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特殊部隊との死闘(前編)

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「・・・スカート付1機、撃破」
 ジム・スナイパーカスタムのコクピットの中で、イエヴァ・ハルコネン少尉は淡々と報告した。 味方のサラミス級巡洋艦に大型のバズーカを向けていたので、優先的に狙ったのだ。 もっとも、護衛が付いているという油断からか、動きが直線的で狙いやすかったということもあったが。
「よし。 あのデカいヤツは一旦無視してモビルスーツから叩くぞ。 ジョバンニは俺の直援、イエヴァは他の敵の牽制にあたれ」
 ジム・コマンドライトアーマーを駆る、第02特殊MS小隊の隊長、カケル・クロサワ中尉が指示を出す。
「ハイハイ了解っすよ! んじゃ、いっちょおっぱじめますか~」
 軽口を叩きながら、ジョバンニ・ヴェロッキオ曹長がガンキャノン重装型のキャノン砲を敵の新型モビルスーツに向ける。 敵のモビルスーツも狙いに気付いたのか、回避機動を取ろうとしている。 そこにクロサワ中尉のジム・コマンドライトアーマーがビームサーベルを抜いて斬りかかっていった。
「・・・隊長、射線上を飛び回らないでください。 誤射してしまいます。 むしろ隊長ごと撃っていいですか?」
インカムから届くいつもの嫌味に顔をしかめながら胴体を両断しようとしたが、敵のモビルスーツは身をひるがえしてシールドで防いだ。
 さすが新型だ。 パイロットの反射神経も悪くない。
 そんなことを思いながらクロサワ中尉は機体を翻し、今度はジム・コマンドライトアーマーの右手に握られたビームガンで狙い撃つべく、スコープを覗き込んだ。

「ローレン・・・、ウソだろ・・・?」
「サム、上から狙われてる! 避けて!!」
 ピーターの叫び声でハッと我に帰り、なんとか敵の砲撃をかわすことができたが、そこへすかさずオレンジと白で塗装された細身のモビルスーツが斬りかかってきた。 回避は間に合わないと判断し、咄嗟にシールドで防ぐ。 耐ビームコーティングを施したシールドのおかげで左腕を持っていかれることはなかったが、シールドには裏からでも赤熱化した状態が見えるような傷をつけられてしまった。
 ・・・そうだ、悲しむのも、自分の判断を後悔するのも、あとでいくらだってできる。 今はとにかくピーターと二人、生き残ることだけを考えろ。 戦う理由さえ分からないまんま、死ねるかよ・・・!
「ピーター、おそらくどこかにスナイパーがいるはずだ。 俺がこの2機を押さえている間に、ソイツを仕留めてきてくれ!」
「了解!」
生き延びるんだ。 何としても・・・!

「・・・隊長、先ほど無視しろとおっしゃった『デカいヤツ』が私の方へまっすぐ向かってきます。 このまま無視していると私、死ぬんですが、それでも無視しろと?」
 自身の判断に対する嫌味が通信から届く。 もう少し言い方に気を使えないものかとウンザリしながら、クロサワ中尉は答える。
「お前が死のうが俺はどうでもいい。 ・・・が、スナイパーの援護がなくなるのは作戦に支障が出る。 死なないように頑張ってくれ」
「・・・かわいい部下が死のうがどうでもいいとか、相変わらずひどいですね隊長。 了解。 あれはこちらで引き受けます」
嫌味の応酬を終えた二人は、それぞれの標的を照準に捉えた。

「まずはさっき俺を狙っていた青いキャノン付をどうにかしないとな。 じゃないと、このオレンジのやせっぽちを落とすどころじゃない」
 ピーター、ローレンと組んで挑んだ隊長たちとの模擬戦を思い出しながら俺は考える。 先ほどからやせっぽちがビーム兵器を、青いヤツが肩に取り付けられたキャノン砲と、こちらもビームを俺に連射している。 高機動バックパックを背負ったこのゲルググならある程度回避はできるが、それでも限界はある。 シールドだっていつまで持つか分からない。
「・・・イチかバチかだ・・・!」
 ペダルを思い切り踏み込み、バックパックのスラスターを全開にふかしてキャノン付に接近する。 幸いコイツはそこまでスピードは出ないようで、一気に距離を詰めることができた。 ここまで近づけば、やせっぽちも同士討ちを恐れてビームを撃てないはずだ。 俺はキャノン付に向けてロケットランチャーを連射した。 最初の数発はよけられてしまったが、ついにヤツの胴体にロケット弾が直撃した。 しかし・・・
「バカな!? 今ので落ちないのか?」
キャノン付の装甲はよほど固いらしく、装甲が少しへこんだだけでピンピンしている。 立て続けに同じ場所をめがけて撃っていると、ロケットランチャーが弾切れになった。
 キャノン付はこちらが撃てないことに気付いたのか、一気に接近してくると俺のゲルググの頭部を一発殴り、シールドに蹴りを入れてきた。 キャノン砲を背負った支援機とは思えないパワーだ。
 後ろに吹っ飛ばされながらなんとかバックパックに手を伸ばし、ビームライフルを掴む。
「これが外れたら、もうおしまいだな・・・」そう思いながら祈るようにスコープを覗き込み、ライフルの下部に取り付けられたグレネードランチャーとビームを一斉に発射した。 ロケットランチャーで装甲がかなり傷んでいたためか、さすがにビーム兵器には耐えられなかったのか、ともかく呆気ないほど簡単に、キャノン付は爆発した。

