その影は、情けも、容赦もなく―—。
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U.C.0079、12月に暦が変わった瞬間、タラマンカ方面のジオン公国軍前衛拠点は激しい動揺に見舞われた。つい昨日行われた、地球連邦軍総本部、南米ジャブローへの大規模攻撃が失敗に終わり、傷ついた友軍が一斉に雪崩れ込んできたからだ。
コスタリカ・コルコバド軍港は、もともと沿岸の美しい自然公園だったが、ジオンがこの地を制圧した後、MS用の軍港を急増した。そのコルコバド軍港には、海路で次々にジャブロー攻めの敗残兵が上陸してきた。
南米と北米をつなぐ陸路、タラマンカ方面は、小規模ながらジオン・連邦の一進一退の攻防が続いていた。その均衡が、一夜にして崩れた。今にも、南の空か、それとも陸地からか、海からか、地球連邦軍の容赦ない物量戦がこの地を飲み込むと、皆が恐れをなしていたのだ。
圧倒的な物量と火力で敵を押し潰す。地球連邦のそのやり方は、ルウムので戦の頃から変わらない。だが、オデッサからは、ジオンの伸びきった補給線と厭戦気分を突かれ、その物量戦が機能”してしまった"。
「こんなところに寄り道してないで、まっすぐ北米まで泳いでいけばいいじゃないか。」
ジオン公国軍コルコバド港警備隊のパイロット、デイブ軍曹は、闇夜と霧の中、亡者の群れのようになったMS隊を、モニター越しに見ながら、ため息混じりに呟いた。
『補給が必要なんだろうさ。』
同僚のカール軍曹が応え、それより聞いたかよ、と続ける。
『アフリカ戦線も手酷くやられたってな。』
「酷いなんてもんじゃねえだろ。」
連邦軍も極秘に開発を進めてきていたMSを、戦線に投入してきたという。今朝方、ようやく連邦軍もMSの保有を宣言したそうだが、そんなことはもうみんな知っているのだ。
北アフリカでは、ジオンを模倣したMSの空挺作戦の後、補給線の確保もそこそこに、物量で力任せに、拠点をしらみ潰しにしていったと言う。ティーンの頃に見た旧世紀の戦争映画に、そんな話があった。映画では、"お花屋さん作戦"とか、そんなような作戦名だったと記憶意していたが、あの話では、物量任せの作戦は結局失敗し、"史上最も愚かな作戦"のように評されていた気がする。北アフリカの連邦の戦術は、その"お花屋さん作戦"によく似た様相だったというのに、我が軍は負けた。この戦争に、少なくとも地上の戦線に、もう、勝ちの目などないのだ。それも、みんな知っている。
夢見た勝利は幻影となり、目の前の亡者の群れと共に、闇の中に消える。
「俺らも早く引き上げたいな。」
デイブの呟く声が、真剣味を帯びる。
オデッサを陥落させてからの連邦軍の侵攻は素早かった。オデッサを締め上げた戦力を、間髪入れずにアフリカ方面に反転させ、あっという間にジオンを駆逐してしまった。ここは、連邦の総本部、南米ジャブローの目と鼻の先なのだ。存在を公表したMSも、恵まれた環境でピカピカに整備されて、出撃の時を待っているはずだ。昨日のこちらの作戦は見事玉砕。となれば、次に待っているのは連邦軍の素早い逆襲ではないのか。
今にも、爆弾か、砲弾か、それともMSかの雨霰が、ここを襲うかもしれないのだ。こんな危険なところには、一秒たりともいたくはない。
考えていると、モニター越しに見ていた機体に火球が炸裂した。
「ほら来た!言わんこっちゃない!!」
憎々しげに、デイブが叫ぶと、沖合に空母らしき影が複数見えた。そこから、次々に火線が伸びてくる。オデッサの戦線や、例の"木馬"で確認された、タンク型MSの砲撃だろう。
蜘蛛の子を散らすように、"亡者の群れ"が散開し、闇の中に紛れるように消えていく。
「俺らも逃げるぞ!」
確認するまでもなく、デイブもカールも海に背を向け、機体を走らせた。
『逃げるって、どこに!?』
「知るか!」
もう、逃げ場なんてどこにもない。そんなこと、知っている。知っているのだ。MS同士で戦争をやり合うには、地球は狭すぎる。
頭上から、光の矢が降り注ぎ、闇に消えた亡者の影を暴き出す。
例の空挺作戦だ、と、デイブはピンと来た。
目の前に黒い影が降り立ち、逃げる亡者の背中目がけて、さらに追い打ちをかけるように、光の矢を浴びせた。連邦軍のMSは携行型のビーム兵器を擁している。
敵が、こちらを振り向く。
黒く、無機質な顔立ちに、カメラアイが青白く細く輝くのを見て、デイブは、思わず機体の歩を止めてしまった。
ゾッとするような顔つきと、背中に背負った突起物が釜のように見えた。死神そのものだ。
(亡者の群れを、死神が狩る……文字どおりの地獄か、ここは。)
妙に冷静に、そんなことを考えたのが、デイブ軍曹の最期の記憶だった。
U.C.0079、12月1日。
ジオン公国軍による、連邦軍本部ジャブロー基地への大規模空襲を退けた後、地球連邦軍は北米方面奪還に向け、進軍を開始した。
また、地球各地で、MSを主戦力とした部隊が作戦行動を開始。地上各地のジオン公国軍一掃に向け、最後の進攻が始まろうとしていた。
【#26 a Shadow phantom - 3 or Night attack - 3 / Dec.1.0079】
ジオンの警備兵の愚痴からの、奇襲、しかもガンタンクの砲撃が、ワンパターンな気がしています。1年戦争編は、この第3部までになるので、第4部は違ったスタートにできると思います。
あと、作中でも触れているのは、以前フリーダム-ウイングさんが教えてくださった「遠すぎた橋」に登場するらしい、”マーケット・ガーデン作戦”のことです。なんでも、連合軍最大の失敗くらいに言われている作戦らしいのですが、わたしの妄想したベルベット作戦の全体像が、この”マーケット・ガーデン作戦”に似ている気がして、やっぱりわたしのミリタリー知識の乏しさがやばいなって思いました笑
ていうか、ホントは気付いているんですが、あんな距離を進軍するのに、途中の拠点が一個しかないってことはないですよね、多方面から攻めているとは言え笑
……まあ、誰も突っ込まない皆さんのご厚意に甘えて、今後も雰囲気で進めてまいります。どうせ素人の二次創作ですので笑
フリーダム-ウイングさんのページはこちら!熱き漢のMS”ガンダムコマンドー”や、ランバ・ラル専用ドム、オリジナルキャラクターたちの戦場の生きざまなど、読み応えのあるストーリーとミリタリータッチの作品が揃っています。
ジム・ナイトシーカーII、めっちゃかっこいいです。
顔がいい。すごくいい。
部隊番号と色は、ちょっとはふざけています。
どちらも、ある超有名漫画から引用しています。
ヒントというか、わたしの中で、ジム・ナイトシーカーは暗殺者のイメージです。
わかります?
・
次回、
MS戦記異聞シャドウファントム
#27 Paranoia
赤き獣は、まだ、眠りの中にいる——。
なんちゃって笑
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。
オリジナルストーリー第26話
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ブンドド写真は同じキットを何度も使って、様々なシチュエーションの投稿をする場合もあります、あしからず。
F91、クロスボーン、リックディアスあたりが好きです。
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