地球侵攻作戦を決定したジオン公国軍総司令部は、地球の約7割を占める海洋の制海権確保も戦略的に極めて重要であると位置づけ、早急に海軍戦力の増強を図った。しかし、スペースノイドが主である公国軍において、“海”を知るものは余りにも少なく、短期間で実戦に耐え得る本物の海兵たちを育成すべく訓練機関が設置される。
戦闘中は勿論、平時でも大きなストレスのかかる潜水艦勤務を考慮して、訓練生は集団生活に比較的耐性の高い、若い志願兵たちを中心に選抜された。
地球攻撃軍 太平洋潜水艦隊 ナーガⅢに所属するうちの一隻、マッドアングラー級潜水母艦『タルバ』に置かれたその訓練校は、海兵たちの間で通称“海底の学校”と呼ばれていた。
「“校長”より達する。現在、マリアナ諸島沖60マイル水深1500フィートにて本艦の前方、方位デルタ距離30ソナーに感あり。音紋照合により連邦海軍ジュノー級原潜と断定。
総員対潜攻撃用〜意! 上げ舵15°、魚雷発射管1番から6番装填、MSデッキ注水開始、発進準備いそげ!」
タルバは巨大とはいえ、やはり潜水艦の中は閉鎖環境だ。寄宿舎学校生活が苦な訳ではない。訓練生たちも、年のそう変わらないイイやつばかりで、何より公国の為この身を捧げた同志たちだ。
だが“スペースノイドなら宇宙船に乗っているのとそう変わらないものだから”と言いくるめられてここに来たが、やはり海も知らない自分にとって、重い重い水の底に閉じごめられている感覚は、やはり息苦しい。
「アルノルト訓練生、作戦内容を確認せよ!」
後方のシートから、鬼教官ともっぱらの噂のゲオルク・トーゴー軍曹の指示が飛ぶ。
「イェッサー、本機は出撃準備完了次第、第一小隊4機と共にタルバより発進。深度1800まで潜航しつつ敵艦に接近。予定海域に到着次第、大型対艦魚雷にて雷撃を開始。第一波攻撃にて撃沈出来なかった場合、第二波攻撃としてタルバより魚雷攻撃開始。小隊は二手に分かれ、母艦の防御と近接戦闘にそれぞれ移行します。」
「よし。それでは注水が完了した。各部水密確認、推進機関、センサーチェック終了次第発進せよ。」
何でもトーゴーというのは旧世紀のニッポンで代々海軍将校を輩出していた名門の家系らしい。『勝って兜の緒を引き締めよ』を擬人化したような厳しい海兵だ。担当教官と決まった時からもうすでに背筋が引き締まり、肩の力が抜けないでいた。
「各部水密異常なし、推進機関正常、センサーチェックよろし。 アッガイ第一小隊 インゼル・アルノルト訓練生 エントリィィィ(潜航)!」
アッガイトレーナーは、ジオン公国軍のジオニック社が開発したMSM-04を、水陸両用MSの訓練用教習機として改装した機体である。他の水陸両用機に比べて既存のパーツを流用している部分が多いため安価で生産性が高く、06Mと共通の操作系統や良好な運動性、何より複雑式コクピットが標準仕様であったこと等から、水陸両用機への機種転換や訓練生向けの機体として採用された。正式採用機から性能を落とすことなく、バックパックと腕部に新たに武装懸架用のハードポイントが設けられ、大型対艦魚雷や、対空ミサイルポッドを追加装備することが可能である。
ただジェネレータに関しても陸上用機である06Jの反応炉を流用して二基並列搭載してあるため、その点で稼働時間や動作不良といった問題も若干抱えていた。
塗装は青系の海洋迷彩が施され、左肩は公国軍の伝統に則り、まだ不慣れでサポートが必要な新米であることを示す黄色に塗装されている。
「よし!目標ダミーの撃沈を確認、訓練終了。タルバからの帰還信号も受信。これより帰還シークエンスに移行します。」
正直不安でしょうがなかったが、シュミレーターに入り浸り、イメトレを繰り返した結果、演習で課せられたミッションを予想以上の出来で何とかこなすことが出来た。これなら鬼教官のトーゴー軍曹も文句ナシの合格点を与えてくれるだろう、と胸を撫で下ろしていたその時、教官が母艦との無線に割って入ってきた。
「こちらアッガイトレーナー25番機教官のトーゴー軍曹。どうやら先ほどの戦闘訓練で想定以上の出力を使用した為か、主機のオーバーヒート警告が出ている。熱暴走の危険もあるため、ただ今から緊急浮上して近くの無人島で動力炉の強制冷却を行う。異常が無い他の機は先に帰投。こちらも動けそうになり次第帰投する。」
「教官殿?お言葉ですがその様な警告はまだ出ていませんが、、?」何の事か分からずに思わず振り返ってみたものの、トーゴー教官は浮上しろとの命令を繰り返す。
暗くさびしい深海から、眩しい夏の太陽の光を浴びて徐々に明るくなる珊瑚礁の海を進み海面に浮上してゆく。近くの小島の誰も居ない白い浜辺にアッガイは上陸した。
