「カジマ大佐!
まもなくアクシズ宙域です!」
「了解した。ユウ・カジマ、ジェガン出るぞ!」
「まだ遠いです!」
「構わん、全機 順次出ろ!」
ネオジオン艦隊の投降と見せ掛けた奇襲によりルナツー港湾ゲートを塞がれ、身動きの取れなかったルナツー艦隊が、ようやく出港してネオジオン艦を追い掛けてアクシズ宙域に辿り着いた。
「まったく…シャアが素直に投降するワケ無いだろうが…港の外で警戒するのが当たり前だというのに、なーにが儀礼だ。俺が動かせる隊だけでも外に出しておければこんな事には…」
ネオジオンの狙いは核弾頭を奪う事のみで、それは既にアクシズに運び込まれたらしい。平和ボケした連邦首脳のせいとはいえ、僅か数隻の艦艇で大要塞ルナツーへ強盗に入る度胸と手並みは敵ながらあっぱれだ。
ユウ・カジマ。
かつてブルー・ディスティニーと呼ばれる試作機を駆り、一年戦争でMS撃墜数100機以上を記録したエースである。その機体色と鬼神の如き闘いっぷりで敵味方から “蒼い死神” とも呼ばれた。
終戦後連邦軍は、元々非公式プランであったBD・EXAM計画を廃棄、“無かったこと” に。そのパイロットであったカジマも、その華々しい戦績とは裏腹にその存在を隠すかのように日陰の閑職に回された。階級が高いことも災いし、長らく前線とは無縁でグリプス戦役、アクシズ抗争の時もMSで出撃する機会は無かった。
彼はそれを逆手にアナハイムと個人的にテストパイロット契約を交わし、関係を深め、今ではこうして、本来ジムⅢが配備されるルナツー艦隊に於いてアナハイム製の新型機ジェガンを自機とする裁量を得ていた。
今、その背中には試作の追加ブースターユニットが搭載されている。何の因果か、正に今の状況に相応しい装備と言えた。
ロンド・ベルによるアクシズ破砕工作は失敗し、前半分が既に地球落下コースに入りつつある。無駄とは解っていても、数を頼めば一縷の望みで支えられるかもしれないというのは、今この場に居るMS乗りなら誰もが抱く想いではないだろうか。
もはや戦闘にはならない。ネオジオン艦からは撤退信号が上がり、ギラ・ドーガ達が引いていく。敵は、小惑星アクシズ。
「間に合えぇぇぇ!」
1秒でも早くアクシズに辿り着くべく、背中のブースター、マリオンバードを起動する。
その鳥の翼のような形を初めて見た時、かつてBDを通じて知った少女の名前がふとカジマの口から零れ出た。「戦いたくない。でも愛する人は守りたい」というその少女の言葉がこの装備とどこか重なるように思えた。
アクシズは既に大気圏の表面を撫で始め、MSには危険な高度になりつつある。それでも指を咥えて見ているという選択肢は無かった。その場の全ての連邦機がアクシズの先端部に殺到していた。
カジマもあと10数秒でアクシズに到達するという時に、ジオンパイロットのものと思われる無線が聞こえてきた。確かによく見るとジオンMSも数機アクシズに取り付いている。
「METAL WALL、我々も!」「バカ野郎!戻れ戻れ!燃えるぞ!お前らの機体じゃ保たない!」「何言ってんですか!ゲルググの方が旧いですよ!」
更にその奥からかすかにBGMのようなものも聴こえる。
戦闘中にBGM…
「なんか…昔、そんなヤツが…居たな…?」
記憶を辿ってみる。…BD1に乗っていた時に北米の小さな基地で対峙したグフだ。更に近付いてみると、あの時のグフと同じカラーリングのゲルググ?の様な大型機が居る。
「…いずれ何処かで改めて対峙したいとは思っていたが…そうか…生きていたのか」
何という巡り合わせか。
その瞬間、ギラ・ドーガが吹き飛ばされた。大気の壁の圧力と熱に耐えきれなくなったのだ。
「言わんこっちゃない!無駄死にするなと言っている!」
ゲルググのパイロットだろうか。悲痛な叫びが響いた。
カジマは思わず手を伸ばして、奇跡的にそのギラ・ドーガの腕を掴んだ。今ここでアクシズを支えている者に敵味方は無い。心からそう思えた。
「…14年振りだな、METAL野郎。
熱いヤツめ、オープン回線で丸聴こえだぞ」
「あぁん?誰だよアンタ」
「…蒼いジムに覚えがあるだろう? そっちはグフだった」
「…あ"?…あ、“蒼い死神” !? オマエが?」