 ビグロのコクピットの中で、ピーターは普段の無邪気な笑顔からは想像できない冷たい目付きで、ようやく見つけた敵のスナイパーを睨みつけていた。 先程はなんとか平静を保ってサムに危機を知らせたが、もう限界だった。
「ローレンはあんなに良い子だったのに・・・! 僕とおんなじように、家族のために頑張っていたのに・・・! よくも、よくも!!」
 ローレンも相手のスナイパーもお互い兵士である以上、こんなのはお門違いな怒りであることは百も承知だ。 だが、そんな理屈で納得できるわけがなかった。
「お前だけは、絶対に落とす・・・!」
 しかしピーターも若いとはいえ、ここまで生き残ってきた兵士だ。 やることは冷静だった。
 隊長たち第1分隊との模擬戦でイヴァンを落としたように、ビーム砲で敵を狙い撃ってからミサイルの弾幕を張る。 しかし、濃紺に塗装された敵のスナイパーはミサイルに引っかかることなく、手にした大型のライフルからビームを発射してきた。 ならばと、今度はミサイルを一斉射したあとビームを発射した。 これが正解だったのか、相手は回避しようと身をよじったのだかかわしきれず、狙撃用と思われる細身のライフルの銃身にビームが当たった。
 銃身が溶けて使い物にならなくなったライフルを捨てた敵は、背部とふくらはぎのラッチからそれぞれバズーカと小型のビーム兵器を取り出し、ビグロに向かって連射してきた。 さすがにこの弾幕に引っかかっては、モビルアーマーといえどもただでは済まない。 ピーターはいったん攻撃をやめ、機体を旋回させると全速力で回避機動を取った。 ビグロの近くでバズーカの砲弾が爆発し、ビームがかすめる。 機体の表面に多少のダメージを受けながらもなんとか回避を続けていると、そのうち敵は弾切れになったのか、左腕からビームサーベルを伸ばし、ビグロに斬りかかってきた。
 だが、スピードでは圧倒的にビグロの方が上だ。 ピーターはビームサーベルを抜いて突進してくる敵にあえて自分から急接近し、その巨大なクローで鷲掴みにした。 そのまま相手を羽交い絞めにするようにビグロの鼻先、ビーム砲の発射口前まで持っていき、「クチバシ」を開いた。
「これでビーム砲をぶち込めばおしまいだ!」
「・・・なるほど。 そこがビームの発射口なんですね」
 突然、コクピット内に聞き覚えのない女の声が響いた。 隊長でも、ましてやローレンの声でもない。 じゃあ誰だ? ・・・そうか。 目の前で羽交い絞めにされている、このモビルスーツのパイロットだ。 おそらく、機体同士が触れ合ったことによる接触回線だろう。
 ・・・待てよ。 今この女、なんて言った? ・・・まさか!?
 敵の狙いに気付いたとき、捕えたモビルスーツはピーターの予測通りの行動を取った。 今まさにビームで相手を焼き払わんと、限界までメガ粒子が縮退した砲口に向かって、側頭部に取り付けられたバルカンポッドから弾丸の雨を降らせたのである。 ピーターが最期に見たのは、文字通り目を焼くばかりの眩い閃光だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・To be Continued

コメント

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  1. ピーラァ?OH!ピーラァー!!(←良い発音バージョン)
    なんとピーターまで。ムードメーカーがいなくなっちゃった(T_T)
    そもそもビグロって対艦兵器だし、掴んだMSに主砲使わなくてもよかったのに、冷静な中にどこか熱くなってしまったところがあったんでしょうかね。

    • Zoo 1年前

      ロートルさん、
      こちらにもコメントありがとうございます。
      まるで洋画のようなリアクション、笑ってしまいましたwwww
      ローレンちゃんの仇を討つことで頭がいっぱいで、熱くなってしまったようですね。

  2. TOMSIM 1年前

    ピーター・・・詰めの甘い奴よ。

    • Zoo 1年前

      TOMSIMさん、
      いつもコメントありがとうございます。
      四天王の最初の1人がやられた後の残り3人のセリフみたいなコメントで、思わず笑ってしまいましたwww

  3. meg-ocero 1年前

    ピーターっ😫
    一気に白熱した戦闘描写!熱いですね!
    ジオニストなものでどうしてもジオン側を応援してしまいますが、好敵手が居てこそ活躍は映えるもの!
    どちらが勝つのか…続きか気になりますね😫

    • Zoo 1年前

      meg−oceroさん、
      いつもコメントありがとうございます。
      実は続きを現在執筆中なのですが、話の落とし所が全く浮かびません…。
      完結までは、相当お待たせしてしまうかもしれません…。
      申し訳ありません。

  4. 緊迫した場面と状況が明確に浮かんで、ストーリーに引き込まれてしまいます✨
    その一瞬の中で人物の気持ちも表現されていて素晴らしいです👍
    サムたちはヤバい現状ですが、思わず手に汗握って応援してしまいます!でもビグロを落とした聞き覚えのない女、連邦にもきっと色んな事情があるんですね、とっても気になりました^ ^ノ

    • Zoo 1年前

      中光國男さん、
      いつもコメントありがとうございます。
      ビグロを落とした聞き覚えのない女の声は、ジム·スナイパーカスタムのパイロットであるイエヴァ·ハルコネン少尉のものです。
      実はイエヴァ少尉には、これといった裏設定や重い過去は考えていませんでした…。

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