「よし、ここでいいだろう。さっきの訓練でこの海域もまだミノフスキー濃度は濃い。機関停止、無線機を残して他の通信系のスイッチも切っておけ。エンジンの冷却にはいましばらくの時間がかかるハズだ。」
訓練中や艦内とは明らかに違う雰囲気の教官がそこには居た。
「きょ、教官殿。これは一体、どうゆう事でありますか?」
「一人でも多くの優秀な海兵を育てることが俺たちの使命だ。ずっと暗い深海の底でメンタルをやられちまうヒヨッコ達を量産する事じゃない。どんな世界でも一流ってのはな、肩の力の抜き方も一流なワケ。これは俺からの特別課題だ。後ろからは、ずーっと緊張でガチガチな姿しか見ていない。お前も、ちっとは“休息”のとり方を勉強しろ。」
後ろ姿でそう語り終えるか終えないか、トーゴー教官は椰子の木の木陰に寝転んで、うたた寝を始めてしまった。
「は、はぁ💦」と、戸惑いはあったものの、眩しい日差し、涼しげな波音、楽しげな鳥のさえずり、葉を揺らす風、そんな全てが無条件に心地よいと感じている自分が居ることに気付くのに、もうそう時間は掛からなかった。
ビコン!ビコン!
いつのまにか眠ってしまっていたまどろみの中で、国際救難信号を知らせる音に目が覚めた。
「タルバ艦橋より総員に告ぐ。先程、国際救難チャンネルで、民間貨物船に偽装し、我が軍の試作兵器試験を極秘で行っていたフィルケッシャー号からの救助要請を受信した。当該船には技術本部603技術試験隊のオリヴァー・マイ技術中尉以下数名も乗船していた模様だが、何らかの原因で遭難した可能性が高い。予測海域に最も近い本艦もこれより救助に向かう。展開中の各艦載機も至急、現場海域に急行せよ。繰り返す、、、」
「トーゴー教官!SOSです」
椰子の根元に居た教官を振り返ると、すでに発進の準備にとり掛かっていた。
「聞いていた!休息が取れたならいつまでもボケっとするな!海難事故は時間との勝負だぞ!」
もうそこに居る教官は、いつもの精悍な“海の男”に戻っているようだ。
「は、はい!緊急発進します!」
後に一年戦争と呼ばれる戦いの真っ只中、UC0079年8月。その年も暑い夏だった。
「各部チェックよし。ベント開け、急速潜航!」
「了解!急速潜航!アッガイ、エントリィィィィ!」
みなさん!今年も大変お暑うございます!(zaku-kao4)
海の日ということで、冬に買って、夏になったらずっと作りたいと思っていたhgucアッガイを制作してみました。
実は何げに初めてのジオン水泳部、水中用MSです。人型から少し(機体によってはかなり)ハズレた異形のフォルムゆえ、その魅力に気付くまでにかなり時間のかかるジャンルなんじゃないかな〜?と個人的には思ってます笑
まず最初に何の機体を選ぼうかなと悩んだんですが、モノアイガードまでクリアパーツで再現されている頭部の機構に惹かれて、名キットと名高いアッガイにしました!組んでみて、その評価にも納得(gandam-hand2)
スジボリを終えて、塗装に入る前にイメージしたカラーリングのシュミレーションを。
実際の完成後です。メインカラーのネイビーメタリックの調色に手こずり、若干色味が濁ってしまいましたが、まぁ、及第点だと思います。
ボディの洋上迷彩は今回は初めて(マスキング+エアブラシ )に挑戦してみました。イメージよりも若干大人しめにはなりましたが、まぁ迷彩柄なのでそれもありでしょう。
一番やりたいとイメージしていたのが、頭部曲面への亀甲模様のスジボリとマスキング塗り分けです。色々な方のアッガイのパネルラインを事前に参考にさせていただきました。完全な正六角形では曲面には追従出来ないので、若干パネルラインにもウソが出ており、自分のスジボリの腕もまだまだブレてますが、遠くから見ればまぁ何とか誤魔化せるw←まだまだ精進します(gundam-kao5)
クチバシといい、さながら“ジオンのカッパ”ですな笑
グレー部分はそのままでもカッコよかったのでサフ吹きっぱなしです。
hgながら、隠れてしまう部分まで非常に細かくディテールが入っているので、ネイキッドモデルとして飾る楽しみもアリそうです。楽しみながら、筆塗り部分塗装頑張りました。
元の手足は短くても、フレキシブルな延長パーツもあるので、ポージングも自在です。
オプション装備のミサイルポッドと魚雷は、コトブキヤのmsgを取り付けました。
ずんぐりしたMSなのに、膝立が決まることにも驚きました❗️
ズゴックのあのポーズも出来るぞ(gandam-hand1)