「あの時は急いでいてな、本当はちゃんと勝負してみたかった。…こんな再会になるとはな」
「ハッ、器用に頭飛ばしてくれたよな。あの借りを返したくて暫く “蒼い死神” を探してたんだがな」
「そっちも結構有名だったぜ、戦場でMETALが聴こえたら気を付けろってな」
「…そりゃあ初耳だ。ってーか…昔話なんかしてる場合かぁ?」
「フ…そうだな…」
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
トイウワケデ。
“CCAに於けるカジマジェガンの解釈” という、ある意味タブー感もあるテーマに挑んでみました。
今回色々連鎖的に調べて行くと、この「ユウがジェガンでアクシズを押していた」という “公認以上公式以下だけど、まぁほぼほぼ公式設定ぢゃね?w” って、実は重大なツッコミ所があるんですよね。元々ファンサービスの小ネタだっただろうなのでそこまで考えてなかったんだと思いますが…
逆シャア当時、ジェガン=実質ロンド・ベル専用機なんですね。連邦軍内の兵站・補給の上級職でありアナハイムともコネを持つジョン・バウアーがジェガンの採用をゴリ押しし(ジェガンは純アナハイム製MSとして初めて連邦軍に制式採用された量産機)、懇意のロンド・ベルに優先配備した。(ノア家が宇宙へ上がるチケットの推薦状を用意した人物。後のマフティーの黒幕、クワック・サルヴァーその人であるとされる)
そして、ユウがロンド・ベルであるとは考えにくい。ユウはグリプス戦役時、ティターンズにもエゥーゴにも属さず一貫して地球連邦軍であったとされるし、ロンド・ベルはエゥーゴの再編成組織。CCA当時大佐というと艦隊司令のブライトと同階級だしMS部隊長のアムロより遥かに上位(アムロは士官学校を出ていないので佐官には上がれない)。一年戦争の撃墜スコアもアムロと遜色無い。そんなパイロットが隊内にいたらアムロの立場はだいぶ変わってくるハズ。というか階級的にMS部隊長の座はユウになるw
となると、ユウはルナツー艦隊所属と考えるのが妥当。でもCCAの作中で見る限りルナツーからの増援は全てジムⅢなんですよ。その中でユウだけジェガンに乗っているという尤もらしい理由が有るとすると何だろう? ユウ本人やその直属上司が個人的にアナハイムとのパイプを持っている、くらいしか無いと思う。
じゃあ、どうせアナハイムとコネが有るなら&一年戦争の連邦トップ3エースなんだから、それなりにSpecialな機体に乗ってても良くね? というのが今回のコンセプトです。
個人的には「ユウ=蒼」とするのは違和感。BDの蒼はユウが塗ったわけではなくクルスト・モーゼスの趣味。「ユウ=蒼」というイメージは外部的な後付けだと思っております。本来ユウの性格を考えるとあまり目立つ事はしたがらないのでは、と思い、地味な しかし ノーマルではないとわかる色にしました。
「蒼」を使わずに “ユウっぽさ” を出す要素は何だろうと考え、マリオン・ウェルチに辿り着く。シャアやアムロにとってのララァや、ハサウェイにとってのクエスとまでは行かずとも、ユウにとって少なからず何かしら心動かされた対象だろうと。そして、兵装機能は持たず追加推進装置であるユニットに、マリオンの「戦いたくない。でも愛する人は守りたい」という想いを重ねる。とはいえ、ただの追加ブースターではなく、このタイミングでアナハイムの試作品ということは……?
更に、νガンダムと同じビームライフル、同じシールドを持っているのもアナハイムとのコネです(笑)。開発側としてはテスト機は複数あった方が良いに決まっているし。
ソンナコンナ、かなり色々調べて考えた末の今回の物語です。
装備以外の部分でも素ジェガンから少しカスタムして専用機化。前掛けアーマー追加や、脚のバーニアを外付け化等。
マリオンバードユニットはMGシナンジュ・スタインの腰アーマーです。
ストライプカラーは、マリオンの水色・BDの蒼・EXAMの赤(まんまBMWのMカラーなのは偶然ですww)。余り出しゃばらない性格のユウであっても多少は「BDのパイロット」というプライドは有るだろうし、記録を抹消された機体のイメージを差し色に使うのは連邦上層部への当て付けでもあるかも?
