西暦2313年、私設武装組織ソレスタルビーイングの2度にわたる武力介入を経て、かつての三大国家群は地球連邦政府として統一を果たし、アロウズ・イノベイターによる支配からも脱却するが、強行的な治安維持活動が禁止された事により、小規模ながらも依然、テロや紛争の火種は世界各地で燻り続けていた。
歴史の表舞台からは再びその姿を隠したソレスタルビーイングであったが、ガンダムマイスター、プトレマイオスクルーたちは未だ人知れぬ闘いの日々を送っていたのである。
「今回のミッションは旧AEUスコットランドのアイラ島にある国営企業の大規模工業プラントへの潜入任務よ。表向きは民間向けの作業用ドローンを生産していることになっているけど、ヴェーダの解析で、条約により禁止されている対人駆逐型オートマトンの製造が秘密裏に行われている可能性が高いとの結果が出ているの。」
プトレマイオスII改の戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガはいつもと変わらぬ冷静な口調でブリーフィングを始める。
「となると、おおかた旧AEU公社出身のお偉いさんが、反政府組織かテロリストと裏で繋がって甘い蜜を吸ってるってことか。」
ガンダムマイスター、二代目ロックオン・ストラトスことライル・ディランディはまたかと呆れた様子で地球連邦政府高官の腐敗を嘆く。
実はこの兵器密造施設への武力介入は初代ロックオンの頃からヴェーダにより立案されていたプランの一つだった。作戦に向けて水面下での準備が進められていたが、当時はまだ優先度が低い目標だった為、国連軍との戦闘などで作戦を実行できないまま凍結されていたのである。
「その可能性が高いはね。ただ現時点では確証となるものは掴みきれていないから、今回の任務ではその証拠を押さえることを第一目標として欲しいの。軍事基地ではないから対MS戦になる可能性は低いでしょう。ただ、刹那とトレミーは同時刻に地球の裏側での別任務に当るから、ロックオン単独での強行偵察になってしまうけれど、、、」
少しばかり不安を覗かせたスメラギに、ロックオンは余裕の表情で返してみせた。
「なぁに、イアンのおやっさんも今回の任務用にケルディムにSAGA装備を用意してくれてるところだ。あの機体なら俺でもある程度は一人で対応出来るさ。」
秋の始めのアイラ島は、段々と木々も色付き始め、どこか寂しげだ。生まれ故郷からは近くであるためライルも幾度か訪れたことのある場所だった。
「目標の工業プラントを確認。おぉ〜しハロ、ミッション開始だ。とっとと片付けて祝杯をあげようぜ🥃 ロックオン・ストラトス 乱れ射つぜ!」
GN粒子による撹乱でプラント内にはあっさりと潜入に成功する。工場と言っても、敷地内に研究施設から労働者のための生活設備まで一通りのものが揃う、一種の工業都市の様相を呈していた。
ロックオンはヴェーダの予測どおり地下区画、衛星の目の届かない場所にオートマトンの秘密生産設備を確認する。
「血の通わない兵士たち。こいつらが、テロの尖兵になる。証拠は掴んだ。妨害も無い様だし、ちょっと破壊工作していくぜ。」
生産設備破壊の為にGNピストルを構えたその時、ハロが敵機の急襲をつげた。
「Eセンサーニ反応アリ、敵機確認!敵機確認!」
「MS⁉︎ ACTVジンクスか? 奴ら用心棒を雇ってやがったのか!」
気が付けば小隊を組んだ敵MSが数機、ケルディムサーガを包囲していた。
連邦軍から民間に払い下げられカスタマイズされたACTVジンクスが銃剣で接近戦をしかけてくる。
「残念だったなソレスタルビーイング。いくらガンダムと言えども、こちらも太陽炉を積んだ機体だ。数の不利は明白なはず。“戦場の職人”この二つ名がわかるなら機体を降りて投降しろ。」
敵パイロットの名乗った二つ名には聞き覚えがあった。レイモンド・フューラー。かつてアリー・アル・サーシェスの腹心としてKPSAなどのテロ組織を指揮していたとされる傭兵。サーシェスが戦争に快楽を求める狂人的な戦争屋だったのに対し、フューラーは最前線においても常に冷静に依頼をこなし、確実な仕事ぶりから“戦場の職人”の名で知られていた男だった。
「お前、レイモンド・フューラーか⁈サーシェスが討たれた後も、まだ戦争屋を続けていやがったのか!」
「ガンダムのパイロット、こちらは依頼としての任務を確実にこなしているだけだ。投降しないのであれば撃墜する。」