「可愛い かわいい カワイイ かわいい kawaii あなた〜♪」ってずっと言い聞かせながら育てました笑
あと、串本節も歌いながら作りました♪w
体育座りは出来ないけど、無改造であぐらもかけるw
「お〜い!夕陽が綺麗だからコッチで一杯やらんか🍺」みたいな何しても可愛いオッサンにも見えてくるw
ハァ オッチャヤレー❗️
今年も暑い夏になりそうなので、『ガンプラで何か一服の清涼剤にでもなれば』というテーマで制作しました。
なのでショートストーリーも今回は“戦う男”ではなく“ひと休みする男”。全人類を巻き込む大戦の最中でも、大多数があくせく真面目に戦う中、きっと一定数はサボる奴が出て来たハズです(働きアリでも言われている話)。
スキの無いように見えた先輩が、実はサボりの達人で、うまく肩の力を抜けずに溺れそうになっていた新人に“一服”の仕方を教えて、南の島で少しばかしのバカンスをとるハナシ。
ズルいようにも見えますが、生死をかけた戦場でこそ、そうしたメンタル調整が意外と大事だったのかも知れません。
アッガイが複座型で教習にも使われたとの設定から、舞台は「エコール・デュ・シエル 天空の学校」ならぬ「海底の学校」。
マッドアングラー級「ズアイ」(←恐らくズワイガニから!?)という艦が存在したらしいので、その姉妹艦ならタラバもアリだろうということで「タルバ」。(私はタラバ蟹派w)
艦番号「U751」は同名の潜水艦映画から。
トーゴー教官のご先祖さまは、ご存知、東郷平八郎提督。
海兵といえばホルバイン少尉ということで、彼の出撃時の決まり文句は、実はここの学校で習った伝統か、この教官の教えか何かで、「エントリィィィ❗️」を言わせてみました!(zaku-kao2)笑
漫画版MSイグルーのエーギルの回で、マイが南大変洋上に浮かんだままで終わっていたので、最後にはその救助に行かせてみました!
皆様、暑さにやられぬ様、少しでも涼を感じ取っていただければ幸いです😌
ありがとうございました🏝️
可愛い かわいい kawaii カワイイ カワイィ アッガイ〜♪
コメント
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アッガイに外付けで大型魚雷を装備というのがナイスアイディアですね。
涼しげなカラーリングや、スジボリなどのディテールアップもお見事です。
私は現在、キャリフォルニア・ベースこと西海岸はカリフォルニアのサンフランシスコから北米を一月半かけて横断し、ガルマ大佐戦死の地(?) ニューヤークことニューヨークに到達しました!
夏の終わり頃には日本に帰る予定なのですが、実はその際に、自分も一時帰国したときに製作したアッガイを投稿する予定です。
その際には、私の作品も是非ご覧になって下さい。
ありがとうございます✨
もともと航空機用の外付けミサイルとしてデザインされている武器の様でしたが、今回は魚雷として持たせてみました(gandam-hand2)
ガンプラで涼を感じて頂けて良かったです🍧
今は北米の旅の最中でしたか❗️夏の終わりのアッガイ、楽しみにしております☺️
足掛け一年以上に渡る大冒険も大詰め!無事、ご成就されることをお祈りしております(zaku-kao8)
勝利の栄光を君に!(zion_emb)
夏らしく涼しげな雰囲気が良いですね(gandam-hand2)
大量に魚が入った網を引き摺って海中から上がって来そう。
コメントありがとうございます❗️
狙い通り、涼んで頂けて何よりです🎐
アッガイで地曳き網!漁師専用MS🐟面白いですね❗️w
トーゴー教官!一生付いてきます😭
青いアッガイ、夏らしく素敵ですね!
コメントありがとうございます❗️
粋な計らいですよね!鬼教官と恐れていた人にこんなことされたら、ギャップ萌えです(zaku-kao6)
オリジナルは地味な配色だったので、ガラっと雰囲気変わりますね🏝️
UC.60生まれ
ジオン第四工科大卒
1年戦争時 工兵の不足により工業科学生でありながら学徒動員・徴用され第603技術試験隊においてオリヴァー・マイ技術中尉付きのメカニック見習いとして、様々な機体に携わり無事終戦まで生き残る。これは、彼の肉眼に映った兵器たちの記録である。
主に微改造・全塗装で仕上げている初心者モデラーです。
ガンプラの取説にある機体解説やショートストーリーが好きで、それに寄せた文章を考えてみました。
お目汚しですが、よろしくお願いします。
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