「蒼い死神だぁ?
…思い出したくもねぇな…」
“おやっさん” と呼ばれるベテラン整備士は、黄色いザクの開け放たれたコクピットの中から応えた。ザクは妙なブラシでギラ・ズールのモノアイを洗っている。聞けば、このおやっさんはモノアイカメラの清掃にただならぬ拘りがあるらしい。
「ありゃぁ、オデッサから撤退してる時だ。だいぶ離れたからキャンプ張って休んでたんだよ。
最初はなぁ… 銃撃音が聴こえて来たから外に出てみたんだが、向かって来るのは一機だけなワケよ。あぁ… 斥候のジムが見つかって特攻してきたんだな、可哀想に玉砕か…と思ったよ」
「ところがよ、ソイツ、動きがジムじゃねぇのよ。
もうな、ギュワーーーン!と来てシュッ!と行ってダンダンダーーーン!なワケよ」
ブラシが終わったと思ったら、すかさず頭上のサブアームが持つブロワーで水を飛ばし、更に逆のアームの巨大なタオル(まさかあれは人間用の布団か?)で拭きあげている。…一体どうやって一人で動かしているのか、有り得ない手際の良さである…
「ヤツ一機ですげぇ砂埃上げまくるもんだから、もう辺り一面何も見えやしねぇ… ニュータイプじゃねぇんだから目に見える物が全てだろ。下手すりゃこっちは同士討ちって中で、ヤツの方はやりたい放題よ」
今度は空いている左手をギラ・ズールの顎まで伸ばし、コクピットから出てザクの腕を伝ってよじ登っていく。整備長というポストながらこのフットワーク… 若手に任せてみても結局気になって最後は自分でやってしまうそうだ。
「たった一機、見た目はただのジムだぜ?
ただな、ずっと目が赤く光ってたんだよ。ありゃ不気味だったぜ…
動きも何か変でな… 姿勢制御がバグッてんのか、ふつーそんな動き方しねぇだろっていう無茶苦茶な挙動してやがんだよ。あんなん、自分で動かしててもゲロ吐くぜ」
口調に熱が入りながらも、その手は丁寧な動きでモノアイレンズにコーティング剤を塗り込んでいる。子供の身長程の直径のレンズに手塗りとは…
「赤いと言ゃぁ…ヤツはあん時サッサとマシンガン撃ち尽くして、見てるこっちはチャンスだと思ったんだよ。
そしたらまさかの二刀流で、これまたべらぼうな強さと速さよ。ビームサーベルの赤い残像が二本どころじゃねぇ。こっちのザク小隊がアッという間に全滅よ。
連邦のヤベェ奴ってのは白いんじゃなかったのか?って思ったよ」
曇り一つ無い磨き込まれたレンズをソッと撫でながら言った。
「そのザクの生き残りが言ってたんだ。『見えねぇ、何も見えなかった…』って。
後で見たらモノアイの油汚れに砂が付いてドロドロだった。オデッサからこっちろくに整備出来ないままだったからな…気にはなってたんだ。
あの時レンズをちゃんと洗ってあったら… あの時やられたヤツも死なずに済んでたかもしんねぇ…って。
まぁ、蒼いヤツのあの動きじゃぁ結果は同じだったろうけどな。それでも、もうちょっとマシにできたんじゃねぇか、少なくともパイロットに、目隠しで膾斬りされる恐怖は味わわせずに済んだかもしんねぇ…って」
「うちらロートルタイプは目に見える物しか見えねぇんだ。カメラに映るものしか見えねぇんだよ…」
その目は過去を見詰めて虚空を漂う。
「しっかし、記者さんよ、今更こんな話聞いてどうするんだ? 撥水コーティング剤の広告モデルならいつでもやるぜ、ガハハハ!」
この基地を訪れる方便として、有りもしないMS整備誌の記者という身分をデッチ上げたが、私は袖付き情報部から派遣され、
連邦の “シンギュラリティ1”、 La+、NT-Dの謎を解く手掛かりが何か無いかと、そのルーツであるEXAMの目撃者だというこの整備士を訪ねたのだが…これではどうやら無駄足だったようだ…
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というわけで、
まだユウ・カジマが乗る前の “戦慄のブルー” をイメージし、ポージングで “狂気感” も出してみました。
今回は友人からのリメイク依頼品です。旧い方のHG BD1 (HGUC 080)。ご本人が十ウン年前に、ストレート組み・無塗装・艶消しで仕上げたモノを、バラして全塗装、+αアドリブでw
「脚が短いな…」と思ったので下半身の延長を提案。可動域も下半身に気になる所が幾つか。
- 太腿を切らずに、関節部で延長
- ナイフ装備
という御注文。
まずは股関節。
スペーサーを入れるべく、狭い穴の中を1mm削るw
膝。
ダボ穴2つでハマっている脛パーツを穴1つ飛ばして4mmゲット。単純過ぎて逆に裏技感がw
関節部が大きく露出して間延びするので、太腿パーツの下側を3mm延長。1mm角棒を板状に並べて接着してからカット。
ふくらはぎ部も関節のスカスカ見えを塞ぐためにプラ板で蓋。
更に足首も1mm延長。
カット前に真鍮線用の穴を掘っておく事(後でやると位置がズレる)。
爪先パーツの干渉部を削って可動域少しアップ。これが後々ポージングに大きく効いてくる。
足首を伸ばした分、裾も1mm延長&裾の内側後部に付いているスラスターがカカトと干渉していたので裾の外側に移設。
Before / After図。
下半身のみで計6mm伸長。
ディティール追加箇所。
- 赤〆:プラ板、プラ棒
- 橙線:スジ彫り
- 緑◯:ドリル
ディティールの手数は少なめ。
元はシールの胸や膝の赤三角はエナメル塗装。バイザーアイの中身は元の赤メタシールをそのまま使用。
足首周りの改造のお陰で、足先の表現に幅が出た。
この右足首の角度がイイ!←
追加オーダーのナイフも、中途半端な形の左手を上手くポージングに活用できたと思う。“狂気感” 増幅の為に(若干悪ノリで)軽~く艦底色を噴いて血飛沫だかオイル飛沫だかを表現w
なお、キット付属の左手はこれだけなので、二刀流にはビルダーズパーツを使用。
写真枠が足りん!w
シュッとした蒼い死神
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2020に未経験からプラモ開始。
HGを缶スプレーで。
“リアリティ” “兵器感” に拘って、基本暗め配色で塗ります。
塗装剥がし大好き、合わせ目はキニシナイ。
“駆け抜ける悦び” に侵された、戦闘BGMはHR/HMなジオン軍人。
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