「あんたは忠実に依頼を遂行しているだけかも知れないが、それは世界に戦争を、無差別テロをばら撒く行為だ。悪いが排除させてもらうぜ!」
GNピストルⅡで攻撃を受け流すと、デュナメスサーガは死角になっているビルの影から、一機、また一機と確実に敵機を減らしていくが、レイモンドのACTVジンクスだけは、正確にこちらの射線を読んで姿を決して晒さなかった。
「さすがに“戦場の職人”だな。ならお望み通りこっちから打って出るしかないか!ハロ、トランザムだ!乱れ射つぜ!!」
死角から出ると同時にトランザムを発動させたケルディムサーガは、7丁の銃を駆使しながらACTVジンクスを追い詰めてゆく。
レイモンド機は肉薄されてGNアックスで応戦するが、トランザム状態のライルの早撃ちには間に合わずコクピットを撃ち抜かれた。
任務が完了したかと思われた瞬間、施設内から轟音とともに巨大な飛翔物体が発射される。
「HLV⁉︎ 奴ら完成品だけでも宇宙へ打ち上げようってのか?」
デュナメスサーガは最も長射程のGNビームカービンを構えるが、コクピットにはアウトレンジを示す警告が響く。
「ちっ、この装備じゃ超長距離狙撃は!このまま黙って見てるしかないのか⁉︎」
「ロックオン ロックオン ニールノ形見 受ケトレ 受ケトレ」
「ハロ⁉︎何だって言うんだ?
この座標に、何かあるのか?」
ハロに言われるがまま向かった田園地帯は夏には特産のウィスキーに使われる麦の穂の黄金の海が一面に広がる。収穫期を終えたその地中に秘匿されていたウェポンコンテナがあった。
超高高度射撃銃type K
それはかつてデュナメスが軌道エレベータ狙撃の際に用いた特殊オプション装備の改良版であった。旧来型より威力こそ若干劣るものの、数段小型化された銃身により取り回しや射角は圧倒的に向上し、カートリッジ化されたGNコンデンサによりチャージ時間も劇的に短縮した。
ソフトウェア面でも進化し、初代ロックオンの卓越した射撃センスを学習したAIプログラムとトランザムを併用することで、彼の超精密射撃を再現する事が可能となっている。
「超長距離精密射撃支援プログラムN.E.I.L (Necessary Exact Intelligence for Lock on Stratos/ for Lyle)起動
トランザム粒子残量 ワンショット可能
ロックオン ロックオン 一発デキメロ
ラストシューティング」
「あぁ、兄さん。狙い射つぜ!!成層圏の果てまで!!!」
ロックオン・ストラトスの引金から放たれた高濃度圧縮されたGN粒子の光の筋は、衛星軌道まで逃れんとするHLVを確かに捉えて、撃墜した。
「ん?プログラムにメッセージファイルが一件?」
『 よぉ、久しぶりだな。この手紙をお前が読んでいるってことは、もう俺はこの世には居ないだろう。それどころか戦争根絶も果たせず、お前をガンダムに乗せてしまったんだから、兄貴としてはもう面目も何も無い。テロにより目の前で家族を殺された俺はソレスタルビーイングで戦う決意をした。自分が戦えば、お前だけでも戦争の無い世界で、少しでも悲しい事から遠ざけてやれると思っていた。でもそれは、間違いだったのかも知れない。世界中の人が憎しみ合って、殺し合いをしている訳じゃない。平和に生きて居る人間が大半だ。だが、戦争は無くならない。その無知と無関心が戦争を求める者に、憎しみ合う心に居場所を与えるからだ。俺は殺し合いをやっている連中も勿論そうだが、自分たちの地球の現実を知ろうともしない人々にも嫌気がさしていた。満足かよ、こんな世界でってね。
いいかライル、問いかけ続けろ。たとえ戦いの中の日々にいたとしても、平穏な日常を過ごしていたとしても。世界に、自分自身に。血の通わないゼンマイの心臓のブリキの兵隊になるな。
こんな物しか遺してやれないが、情け無い兄貴だと笑ってくれ。
最愛の弟 ライルへ 』
瓦解した機体の破片は大気圏へと再突入し燃え尽きたあと、島には静かに白雪のような灰が降ってきたが、ライルはその光景を見ることはなかっただろう。彼はスコープを覗き込むことが出来ないほどの大粒の涙でその頬を静かに濡らしていたのだ。
ガンダム00 extra episode
兄の遺してくれたもの
今回は、これも再販でずっと手に入れたかった00系キット、ケルディムガンダムサーガ(一応ビルド系という枠で製品化されてますが😅)を制作しました。
なんで新発売時に見逃してたキットが、あとから無性に欲しくなるんだろ?笑
