U.C.0079 10月20日を前後して、地上におけるジオン軍の重要拠点、オデッサの鉱山地帯採掘基地への第反抗作戦「オデッサ作戦」に向けて、地球連邦軍の戦力がワルシャワ近郊に集結しつつあった。
そこには、連邦軍の野営本部がある。
第87対MS戦隊も、ここワルシャワの野営本部を拠点とし、MS稼働訓練を行っている。
第87対MS戦隊も、ワルシャワを拠点に作戦を展開している。
「やっぱりMSは大きいな。ああやって屈んでも、このあたりの樹木じゃちっとも目眩しにならない。」
森林地帯に身を隠すように屈んだガンダムを、少し離れた場所に駐機しているホバートラックから観測している、マーク・スミス曹長は、感嘆の声をあげた。
『マーク曹長、準備は?』
ガンダムのヘントから通信が入る。
「出来てます、じゃあ、ターゲット、上げさせますよ!」
木立の中に、MS大のダミーバルーンがむくむくと立ち上がる。その距離、訳10km。
「最大望遠で10kmか……」
ガンダムのビームライフルでダミーバルーンに標準を定めながら、ヘントは呟く。
『我々には当てんでくださいよ。』
ホバートラックからの通信には、マークの軽口だ。
「場所も距離も違いすぎる、そこまでポンコツじゃないよ。」
ビームライフルの、最大望遠での狙撃訓練である。
隊に与えられた初めての実戦を伴う作戦行動は、穀倉地帯にある敵拠点への夜襲である。夜闇に紛れて南から敵地に近づき、ガンダムのビームライフルで、敵守備隊のMSを狙撃する。混乱に乗じて、北から迂回した戦車隊と歩兵隊とで、拠点を制圧する。
末端の小規模拠点で、軍事的価値は高くないが、一応敵の糧秣基地であるため、多少の打撃は与えられる。何よりMSの稼働データが欲しいのだろう。オデッサディを前に、各地で小規模な小競り合いが頻発していた。
その、作戦開始前に、こうして何度か狙撃訓練を行っている。
『おー、今日も盛大に外したな。』
イギーが通信機越しに茶化す。
訓練におけるヘントの集弾率は、あまり良くなかった。
『命中率は五分五分てとこか?』
夕刻、ワルシャワを発進した。
「まあ、自分の腕はあまり信用していないかな。」
イギーからの通信に、素直な感想を答える。
『俺はお前の、本番の強さは信用してるけどな。』
イギーとヘントは訓練校の同期だ。MSの操縦技術においては、イギーに軍配が上がるが、作戦行動全般において、ヘントは勝負強さがあった。ここ一番で、集中力や大胆さを発揮する場面を、イギーは何度も見てきた。自分ではなく、ヘントに"ガンダム"が任されているのは、何となく頷ける。
「あまり気張らないさ。どうせビームライフルの実戦データが欲しいだけだ。外してピンチになれば、逃げの一手だよ。」
『ついこの間まで、岩やら樹やらにけっつまいでた、こいつらの脚でか?逃げるよりガチンコでやり合った方が、いいデータも取れる。』
イギーは近接戦闘を好む。格闘戦をしてみたくてたまらないのだろう。
情報では、MSは守備にあたるMSは3機、1個小隊。狙撃でなんか落とせるか。MS戦での勝利が困難ならば、戦車隊と歩兵隊が糧秣を焼いて撤収するための援護に、目的は切り替わる。
MS1個小隊に対して、こちらは2機。少々分が悪いのは気になっている。
『我々の61式戦車も、小隊で連携を取れば十分ザクを撃破できます。』
戦車隊と歩兵隊との分岐点で、戦車隊の隊長、ジョージ・フォッカー准尉に告げられた言葉が、ヘントの気持ちを多少楽にした。
夜半には作戦配置についた。
ヘントのガンダムが、ゆっくりライフルを構え、最大望遠で敵地を探る。
「MSが稼働している……ザクに、グフ。」
『2機だけか?』
イギーの問いには、ホバートラックのマークが答える。
『ソナーの感じも、2機でしょうね。ザクとグフ、間違い無いですよ。』
「まずザクを狙うぞ。グフなら気づかれても、近づいてくるところを狙撃できる。」
『そのときは俺に取っ組み合わせろ。前に出るからな。』
息巻くイギーに、頼んだと告げ、ヘントは照準を絞る。
歩兵隊と戦車隊は、予定通り展開しているだろうか。