実は、素組み成型色仕上げの一般兵仕様も同時並行製作。もっと言うとジムⅢも同時並行でした。
量産機作るの楽しいw
EGνガンダムからライフルとシールドをパクりましたが、こうやって並べるとそんな言う程インパクト無いやんけ…w
そして今回のブンドドではどっちもさっさと投げ捨てておりますw
蛇足ですが…
アムロの階級の話の所で気付いた事。以前ドム・トローペンの項で、「カリウスがガトーの階級を超えたくなくて昇進したがらない」という物語にしましたが、カリウスも士官学校出てない(0083時点で軍曹。士官のスタート階級はそれより上の尉官から)ので、頑張ってもガトーは超えれなかったw イイ話にしたつもりがただのトンチンカンだったw
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
重力の井戸に落ちているドデカい小惑星。どう考えてもそれをMS数機でどうにか出来るわけが無い。それでも、何かせずにはいられない、足掻かずにはいられない。
「バカな事かもしれない…」
そう独りごちた瞬間、辺りが不思議な緑色の光に満ちた。
何故か、あたたかい、安らぎすら覚えるその光に包まれた時、聞き覚えのある声がカジマの意識に響く。
「…違うでしょ」
…!? マリオン?
なぜ今、彼女の声が聴こえるのか。いや、そんな疑問は意味を成さない。このあたたかな光の中では人の意識が混ざり合っているような気がした。
この極限状況で起きた不思議な現象。ニュータイプの意思の力というものも信じてしまいそうになる。信じたくなる。
「METAL野郎!そっちの機体は耐えられるのか?手を貸してくれ!」
「やれるだけの事はやる!」
ジェガンが、ジムが、ゲルググが、ギラ・ドーガが、共にアクシズを押す。
「うぉぉぉぉ!」「大気の壁が…!姿勢を保てない!」「推進剤がもう…!」
一機、また一機と脱落していく。
「 “蒼い死神” !悔しいがもう限界だ、離脱する!」
「わかった、お互い生きていたらまた会おう!」
「バカ野郎!全員生きて還すのが俺の流儀だ!」
「うおぉぉ!マリオン!俺に力を貸せぇぇぇ!!」
「私だけじゃないよ…皆の想いを貴方に預けるわ」
緑色の光が濃くなっていく。もはやその光は質力を持っているかのようにウネり、アクシズ全体を包んでいく。
その奇跡の根源はνガンダムとサザビーに登載されたサイコフレームの共鳴に拠るのだが、実はマリオンバードにもそれが組み込まれていた。
サイコフィールドの共鳴を推進力に変換し、マリオンバードから光の粒子が溢れ出る。
「アクシズ!闇へ還れぇぇ!!」
その “奇跡” はアクシズを押し出し、地球への落下は回避された。
だが、その “奇跡” を起こした数機のMSは行方不明となった…
個人的ブンドドストーリーの4連作、完結で御座います。
③章ゲルググⅢ
④章ジェガン・マリオンバード
BD1の中ボスとしてグフカスを突貫で作った所から、まさかここまで話を膨らませて繋げられるとは自分でも思っていなかったです。ゲルググⅢを何色に塗るか(ライホ機にするのか否か)を悩んでいた所がターニングポイントになり、カジマと絡めるならと必要な脇役も作り、カジマジェガンを作るなら一味違ったモノにしたいという天の邪鬼根性。
ライホ&ゲルググⅢに関してはまだ0096トリントンでバイアラン・カスタムと戦わせたいという夢想があるので、今後も登場予定ですが、カジマに関しては…どうなるんでしょうね?コレ(笑) 「カジマ大佐はシャアの反乱後に退役」という設定の真相はこうだったかも?という一説になるんじゃないかと思うのですが。
ちなみにこの時、シャアとアムロは鍋を巡って殴り合っていたw シランケドw
JEGAN 〜MARION BIRD〜 on You Kajima
コメント
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1時間半のOVAを観終わった気分です😭
戦いを経て繋がった敵との絆、地球を守ろうとする敵味方区別なく繋がる絆、まさに蒼い地球を廻る運命…ブルーディスティニー😭感動でした!
シナンジュのパーツを贅沢に使った非武装の追加ブースター「マリオン」の設定も素晴らしい!シンプルなワントーンカラーですが、お洒落ラインが効いてますね😆
2020に未経験からプラモ開始。
HGを缶スプレーで。
“リアリティ” “兵器感” に拘って、基本暗め配色で塗ります。
塗装剥がし大好き、合わせ目はキニシナイ。
“駆け抜ける悦び” に侵された、戦闘BGMはHR/HMなジオン軍人。
RotStaffelさんがお薦めする作品
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