見本どうり、造形もめちゃくちゃカッコいいデザインで、特に頭部のアレ(上げてる時はZZのハイメガぽくて、下げたらアドバンスドヘイズルのセンサーユニット的にも見える)が大好物です笑(ガンカメラらしいなぁ)
大幅なカラーリング変更や改造は行わず、気になる部分だけの小改修です。ベースキットは2008年発売の素ケルディムですが、前回作ったベースキットのジンクスと今回のケルディムの間に傑作ポリキャップPC001が採用されたこともあり、ガンプラ的にもかなりのイノベーションが起きてた時期だった模様。
ガンダム00は毎週欠かさずリアタイ視聴してたのに、その頃の自分は「hgucこそ至高!」みたいな謎の浪漫主義を貫き、00キットは素通りしていました。
合わせ目なども少し工夫されてますが、基本段落ち処理をして、片側だけに合わせ目がくるパーツは左右対象になるようにモールドを入れて行きました。あとは淋しい箇所に三ツ星モールドを入れたり、開口したり。銃は7つどころか9丁もあるので合わせ目消しせずやすりがけのみで、銃口が浅いパーツは開口しました。
余剰パーツで丸々、ノーマルケルディムも組めるお得なキットなので!(ポーナスパーツ大好き💚)余すことなく、コンパチ仕様にて制作しました。グレージュカラーも良かったんですが、ロックオンのパーソナルカラーということで緑にしました。SAGAパーツとともにGNシールドビットにはピクセル都市迷彩塗装を初めてやってみました。クラウド迷彩と原理は同じだと思い、2.5ミリ角(マステから手作業で切り出しだとこれが限界のサイズ💦)でやってみましたが、1/144サイズだといささか大ぶりにも感じる大胆な仕上がりになってしまいましたw
次は市販ツール買おう😓
ストライカージンクスに続き、今回も武装が豊富な機体なので、整列写真が映えます❗️
本体に手を加えなかった分、追加武装で個性を出してみました!(え、銃9丁もあるのに、10丁目つくっちゃうんだw)
本編でもロックオンがデュナメスでたった一回しか使わなかった高高度射撃銃がロマン装備だったので、あれのケルディムバージョンをイメージして作りました。時代が少し後なので、あれよりかは小型化されて、取り回し・運用性も向上してるという脳内設定ですが、それでもクソデカネオアームストロングサイクロンジェット砲じゃねーか笑
スナイパーなガンダムだけあって、膝立ち両手構えも綺麗に決まります。
シールドビット用台座も、GN粒子の色味でよく出来てるなぁ。このクリアパーツ、蛍光色で光るんだぜぇ✨
トランザム状態は写真加工で再現しています。
今回のストーリーも、前回と同じく2ndシーズン後、劇場版前という時代設定で書きました。1stシーズンでの初代ロックオン・ニールの散り際のセリフは、自分を倒した敵じゃなく、無関心でいる世界へ、視聴者への問いかけに聞こえて、胸を撃ち抜かれた気持ちは今でも忘れられません。(地球を指で撃ち抜くシーン👈)
劇中で2人が同時に並び立つ事は無かったけれども、ロックオン・ストラトスとしての想いは受け継がれてゆくという気持ちで書き上げました。
00ファンがニヤリとするワードもところどころに散りばめたので、探して頂ければ幸いです!
ありがとう御座いました!
「あぁ、兄さん。狙い射つぜ!!成層圏の果てまで!!!」
コメント
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良い物語りですね😭 ガンプラは、おっしゃるとおり、発売されていたときではなく、あとになって、あのガンプラ買っておけばよかったとなりますね😅
ありがとうございます!
そうなんです笑
しばらく経つと、素組やサンプルよりも魅力的な作品をモデラーの皆さんが沢山作られてるのを見る機会が増えるからというのも一因かも知れませんね😂
UC.60生まれ
ジオン第四工科大卒
1年戦争時 工兵の不足により工業科学生でありながら学徒動員・徴用され第603技術試験隊においてオリヴァー・マイ技術中尉付きのメカニック見習いとして、様々な機体に携わり無事終戦まで生き残る。これは、彼の肉眼に映った兵器たちの記録である。
主に微改造・全塗装で仕上げている初心者モデラーです。
ガンプラの取説にある機体解説やショートストーリーが好きで、それに寄せた文章を考えてみました。
お目汚しですが、よろしくお願いします。
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