いや、今は、目の前の任務に集中するだけだ——
『当たった!』
「グフが来る、撃ち落とすぞ……いや、あれは……!?」
『もう1機、稼働していたのか!?すみません、ホバー移動の……新型です!』
照準越しに見える基地に火の手があがる。北側の森からも洗車隊の火線が襲う。うまい具合に展開しているように見える。
「敵機が歩兵隊と戦車隊を見つける前に、こちらに引きつける!イギー、前に出るぞ!」
言うや否や機体を起こす。
『転ぶなよ!』
「歩行訓練は十分やった!そっちのライフル、ばら撒け!火線を見せてこっちに引きつけろ!」
『任せろ!』
イギーのジムの、100mmマシンガンが火を吹いた。
スカートを履いたような、ずんぐりした機体がこちらに気づいて向かってくる。
「速いな……気をつけろ!」
『組み付けば脚も止まる!俺にやらせろ!』
妙にうきうきした声を出しながら、イギーの機体が前に出た後、2体の巨人が激しくぶつかり合うのを、ヘントは見た。
第87対MS戦隊によるジオン糧秣基地への夜襲は以下の通り戦果をあげた。
敵MS3機撃墜。
ヘント・ミューラー少尉、ガンダムのビームライフルによる狙撃にてザク1機。
61式戦車小隊とガンダムによる共同撃墜にて、グフ1機。
イギー・ドレイク少尉、ジムによる格闘戦にて新型MSドム1機。
ミリタリー界隈はよくわからないので、作戦の合理性はきっとツッコミどころ満載なんだろうなぁ、と思いながら記事を作りました。
たぶん、本番の狙撃は10kmも離れていないと思います。そんなに離れてたら、敵からは見えないと思うので……。「どこからだ!?」みたいな話の方がよかったかもしれません。
あと、ドムはGフレームがあるのですが、うまく撮れませんでした。すみません。
今回もご覧いただきありがとうございました。
締めはボツ写真です。
オリジナルストーリー第2話
コメント
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あえてじゅじノシ-ルドガリアルだ機動力を取るか守りをとるか!!!。
すげーいい。この小規模な戦闘、何なら戦闘の手前ですでに、一時の一瞬の平和が見えてほっこり。これは次回作待ち遠しいですね😙是非このスタンスで書いてほしいです。いつか、MSの足元で繰り広げられる整備兵の話とかやってほしいです笑
いつもありがとうございます。
「ぼくがかんがえたがんだむがいでん」なので、主要な戦局に絡むのは野暮かと思いまして……この程度の戦闘か、でっかい戦闘の隅っこで生き残ろうとちまちまやる程度の話を続けていこうと思っています笑
ぶっ壊したMSを直す話とかはやりたいと思っています。
作戦前の訓練から、徐々に手に汗握る作戦遂行への流れ、素晴らしい👍
ワクワクしました😆
いつもありがとうございます。
戦記ものの、最初の軽口叩き合いながら準備からの、接敵以降のバタバタしてわけわからん!みたいな雰囲気が大好きで、そういう感じになればな、と思っています。
今回も面白かったですよ 自信持ってください 軍事的合理性はさておき、話に勢いがあっていいです あとMS同士の格闘戦の画像と描写があればいいですかね 前編後編にわけても良かったかも… 続きをお待ちしています
コメントありがとうございます。
本当はもっと簡素な解説文だけにしたかったのですが、それなりの文章量にしてしまいました(zaku-kao4)
格闘戦は……ジオン系の量産機があまりない、というのがタネあかしです笑
今回もGフレームですし💦
私も連邦機体は極端に少ないです 笑
巧くはありませんが、誰かの心に少しでも何かが残れば、こんなに嬉しいことはない、と思っています。
技術がないので、基本的に無改造。キットの基本形成のままですが、できる限り継ぎ目けしや塗装などをして仕上げたいと思っています。
F91、クロスボーン、リックディアスあたりが好きです。
コメントなどもいただけるととても嬉しいです。
よろしくお願いします。
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