきてくれた、こんなに成績優秀な自慢のマヴなんだからさ。」
音も光も届かない水深2000フィート、マヴと二人取り残された。残圧30、使える酸素は片道1人分。お前ならどうする?
ふと、いつかの授業で教官から出された課題が記憶の片隅から蘇ってきた時には、セリアはすでに予備のホースで機体同士を接続させる作業に入っていた。
「何をしてるんだセリア!?正気か?
そんな事してたら二人とも助からない。ドジな僕のミスだ。君まで足を引っ張られる事はないんだ!」
「さっきの衝撃波で母艦も異常には気付いてるハズだ。きっと救助を出してくれる。見つけてくれるまでの時間を稼がないと。リファは授業で寝てたのか?マヴは一連托生。生きるも死ぬも一緒だ。二人で助かる道を考えよう。」
こうして2機の訓練用アッガイが海底に寄り添うように横たわり何時間が経過しただろう。
エア切れを警告するアラートさえも霞むほどに朦朧とした意識の中で、セリアは一筋の光を見る。
あぁ、天国に召される時はきっとこのようだろうなと思うと、その光はにわかに何処かで見たことがあるような点滅を始めた。
「ん?光通信?
エス、エス、アール、ティー、、、SSRT⁉︎」
「こちらSSRT ジオン特別海難救助隊所属 ヴェルナー・ホルバイン中尉。アッガイのパイロット、状況を説明できるか?」
接触回線で音声通信できる距離まで近づいて、私はそれがようやく特別海難救助隊のゴッグだと気付いてハッと我に返った。
エアの残量が底をついている事を伝えると、ゴッグはまず予備のボンベを接続し酸素を供給してくれた。パイロットはしっかりとした口調ながら、増設された作業用アームの繊細かつ迅速なな動きからも、腕のいいベテランの海兵であることがわかった。
3機で海面まで浮上する途中、少しだけ会話を交わした。
「お前たちは運が良かった。ウチの隊もインド洋まで応援要請で、たまたまこの海域を通りかかっただけだったんだ。何でもえらいデカブツの引き揚げらしいが。
まぁ、よくあの場に留まったな、訓練生。損傷したアッガイのエアだけでは、あちらのパイロットはとてもこの時間まで持たなかっただろう。」
「本当にありがとう、セリア。でも、再試には君は誰か他の子とマヴを組み直した方がいい。僕は君の首席が掛かった大事な試験を台無しにしてしまったんだから、、、」
「中尉殿には本当に感謝しかありません、ありがとうございます。
そしてリファ、何勝手にマヴを解消しようとしてるんだ?他のやつと組める訳無いだろ。失うくらいなら、もういっそ一緒に死んだ方ががいいって思ってしまったんだから……帰ったら、再試までに地獄のシュミレーター特訓だからな!!生き延びた事を後悔するぐらいの鬼なやつ!」
「爺さんが言っていた。
“馴染んだ銛と友は、簡単に手放すな。一生の相棒になる”ってな!
おまえら、いいMAVだぜ。」
ゆっくりと近づいてくる水面は、真夏の太陽の光を乱反射させ、キラキラと輝いているようだった。
MSM-03ゴッグはジオン公国軍の量産型水陸両用MSである。開発はドムなどを手がけたツィマッド社によって行われた。
ジオン独立戦争中に地球攻撃軍において本格的な水陸両用機として制式配備され、潜水艦隊の戦力として公国軍の海洋戦略を支えた。
戦後も地球連邦軍残党の討伐に重宝される一方で、深海での作戦にも耐えうる耐圧殻の堅牢性や、水中における行動可能時間の長さから、救助隊のMSとして特殊装備を追加した機体が配備されている。
機体各所には潜水中の非常事態を想定して予備のブロータンクが増設された。
このシステムにより、行動不能となった他のMS等を牽引していても浮上出来るだけの余剰浮力を獲得している。
また荒れた海での救助活動を想定して潜航翼ユニットを配置し、巡航速度よりも安定性重視の設計がなされた。
腕部は元々戦闘用として設計されていた為、新たに増設アーム「シオマネキユニット」が装備された。これにより入り組んだ場所への延伸や精密作業といった、本来兵器としては苦手だった分野にも十分に対応出来るようになっている。
本機はカリフォルニアベースなどに本拠を置く精鋭・ジオン特別海難救助隊(SpecialSeaRescueTeam:通称SSRT)などに配備され、数々の水難事故の現場で活躍した。
0085年7月にソロモン諸島沖合で発生したジオン海軍士官学校の実技試験中の事故では、“シャロンの薔薇”引き揚げ作戦の応援としてインド洋へ向け遠征中だった潜水母艦マッドアングラーが救助要請を受信。同隊のヴェルナー・ホルバイン中尉が出動し、海底に取り残された訓練生のアッガイ2機を救出した記録が残っている。
毎日たまらない暑さが続いております💦みなさまお元気でしょうか?
ということで今年も涼を求めるべく、夏の風物詩、昨年のアッガイに続きジオン水泳部からゴッグを制作してみました。
hgucではかなり古く初期の初期のキットでお値段¥880!シンプルな構造でディテールも少ないので、30MMガルドノヴァとのミキシングで、レスキュー仕様の追加装備を施した機体をイメージしました。
モノアイ部分が非稼働でかなり寂しい作りだったので、定番のくり抜き&磁石による可動式モノアイ制作を行いました。ひさし部分の強調も定番の改修だと思いますが、独自の解釈として、ひさしの内部にさらにドム系にも似たひさし+モノアイの構造物を配置して奥行き感を出してみました。
カラーは涼しげな色合いにすることは決めていたのですが、意外にどんな色でも合う訳ではなく、最終的にハイゴッグ系のカラーリングに差し色でオレンジや赤を入れる事で落ち着きました。
左上腕は一段だけ赤くすることでレッドショルダーならぬ、腕章のように見えるようデザインしてます。
その他の工作です。
強度が心配でこれまであまり関節はイジらない派だったのですが、さすがに古いキットなので股関節を下に5ミリほど下げてみました。本当はジョイントパーツを駆使して、最新の可動式股関節みたくしたかったのですが、やはり強度が足らず結果的に固定しました。
さみしいふんどし部分にディテールを足したり、
バックパック上部を開口してスクリュー状ディテールの埋め込みや、パイプ状ユニットの追加をしています。
上記の股関節の改修により、定番の腰を下ろしたポーズが決まりました。
やっぱりゴッグと言えばコレ❗️笑
モノアイの可動範囲も広いので、睨みも効いてます。
広い面が多いので、自作の大判デカールも沢山貼りました。
シオマネキユニット展開時。
ゴッグにハイゴッグの意匠を詰め込む、も今回のテーマのひとつでした。
カラーリングはもちろん、アームを伸ばした時のシルエットやら、肩アーマーの五つ星穴ディテールやら。
赤いガンダムのハンマーを使って、定番の
「さすがゴッグだ、なんともないぜ!」
のシーン!
GQ世界でもあったんでしょうか?
ゴッグにしろ、ハイゴッグにしろ、割と冷たい北の海を泳いでるイメージだったので、南の暖かな珊瑚礁の海を泳がせてみました。
あまりにも暑いんで、ゴッグと一緒に泳ぎたい!!!
GQにもゴッグが登場したので、今回のストーリーはジオンが統治している戦後の地球の海を舞台にしてみました。冒頭のセリフやシュチュエーションの元ネタは、レスキュー映画の傑作『海猿』です。バディという概念をGQ世界のマヴに置き換えて書いてみました。
GQ世界は、一年戦争で死んでいたはずの色々な人が生き延びた世界線だったので、
シャアがガンダムを奪取した事により、一年戦争終盤のジオン技術本部はゲルググとビグザムの量産に注力。
→結果、モビルダイバーシステムのような兵器も開発されず、パイロットのホルバインは603に召集されることもなく生き延びる。
→戦後5年経ってもジオン海軍の仕事は無くならず、昇進にも興味無く、現役で潜り続けられる部隊をさがして海難救助隊へ。
「もしや、あの海兵も生き延びて地球の海に潜り続けているのでは?」との思い付きでホルバインをパイロットにしてみました(zaku-kao2)
「…と、ガンダムが言っている」って、ホルバインが事あるごとに口にする「爺さんが言っていた」へのオマージュなんでは⁉️笑🤪
ちなみに現場海域は、GQ最終回でマチュたちが居たソロモン諸島キラキラビーチの沖合あたり、という脳内設定です✨
まだまだ暑い夏は続きますが、このガンプラがみなさまの一服の清涼剤にでもなればと思います🏖️
ありがとうございました☺️
さすがゴッグだ、何ともない…と思ったらこの暑さでオーバーヒートしそうだぜ!💦
コメント
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読み応えのある作品と改修型水泳部沢山楽しめました🥰👍💖
バックの海とモビルスーツの組み合わせはシッカリ涼をとらせて頂きました🙂✨ありがとうございますm(_ _)m😀💘
いつもありがとうございます😊
去年作ったアッガイも撮影の為に久しぶりに触って、ジオン水泳部ってほんとに魅力的だなと再確認しました🏝️
ガンプラで涼を感じて、夏の模活もますます頑張って頂けたらと思います(gandam-hand2)
さすがゴッグだ!手が長いぜ!シオマネキ・ユニットかっこいいですね!モノアイの睨みが痺れる!一年戦争好きには堪らんです
コメントありがとうございます😊
わざと手を巨大化させる改造とか、ゴッグには非常によく似合うスタイルですよね🦀
モノアイ部分の改造はかなり手を加えた部分なので、お褒め頂き嬉しいです(zaku-kao6)
ゴッグ、堅牢な機体だけに、深海での作業は他の機体よりも適正がありますね👍
いつもありがとうございます😊
そうなんですよね〜
機体を頑丈にしたぶん機動性には欠けていたとか、水冷式のジェネレータで地上での活動時間は短かったとか、裏を返せば海難救助隊にはうってつけのスペックの持ち主でした👍
UC.60生まれ
ジオン第四工科大卒
1年戦争時 工兵の不足により工業科学生でありながら学徒動員・徴用され第603技術試験隊においてオリヴァー・マイ技術中尉付きのメカニック見習いとして、様々な機体に携わり無事終戦まで生き残る。これは、彼の肉眼に映った兵器たちの記録である。
主に微改造・全塗装で仕上げている初心者モデラーです。
ガンプラの取説にある機体解説やショートストーリーが好きで、それに寄せた文章を考えてみました。
お目汚しですが、よろしくお願いします。
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